<リプレイ>
●ペンギン大準備 「巨大ペンギンを飼うのは良いですけど、キチンと世話を見続けることができるのでしょうか?」 目的の砂浜でペンギンの檻と紹介された場所を見ながら想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)は心配そうに言う。砂浜に集まっていた住民たちは顔を見合わせた。 「証拠としてペンギンが好きそうな魚を用意していただけますか」 「おびき出すのにも魚は必要なぁ〜ん。できるだけ大量の魚を用意して欲しいなぁ〜んね」 続けて高空の戦娘・エミルリィル(a52732)が頷く。 「そうだな、魚の準備は頼みたい」 畳み掛けるように宵の魔剣士・ニュクス(a74433)が言葉を添えた。 住民たちは三人の言葉に納得したようだった。早速魚の準備に取り掛かる。 「あ、もしあったら台車のようなものもお借りしたいなぁ〜ん」 エミルリィルが追加のお願いをすると住民たちは了承し、手押し車のような木製の台車を用意してきてくれた。 住民たちが準備をしている最中、残りのメンバーは遠くに見える巨大ペンギンを観察していた。 「ウサギ、ペンギンさん大好きなのです〜♪」 「こんな大きなペンギンさんに会えるなんてきっと滅多にないのです!」 星槎の航路・ウサギ(a47579)と輝夜の銀翼天使・ミーチェ(a62819)は目を輝かせている。 「……普通サイズのペンギンなぁ〜んよね?」 あれ、と不思議そうに呟いたのは暁雫・ルルシェ(a70427)だ。それを聞いて小さな小さな仔猫な子ども・ブルーベリィ(a58758)は首を振った。 「おっきなペンギンさんですよ。ボク、お友だちになりたいな〜」 「とは言ってもあれでも怪獣だ、油断は禁物だぜ?」 葉巻をくわえ、慎重に言葉を選ぶ正義のガンマン・シャドウ(a67510)。 「超高速移動をするらしいからな、それはみんな注意しろよ?」 シャドウの言葉に全員が頷いた。 数十分後に住民が魚を用意した檻を冒険者たちにみせた。大きな魚から小さな魚までよりどりみどりだ。これだけ用意できるのなら大丈夫だろう、とラジスラヴァは安堵の笑みを浮かべる。 「ありがとうございます。では、わたしたちも頑張らないといけませんね」 ラジスラヴァのその言葉にミーチェが用意していた護りの天使達を全員にかける。 エミルリィルはウサギと自分にに、シャドウも自分とミーチェに、ルルシェもニュクスと自分に鎧聖降臨をかけると前準備は終了だ。魚を持つ者は魚を檻から借用し、巨大ペンギンの浜辺へと散った。
●ペンギン大移動 巨大ペンギンは全部で五匹。それぞれが声を掛け合い、別々のペンギンに接近していく。 ラジスラヴァは一匹のペンギンに近づいた。魅了の歌を甘く囁くように歌うとペンギンは興味をひかれたようにラジスラヴァを見る。拘束の準備をしながらブルーベリーも同じペンギンに近づいた。同じように魅了の歌を歌う。 「こんにちは、ペンギンさん」 「こんにちは! ボク、ブルーベリーですぅ。お友達になってね♪」 ラジスラヴァとブルーベリーが挨拶をするとペンギンも頭をぺこりと下げた。 「コンニチハ。ぶるーべりー、ヨロシク」 「お腹はすいていませんか?」 ラジスラヴァが問いかけるとペンギンはお腹をおさえた。 「ソウイエバ、スイテル」 「こっちのほうに美味しいお魚があるみたいですよ」 「うん、すっごいいっぱいあるんだよ!」 二人はゆっくりとペンギンの誘導を始める。ペンギンはもともと人懐こい性格の一匹だったのか二人と会話をしながら檻へと近づいていく。 その間二人は好きな魚や好きな場所、お腹がいっぱいになったら何をするのか、何をして遊びたいか、など気さくにペンギンと会話を続け、難なく檻までたどりついた。 檻にペンギンが素直に入り、魚を食べ始めればブルーベリーは魅了の歌を歌いながらペンギンと友だちになるべく会話を続ける。ペンギンも嬉しそうだ。ブルーベリーとお喋りをしながら魚を食べている。 あと四匹。ラジスラヴァは視線を他のペンギンへと向けた。 鎧聖降臨でペンギンの着ぐるみを着たような姿になっていたシャドウはスーパースポットライトで一匹を選び、近づいていく。ルルシェも同じくペンギンの着ぐるみになっていた。ルルシェも魅了の歌を歌うとシャドウを見ていたペンギンはルルシェの歌にルルシェを見る。 「そこのらぶりーなぺんさん、あそこにいってみないかなぁん?」 檻を指差し、ルルシェは持っていた魚を振ってみせた。 「美味しいお魚食べ放題なぁ〜ん。おいでおいでなぁ〜ん」 「タベホウダイ?」 ペンギンもやはり食べ放題という言葉には弱いらしい。シャドウをじっと見る。シャドウは重々しく頷いてみせた。ルルシェと二人檻へと誘導を開始する。時折誘導から逃げようとするペンギンにシャドウは的確にハートクエイクナパームを打ち込み、適度な距離を保ちながら最終的には檻へと入れた。 一安心するシャドウにルルシェが笑う。 「ペンギン歩き、上手だったなぁ〜ん」 そう、シャドウは用心を重ね、ずっとペンギンと同じよちよち歩きで前進していたのだ。 「……ま、まぁな」 ペンギンの着ぐるみの姿のまま、シャドウは頬を掻いた。 ウサギもやはり一匹に対し魅了の歌を歌っていた。 「ここに居ると近くに住んでいる人達が遊べなくて困ってしまうのですよ」 ペンギンも困ったように首を傾げる。 「イルバショナイ、コマル」 「皆さん、出来ればペンギンさんと一緒に遊びたいなって思ってるのです! だから一緒に付いて来てくれませんか?」 「……タベモノトレナイ、コマル」 「食べ物でしたら!」 ウサギは魚をすちゃ、と掲げるとスーパースポットライトを使った。ペンギンはてとてと、と覚束ない足取りでウサギを追いかけ始める。ウサギも全力疾走。 「サカナ、サカナ、サカナ」 「こっちに来てくださればいっぱいありますよ〜!」 なんとか無事にペンギンが追いつく前にペンギンを檻に押し込めることができた。ウサギは安堵の息を吐く。 動きやすい革製の鎧に姿を変えたニュクスはやはり魚を持って仲間と確認しながらペンギンが被らないように一匹を選択する。スーパースポットライトを使って魚を振れば、ペンギンはニュクスを夢中で追いかけ始める。ニュクスは冷静に周囲の様子を把握する。他のペンギンの動き、他の仲間の動き、それらを阻害しないよう、やや大回りをして檻までペンギンを誘導していく。ペンギンはニュクスから魚を奪おうと全力で追いかけるが、さほど切羽詰っているわけでもなかったらしい、腹ばいにはならなかった。 ニュクスは檻の前で身を翻し、ペンギンだけを檻の中へと入れると、ペンギンは檻の中からニュクスの魚を奪おうと羽を振り上げた。 「魚ならそこにもあるよ、ペンギン」 す、と長刀を構えるとニュクスは幻想的なステップを踏む。幻惑の剣舞だ。ペンギンは途端に戦意を喪失し、そこで足元の魚を見た。そちらの魚を食べ始め、ニュクスは安堵の息をつく。 用心深く周囲を窺って、ニュクスは一匹のペンギンがこの騒動で暴れ始めたのを見た。 海の近くで待機しているミーチェのほうへペンギンが突進していく。 「一匹残っている! 誰か!」
●ペンギン大乱闘 ニュクスの言葉に全員が動いたが、ペンギンは身の危険を余計に感じたらしい。腹ばいになるとミーチェへと突進していく。 「是非なでなでしたかったのですが、これでは無理そうですね……」 とは言っても避ければ後ろは海だ。ミーチェは覚悟を決めた。 どん、という衝撃。体が後ろへ吹き飛ぶ。痛みが全身を走り、砂浜を転がった。 「どなたか援護をお願いできないでしょうか……!」 自分にヒーリングウェーブをかけながらミーチェは声を限りに叫んだ。ペンギンはそんなミーチェに再度攻撃をしかけようと羽を振り上げ―――。 「ごめんなぁ〜ん、今助けるなぁ〜ん!」 他のペンギンの逃走を警戒していたエミルリィルはグランスティードに飛び乗るとミーチェへと駆ける。他の仲間も動くがやはり騎乗したエミルリィルが一番早い。 大挑発を使おうか一瞬迷うがペンギンが二撃目をミーチェに見舞おうとしているのを見て、苦渋の決断をした。 「なぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」 声を限りに叫ぶ。紅蓮の雄叫びだ。響く声にペンギンは動きを止めた、いや止めざるを得なかった。 粘り蜘蛛糸の準備をしたウサギが駆けてくるが、大丈夫なぁん、とエミルリィルは笑った。 「台車を借りておいてよかったなぁ〜ん」 「台車持って来たなぁ〜ん」 ルルシェが砂浜の上を押しにくそうに手押し車を押してくる。 「台車に乗せるの手伝ってなぁ〜ん」 エミルリィルが全員に声をかける。さすがに2メートルのペンギンだ。数人で持ち上げられるものではない。 その隙にそっとミーチェは動けないペンギンの頭を撫でた。 「痛い思いをさせてしまってごめんなさいね……でも、きっと皆さん、優しくしてくださいますから……」 「大丈夫よ、あれだけのお魚を用意できたのだから」 ラジスラヴァがミーチェを慰めるように手を貸すと微笑んだ。
●ペンギン大団円 無事に五匹のペンギンが檻に収まるとペンギンと話をした者たちはペンギンの好みや希望を住民に伝えた。住民はしっかりとそれを受け止めてくれたらしい、冒険者たちにペンギンを大事に飼うことを約束してくれた。 海開きもつつがなく終わり、太陽の下、冒険者たちは寛ぐ。 ミーチェとブルーベリーはペンギンの檻でペンギンとさらに仲良くなろうと話しかける。魅了の歌でブルーベリーは会話し、ミーチェはその通訳で喋るといった具合だ。 ラジスラヴァはあらかじめ水着を着ていて、海にぷかりと浮かぶ。 「それー!」 その横へどぼん、と飛び込むのはウサギだ。先に泳いでいたエミルリィルが水しぶきに目を細める。 「ペンギンさんとも遊べたらよかったんですけどなぁ〜ん」 「そのうちに遊べるようになりますよ! そうしたらウサギはペンギンさんと競争するのです!」 「なぁ〜〜〜ん」 同意の声をあげたのはルルシェだ。ノソリンに変身して四本足で器用に泳いでいる。 砂浜ではニュクスが日傘を広げ、そんな様子をぼーっと見ていた。 「泳がないのか?」 シャドウがその脇に立って尋ねる。 「……私はいい。シャドウこそ泳がないのか?」 「んー」 くわえていた葉巻をシャドウは摘むと煙を吐き出した。眩しそうに海を見つめ、砂浜で葉巻の火を消す。 「ちょっと早いが一泳ぎしていくか」 「ああ、だが少し待て」 「ん?」 「吸殻はゴミ箱へ」 ニュクスが葉巻を指差すとシャドウは声をあげて笑った。海より先にゴミ箱を探すことになる。 初夏の日差しの中、五羽のペンギンは眩しそうに寛いで海を見ていた。
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参加者:8人
作成日:2008/06/29
得票数:ほのぼの19
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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