≪アパート「赤まりも@北一番通り」≫ザ・剥奪戦



<オープニング>


 北一番通りにひっそりとたつアパート、赤まりも。
 独特な習慣を持つ冒険者達の巣窟と知られる魔窟ではあるが、実際に付近に住む住人達には、それほど恐れられてはいない。
 何故なら、アパートがたつ以前には、この地には『たまねぎ部隊』なる、過激な教義を実践する宗教結社が存在したからである。
 『タマネギ部隊』は内紛で崩壊した。
 その後、魔窟『赤まりも』が誕生したものの、『たまねぎ部隊』の異常な行状を見てきた地域住民にとっては、最低限の一線は越えない『赤まりも』の住人達は、むしろ扱いやすい存在なのであった……。

「団長ー、地下室でこんなものを拾ったのですけど」
 毎度の如くおさんどんさんの格好をしてアパート内を掃除(奇っ怪な動植物もいるので半ばは戦いだ)深緑の・ケイ(a90112)が、一枚の羊皮紙を持って談話室にやってきた。
「何々……」
 彗翼なる飛翔者・ショウ(a02576)が覗き込むと、そこにはこう書いてあった。

 信仰持つ者は封じられた杯を持ち、陽の光の元に進むべし。
 されど心せよ。
 杯を奪われた者は、その信仰を汚され、誇りを剥奪されるであろう。

「杯というのは、多分地下室の中にあった金色のものだと思います。……ゴキブリが大量にうごめいていたので、逃げて来たのですけど」
 ケイは困ったように頭をかくが、シュウは聞いていなかった。
「杯を巡って、誇りの剥奪戦……。面白そうですね」
 シュウの口元は、実に嫌な感じにつり上がっていたのであった。

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参加者
魔女っ子・ネイ(a00322)
聖闘士・シシル(a00478)
葱神様の御使い・リーク(a00987)
大根神様の使徒・ラヴィ(a00988)
邪神・ドラゴ(a02388)
炎刻烙印・ショウ(a02576)
笑顔まもる疾風うさにぃ〜な・アカリ(a05366)
薬は生涯の友・カティス(a05397)
無銘の剣・レアルフィード(a06300)
アホちゃいまんねん・アルヴィース(a07051)
人類最後の希望・マシュー(a07552)



<リプレイ>

●はじまり?
「雨が降るかな?」
 自室の窓から空を見上げた人類最後の希望・マシュー(a07552)は、わずかに首をかしげた。
「ま、早めに片づけてしまおう。今日は妙にみんな殺気立っているから、早めにしないと片づけどころじゃなくなるし」
 赤まりもの異常な日常に否応なく適応してしまった彼は、外にある倉庫に片づけるべく、普段は使わない道具を詰め込んだ木箱を抱え上げる。
「……おや?」
 そのとき、箱の陰にあった割れ目に気付く。
「アルヴィースさんが壁でも殴ったかのかな?」
 隣の部屋に棲む、あらゆる意味で激しい女性のことを考えてみるマシュー。
 ……少なくとも、のんびり過ごす休日に会いたい人物ではない。
「けど、自分で大工仕事をして直せばいいのに……」
 壁の亀裂から光が漏れていることに気付いたマシューは、ふと好奇心を刺激され亀裂を覗き込む。
「…………うわぁぁぁっ!」
 箱を抱えたまま、恐怖に駆られて部屋の外へ逃げていくマシュー。
 彼が何を見たのかは、当事者だけが知っている……。

●地下室
「ええい、性格が悪い!」
 落ち天井を爆砕拳奥義で粉砕し、落とし穴を力強いステップで回避し、鉄砲水を壁を破壊して回避しつつ、聖闘士・シシル(a00478)は着実に地下室を進んでいっていた。
「せっかくの争奪戦に罠を持ち込むなんて、無粋な」
 ゴキブリ対策に、ゴキブリどころか人にすら危険なモノが練り込まれた団子等々をまき散らしつつ、彼女はさらに地下室の奥へと進む。
 ひょっとすると地上部よりも広いかもしれない地下室。
 その最深部に、黒と金が入り交じった色の、杯があった。
「……ゴキね」
 黒の部分がゴキブリだと気付いたシシルは、口の端を歪める。
 そして油が入った壺とほくちを、杯のある場所に命中させる。
「さぁ、どうせもう誰か来ているんだろう? はやくしないと杯が融けてしまうよ!」
 戦い渇望する凶悪な笑みを浮かべる。
「ふっ……」
 薄暗い地下室を、物音どころか気配すら感じさせぬ影が走る。
 炎に巻き込まれるより速く杯を取り上げ、襲い来るゴキをほどよく湿気た煎餅ではたき落とし、あるいは投げつけて注意を惹きつつ、影は走る。
「ここは通さないよ」
 影の前にシシルが立ちふさがる。
「シシル殿、お主にとってはこの杯は価値がないはず。ここは退いてはくださらぬか?」
 シリアスに決めるのは、世界の中心で泣き叫ぶ・ドラゴ(a02388)。
「杯に興味はないけど、争奪戦には興味があるからね。今日のドラゴさんには気合いが入っているようだし、なおさらここは退けないね」
 自らがつけた炎に赤く照らされながら、シシルは凶暴な笑みを浮かべる。
「致し方なし」
 珍しくシリアスモードなドラゴは、愛用の煎餅手裏剣を構える。
 それに対し、シシルは凶悪さと破滅的な色香を兼ね備えたデザインの、三つ葉剣を構える。
「さぁ、楽しませてよ!」
 力強い踏み込みと共に、三つ葉剣が振るわれる。
 ストライダーの忍びであるドラゴよりもさらに素早いシシルの一撃は、相手の腹を割き、背まで抜けてその体を両断した。
「っ!」
 が、シシルは怒りの表情を浮かべてその場から横っ飛びに飛んだ。
「逃げるか!」
「もちろん」
 人型の巨大煎餅を身代わりにしてシシルをひっかけだドラゴは、地下室の出口へと華麗にかけていくのであった。

●大根と葱
「ふふ、うふふ、あーふふはふ! やった、やったでござるよ!」
 杯を持って見事地下室脱出に成功したドラゴは、先程の凄腕忍びっぽさは微塵も伺えない……要するにいつもの言動に戻ってしまっていた。
「これで拙者がヒーローでござ……あれ?」
 本人の意に反して、彼の動きが完全に止まる。
 何者かが放った影縫いの矢奥義のせいである。
「ふふっ、栄冠を手にするのは葱の信徒ではないのですよ。ねぇ、葱の」
 影縫いの矢奥義を放った大根神様の使徒・ラヴィ(a00988)が悪女っぽく微笑み。
「ええ、そうですとも。当然葱神様の信徒である我だけ……げふんげふん、葱と大根ですよ」
 思わず本音が出た葱神様の御使い・リーク(a00987)が、思わず本音をこぼしてしまって咳払いをしてごまかす。
 そして……。
「うわぁぁぁっ! 勘弁でござるぅぅぅっ!」
 リークの放った貫き通す矢に滅多刺しにされたドラゴは、全身を痙攣させて床に崩れ落ちた。
「さて……」
 今後のことを話し合おうとしてラヴィを振り返ったリークの首筋に、刃が押し当てられる。
 いつの間にかリークの背後に忍び寄っていた、黒き光の剣聖・レアルフィード(a06300)である。
「このまま逃げ切ることができそうなので、葱のには消えていただきます」
 ラヴィがにやりと笑う。
「うっ……」
 頸動脈を剣の腹で打たれ、リークは意識を失う。
「悪女っぽいのう〜」
 何故かラヴィの腕に抱えられている魔女っ子・ネイ(a00322)が、手に持ったカップの茶をたしなみつつ呟く。
 くつろいでいるところをいきなり拉致されたため、いささかご機嫌斜めであった。
「こういう我もいいと言ってくださる方がおられますから……」
 レアルフィードを意識して少々赤くなりつつ、ズタボロになったドラゴから杯を奪おうとする。
 だが、そのとき。
「あっ……」
 死角から近づいてきたピンク色の小動物に顎を打たれ、脳しんとうを起こして膝をついてしまう。
 その隙に、杯はその小動物……一応ウサギのようにも見える謎生物(飼い主曰くヨ〜ヌモシュ)は、杯を器用に加えて駆け出した。
「貴様!」
 パートナーに手を出されたレアルフィードが激高し、笑顔まもる疾風うさにぃ〜な・アカリ(a05366)のペットめがけて手を伸ばす。
 剣で切るだけでは腹がおさまらず、確実に掴まえて、握りつぶすつもりだ。
 実戦で鍛え上げられた冒険者であるレアルフィードから逃れる術はない……はずであったが、ピンクの小動物はするりと彼の腕をかわした。
「バターだと?」
 自分の手に着いた脂っ気に気付いたレアルフィードは、舌打ちをした。
「バター教徒とでもいうつもりか!?」
 小動物を掴んだはずだったが、脂で滑ってしまったのだ。
 彼は凶暴なうなり声をもらすと、気絶しているラヴィと、ラヴィに押し潰されているネイを抱え上げ、猛然と追撃を開始した。

●ウサギ対ゴッドハンドシスター
「来たわね」
 玄関近くまでやって来たピンクの小動物の前に、黒いキャミソールをまとった、黙っていれば美少女が立ちふさがる。
 ゴッドハンドシスター・アルヴィース(a07051)である。
「…………」
 ヨ〜ヌモシュ様(謎うさぎ・♂・もふもふ)が、妙に人間っぽい仕草で対話と平和をアピールする。もっとも、後ろ手に切れ味鋭い爪を隠したりしているのだが。
「ク、クク……。クククハハハハハ!」
 突然、アルヴィースが高笑いをする。
 なまじ顔が整っているだけに、凶悪極まりない面構えに変わってしまっている。
「脇役どもがどうあがいてもヒロインにはかなわないということをわからせてやるわ!」
 殺すつもりの突きを、ヨ〜ヌモシュめがけて繰り出す。
 懐柔は不可能とみたヨ〜ヌモシュは、アルヴィースめがけて襲いかかる。
「ク、ククククク……」
 頬を浅く切られたアルヴィースは、口元に流れてきた鮮血を舌でなめとる。
「いいだろう。なら、わたしの本気を見せてあげる」
 アルヴィースは体を縮めるようにして構えをとり、状態を揺らし始める。
「ケロケロケロケロケロケロケロォッ!!」
 左右から放たれる拳の連打が、謎な小動物を容赦なく打ち据えていく。
 バターで拳がずれ、あるいはヨ〜ヌモシュ自身が拳を回避することもあるが、圧倒的な手数を繰り出すアルヴィースを防ぎきれるはずもなかった。
 アルヴィースの攻撃は、ヨ〜ヌモシュが血だまりに沈むまで終わることがなかったのであった。

●勝者の余裕(トンカツ弁当)
「ふっ、ヒロインのわたしに倒されてよかったね。これで脇役なあなたも目立てるってものよね」
 アルヴィースは悠然と宣言して杯をとりあげた。
「おや、アルヴィースさん?」
 そんなとき、実に食欲をそそる匂いがする箱を持った、薬は生涯の友・カティス(a05397)が現れる。
「……トンカツ?」
 揚げたての香りに、アルヴィースは表情を戦闘モードから猫被りモードに戻してカティスに近づいた。
「ええ。なんでしたら、1ついります?」
「ありがとう! じゃぁ遠慮無く」
 アルヴィースは箸を受け取り、トンカツ弁当を喜々として食べ始める。
 が、半分ほど食べたとき、彼女は箸を取り落とした。
「な……これ、は……」
 視界が歪み、頭が割れるように痛む。
 本人は酒にほとんど縁がなくて分からなかったが、二日酔いによく似た症状であった。
「ふふふ。ちょっとした工夫で、アルコール分を気付かなくさせることができるのですよ。戦闘直後で気が抜けたときでなければ、気付かれたかもしれませんけどね」
 カティスはあくまで穏やかな笑顔を浮かべ、杯を取り上げる。
「宗教に興味はありませんが、僕がこのアパートの頂点に立てば人体実験やりたい放題、アパート爆発させ放題、葱畑荒らし放題……。僕がアパートの覇権を握るため、この杯は有効に使わせてもらいますよ」
 酔っぱらって意識を失ったアルヴィースを見下ろし、にやりと笑う。
「待て!」
 だがそのとき、背後からレアルフィードが駆けてきた。
「トロフィーはラヴィのものだ。渡してもらおう!」
 カティスが迎撃するか外に向かうか一瞬迷ったが、カティスよりレアルフィードより、カティスに抱えられっぱなしのネイの反応の報が素早かった。
「こんなものがあるから皆が争うのだ……。だからな木っ端微塵にしてやるのだ、ネイは平和主義者だからな☆」
 長時間振り回され続けた結果腹がたった故の行動だが、口には出さない。
 ……顔には出ているが。
 ネイのエンブレムシャワー奥義が発動し、金の杯は、玄関の外へと吹き飛んでいくのであった。

●延長戦
「やりましたぞ〜!」
 アパート赤まりもの前で杯を掲げているのは、リークであった。
 意識を回復した彼は、敵の目的地に早回りしていたのである。
「ふふふ……」
 そんなとき、不気味に笑う少年がいた。
 旅団赤まりもの長、彗翼なる飛翔者・ショウ(a02576)である。
「ケイさんの見つけた文書によると、太陽にあてたものが勝利者のはず。なら、晴れるまで勝負はついていないということですよね?」
「え。まぁ、それはそうかもしれませぬが……。それはそうとシュウ殿。なんで武器を構えておられるのですかな?」
 結構ぼろぼろになっているリークは、ショウが振り上げた多節剣を見て首をかしげた。
「それはね」
 ショウの口元が邪悪に歪む。
 リークが思わず一歩後ずさる。
「こんな物は!!」
 真っ直ぐに杯めがけて駆け出す。
「ここにあっちゃ行けないんだ!! って言うかあって欲しくないんだ!!」
「止めてくだされ〜っ!」
 リークの懇願も空しく、ショウのナパームアロー奥義が金の杯に炸裂する。
「ああっ……」
 金の杯は高く高く飛び……。
「え?」
 アパートの騒動に構わず、外の倉庫に荷物を運んでいたマシュー頭にぶつかり……かけたところで、マシューに受け止められる。
「いったい、何です?」
 今回の戦いの事情もさっぱり知らないマシューが、杯の中を覗き込む。
 そこには、硬く突き固められた黒土があった。
「何か生えてるようですが……。何かの芽ですかね? アパート赤まりもに相応しい、赤いまりもとか」
 珍しく軽口を叩くマシュー。
 そのとき、雲の切れ間から一条の陽光がさした。
 みるみる芽が成長し、赤い、藻……じみた奇っ怪な植物が咲く。
 赤い植物の下には、まるで冗談のように小さな、葱の、大根の、煎餅(?)っぽい謎な植物が生えている。
 それはあたかも、赤いまりも(?)に、それぞれのご本尊が踏みつけにされているような光景であった。
「な、なんてことを……」
 リークが大地に膝を落とす。
 かくして、戦いは終わったのであった。

●そして
「結局、タマネギ部隊は、どのタマネギの銘柄が一番素晴らしいか、という争いの結果滅びたようですね」
 後かたづけを担当したケイが見つけ出したタマネギ部隊隊員(現在引退)の日記を閉じ、ショウはため息をついた。
赤まりも付属の畑ではリークが葱の世話をしているし、ラヴィもドラゴもそれぞのご本尊の調達や手入れを行っている。
 そもそも、ちょっとやそっとのことで信仰を諦めるようなかわいげのある人間は、そもそもこのアパートには近づかない。
「けどこれ、どうしよう……」
 金の杯(というより奇っ怪な盆栽もどき)を前にして、ショウは深々とため息をつくのであった。


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