モンスターの村



<オープニング>


 ……彼女は山に住んでいた。
 山の頂に暮らし、山を荒らす者を狩る。
 ……それが例え野生の獣やグドン、そして危険なモンスターであっても……どんな相手でも怯まず攻撃した。
 この山は彼女の封土であり、そこに暮らす村人達も含めて彼女の護るべき対象でった。
 この場所がモンスターの徘徊する危険な地になった時から、山を領した彼女はそこに棲み、同じ様に山に住む村人達から守護者として崇められた。
 彼女……そう、彼女の正体は、美しい女性の上半身と、獣の下半身を持つモンスターであった。

 だが、彼女の棲む山……先日までモンスター地域と呼ばれていた場所が同盟の冒険者によって解放された時から周囲の状況は変わっていった。
 近くの街にも避難していた人達が戻って来て、街の安全を確保する為に自警団も作られた。
 だが、彼女が住む山の村では、解放前と変わらずにモンスターと共にひっそりと暮らしていた。
 しかし、住民が戻った街ではあらゆる物が不足していた。
 例えば、建物を建てたり修繕したりするのに使う木材は常に不足していた。
 料理を作り、食事を取るために山菜やキノコ、ウサギや猪と言った山の幸を獲り、また調理し暖を取る為にも薪等も必要だ。
 そして、ある街の人が山へと目をつけた……なんだ、あそこには木も食べ物も、いっぱいあるじゃないか。
 上手く行けば一気に金持ちにもなれる……そう考えた彼は仲間と共に山へと入り込んだのだ。
 そして、そんな彼等にモンスターは襲いかかった……彼等の行為は、彼女の目には山を荒らす侵略者だと写ったからだ。
 モンスターに襲われ、命からがらに山から逃げ出した彼等はその足で自警団に駆け込んだのだ、モンスターに襲われたと。
 彼等の通報により、調査に向かった自警団……しかし、モンスターと聞いて、それに対処する為に武装して居た彼等もまた、彼女の封土を犯す者として襲われたのだ。

 この事態に、街の代表達は冒険者へと依頼を出す……自警団を死傷させたモンスターを退治する様に、と。
 いくら山にさえ入らなければ被害が出ないモンスターだとは言え、人を襲ったモンスターを放置する事は出来ないのだ。
 しかし、この決定に山に住む村人達は反発する……街の者達が山にさえ入らなければ彼女は誰も襲わない、彼女は山の守護者なんだ、と。
 こうして、山の人達は彼女を護る為に山を封鎖し、罠を設置し徹底抗戦の構えを見せる。
 同時に冒険者の酒場に対しても依頼の取り消しを訴えたのだ。

「……これはちょっとやっかいですね」
 冒険者の酒場……霊査士のユリシアがこの依頼に対し霊視をした所、ある事が解ったのだ。
 ……このままでは、モンスターを護ろうとする村の人達はやがて護ろうとしているモンスターに襲われてしまうと言う事。
 モンスターを護ろうとして仕掛けた罠や、それを巡る街の自警団との争いが起これば、それはモンスターの目には山を荒らす行為だと思われてしまうからだ。
 だが、彼等の説得は難しいであろう……何しろ、街の人達さえ山に手を出さなければ何も起こらないからだ。
 しかし、その解決策が不可能だと言う事も彼女には解っていた。
 今以上に街が復興すれば、住民は大きく増える……そうすると、食料不足、木材不足は目に見えており、豊富な資源の宝庫である山へと目が向けられるのは時間の問題であった。
 街の人達を下がらせ、今だけモンスターとの共存を計る事も出来る……だが、遠からず、再びこのモンスターの退治と言う依頼が来る事は間違いないのだ。
 ……モンスターの退治は必要な事……でも、できれば村の人達と街の人達の軋轢がこれ以上広がらない様に解決して欲しい……そう願うユリシアは、依頼を受けてくれる冒険者を募るのであった。

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参加者
荒野の黒鷹・グリット(a00160)
北海黒龍王敖炎・オイスター(a01453)
闇を照らす光・アイ(a02186)
銀閃の・ウルフェナイト(a04043)
夜駆刀・シュバルツ(a05107)
光と命の巫女・サラサ(a06105)
白銀の戦乙女・ネイ(a06746)
世界の探求者・ヴァル(a07519)
君を守ると誓う・メロス(a08068)
折れし漆黒の双牙・コウ(a08201)


<リプレイ>

●説得
「私は村人に被害が出る作戦には反対だ……」
 そう呟いた世界の探求者・ヴァル(a07519)がモンスターを守護者と崇める村がある山へと入ろうとする……だが、その直前山へと足を伸ばした彼を轟雷閃舞・グリット(a00160)が突然引き倒した。
「ヴァル……君はユリシアの話をちゃんと聞いていたのかい?」
 依頼を受けた時に霊査士のユリシアが話していた事を聞いていなかったのか……そう冷たい目で地に倒れた彼を見下ろすグリット。
 そう、この山に武器を手に入ればモンスターに襲われる……依頼を受ける冒険者達にユリシアはそう伝えていたのに、彼は愛用の斧を持ち込もうとしたのだ。
 村人を納得させてからモンスターは倒さなくてはならないのに、説得する筈の彼が襲われ倒してしまっては元も子もない。
「そうか、すまんな……これで良いか?」
 地に腰を付けたまま斧を投げ捨てるヴァルの姿に、にっこりと微笑むグリット。
「悪かったな、引き倒して……さぁ、行こうか」
 伸ばしたグリットの手を取り、起き上がるヴァル……リザードマンの彼であったが、冒険者としては経験もレベルも上のグリットは、細身のその身体に似合わずその手は、その腕はとても力強い物であった。
「きっと村人さん達に、モンスターが可哀想な存在である事を解って頂ければ……」
 リザードマンと人間と、一時期は争い戦った2つの種族が共に手を取るその光景を見ながら、両手を組み祈る様に呟く光と命の巫女・サラサ(a06105)……やがて目を開けた彼女は、山腹にひっそりと立つ村の姿を見つめるとゆっくりと口を開いた。
「……では、行きましょう、みなさん」
 村へと立ち入った3人は、村人達を必死で説得する……だが、住民の感情を変えるのは難しかった。
「モンスターは……彼女は何時お前達を襲うのか解らないんだ、今まではたまたまお前達が彼女の攻撃条件を満たさなかっただけで、何時彼女がお前達を排除対象にするか解らない以上、お前達の安全の為にも倒さなければならないんだ」
「そう、人に見えるがモンスターには人の心は無い……あれが護っていたのは君達ではなく自分の縄張りに過ぎない、被害が出た以上もう倒すしかないんだ!」
「モンスターはグリモアを奪われた冒険者の成れの果てで可哀想な存在なのです……護りたかった人達の事を忘れ、怪物になってしまった存在なのです、だから倒す事がモンスターになった者への一番の救いなのです」
 村人達に向けたヴァルの、グリットの、サラサの必死の声が響く……そして冒険者達の熱弁が終わった時、話を聞いていた村の代表がゆっくりと口を開いた。
「あんた達の話はよく解った……」
「それじゃあ……」
 パァッと顔を明るくして向き合う3人、だが次に続いた言葉に彼等の期待は一瞬で地に落ちるのであった。
「……つまり、守り神様は街の奴等が山に入らなければ襲ってこない、ってな……さぁ、帰っとくれ」
 話はそれまでだと立ち上がろうとする村の代表達……だが、諦めきれないヴァルはしつこく食い下がる。
「モンスターの排除を認めてくれるなら、今後の村の安全は街と冒険者で見る! 街の奴等が山に入る時はお前達の許可を得る様にさせる、生活資材を採取する時は代価を払わせる! ……頼む、モンスターの排除を……」
「……帰れ」
 伸ばした手の先で、扉はバタンと言う音とともに閉じられた……

●交渉
「……と、言う事なのだが、以上の点を受け入れては貰えないだろうか?」
 街の人達の代表と交渉していた夜駆刀・シュバルツ(a05107)は、彼等に向かい次の様な要求をする……
 1、今回の事件を引き起こした者達への厳重な処罰。
 2、山から採取する資材、食料等は必要最低限で留める。
 3、上記の事をする場合、村人の生活を出来るだけ犯さない。
 4、獲た資源に対しては十分な謝礼を村側に支払う。
 ……彼の要求は以上の4点であったが、だが、それは街の人達にとっては受け入れられない物ばかりであった。
 特に最初の事件を引き起こした者達への処罰……彼等が何の罪を犯したと言うのだろう。
 彼等はただ山に入って食料や木材を採取しようとし、そして不幸にもモンスターに襲われのだ、いわば被害者であるのに、それを罰するのは只の私刑になってしまう。
 同様に復興途中の街の人達にとっては、高額な代価を払う事は大変厳しい選択となる……この先人口が増えればその分必要な資源は増え、その費用も馬鹿にならなくなるのだから。
「不利な提案だとは理解しているつもりだ……しかし全ては街の円滑な復興の為に、山の資源を円滑に手に入れる事に繋がると理解して欲しい。 ……頼む、村に住む者達への誠意を見せてくれ」
 そう言い頭を下げるシュバルツ……しばしの話し合いの末、依頼が解決後に改めて村と街とで話し合い条件を確認する事で場は纏まったのであった。
 一方、シュバルツが熱弁を振るっている同じ頃、街の自警団本部では銀閃の・ウルフェナイト(a04043)が団員達と打ち合わせをしていた。
「山を包囲する様に展開して……そう、ここに武器を運ぶ予定だ、剣よりも槍や斧が望ましいのだか……用意出来るか?」
 彼が準備していたのは大量の武器……それも目立つ様な物ばかりを用意していた。
 説得に向かった3人だったが、ウルフは恐らく失敗すると考えていた……もちろん、成功するに越した事は無いのだが、失敗しようが成功しようがモンスターは倒さなくてはならない。
 そして、説得が失敗した時……村人達にモンスターの恐怖を教える必要がある。
 その為の準備を彼は進めていたのだ。
「遅くなったわ……山の中の罠の配置、だいたいだけど調べて来たわ」
 そんな彼の元に、先に山へと潜入していた傷つきしも輝きを放つ翼・アイ(a02186)が手製の山の地図を広げながらそう話しかけて来た。
「使えそうなのは……ココと……ココと……」
「ココはどうだ? この場所なら弓で狙えるのだが」
 地図に記しを書き込みながら説明するアイに、ウルフが一点を指差しながら訪ねる。
「そこはダメよ、障害物があるし、誘い込むのには不向きよ……それならこっちの方が……」
 作戦について打ち合わせを進めるウルフとアイ……そんな2人に外で準備をしていた盾の戦友・メロス(a08068)が準備出来ましたと呼びかける。
「武器は全部荷車に積み込みました、こちらの準備は完了です」
 この後、ウルフとメロスの2人は商人を装い村へと近づく……村人達に武器を流し、それを取りにこさせ、モンスターに襲わせるのだ。
 失敗した場合も残りの仲間達と共に山の周囲に伏せ、周囲に街の自警団を配置し緊張状態を作り村の人達が自分達が設置した罠に近寄るのを待ち、その罠を遠隔で発動させモンスターに襲わせる……どちらもモンスターが現れた瞬間に待機していた冒険者による攻撃が開始され、村人への被害を最小限に抑えるこの2段構え……いや、説得も含めれば3段構えの作戦だ。
 確かに村人をモンスターに襲わせると言うこの作戦は、彼にとっても辛い選択だ……だが、これが村人達にモンスターの脅威を示し、村と街との軋轢を解消する最適な選択なのだ。
「みなさんの説得は……上手く行っていますでしょうか?」
 荷車を押しながらメロスが呟く……その言葉に、ウルフは眼前にそびえ立つ山を見上げるのだった。

●戦闘
「どうやら村の人達の説得は失敗した様ですね……」
 山の入り口で伏せていた白銀の戦乙女・ネイ(a06746)がそう呟く……モンスターの習性を話した今、ウルフが唱えた作戦の1つは使えなくなったであろう。
 何しろ村人達がモンスターが武器を持つものを襲うと言うのを知れば、用意した武器を取りに来る事は無いだろう。
 残るは、村人達が罠の元に近寄った時にそれを発動させるしかない……その為に、すでに街の自警団を山の入り口に配置してある。
 声を上げさせ、威嚇し村人達の注意を引かせる……同時にハイドインシャドウを発動させたアイとシュバルツが山に潜入し、罠を発動させる準備に入っている筈だ。
 自警団と争う為に山に入に入った村人達の一番近くのトラップを2人が自ら発動させる、それによりモンスターが近くに居た村人達に襲いかかる筈だ……その瞬間に待機していた冒険者が駆け寄り、村人達にモンスターの脅威をその身体で解らせ、倒す。
 彼女は……いや、彼女だけでは無い、冒険者達はそれぞれのポイントに伏せ、その瞬間を待っていた。
 ……そう、その瞬間を。
 その瞬間、彼女は弾ける様に飛び出す……凛とした声を奏でながら。
「戦乙女の名に賭けて……一歩も引く訳には参りません!」

「あれか……」
 山に潜む漆黒の双牙・コウ(a08201)の目の前には数人の村人達が……どうやら、自警団の登場に侵入に備えて巡回をしているのだろう。
 そんな彼等の側で、彼等が仕掛けた罠が発動する……潜んでいた2人の仕業だろう。
 突然の罠の発動に驚きの声を上げ、巻き込まれる村人達……そして、そこに影が舞い降りる。
 四足の獰猛な獣の身体で地を駆け、絶世の美しさを誇る女性の半身を持つその姿……そう、この山をテリトリーとし、村人達が守護者と崇めるモンスターだ。
 そしてそれは罠に巻き込まれ倒れる村人達の姿を見ると……威嚇の声を上げ、鋭い爪とその整った口元を歪ませ牙を剥き出しにしたのだ。
 そう、モンスターは、村人達の守護者は、殺意を感じさせる罠の発動に、それを仕掛けたと思われたその場に倒れていた村人達を攻撃すべき対象だと見たのだ。
「うわわわわ……た、助けてくれ………」
 ゆっくりと迫るモンスターの姿に、村人達が脅えた声を上げながらずりずりと下がる……だが、大柄なモンスターの歩みの方が速く、やがて追い詰めたモンスターは村人達の命の火を刈り取ろうと大きく手を振り上げた。
「野を駆けし銀狼よ……我らに勝利と言う名の祝福を………」
 その瞬間、祈りを唱えたコウが飛び出すと腕を大きく振る……すると振り抜いた先から円盤状の魔法生物が生み出され、今まさに飛びかかろうとするモンスターに切り掛かった。
 ……山に潜んだ彼は愛用の武器を持ち込めない為に、素手を振り抜く事によりリングスラッシャーを召還したのだ。
 幸いな事に魔法生物であるリングスラッシャーは武器の影響を受けない……次々と生み出されたリングスラッシャーは空を駆けモンスターを襲っていく。
「護るって決めたんです、何があっても! ……だから絶対、これ以上悲しむ人は作らないんです!!」
 素手やアビリティ、手袋等の武器に見えない武器を装備し山に伏せた冒険者達が村人を護るべく攻撃を加える中、麓より愛用の中華剣……九天応元雷声普化天尊(きゅうてんおうげんらいせいふかてんそん)を構え、鎧進化を発動させた北海黒竜王・オイスター(a01453)が駆け上って来る。
「オイスターさん!」
「もう終わりました……もう、休んでもいいのですよ、おやすみなさい……」
 メロスの声が響くなか、オイスターの剣が煌めく……同時に周囲に伏せていたコウ達と、オイスターと同様に山を駆け上ったネイ達冒険者達の攻撃も決まり、盛大な断末魔の鳴き声を上げるとモンスターは地に倒れる……
「銀狼よ……祝福を感謝する………」
 コウの祈りの声が、戦いの終わりを宣言したのだった。

●結末
 この後、村と街の間で話し合いが持たれる事になった。
 村人達に向けてモンスターが牙を剥いた事実は、モンスターを守護者と見ていた村人達の考えを改めるのに成功していた……ウルフの作戦は成功したのだ。
 村や街の代表者にヴァルやシュバルツが話していた資源採取の代価の支払いや自警団による村の防衛等も結果的に功を奏し、しばらくは条件の擦り合わせでギクシャクとするだろうがやがて和解出来るだろう。
 そして……サラサの提案によりモンスターの墓が作られた。
「困難は多くとも、それでも人は解り合える……これからは街と村、共存していく事が出来るだろう」
 埋められて行くモンスターの姿を見ながらグリットが呟く……ネイもまた、村と街の人達が話し合う事が出来てほっとした表情だ。
「それにしても……彼女は何故この山を護ろうとしたのでしょうか……確認する事はもう出来ませんが……やはりここに縁がある人だったのでしょうか……」
 そう呟く彼女に、コウとアイが神妙な表情をする……もし希望のグリモアが失われた時、自分達は……自分達もこうなるのであろうか?
「……ごめんね、あなたの想いは忘れないから………」
 涙が止まらないオイスターをメロスが優しく、そしてそっと力強く抱きしめた。


マスター:瀬和璃羽 紹介ページ
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作成日:2004/06/12
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