リョウコの誕生日 〜『涼』をお届けに〜



<オープニング>


「ふ〜、あっついわね〜。冷たい水か何かもらえるかしら?」
 酒場へとやってきた無双華・リョウコ(a90264)は、どうやらトレーニング帰りらしく汗ばんでおり、道着も所々汚れていた。
「最近は日差しも強くなってきましたしね、外でトレーニングは大変でしょう」
 水を差し出しながら居合わせた真実求む霊査士・ゼロ(a90250)は扇を取り出してリョウコに風を送り始める。ありがとうと水を飲みながら、リョウコはばっさばっさと道着を羽ばたかせて風を取り込んでいた。その行動に色々な意味で酒場の注目の的だ。
「はしたないですよ。ただでさえリョウコさんは刺激的な格好をしているのですから」
「そう? 動きやすくていいじゃない。女性の肌を見たいと思うのは男性の本能みたいなものだけど、その心で見えるのは所詮表面だけだしね」
 クスリと笑いながらリョウコは道着の袂を直す。どうやら巧みな手の技で、大事な所はしっかりガードしていたらしい。
「そういうものですか。そうそう、そんなに暑いのでしたら川にでも遊びに行ってみてはどうですか? この扇は竹で出来ているのですが、ちょうど竹林の近くに川が流れている所があるそうですよ」
 水遊びで涼むついでに、涼しさを得られる扇でも作ってみてはどうかと言うゼロ。それを聞いてリョウコは小さく頷く。
「そうね、機会があれば汗を流しがてら行ってみるわ」
 リョウコはそういって酒場を後にするのだった。

「さて皆さん、話はよろしいですか」
 リョウコが去った酒場でゼロは冒険者たちに向き直る。待ってましたとばかりに冒険者たちもゼロを見る。どうやら何か企みごとがあるようだ。
「川は子供でもおぼれない程度の深さ、清らかな流れで魚も居るようです。川遊びをしてみたり魚を捕ってみてもいいかもしれません」
 ゼロはさらに周囲の状況について説明を加えていった。
「川の片岸は竹林になっており、竹を得ることができそうです。先の話にも出たように扇であったり、竹細工なんかを作れるかもしれませんね。対岸は森になっており、木の実やキノコなどを得られそうです」
 料理を作るのも良いが、足りない材料は街で得てきた方が良いだろうとゼロは言う。
「そうそう、街といえば近くの街では織物が盛んらしく、着物や水着であったり、汗や水浴び後の為のタオルなんかも質の良い者が手に入るかもしれません。もし希望があれば覗いてみるといいでしょう」
 状況を説明し終えてゼロは一つ息をつく。そして再び口を開いた。
「それでは、リョウコさんの誕生日……涼しさを届けると共に、お祝いしてあげてください」
 ゼロはそう言って、楽しみですねと微笑むのだった。


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参加者
NPC:無双華・リョウコ(a90264)



<リプレイ>

●清涼なる流れと共に
「あら、皆どうしたの? 何か催しごとでもあるのかしら?」
 とある川原を訪れた無双華・リョウコ(a90264)はきょとんとしてそう言った。そこには何人かの冒険者が集まっており、何かを待つようにしながらごそごそ相談していたのである。
「いつものありがとーを込めてお祝いするなぁ〜んね!」
 リョウコの到着に気付いたリリカル武闘少女・ミオ(a36452)が慌てて駆け寄り、リョウコの手を引いて皆の元へと連れてくる。一同はそれを拍手で迎えていた。
「リョウコさんも25歳かぁ……この一年、四捨五入すると30代って言われると思うけど頑張ってね?」
 しみじみと頷きながら翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)がリョウコの肩をぽんぽんと叩く。それを聞いて白鴉・シルヴァ(a13552)は(「お姉さん好きの俺から見るといい年齢だ!」)と考えるが、女性に年齢の話をするのは失礼かと思い、口を噤んでいる。
「そっか、私の誕生日を覚えていてくれたのね、みんなありがとう」
 自分の誕生日を祝おうという皆の考えに気付き、リョウコは微笑む。
「褒め言葉として受け取っておくわ。……年齢を重ねるってことは、ステキなことなのよ」
 ナタクとシルヴァに向けて、リョウコはバチッとウインクして返すのだった。

「リョウコさん、お誕生日おめでとうにゅ」
「水着に着替えてみんなで遊ぶにょ」
 衝撃の弾幕少女・ユーロ(a39593)と嵐を呼ぶ魔砲少女・ルリィ(a33615)がそれぞれリョウコの手を引いて設置されたテントへと導く。リョウコは川遊びくらいなら道着のままでも構わないと考えていたようだが、折角なので水着になってもらおうということらしい。
「可愛さだけでなく、セクシー路線のデザインで! リョウコさんに似合う、動き易そうなのを選びました」
 そこで水辺で涼を取るならコレでしょう、とばかりに百合の舞刃・クーヤ(a09971)がプレゼントとして白のビキニを手渡した。
「あら、こんなの着たことないわね……」
 良ければ着替えも手伝うなどと言いながら、水遊びをするつもりの女性達はテントの中へと入っていった。

「それでは、今のうちに準備しないと……」
「リョウコちゃんとみんなが喜ぶようにがんばるなぁ〜ん」
 種の探求者・ベアトリス(a31484)とミオは山菜やキノコを採取すべく森へ向かう。
「涼しい感じの会になるといいね。……力仕事をしておいたほうがいいかな」
 蒼い天狼星・フィオ(a50649)はそう言ってシルヴァやナタクと共に竹林へと出発した。竹を取ってきて何か作ったりするつもりらしいのだ。

●天然果実大豊作
「まずは川で鍛錬か……うぅ、それにしても皆は女性らしい体つきをしているな」
 主に胸辺りを気にしながら舞闘漢女・コノオ(a15001)は小さく呟く。見れば確かに見事なスタイルの女性冒険者たちが水着で川に入っており、眼福という他ない。
「……川はいいです。……足がつくから溺れません」
 黒兎は密かに哂う・ウヅキ(a03612)も黒のビキニで川へと入水していた。こんな時でも外さないメガネをちゃき、とかけ直す。
「リョウコさんを捕まえるにょ」
「追いかけっこするにゅ」
 ルリィとユーロがばしゃばしゃと水を蹴立ててリョウコを追いかける。リョウコは「捕まえられるかしら?」と逃げ出した。
 ばっちゃばっちゃと走っては避け、飛んだり跳ねたり……そんな様子をクーヤは川辺に腰掛けながら眺めていた。
「そこっ!」
 ゆさゆさゆさ。
「う〜、やっぱり素早いにゅ」
 ぷるぷるぷる。
「……ふぅっ、二人がかりだと危ないわね〜」
 たゆんたゆんたゆん。
「……流石だな」
 何というかこの3人が水着で走り回ると、揺れる揺れる。コノオは鍛錬すれば自分もああなれるだろうか、と溜息を漏らした。
「……なら、加勢しますよ」
 自分の方にリョウコが逃げてきたタイミングを見計らってウヅキが飛びかかる! リョウコに抱きつきながら思い切り胸をわし掴みにする。柔らかな果肉が指の間から溢れ出るようにむにゅっと形を変える。
「っ!? 3人がかりは卑怯で……しょ!」
 一瞬怯むリョウコだが、振り向きざまに肘鉄をウヅキの脳天へと叩き込む!
「これも……お約束……」
 ウヅキはぶくぶくと水に沈んでゆく。だがその時、リョウコの背後に気配が迫る!
「尻尾もふもふにゅ!」
 追いついたユーロがリョウコの狐尻尾を掴み、もふもふと撫でたのだ。リョウコがびくんと身を震わせる。
「ちょ……どこ触って……っ」
「つかまえたにょ!」
 怯んだ隙を見逃さず、ルリィがタックルを仕掛けるようにリョウコに突っ込み、腰に抱きつくようにしがみつく。そのままスリスリと肌をすり寄せていった。
「隙ありですよ〜」
 揺れる果実に辛抱できなかったか、クーヤも飛び込んで胸に突撃していった。ばしゃばしゃと激しい水飛沫が上がる。
「準備できたよ」
「我々も混ぜてもらいましょうか」
 リョウコのピンチを察してか、愛と情熱の獅子妃・メルティナ(a08360)が川に飛び込んで仲裁に入る。ずばしゃーんと一つ大きな水柱が立った後、一同は川の中で座り込んでいた。
「ワナを仕掛けてきたから、魚やウナギが捕まるハズ。という訳でボクも皆と一緒に遊ぶよ」
 青い水着に身を包み、早速仲間達に水をかけ始めるナタク。負けていられないとウヅキやユーロも反撃を開始する。

 そこから少し離れて、フィオとシルヴァは魚捕りに精を出していた。時々、楽しく遊ぶ仲間達の姿を眺め……。
「いや、別に女性が多いからとかそういうアレじゃなく……」
 シルヴァは何となく、焦って否定するのであった。

「ふぅ、もう十分でしょ」
 そろそろ上がろうということで、テントに戻る女性陣。ウヅキの用意してくれたらしいタオルを受け取って髪を拭くリョウコに、フィオは道着をプレゼントする。
「替えの道着は多くても困らないと思うし」
 ありがとうと答えるリョウコに、ミオもプレゼントを差し出す。
「リョウコちゃん、おたんじょーびおめでと〜なぁ〜ん!」
 これからもずっと元気なようにお守りだと手渡された手甲を受け取って、リョウコはありがとうと微笑むのだった。

●研ぎ澄まされし
 ざわざわと竹の葉が風に揺れる。リョウコはその中で構えを取り、ゆっくりと息を吐き出していた。
 集中され、高められたリョウコの気迫が近くに居るだけでも感じられる。時折落ちる葉さえもリョウコを避けているのでは無いかと思えるほどだった。
「トレーニングに付き合おう、武道家同士だから練習しやすいかな」
 そこに踏み込むフィオ。リョウコは頷いてフィオの方に向き直り、小さく一礼した。
 ざっ!
 飛び込むフィオをリョウコはその場で迎え撃つ。振り下ろされる大鉄球をリョウコはギリギリで回避した。ずしんと一撃が大地を叩く。
「くっ!」
 フィオが空振りの大鉄球を振り上げる間にリョウコは懐に飛び込み、びびびっと寸止めの掌底を三発繰り出した。牽制に出されたフィオの蹴りを、辛うじて足で受けてその反動で飛び退る。
 そうして二人が組み手を行っていたので頃合を見計らい、樹霊・シフィル(a64372)が声をかける。自分に体術を指導して欲しいということだ。
「では参ります。胸をお貸しくださいませね?」
 言って駆けるシフィルは拳を握り、突きを繰り出す。紋章術士にはエンブレムブロウというアビリティがあるが、術手袋で繰り出すなら丁度こんな感じだろうか。
 リョウコは両手でその拳を受け止め、受け流すようにして間合いを詰める。
「悪くないわ、あと必要なのはもう一歩を踏み込む勇気と……」
 言いながらびっと腹部に膝蹴りを寸止めで出した。
「接近戦では相手の反撃にも注意しないとね」
 なるほどと頷くシフィル。そのまま何度か互いに攻防を入れ替えながら指導が続いた。
「竹林の中ですと、修行という雰囲気が出ますわね。心洗われる心境にございます」
 シフィルはそう言って、リョウコとの鍛錬を終えるのだった。
「なるほど、リョウコさんの型に無駄は少ないようですね」
 それまでの動きを分析していたとメルティナが口を開いた。技の姿勢や目線、呼気と吸気と動きの組み合わせ、緩急や力の強弱にクセが無いかを調べていたのだという。
「ほぼ型通りということでしょうが……故に意外性への対応や、柔軟性には欠けると考えられます。不規則な動きで行きますので、一つ一つ確認しましょう」
 ゆらり、とわざとゆっくり歩みながらメルティナはリョウコに向かう。リョウコは息を整え、構え直した。

「久しぶりに手合わせさせていただくとしよう」
「今日は随分と盛りだくさんね」
 一通りのトレーニングを終えて涼んでいた所へコノオが現れる。やれやれと立ち上がるリョウコに、コノオが拳を繰り出した。
 がっ!
 拳と拳がぶつかる。
「……随分と無礼なことね」
「武道家なら拳で語ればいい、それで十分でしょう!」
 リョウコの拳を肘で捌き、コノオは指突を繰り出す。頬を掠めるもリョウコは深く踏み込んでかわし、みぞおちに前蹴りを叩き込んだ。
「くっ!」
 だがコノオは突き出した方とは逆の手でそれを受け止めてダメージを防ぐ。そこから踏ん張って蹴りを返すが、今度はリョウコがそれを腕でガードする。
「確かに、十分ね」
 リョウコはそう言って微笑む。
「組み手の相手が必要ならばっちこーい」
「楽しそうな鍛錬やってるね」
 そこにミオとナタクも加わる。こうなったらもうとことんやるかとリョウコは息を吐き、楽しそうに微笑むのだった。

●よく動き、よく食べて
「採ってきたキノコと山菜はそこにありますよ」
 皆がトレーニングしている間にベアトリスは料理の準備を行っていた。山菜のおひたしやゴマ味噌和えなどの料理を作りながら、簡単にお皿や食器の用意も忘れない。
「これを竹筒に入れて、炊き込みご飯にして皆で食べるにゅ」
 ユーロは山菜とキノコのご飯を準備し、ルリィは魚を焼き始める。いい香りがし始めた頃に、リョウコたちも戻ってきたようだ。
「へぇ〜、沢山用意してくれたのね」
 感嘆の声を漏らすリョウコに、もうちょっと待ってくれとシルヴァが急いでいた。何からフィオと協力して、竹を組んだり水を汲んだりしている。
「いきます〜!」
 さらさらさら、と割られて半円になった竹の上を細い麺が流れてゆく。水の流れに乗ったそれを、すかさずウヅキがキャッチした。
「ふふふ、涼しげで……いいですね」
 見た目にも口にも涼しい料理ということだった。なかなか凝った趣向にリョウコも目を丸くする。
 メルティナが皆に飲み物を配り終え、料理の準備も整ったようだ。
「リョウコさんおめでとうございます」
 さぁどうぞとベアトリスが大皿を広げ……、一同は頂きますと料理を口へ運び始める。
「どんどん流すよ」
 任せとけとフィオが水と麺を流し、皆は競って箸を伸ばす。そしてご飯も炊けたようだ。
「流しそうめんも凄いけど、こちらも凄いでしょ?」
 竹を使った炊き込みご飯。ナタクの差し出すそれはウナギ入りだ。竹の爽やかな香りとウナギの味が閉じ込められて合わさり、見事な出来栄えである。
「おかずに川で取れた魚の塩焼きなんかも皆で食べるにょ」
 シルヴァとフィオが沢山取ってくれたのだとルリィは焼けた魚を配り始める。こんがり焼けた魚は塩味で十分な味わいだ。
「いっぱい採ってきたんだなぁ〜ん」
「あぁ、そちらのキノコはアカグドンダケといいまして、傘の色がサルグドンの顔の色のようだということから名づけられたそうです。毒々しい色をしておりますが毒は無く、煮込むとなかなかよいダシが取れるそうで、地方によっては干したりするところも……」
 山菜やキノコが好評だったので、採ってきた甲斐があったとミオとベアトリスは喜ぶ。ベアトリスにいたってはついつい雑学を口にしてしまっているようだ。
「よく動いてよく食べれば、健康的な肉体を保てるというわけだな」
 コノオも食事を頂きながら頷いている。(「少しは私も……育てばいいのだが」)と胸中だけで付け加えて。
「そうそう、竹で簪をつくってみたんだ」
 頃合を見計らい、シルヴァはリョウコにプレゼントだと竹の簪を渡す。リョウコは受け取って早速髪に挿した。
「本日は、お誕生日おめでとうございます。また華麗な足捌きを拝見しとうございますので、ご一緒の際はよろしゅう願いますね」
 シフィルはリョウコに祝福の言葉を送りながら、鉢巻をプレゼントするのだった。

「これが夏のいい思い出になればいいですね……」
 こうして宴も一通り終わり、後片付けの中でベアトリスは呟く。それを聞いていたリョウコはにっこりと笑顔を見せた。
「もちろん、私にとってはとてもいい思い出だわ。本当にありがとう」
 その言葉を聞けた冒険者達も、良い誕生日会を開けたと嬉しく思うのであった。

 (おわり)


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