【川の都の詐欺騒動】薔薇の帰還



<オープニング>


「ふふふ、助かったよ……」
 念願果たし華麗な素敵復活を遂げたトム(自称ジュリアス)は薔薇を手に優雅に一礼することで、その男に礼とした。
 思い起こせばどっちが電波だかわかりかねるような集団に捕まった事から始まり、恐怖の擽り地獄――
 廃人に――元々ちょっと壊れ気味とはいえ――なりかけた怨み、はらさでおくべきかッテ奴だ。
「無茶はしないでよ?」
 男の横にいる少女が睨みを利かせた。
 バラを口にくわえポーズを取ったトム(ジュリアス)はびしっとポーズを決め直した。
「もちろんさ、ハニー」
 宙を真摯に見つめる美男子。
 ――やっぱあんまりわかっていなさそうだった。

 結構前に薔薇男が逃げたというか居なくなったという話を白髏の霊査士がしたとき、だからどうしたと冒険者達は返した。
 あの電波詐欺師から得られる情報はほぼ得た。
 お化け騒動の詐欺師は余程立腹したのか仲間のことをべらべらと喋っている。
 ならばあの男が逃げたところで充分彼は罪を償う拷問、もとい罰を受けたのだから良いのではないか。
「逃げただけなら良いのですが、性懲りもなく悪さをしているようデ――」
「じゃあ又とっちめてくればいいじゃないか」
「そうなんですヨ。既にその依頼で動いた方がいるんですネ。しかし彼らは酷い傷を負って返って来たのデス――どうやら目立つ彼の陰でちょっと黒幕サンが張り切って……要するに罠にはめられたのデス」
 ロウは困った様子を仕草で表すと、冒険者達を見渡した。
「冒険者の騙り商法が流行っていましてネ。冒険者を見たら街から追い出せ、ト。街中煽動されているようデ……一般人に手を出すわけにも行かず、彼らは予想外の展開に逃げ帰るしかったらしいデス。だから薔薇野郎の詐欺は未だ……何とか、頑張ってクダサイ」
 憮然という表現が一番だろう。
 ロウは冒険者達を適当に労った。

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参加者
求道者・ギー(a00041)
蒼然たる使徒・リスト(a01692)
不透明闘娘・ヒヅミ(a01874)
白いカラス・カイ(a02188)
吐血咲華・ハウア(a02232)
アフロ凄杉・ベンジャミン(a07564)
徹夜明け紅茶王子・デュラシア(a09224)
陽海兎・アルヴァール(a09304)


<リプレイ>

「あ、アレは何だ!?」
 丁度偶然お散歩中の中年が驚愕に腰を抜かす。勇気ある犬はけたたましく吠えた。
 昇る朝日の逆光を浴び、やってくるは!?
『最初見たときは、マイクが並んでいるのかと思った』 ――ガリクソンさん(62歳)
 ……あるんでしょうか、そういう音声拡張器。
 よくみれば謎の塊は奇妙な動きを見せている――
 本当にマイクなのだろうか、それとも謎のキノコなのか?
 否!
 アフロダンサーズだ! アフロダンサーズがラインダンスを踊りながら地平線の彼方から現れたのだっ!!

 すばばーん!!!(続く)


 出発前、
「……今回の敵はまた根本的に違う予感がするのだがどう思うかねロウ?」
 珍しくかなりの窮地に陥った求道者・ギー(a00041)の様子は非常に切羽詰まった物であった。
 そりゃそうだろう。
 気を抜けば今までずっと守り抜いてきた(とも思わないが)ナニでアレを越えちゃうワケだ。
「そうですカ?」
 だが相対する霊査士は根本的に価値観が違う。違うのだ、不幸なことに。
 ギーは目を瞠る。その時ちょっと離れた所で彼を呼ぶ声が聞こえた。
「ギーさまぁ!」
「あ、悪は此処まで迫っていたか」
 何の事やら、思わず彼は呻き、逃走した――あの走りは本気だ。
「ああ、ギーさま!」
 我先にと駆け付けた不透明闘娘・ヒヅミ(a01874)ががくりと項垂れる。
「逃げられましたネ」
「諦めません!」
 頭部が異様なことになっている霊査士が呟いた。強いて明言を避けるならなんか生まれそうな。
 しゃきんと背筋を伸ばし敬礼する勢いでヒヅミが立ち上がる。そのファッションは白いパンタロンにサイケな開襟シャツとサングラス――そしてもっさりとした見事なアフロ。
 事のはじまりはアフロ凄杉・ベンジャミン(a07564)が「如何に冒険者と悟られず街へ侵入するか」の相談中に言い出したことである。
「今回の依頼は冒険者と悟らせない事が肝心ネー。ミーはビューティホーでワンダフォーな作戦を思いついたネー!」
 用意された物は言うまでもないだろう。
 悪ノリして霊査士もそれに倣ってるくらいだ。
 題して『ベンジャミン・コシガヤとアフロダンサーズ』大作戦。
 思い切れず――いや、内心全然構わないのだが――涙を呑んでアフロ着用していない血と涙に濡れし純白の翼・カイ(a02188)は羨望と何やらが入り交じった目でアフロを見つめるのであった。

「これも依頼を達成するには必要なこと…………そうです。私の判断は決して間違っていない。何故なら……」
 ぶつぶつと一人の男が繰り返し呟いている――彼が蒼然たる使徒・リスト(a01692)だと誰が気付こう。
 一目で気づけたらそれは愛だと思う。
 リストは非常に冷静にそれを受け入れた。とても冷静に、納得の上で。
 されど実際行ってしまうと、吹っ切れる何かと同時にやはりちょっと心に引っ掛かる物がある。
 ――後悔……さて、はたしてそうなのだろうか。
 取り敢えず彼は自分を忘れることにした。
 その肩をヒヅミがぽんと叩き、晴れ晴れとした本当にいい笑顔を見せた。
 リストは微笑みで彼女の無言の励ましを受け止めた。――励ましだったのか念押しだったかはわからない。
 更に彼は良くも悪くも真面目であった。
「ではベンジャミンさん、私にアフロとダンスの極意をご指導ください」
「OK、親愛なるパパイヤ氏張りのダンスを目指すYO!」
 びしっと踊りながら宣言するベンジャミンの元――アフロダンサーズは結成されたのだった。



 さらりとその艶やかな金髪を掻き上げ、薔薇を片手に静かな青い瞳でじっと見つめる。
 深紅の薔薇をそっと彼は口元に寄せる。抜けるような白い肌と薄すぎず濃すぎぬ朱色の唇に、その色が映えた。
 形の良いその唇が、そっと囁きかける。
「僕がこの薔薇であれば貴女の傍にずっといられるのに……」
「まあ」
 相手は頬をこれ以上もなく赤く染め、そっと男の手をとった。
 詐欺師トム――容姿にだけは恵まれた男。
 何処かピントのずれた口説き文句はいつものこと。
 だがこういう男に引っ掛かる女性は大概顔がよくて逢い引きが刺激的ならなんでもいいのだ。
 甘いロマンスの夢を捨て切れぬ者、持て余す暇を埋めれる相手、彼ら詐欺師はそういう女性(男性)を狙い、深みに填め貢がせるのが仕事。
 奴は電波なくせに詐欺師としては不思議に才能豊かな男ではあった。
「わたくしもジュリアス様のことお慕いしておりますわ」
 女性は可愛らしく淑やかに微笑む。まだうら若き乙女の、大商人の娘。
 羽振りの良い父親と金をつぎ込まれて磨かれた教養高い娘。適齢期真っ直中、家柄もそこそこ、にもかかわらず組んだ縁談は全て破談していた。
「僕も薔薇も貴女の前では儚い物だ。この白い柔らかい手も、愛らしい頬も、狭いところに収まりきらぬ貴女自身も――僕からすれば全て新鮮な……奇跡ばかりだ」
「まあ……」
 令嬢は恥ずかしそうに片手で口元を覆う。その腕の太さはトムの太股並にあった。
 球体が何重にも連なるドレスを纏い、確かに狭いところに収まりそうもない。とんだ箱入り娘だ。
「引く……絶対引く……」
 アフロを乗せたまま女装中の炸裂紅茶野朗・デュラシア(a09224)がぼやいた。
 その姿もちょっときつい。
「ギーさま、何処行ってしまったんでしょうね」
 同行しているヒヅミが首を傾げた。衣装は先程と替わっていないので嫌と言うほど注目されている。
 しかし彼女は気付かずあれこれと思考するのであった。
「あ、詐欺師の奴、離れたぜ」
 デュラシアがヒヅミを振り返る。「おい」と再度声を掛け、やっとヒヅミは役目を思い出す。
「取り敢えずあの球……じゃない、あの人に話を聴くか?」
「いえ、詐欺師を追いましょう」
 急に仕事に目覚めたヒヅミはきりりと告げた。でもやっぱりアフロのままなのである。

 ずんずん踊り迫るアフロの群れに街は恐れを成した。
 つうか道行く人々は皆足を止め、じっと彼らを見つめている。
「……冒険者?」
 誰だかわからないリストが内心冷や汗をかく。
「み、ミーみたいな冒険者が、い、居る訳ないネー! 見た事あるカーイ?」
 自信満々にどもりながらベンジャミンが誤魔化す。
 ま、無いだろう、こんな冒険者というか一団。
「……まあ、良いけど」
 呆れる人もいる中お捻りを投げる者もいる。
「ふー危ないところだったネー。アフロが伸びるところだったYO!」
 大袈裟に汗を拭いつつ、何だかもうツッコミも無粋な気がする。
「やあ! この辺で怪しい冒険者が悪さをしてるようだけど、興味あるからどんな話か教えてくれないかな?」
 思考停止から約十秒、我に返ったリストが我を忘れたように問う。
 それでも律儀にベンジャミン仕込みのダンスを踊っているのだから凄い。フールダンス♪かもしれないが。
「んー、大体半月前から冒険者が武器売ったり、アンデッド避け売ったりしてたんだな。だけどソレは真っ赤な偽物。冒険者はここらで評判がすこぶる悪い商人と繋がって、劣悪な武器や聖水を売ったわけだ」
「何故偽物だと?」
「話を聞きつけたシヴェンさんが調査、検証したとかだよ。同じ商人として、放っておけないって」
「シヴェン……」
 あの男かとリストは心の中で呟く。
「ユー、ダンス止まってるYO! もっとHOTに!!」
 はい、と答えかけてはっと気付く。
 気付けばアフロ被って踊っているのは、ベンジャミンと彼だけになっていたのだ。

「世の中色んな人がいるなぁ……」
 陽灼兎・アルヴァール(a09304)はしみじみ呟いた。
 身につけていたアフロは荷物の中に押し込み、衣服も普段身に纏う物に戻す。
 普段身に纏う物――といっても少しだけ余所行き用だ。
 その衣装で彼方此方口の軽そうな者を探し、詐欺師の話を尋ねるのだ。どこぞの屋敷の使用人として。
「あのー」
 彼は目敏く道端会議の主婦達を発見した。
「最近凄い綺麗な人をよく見かけますよね」
 単刀直入に問い掛ける。
「そうね、シヴェンさんのところに出入りする方は、皆綺麗ですわねえ……最近リザードマン領が加わって更に交易が増えて、停滞気味だったこの街もまたちょっと盛り上がっているから、彼処もまたお付き合いを始めたようね」
「お付き合い?」
「ええ、彼らは大きめの街の各商人を繋ぐギルドを作っているそうよ。ウチの旦那がそういっていたわ」
 どうもシヴェンはその元締めらしい。
 ギルドというとどうしても巨大な縦の繋がりを思い浮かべるが、シヴェンのギルドはあくまで小規模で、但し有力な者達が集う「同盟」だと彼女は語った。
 そしてギルドのメンバーは皆「違う街」の商人だと。
「そのメンバーがみんな揃って綺麗……ってこと?」
「みたいだよ。信じられない話だけどね! まあ、シヴェンさんもかなりの色男だし、類は友を呼ぶというし良い目の保養だよ」
 そういって女性達は豪快に笑う。やあねえ、この人、とお互いを差して。
 小さく礼を言ってアルヴァールは其処を離れた。
「果てしなく、黒だよね……」
「誰が、黒だって言うの?」
 呟いたアルヴァールを嘲るような声が、背後からした。

「君の目は(美しい僕が映っているから)本当に綺麗だ……まるで神が一晩かけて作り上げた芸術品のようだ!(僕が)」
 ヒヅミはそんな脳内変換をした。
 流石にアフロは取り去り、ちょっと金のある女性を装って詐欺師に声を掛けた。
 デュラシアも乗り気だったし同行している。
 が、何を受信したのか詐欺師は綺麗すっぱりデュラシアを無視している。その額にはうっすらと汗が見える。きっと嫌な思い出があるんだろう。
「名を、声をお聞かせください、美しい人……僕は貴方の声が聴けるなら百日眠らず待ちましょう」
「えーっと」
「そ、そこのお方……ぐはあっ」
「きゃー!」
 答えかねてはぐらかしていたヒヅミの前に吐血咲華・ハウア(a02232)がよろよろと現れ派手に血を吐いた。
 べっとりと血のついた手で血の付いた詐欺師の腕を掴み盾にし、ぜえぜえと苦しそうに息を吐きながらもハウアは麗しく微笑んだ。
「お、お尋ねしたいことが……」
「ぼ、僕は無実だー!!」
 真っ赤な血を見ると甦る忌々しい記憶。詐欺師は確かにトラウマを植え付けられていた。
 そして何という運命の悪戯か(或いは作為か)その根元は確かに其処にいた。
 ある種の運命の絆かも知れない。
「み、つ、け、た」
「ひ、ひぃい!?」
 そこには燃える黒い暗い何かを背負っている男が居た。というか詐欺師にはそう見えた。医者は手遅れだろう。
 やっと巡り会えたね、カイは倒すべき敵を見つけて嬉しそうに微笑んだ。
「くるなああああ!!」
「あはは、まてえ、こいつう」
 そして懐かしい追いかけっこが始まるのであった。
「ぐはあっ」
 ハウアは関係ないところでやっぱり吐血した。

 アルヴァールはギーに軽く頭を下げた。
「どうなることかと……はあ、助かった」
 現実に憂い深い深い溜息をついて紅茶を楽しんでいたギーだったが、怪しげな雰囲気の――知った顔を見て、ひっそりと追いかけた。
 彼が追いかけたのはシヴェンの妹、リーン。護衛というには屈強すぎる男を二人付け、嗅ぎ回るアルヴァールに声を掛けたところを、ギーが「アルヴァールの使える家の主人である」として彼の行動を謝り、彼女を牽制したことにより事なきを得た。
「まあシヴェンは……黒幕、か」
 アルヴァールは聴いた話と彼の意見を踏まえ、ギーに語った。彼は考え込むようにして歩いていた。
 が。
「Hey、フレンドギー。ユーはどうしてアフロを着けないネー!」
 すっかり忘れていた。
「ギーさま!」
 見事な身のこなしで観衆かき分け駆け寄ったヒヅミにしかと手を握られ、ギーは逃げ場を失う。
 後ろにはいつの間にかアフロ装備のカイがいて目を光らせている。
 因みに詐欺師は何処かに隠してあるそうだ(何)
 ちらりと助けを求め視線を向けた先のリストは何を今更である。
 じりじりとアフロに迫られ、ギーは思い切ってヒヅミを振り払い逃走した。本日二度目である。
 だがベンジャミンは誓う。
 いつかギーのあの澄まし顔を、アフロで彩ってやろうと。
「Hey、最後の一踊り、coolに決めるYO!」
「よー……ちぇけらっ……ごばあっ」
 弱々しい動きでハウアはそれでもポーズを取り、同時に吐血という器用なことをやっていた――

「ご苦労様デス……燃え尽きてますネ、皆サン」
「うむ」
 無理矢理そういうことにギーは押し切った。
「癖になりそうだよ」
 アフロを手に言うアルヴァールに紅茶を淹れてやりながら、デュラシアも「たまにならな」と女性のドレスを見つめた。おいおい。
「…皆が見ていない所でいいからこっそり被ってくれないかなぁ…ギーさま……」
 アフロを手に未練がましくヒヅミはギーに電波を送ると、彼はびくりと身体を振るわせた。
 酒場の端ではリストが孤独に燃え尽きている。
「新しい自分が見つかったか? いえいえそんな事は……」
 全て希望的観測である。

 件の薔薇詐欺師はとうとうトラウマがぶり返し、あっさり黒幕に捨てられたという話である。
 詐欺事件完全解決の日は、未だ遠い――


マスター:神崎無月 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2004/06/16
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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