【お姉さま天獄】青梅のお姉さま



<オープニング>


 冒険者の酒場――。
 テーブルに頬杖をついているのは物憂げな美女、ミステリアスな雰囲気をたたえ……といいたいところではあるが、それはおなじみ、葵桂の霊査士・アイ(a90289)だ。
 ふと、アイの手元にグラスが置かれた。
「頼んでないが」
 と顔をあげたアイにウェイターが告げる。
「あちらのお客様からです」
 視線を向けるとそこにはカウンター、アイに背を向けて独りグラスを傾ける姿がある。
 アイは、フッと笑った。グラスを手にカウンターに向かう。
「昼間からなにやってんだ、プルミー」
「プルミー? ノンノン、流れのプレイボーイ『プーノヴァ』とでも呼んでくれたまい」
 なんのことはない、はじまりは・プルミエール(a90091)ではないか。一応、男性っぽい姿をしているが全然似合わない。
「誰が呼ぶか。ていうか『プレイボーイ』を名乗れるのは男性だけだ、バカモノ」
 アイは仕方なく、もらったグラスを傾けるわけだが、
「……梅酒ではないか」
「あ、ダメですか?」
「ダメとは言わないが、普通こういうときは小洒落たカクテルにするものだろう。それに、本気でナンパするのならグラスの下にメッセージカードでもつけてコミュニケーションのきっかけを作ってやるものだ。グラスを一方的に渡すだけでは気持ちわるがられるだけぞ」
「ご親切に……もしかしてアイさん」
「なんだ?」
「私のこと、口説いてます?」
「……プルミー、酔ってるな?」
「少し」

●あめあめふれふれおねえさま
 女性型モンスター、通称「お姉さま」がまたまた辺境地域に出現した。今回のモチーフは青梅だという。そう、梅酒にしたり、梅干しにしたりする梅の実だ。
 梅林の一帯がある。ちょうどたくさんの梅の実がとれる時期だというが、時期のせいもあって毎日のように雨が降っている。つまり戦闘も、雨の中で行われる公算が高い。
「今回敵となる女性型モンスターは、レインコートのようなものをぴったりと着ており、非常に背が高くスレンダーな立ち姿だという。ただ、レインコートのフードを目深に被っているので、わずかにのぞく青い髪以外ほとんど見えない。そして」
 と、アイはいささか困った顔をして、
「どうやらレインコートの下は何も着ていないようなのだ。……だからといって、男性諸君は狼藉に及ばないように。あくまで危険なモンスターなのだからな」
 この雨を利用しているのか、本来的にそういう性質なのかは不明だが、このモンスターは両手を組んだ隙間から、激しい水流を飛ばしてくるらしい。ただの水と思って甘く見てはいけない。その噴射の勢いは岩すら砕き、また、小刻みに曲げり複数の相手を同時攻撃したりするらしい。射程距離は最大で、矢のそれと一致するという。
「雨でぬかるんでこちらの動きは悪くなるだろうが、敵はこうした地形のほうがむしろ得意なようで、素速く動き回ってくるだろう。ただ、飛距離はある攻撃だが至近距離で戦うのは苦手らしく、懐に入られると両手で押しのけて距離をとろうとする。また、近場から攻撃を叩き込むと大きなダメージを負わせることができるようだ」
 だが「お姉さま」も簡単に接近を許すつもりはなさそうだ。青梅に似たまん丸い手下を四体連れているという。いずれも人間頭部ほどの大きさで、丸い体にヒレのような手足を生やし、ぬかるんだ地面を泳ぐように滑走する。手下にはパクッとした口だけが付いており、そこから近距離に特化した水鉄砲攻撃をしてくるのだ。手下の攻撃は近距離専門だが、攻撃力はお姉さまのそれに匹敵する。
 中距離長距離に秀でた「お姉さま」、そして近距離専門の手下、このチームワークで戦う怪物たちに、冒険者はいかに対応するか!? 負けずにフォーメーションを組んで戦ってほしい。
 ところで、参加者の一人が、プルミーをどうしたらいいかアイに問うた。アイは、
「まあ、そのままにしておけ」
 と返事した。
 プルミーはテーブルにつっぷし、すやすやと寝入っていたのである。傍らには梅酒のグラスがあった。


マスター:桂木京介 紹介ページ
 桂木京介です。よろしくお願いします。
 フルーツ&美女の謎シリーズ、特別編を挟みまして八回目となります。今回は久々に「お姉さま」らしい「お姉さま」といいますか、フェロモン系セクシー系で参りたいところ。(といっても顔は現時点不明ですが)
 敵は長距離ないし中距離での戦闘を得意とします。いわゆる「手下」が「お姉さま」に近づく事を妨害しようとするでしょう。手下の攻撃力も高いので意外と手こずるかもしれません。

 それではリプレイでお会いしましょう。桂木京介でした。

参加者
碧風の翼・レン(a25007)
嵐を呼ぶ蒼き雨・レイニー(a35909)
天に抗う誓約者・トワイライト(a43304)
戦争屋・ヒレン(a47525)
星喰らう蒼き闇・ラス(a52420)
手のひらの鼓動・アールコート(a57343)
青雪の狂花・ローザマリア(a60096)
槍を持って進む者・ベディヴィア(a63439)
銀之刀匠・クオン(a65674)
全力狂想曲・ティム(a71002)


<リプレイ>

●すっごくヤバイ気がするですよ
 雨が降る。雨が降る。なんというかもう、とめどなく降る。
「ちょっとくらいの雨なら、それも楽しいですけれど♪」 
 手のひらの鼓動・アールコート(a57343)は空を見上げた。本降りになる気配。ねこみみフード付雨がっぱ、そのフードを下げるアールコートである。
 ねこみみ合羽といえばもう一人、狂想曲・ティム(a71002)だ。アールコートの後を、ひょこひょこ子猫のごとくついてゆく。
「水も滴るいいおねーさまには興味あるけど、こんな雨じゃ僕の布チラ奥義も残念無念」
 と口にしたところでティムは気づいた。
(「おねーさま依頼来てから、僕の仕事まだ一度も成功してない!」)
 プーカの沽券にかかわる事態か!? 近いうち、自分を見つめ直す必要があるかかもしれない。
 梅林、強まる雨脚の下、和傘の麗人がしずしずと歩みを進める。袴姿の戦装束、銀之刀匠・クオン(a65674)だ。絵になる立ち姿といえるが、左右の人物を含めてとらえるとなんともシュールな構図、それというのも、
「梅酒、っていってもアタシは飲めないから梅干にした方がいいわね。百年くらい漬けてやろうかしら」
 というのはクオンの右隣、青雪の狂花・ローザマリア(a60096)である。上着は純白のワイシャツ、傘はない。しとどに濡れたシャツは肌にはりつき透けて、下に着た「メロンのお姉さま」オーバーオールと、さらにその下の柔肌を際立たせている。
 転じて左隣を見れば、
「ロ、ローザマリアさん。一体僕に何を求めてるです? ……すっごくヤバイ気がするですよ」
 そこにもよく濡れた少女あり。いや、少女ではなく槍を持って進む者・ベディヴィア(a63439)だ。ベディヴィアは、「レモン&ライムのお姉さま」のチアリーダー服を着させられているのだ。しずく滴る銀髪は、乱れに乱れて艶めかしいほど。
 天に抗う誓約者・トワイライト(a43304)はそんな二人を一瞥し、
(「……なんかちょっと見ねえ間に女性陣の衣装が色々と……」)
 と複雑な心境だ。雨天決行の屋外ファッションショーにでも来てしまった気がする。
(「まあ最近シビアな依頼ばっかりだったしいいか。……って考えられるあたり、染まってきちまってんのかな俺も」)
 とまれ久方ぶりのこの雰囲気が、懐かしくも心地よいトワイライトなのだった。
「二人とも、本当に傘、ささなくていいの?」
 碧風の紡ぎ手・レン(a25007)がローザマリアとベディヴィアの背後より問うた。レンもずっと傘をさしている。ローザによれば「これも趣向」とやらで、二人は傘なし、足元も水たまり浸かり放題なのである。
「今回の『お姉さま』の衣装……レインコートだけであって……普通のだよねぇ?」
 レンは戦争屋・ヒレン(a47525)に問うた。しかしヒレンの答は簡潔だ。
「さあな。だが、レインコートの下まっぱはさすがに引くな」
「そうだった。まっぱ……なんだよね」
 まっぱ、すなわち全裸らしいのだ。ヒレンのクールな口調が逆に生々しさを高める。
 そのときクオンの足が止まった。手を放すや、傘は風に煽られ灰色の空へ消えた。
「……静かな雨音を、乱すは無粋……」
 鞘を払う。抜き身の太刀銀なる刃、雨を弾いてかすかに震える。
 青梅の林をかきわけ丸い「手下」が姿を見せたのである。
「とっとと終わらせよう」
 星喰らう蒼き闇・ラス(a52420)も戦闘準備に入った。本日のラスには「とっておき」の仕掛けがある。この距離ならば十分間に合うだろう。そそくさと用意するのだった。
 やがて青梅四体の背後に守られるように、レインコート姿の「お姉さま」が出現した。フードを目深くかぶっているため顔は見えない。されどすらりとした四肢、見事なくびれのあるプロポーションは、レインコート越しでも存分わかろうというもの。
 かくて両陣営の役者は揃った。雨中戦闘の開始である!

 ……待てよ。誰か一人、忘れてないか?

●妾とかぶっておる
「……わらわと……」
 ふと谺するは少女の声か。
 と思ったのもつかの間。
 それはまるで剛速球! 灼熱の怒りに魂を燃やし、くわわっ! 目を見開き駆けてくる。どこに隠れていたのか超スピード、グランスティードに乗って爆走、彼女は!
「妾とかぶっておるーーっ!!」
 くわわっ、くわわっ、くわわっ! もうなんの効果音かわからなくなってきたがその場の誰もがその音を聞いた! 嵐を呼ぶ蒼き雨・レイニー(a35909)その人である! 身に翻るは水色のレインコート、たしかに「お姉さま」のそれと似ている。
「ええい、妾の真似をすれば美女と称賛されると思うてからに、短絡な!」
「そんなことはないだろう」
 というヒレンの静かな指摘も聞き流し、レイニー、一躍飛びかかるが、
「下郎めなにをする! 妾が濡れるではないかー!」
 四体の手下は動じない。ヒレのごとき四肢でぬかるみを泳ぐや、がばっと口を開き一斉に水鉄砲を発す。うち二つが命中、レイニーもさすがにたまらず駒より落ちた……ものの、泥まみれになることはなかった。
「危ないよ、無茶をしては」
 寸前でレンが抱きとめてくれたのである。レンはローザマリアのスティードに同乗していたが、飛び降りてフォローに回ったのだ。
「ええい止めるな! 妾の偽物を成敗するのじゃ」
 手足をじたばたするレイニーに、ローザマリアがふっと微笑して、
「偽物に対して本物がわざわざ出向くなんて変じゃない? 偽物に来させるべきよ」
 と告げたので、なるほど、とレイニーはけろりと納得した。ローザマリアは内心苦笑する。
 先陣きって手下に迫るは、クオンを乗せたグランスティード。
「クオン頑張れ! 梅のお化けやっつけちゃえー!」
 その駒に同乗してティムは凱歌を歌う。雨が激しさを帯びてきた。服はもちろん靴にも水が染みこんできているがティムの歌声は明るい。
 中距離からクオンが仕掛ける。
「……汝を斬るは、御雷の剣……」
 鐙を踏みしめサンダークラッシュを放つ。手下の一体が電撃を浴びてのけぞった。
 吹きつける雨に顔を打たれても、ヒレンの勢いが落ちることはない。むしろ逆境にあってこそ、彼の闘気は鋭さを増す!
「雨が俺だけの悪条件だなんて思ってっと散らすぜ三下ぁ!」
 槍が如き雨、裂いて放つは蛇毒刃。毒の刃が青梅怪物に突き立つ!
 これで敵のリズムは崩した。アールコートはこの隙に味方の防護を築く。
「それじゃ、おいでませ天使たち☆」
 叩きつけるような雨に負けることなく、護りの天使達がアールコートの声に応じ降りてくる。
 ベディヴィアも守りに力を発揮した。
「はう、ずぶ濡れは仕方ないにしても、せめて怪我を減らしますよ」
 と仲間たちに鎧聖降臨をかけてゆく。冷たい雨に、ベディヴィアはもう下着までぐっしょり、チアリーダ衣装もぴったり張りついてデンジャラスな様相だ。
 防水マントがあるが、頭や首、腕を濡らすものは防ぎようがない。それでもトワイライトは恒例のやつを進軍させていた!
「俺の不在の間もこれ続けてくれたあいつの為にも、今回やることは決まってるだろ」
 土塊の下僕だ。
「さあ行け、『V(ビクトリー)ラス』! ちゃんとレインコート着せてやってんだ、労に報いろ!」
 下僕は歩み出す。背中にはちゃんと名称を書いた紙貼付済みだ。しかし今日の「土塊版ラス」は一人ではない。ガールフレンド(?)がいた!
「こいつが俺のとっておき! 衣装つながりって事でー、と」
 ニヤリと笑うは本物ラスだ。とある悪友に感謝と逆襲の意を込めて、ラスは自作の土塊の下僕に名称を与えていた!
「ゆけ! 『リボンのついた襟の大きい服』美少女戦士! 『ノーベル・ミレイラル』!」
 どことなく苦しい表現で呼ばわり、どこからか借りたそんな服+レインコートを着せた下僕を発進させる。こっちの下僕にも名称紙添付済みであることはいうまでもない。
 土塊のラスと土塊のミレイラル、二人並んで歩み行く。トワイライトが土塊ラスに呼びかけた。
「その女に抱きつけ!」
 土塊ラスはおもむろに、土塊ミレイラルに抱きつき押し倒した。
「ちがーうっ!」
 トワイライト、本ラス、声を合わせて絶叫していた!
「俺達の反対側から女モンスターに抱きつけっ!」
 トワイライトは正しく指示を出し直す。
 
●複雑な心境……
 レイニーは突撃をやめ挑発に方針を変えている。
「模倣できぬ真の美で成敗してくれるわっ! ……ええいっ、とっとと来んかっ!」
 なかなか挑発はかからない。お姉さまは接近せず、手下の壁に守られながらロングレンジ水鉄砲を連発してくる。あいかわらずフードは目深だ。対お姉さまの三人は徐々に消耗しつつあった。
 やがて何度目かの水鉄砲がレンの肩口を直撃する。切り裂かれる感触は本物、焼き鏝を押し当てられたように熱く、痛い。鮮血が腕を伝い雨と混じりあう。
「……!」
 呻きを押し殺すレンにローザマリアは気づいていた。だが『大丈夫?』なんてローザは言わない。『行ける?』とも問わない。それがローザマリアの見せる信頼の証、信頼しているから心配しない。そして彼女は言ったのだ。
「作戦変更、あたしたちが敵を呼んでくるわ。レイニーは迎撃を」
 言うなりスティードに飛び乗り腕を差しだす。レンの傷ついてないほうの手が届くように。
「了解!」
 レンはさっと彼女の腕をつかんで騎乗した。同時にアールコートがディバインヒールを発動した。
「乙女の祈りは絶対無敵、なのです★」
 アールコートの声とともに、レンの痛みは引いてゆく。
 雨はもう豪雨といっていい。しかしいかに激しかろうと、ベディヴィアは蹄――ローザマリアのグランスティード――の音を聞き分けていた。 
「道をあけますですよー!」
 青龍戟の切っ先を突きだしてベディヴィア跳んだ。手下の水鉄砲が剃刀のごとく噴き、ペディヴィアの白いソックスを切り裂いたが怯まない。一気に叩き落とす! 手下の一体はくす玉のように両断され倒れる。
 手下の水鉄砲を紙一重で躱すと、クオンは雷光で一体を灼いた。
「……雷神は剣の神。降りしきる雨の加護を受ける貴方がたと、駆け抜ける雷の加護を受ける私と、曇天の戦を制すはどちらでしょうか……?」
 この勢いに乗ってヒレンも攻撃、
「てめぇらも邪魔だっての! ほら、共食いでもやってな!」
 ハートクエイクナパームの力で圧すると、残る二体の手下は戸惑って同士討ちを始める。混乱した手下たちが「お姉さま」を守れるはずがない。
 かくして味方が作った道を、一直線にグランスティードは駆けぬける。応援の意を込めてティムが凱歌で追った。
「青梅は〜 生で食べたらいけないよ〜 シアン投げ首らりるれろ〜♪」
 お姉さま怪物にも変化が生じていた。ようやく到着した土塊ラス&土塊ミレイラルにまとわりつかれ、これを押しのけようと必死だったのである。
 そして土塊ラスが、押しのけられた上水噴射を浴びて砕け散った!
「複雑な心境……」
 心に哀しみを感じながら本物ラス、薔薇の剣戟で混乱中の手下を切り伏せる。
 つづいて土塊ミレイラルが犠牲となった。
「ま、派手に散ったしいいとするか」
 トワイライトは納得しつつ、前進してエンブレムシャワーに敵全体を巻きこむ。
 懐にスティードが突きこんできたのをお姉さまは解し、またも手で押しのけようとするも、
「かかったわね!」
 その手を積極的に取ってローザ、力の反作用で投げながらサンダークラッシュで追い討ちした。
「其の方、面を上げィ!」
 飛ばされながらもさすがは怪物、手を結んで水鉄砲を放とうとする。だがそれもレンは予想済み、
「撃たせるかよ!」
 身をかがめて肘打ち、体をくの字に折り曲げたお姉さまのフードがはらりと落ちた……!
 それを確認するやレイニー! 叫ぶ!
「並の美女ではあるがモノマネの悲しさ、やはり妾の敵ではないわーー!」
 くわわっ! 相手がどんな顔であろうと多分同じことを言った気がするが、ともかくそう断言してレイジングサイクロンを見舞うのだ。
 まさに雨の中の竜巻、空気巻き上げる勢いは強く、お姉さま本体ばかりか生き残った手下すら宙に舞わす!
 クオンの背中にぴったりくっつきつつティムはこれを見上げた。
「お姉さまのレインコート、めくれないかな……めくれないかな……風のいたずらやったって、ここからじゃ効果ないかなあ……ああっ……!」
 心なしかティムの瞳はうるうるしているのだった。なんか、見えたかも。
「……」
 クオンは声を荒げるでもなく、無言の微笑でそんなティムを見つめる。その刀身が音もなく光ったように見えた……。
 お姉さまの落下地点に疾風、それはヒレンだ!
「ハッ、勘違いするな。お姉さまをキャッチしてやる程優しくはねぇよ!」
 疾風は螺旋となり旋空する。飛翔突撃スパイラルジェイド。
 ヒレンが着地したとき、お姉さまの身はもう一度宙に舞い上がり、どうと落ちて水銀の如く飛び散った。 

●いつも助かります☆
(「……偶には香水を梅の香りに変えてみても良いでしょうか……」)
 煙る雨、立ち込めるは青梅の香り。雨はやまぬが、それでもクオンは落ちつく。
「あーあ、ビショビショ。風邪引いちゃうわ、まったくもぅ」
 ローザマリアは肩をすくめた。レンにタオルを借りていくらか人心地はついたが、さっさと戻るが得策のようだ。
 トワイライトはお姉さまのレインコートを拾いあげた。
「これだけ見たら普通のレインコートなんだが……まさか、あの敵みたいにしてこれ着るのか」
 というトワの手からレインコートを取ったのはレイニーだ。
「ええい、寒いのじゃ。妾がもらう!」
 くしゃみするとレイニーは、なぜか不思議なしなをつくって、
「誰ぞ雨で冷えた体を温めてくれる男はおらぬかえ?」
 と流し目する。第二人格か? 持って生まれた血のなせるワザか? すると
「そもそも雨は嫌いなんだよねー」
 などと言いながら、ひょい、とラスはその視線をよける。ヒレンも雨中、煙草を気にしながら、
「湿気って火がつかねえ。こういう時だけは雨が嫌になるぜ。くそったれ」
 と舌打ちしつつさりげなく一歩引いた。
「え?」
 不穏な雰囲気を察しベディヴィアはキョロキョロする。気がつくと、レイニーの視線の先には自分しか男がいないではないか!
「ぼ、僕はっ」
「だよなー。ペディヴィアは女の子だもんなー」
 なぜかティムは納得顔で、
「はぅ、いつも助かります☆」
 アールコートにいたっては手まで合わせて拝んだ。いいもの見せてくれてありがとう、という意味なのか!?
 それは窮地、男だと言い張るならレイニーを温めざるを得ず、否定するなら女いうことになりかねぬこの状況! 頭悩ませ天を仰ぐペディヴィアの顔に、無情の雨は降りつづく。
 そんな少年にレンは、そっとタオルをかけてやるのだった。
「泣いてないよね、目のそれは雨だよね………頑張れ」

 今回は、これまで。


マスター:桂木京介 紹介ページ
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作成日:2008/06/24
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