氷の大陸コルドフリード〜蒼い雪の解ける頃〜



<オープニング>


「──もう夏ですし、涼しい所に行きたいと思いませんか?」
 コルドフリードと呼ばれる大陸がある。
 タロスと呼ばれる鋼の種族が住まう北の地であり、先日までドラゴンロード・ブックドミネーターが座していた、凍てつく氷の大陸。
「……そこの調査がこの度円卓の提案で決まりまして。皆さんに向かってもらえないかなーと思う次第です」
 まるで茶飲み話のような切り出し方だったせいか、縁側の霊査士・テスリア(a90293)の言葉の意味を、集まった冒険者が理解するまで五秒ほど。
 ──なんで窓際……いや、テスリアがそんな重要連絡を担当?
 ──きっと一番暇だったからでござるなぁ〜ん。
 そんなひそひそ話に半眼を向けつつ、テスリアは依頼の話を語り出した。

「コルドフリード大陸には今現在グレートツイスターがある為、ランドアースからインフィニティゲートを通って直接現地に入れます」
 移動のための足が確保されてる上で──と、テスリアは指を一本立ててみせた。
「やるべきことは大まかに分けて三つぐらいありますが……やっぱりまずは、ドラゴン界跡の調査ですかね。皆さんがブックドミネーターと戦ったあの辺りには、未だに配下のドラグナーが潜んでいるようなので」
「ドラグナー? ……ドラゴンは?」
「とりあえず、周辺に姿は見られないようです。ブックドミネーターの死亡と同時に消滅した可能性もありますが……」
 冒険者の問いにテスリアは首を振ってみせた。
「最初のドラゴンロード・ヴァラケウスの時も逃走したドラゴンは居ましたしね。……確認はしておいたほうがいいでしょう」
 告げながらテスリアは、では二つ目です、と指をもう一本立てた。
「ドラゴン界跡の調査も大事ですが、その周囲の氷原も調査しないとなりません。円卓でも周辺を含めて色々調査したいという意見が出てますし……」
 グリモアだって見つかってないんですよね……と、テスリアは眉を寄せた。
「まぁ……氷原を調査って言ったって広いですからね。漠然と探しても何かが見つかる可能性は低いでしょう。何を探すのか、どうやって探すのか……ある程度目星をつけて動いたほうがいいでしょうね」
 大丈夫とは思いますが、巨大トドやアザラシの晩飯になってしまわないように──との言葉と共に、テスリアは三本めの指を立てた。
「で、三つのうち最後の一つ。タロスという種族についてです。ドラゴン界があった場所は、コルドフリード探索隊が最初に上陸した──つまりデュンエンさんの住んでいた居住区とは、かなり離れた位置にあります」
 だから彼の集落には行けないんですが、とテスリアは告げる。
「ただ、話によると、デュンエンさんの集落がタロスにとって唯一の住処というわけでは無さそうなので──今回の調査範囲に住むタロスと出会う可能性もあります。……というわけで、もし彼らと出会った場合の対応も考えなくてはなりません」

 一通りの連絡を終えると、テスリアは息をつく。
 それから、探究心も新たに話を聞いていた冒険者たちに、重々しく結びの言葉を告げた。
「コルドフリードについてはまだわからないことだらけです。ですが『冒険者』を名乗るのならば、こうした未知の大陸を探索し解き明かす行動こそ、その本分とも言えるでしょう……」
「「おお〜」」
「ちなみに僕は留守番ですが」
「「…………」」
「良い報告を待ってますよー」


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参加者
NPC:ヒトノソ忍者・クーニャ(a90310)



<リプレイ>

●グレートツイスター
 ドラゴンズゲートを抜けた瞬間、砕けた鏡を敷き詰めたような眩い氷原がカズハ(a01019)の瞳に飛び込んでくる。
「この地でも空の色は……同じなんですね」
 故郷とは違う色の大地と、同じ色の空とを視界に収め、シリル(a06463)は白く色付いた吐息を漏らした。
 ──ランドアースから遥か北に位置する氷の大地コルドフリード。この地を支配していたドラゴンロードが打倒されてから、一ヶ月。
「やっと、まともにコルドフリードの大地を踏めましたですぅ♪」
 今回この地に刻むのは、戦う為でなく出会う為の一歩。その事実に顔を綻ばせるペルレ(a48825)へと目を細めながら、キール(a58679)は提案の声を挙げた。
「まずは広さを知るために、氷原の周囲を一周するのはどうでしょう?」
「ぐるっと回るのは賛成……だけど、どれだけ時間が掛かるかわかんないね」
 シュウ(a00014)の眼下には目印一つ無い広大な氷原が広がっている。
 時間を掛ければ一周可能かもしれないが、集まった者の中には他の依頼への参加が決まっている者も居る。グリモアガードの護衛士も居る。月単位でランドアースを空けるような探索は難しいだろう。
「でも一周は無理でも、方角ごとの手分けは必要だよね?」
「広さから考えるとな。俺は南に向かいたいと思う」
 リュー(a74392)の言葉に、カラート(a73596)が真っ先に立ち上がる。
 それを合図に、サラ(a65060)やラズロ(a65111)も遠眼鏡を手に立ち上がった。
「ならば、俺は東に向かおう。未発見の遺跡があればいいが」
「未知の大陸での冒険……心躍りますね」
 冒険者達が思い思いに目的を確認して、グレートツイスターから降りていく。
 麻袋にアルコール、と準備を整えたディオ(a35238)も、南西へ視線を投げた。
「私達が作る地図が、いずれ役に立つといいけれど」

 彼女の言う通り、ここは皆にとって未だ地図無き未知の世界。
「できれば……まず海岸まで出て……」
 アルム(a12387)やリッケ(a66408)のように海岸沿いを当たろうと思っていた者達も、最寄の海岸に見当が付かず、頭を悩ませていた。
 【北縁】の一人、チグユーノ(a27747)も、周囲を眺めて僅かに眉を寄せ、同じ【北縁】のラトゥラーラカ(a62851)に瞳を向ける。
「山でも何でも良いので、目印となる物が欲しい所なのですけれど……」
「……見えませんね。とにかく最北目指して北へ向かうべきでしょうか?」
 ──単独の者は誘い合って、チームを組む者は仲間同士で。
 計画を練る冒険者に混じって、リィム(a24691)も旅団・夢幻のつばさの団員達に声を向けた。
「オレ達も、特務がついた場所の対岸を目指すつもりだったが……よく考えると、特務がこの広い大陸のどこに上陸したか詳しくわかんねぇんだよな」
「じゃあ、子供の頃冒険したみたいに当ても無く歩くのもいいんじゃないかな」
 それがボク達らしいよ、と笑うフレア(a26738)に、テルル(a24625)と、フォー(a60308)も頷きあった。
「準備は万端だしな。犬小屋……いやテントに、ぬいぐるみ☆りぃむに──」
「タロスへの友好のしるし、冷凍バナナも持ったよ〜!」
 ……意外と、何かを見つけるとしたらこういう風に冒険を楽しめる面々なのかもしれない。そんな彼らを見て肩の力を抜いた冒険者達が、三々五々散っていく。

●出発
 晴れて尚、肌切る冷気が周囲を取り巻いている。
 久方振りとなる氷雪の大地を踏みしめ、カルア(a28603)は【夕焼】の名で行動を共にするユユ(a39253)に顔を向けた。
「個人的には魂の石を奪取した遺跡を調べたい。石が空から落ちて来た、なんて言葉が気になるし」
「カルアちゃんが行くならユユも着いてくよー」
 ……ただ、霊査士の言からすると、距離的に厳しいかもしれない。
「その場合は、大人しくドラゴン界跡の調査に向かいましょうか。ゲートの可能性もありますし」
「確かに、ヴァラケウスの出現位置もゲートでしたしね」
「フォーナ様はゲート無いって言ってたけど……可能性に賭けたいね」
 同じく【夕焼】のカロア(a27766)の言葉に、ニール(a66528)とリアラマ(a66139)も頷く。
 その言葉を聞いていたリナリー(a59785)が、ピヨピヨ(a57902)達【南の翼】──ウィアトルノ護衛士の面々を振り返った。
「ゲートが無ければ、行き来に使える飛行遺跡のようなものがあればいいのですが」
 ……何しろグレートツイスターは、元々、彼らの管轄するワイルドファイアの一角にあったゲート。出来れば元の位置に戻したいのが護衛士に共通する気持ちである。
「待ってて下さいね、グレスター。できるだけ早くワイルドファイアに戻せるように……」
 頑張りましょう〜、と寒風吹き荒ぶ大地へと歩き出すミライ(a00135)。
 護衛士を見送るグレートツイスターに一度振り返って、ワスプ(a08884)が呟いた。
「ゲートや飛行遺跡か……問題はどうやって見つけ出すかだが」
「う〜ん……タロスさんに聞いてみるのが一番だと思うんだよぅ」
「うん、この地の住民に聞いてみるのが一番いいかもしれない。野生動物も含めてって意味でね」
 シルファ(a00251)とラトレイア(a63887)が歩き出すと、導きの翼、の名で知られる護衛士を証す方位磁石を握り締め、アガート(a01736)もそれを追う。
 そして……己の崇める水神に祈るように、ググリム(a61023)が呟いた。
「神の恵みとは縁遠い、厳しい大地……行きますか」
 探索は、ここからが本番だった。

●ドラゴン界跡地
 ブックドミネーターが築いたドラゴン界の位置は、グレートツイスターからは北東に当たるだろうか。
 近づくにつれ、バスマティ(a43726)が警戒の視線を走らせていると……前を歩いていたウサギ(a47579)が、声を上げた。
「ドラゴンの遺骸……! ここで間違いないのですよっ!」
 ──恐らく先日の決戦時、ドラゴン界突入前に冒険者達が墜としたものだろう。
 半ばまで雪に埋もれた竜の骸が一つ、二つと転がる先に向けて、レム(a35189)は視線を厳しくした。
「ヴァラケウスのドラゴン界が消滅した跡に似てますね……」
 ドラゴン界跡地は彼女の言葉通り、氷上をスプーンで掬ったようなすりばち状。
 半球に抉れた跡地へとざざっと滑り降り、ゼオル(a18693)は周囲を見回した。
「間違いなくドラゴン界は消滅しているようですな。ドラグナーが留まっているとすれば、此処に何かがあると勘ぐる所ですが……」
「けど、ここに来るまでで一度もドラグナーとは……」
 会わなかった、とブルーム(a74314)とアーク(a74173)が顔を見合わせる。
 その姿を横目に、跡地の中心部らしき場所へ近づいたショウ(a41422)が、雪避けに巻いた布の奥で目を細めた。
「……ヴァラケウスのドラゴン界には遺跡や地上絵のような物があったはずだが……」
「ここには壁画の一つも無──」
 ふと、言葉を止めたリゼル(a22862)が、己の足下に視線を落とす。
「……何だ?」
 広範囲に渡るクレーターのせいで氷は大きく抉れている。
 その、削れて薄くなった氷の下にあるのは土では無かった。ヨアフ(a17868)の目に映るのは、未だそれを覆い隠そうと立ち塞がる氷のカーテンと同じように、あるいはそれ以上に生命を感じさせない金属の煌き。
 自分達の知識の中で一番近いのは──、
「ギア、か……? 探索隊が使ったような移動遺跡でも下にあるのか? いや……」
 思案の色を深くしたティキ(a02763)の言葉を引き取って、フリッツ(a66410)が独りごちた。
「確か……フォーナ様曰く、この大陸全体が人工の遺跡だとか。もしそれが本当ならその遺跡の中心はどこに当たるんでしょう……」
 ともあれ、とてつもなく大きな何か、あるいは多くの何かが下にあることは間違いない。
「……まだ氷はかなり分厚いですね。果たして、溶かすことが出来るかどうか……」
 カイン(a07393)が試しに邪竜の炎を叩き付けるものの、一人二人の力ではどうにもなりそうに無い。
 【星旅】の一員として周囲を探っていたレジィ(a18041)も、爪先で地を叩いていた。
「この分じゃ案外、ドラゴンも氷の下に潜ったのかもね」
「情報を得る為にどうにかドラグナーは見つけたいですね」
 探すのに土塊の下僕をばら撒いてもすぐ消えてしまいますし、とトワイライト(a43304)が肩をすくめたその時──遠くで剣戟の音が響き渡った。

 ばちっ……とシアン(a56594)の雷刃が氷の上で爆ぜるのと。
 リキア(a41587)の掲げた焔が、人ならざる異形の身を焼き尽くしたのはほぼ同時。
「キア、シアン……大丈夫か?」
 リズロア(a46019)は二人の傷を癒しながら、氷原に膝をついた半人半獣のドラグナーへ視線を投げた。
 ──こいつが、今回の探索で冒険者が初めて接触したドラグナー。引き出せるなら出したい情報はいくらでもある。
「お前には聞きたいことがある。……大人しく吐けば、楽に死なせてやるよ」」
 音を聞いて駆けつけたテンユウ(a32534)が拳を突きつける。
 その言葉にドラグナーは顔を上げ……こんな言葉を漏らした。
「……吐け?いいぜ、何を聞きたい?」
 予想外にも程がある返答に、ラス(a52420)は一瞬だけ、戸惑いの色を隠せなかった。
「聞きたいのは──カダスフィアフォートの事や、一般人がキマイラ化している原因、それにヴァラケ──」
「──さぁ、何を聞きたい? 『我々は話がしたいだけです』なんつって差し出してきた鉄クズの手ぇぶった切った時の話か? 生意気にもオレ様に血ぃ流させた鉄クズ共を叩き壊した時のことか? ……くくく……何でも話してやるよ……!」
 ……そもそも、ドラグナーは最初からラスの言葉など聞いてもいなかったのだろう。
 くくく……と、低い笑いを漏らすドラグナーからは、明らかに、冒険者の話をまともに聞こうという意志が感じられない。
 その、全てを呪うような声に、ユリア(a41874)は顔をしかめずにはいられなかった。
 ……誠意ある説得だろうが、魅了の矢だろうが、こいつには何も意味は無いだろう。
 ドラグナーの、耳障りな笑い声は、息の根が止まるその瞬間まで、ずっと氷上に響き渡っていた。

 その一方、そこから離れること十分ばかりの場所では、ハンゾー(a08367)とハヤテ(a59487)が、氷原を彷徨う異形の影を追っていた。
「ふむ……あても無く彷徨っているようでござるな」
 ──二人が尾行を開始して、既に二時間。巨大な角と四本の腕を持つドラグナーは、何かを探すでもなく、行き場を無くした子のように彷徨い続けているように見える。
「……はてさて、このままでは埒があかんの……」
 こちらから仕掛ける……とのハヤテの視線を受け、後ろで【氷龍】のメンバーに合図を送っていたサタナエル(a46088)が杖を一閃させた。
 ──刹那、虚無の繊手がドラグナーの右足を握り潰す。驚いて振り向く半人半獣の異形へ、と二人の忍びが駆け出し──五分足らず。
「……援護は必要ないみたいね?」
「動けば少しは暖かくなると思ったのにー」
 離れた場所から支援するつもりだったイツキ(a00311)やイルハ(a27190)が構えた時には、既に【氷龍】の面々はそのドラグナーを捕らえていた。
「……その程度の力なら、指揮を取る者も高が知れるな」
 挑発するようなゼロ(a50949)の言葉に、脚を潰され腕を落とされ身を蜘蛛糸で絡めとられながらも、ドラグナーは周囲に呪わんばかりの視線を投げる。
 ……貴様らと語ることなど無いとばかり口を閉ざす彼に、エルサイド(a41993)は低い声で問うた。
「貴方に問いたいのですが……親玉が散ったのにここで何をしているんです?」
「散った? ……戯言を……例え相手が神であろうと、かのドラゴンロードを傷つけ得る存在などこの世にありはしない……」
 知らないのか認めないのか、このドラグナーはロードの死を信じてはいないらしい。
「どうする親父殿、こいつからは話を聞く以前の問題だと思うが……」
 再び口を閉ざしたドラグナーをソルレオンの瞳で見据え、ヴァイヤ(a74605)は傍らのスルク(a11408)へ向き直った。
「親父殿言うな。……それはともかく……やむを得んか」
 このドラグナーを生かしておくわけにはいかない。
 許してくれなどと言うつもりはない──と、スルクは短剣を……一閃させた。

●北
 氷原の探索を決めた冒険者達が、四方に散っていく。
「こういうの、まさに冒険って感じでいいな!」
 その中の一人、北へと歩き出したクィンクラウド(a04748)の横を、突然、グランスティードに乗った一団が駆け抜けていった。
「今のは……」
「同じく北に向かう【北縁】の人達だね」
 北に行く人は多いようだよ、と同じ道を行くルーク(a06668)の言葉にフェレン(a48830)も頷いた。
「俺は北より、下が気になるな。地下へ降りるような谷間等が無いものか……」

 ──【北縁】。今回の探索に加わった中では、スティード13騎、25人と最大の規模を誇る冒険者のグループ。
「目指すは最北! スゲェのが見つかるといいな!」
「とにかく移動範囲を広げましょう」
 マルクドゥ(a66351)に答えるグレイ(a27749)が言うように、全員がグランスティードに騎乗する彼らの移動距離は、他の探索者達の比ではない。
 三つに分かれた班のうち、最初に先頭に立つのはA班。山に当たるようなら西に迂回し、更に北へ向かう予定だったのだが……リアラ(a06117)が、遠眼鏡を下ろして首を振った。
「見事に何も無いにゃ。山どころか──」
「──只管、神秘的。どこまでも、真っ白……」
 クーヤ(a40762)の言葉通り、この人数の為かドラグナーはおろか獣も寄ってこない。
 上空を警戒するガウス(a28795)の視界で動くのは……はらはらと舞い始めた雪の花びらだけだった。
 彼の乗るスティードを駆るレオンハルト(a32571)が、眉を寄せ、隣のロー(a13882)を振り返った。
「雪が降るとペースが落ちる……厄介ですね」

 強くなる前に何かには行き当たればいいが、とのローの願い空しく、【北縁】の行く手を阻む雪が強くなってきたのは、夕暮れ、C班が先頭に立った時。
 巻きつく雪を振り払い、ラティメリア(a45031)が首を振った。
「……吹雪いてきました」
「これ以上進むのは厳しいか。休める岩陰や洞窟があるといいんだけどな」
 言葉を返しながらも、ナオ(a26636)は言葉の奇妙さに苦笑する。
 ──この大地に、岩は無い。
 いや、草も木も土も……ここまでメンバーの誰一人として、その姿を確認した者はいなかった。
「ともかく野営地を探さないと。夜、しかも吹雪の中では消耗も激しいからな」
 大丈夫か、と問うイサヤ(a30041)を安心させるように笑ってから、シファ(a40333)は、あの氷山あたりはどうかな? と彼方を指し示した。
 ──雪と夜のカーテン越しに、一度崩した氷塊を積み重ねたような小規模な氷山が見える。
「ラド、タスクリーダーでA班とB班に伝えてくれねぇか」
 兄弟分に当たるルドフォーン(a57266)の言葉を受け、ラドファーン(a57263)が心の声を走らせる。
 その間にクリスタルインセクトを先行させていたフィズ(a28944)が、目を閉じて洞窟の様子をウィー(a18981)に伝えていた。
「氷塊が積み重なった隙間が洞窟状になってます。……崩れる心配は無さそうですね」
「雪がしのげて敵が居ないなら、それだけで幸いだよ」

 雪が収まったのは、朝になってからだった。
 激しく吹いていた風は止み、洞窟から外に出たユズリア(a41644)の耳をくすぐるのは、足が凍った積雪を割る冴えた音と冷えた空気だけ。
 ──と。同じように出てきたハーツェニール(a52509)が身を強張らせた。
「これは……ドラゴンの爪跡?」
 夜は暗く気付かなかったが、この氷山一帯は、明らかに何かの攻撃を受けた跡があった。しかも、徹底的に。
「ドラゴンの仕業だとしたら、タロスの集落跡か……」
「一ヶ月は、前のものですね」
 ……誰の目から見ても、ここには明らかに何も残されてはいない。跡形も無い、とはこのことを言うのだろう。
 リヒト(a60814)とセレネ(a34545)の会話を耳に、フーリ(a26627)はふと空を仰ぎ見た。
 ……当然、竜の影は無い。
「ここで俺達にできることはない。……行こう」
「せめて、地図に記して、目印でも置いておこう」
 シュウ(a41964)に頷き、グウェン(a65958)はスティードに飛び乗る。
 ……【北縁】の目的は、細かな調査よりも、ただただ北を目指すこと。
 ──更に北へ。

●東
 氷上に蹄の音を刻んで、太陽の昇る方角へと向かったのは、ロドリーゴ(a73983)や彼の背で地図を描くベルローズ(a64429)達。
「む……! これは困りましたな」
「崖みたいだが……大型のクレバスか?」
 眉を寄せるフリント(a37791)の前に立ち塞がったのは、向こう岸が辛うじて見えるか見えないか程度の巨大すぎる大地の裂け目。
 幅も広ければ、高さも十の位では測り切れないかもしれない程。そんな断崖に、ヒナタ(a40516)が無念の呟きを漏らした。
「くぁ〜!? 下が海ならダイブしたいのに、流石にこの高さからじゃ潜る以前に死ぬのオチ!?」
 ──東方面に向かった者達は、皆、この巨大な亀裂に阻まれて引き返すことになっていた。
「……ですが、狩りのし易いこういう場所のほうが、野生の動植物に出会える可能性は高いですよね」
 エリス(a00091)の幸せの運び手で食事休憩を挟んで【花緑】の面々は息をついた。
 植物の調査を行う彼女達が、ここまでの見つけられた物は、イストテーブル(a53214)が瓶に採取した僅かばかりの苔が精々。
 ミヤコ(a70348)やセレスト(a16244)が目を凝らしても、植物に適した温かさなど片鱗も見つけられなかった。
「それどころか……」
 陸生の草食動物はいないし、土も無ければ森も無い。……そもそも、その痕跡さえも無い。雪と氷で木々が枯れ果てたのではなく、最初から存在していなかったかのように。
 ──やはり、こう結論付けざるを得ない。
「このコルドフリードには……自然の植物が無い……?」
 悲しげなメリーナ(a10320)の呟きを肯定するように、生物の活動を遮る極北の風が吹き付ける。
 己の髪に咲く薔薇一輪、奪い取っていく風に目を細めながら、タケル(a06416)が呟いた。
「悲しいですね……」

 東に広がる巨大なクレバス。
 距離的に最も早い段階でそれに道を阻まれたのは、アークレイ(a73885)達、南東に向かった者達。
「フワリンでは渡れそうにない距離ですね」
「だが、狩りのし易いこういう場所のほうがタロスは居るかもしれない」
 レイバルド(a74649)とバド(a26283)の会話を聞きながら、ラズリオ(a26685)は地図にペンを走らせた。
「こっちは崖、と。……ん? ロティオン君、どうかした?」
「あのクレバスの中腹にある穴……洞窟じゃありませんか?」
 巨大なクレバスから枝分かれするように走るクレバスの一つに、ロティオン(a38484)が、指を向ける。
 ──確かに、クレバスの中腹上から20mばかりの位置に、僅かな横穴が開いていた。
「……あたしが降りてみるわ」
「気をつけて下さいね、ローザちゃん」
 ミレイナ(a39698)のロープを命綱、登山用のバイルを手にローザマリア(a60096)が器用に氷壁を降り始める。
 かじかむ手を支えて、じりじりと下へ。そして……不意打ちを警戒するように、太刀に手を掛け、一気に飛び込む。
 ──そこに彼は居た。
 右手には長い棒の先に糸と錘を付けたような武器を携え──
「……つ、釣竿……?」
 ──鋼の鎧を身にまとって。

●南
 もしも鳥の視点で視線を走らせれば、東の巨大クレバスが、大陸に切れ込むようにグレートツイスターの南──さらにその奥まで通じているのがわかっただろう。
 フワリンに乗っていたトリスタン(a43008)が地の裂け目にため息をつくのを見て、メルルゥ(a51958)が声を上げた。
「フワリンよりもっと飛べるような、新種のノソリン居ればいいのになぁ〜ん」
「うんうん、ひんやりした肌の子とか、毛皮の子とか見つかればいいと思うんだよう!」
「ヒヤリンさんやモコリンさんが居たら、おぢさんも嬉しいねぇ」
 とは言うものの……【ふらふ】のイーシア(a11866)やセドリック(a35874)は、この大陸に来て以降、ノソリンどころか四足の生物にすら会っていない。
 ……この辺りには、ランドアースに生息するような獣は居ないのだろうか。
「諦めないでまた頑張ろうねー」
 ノソリン用マシュマロにだけは手をつけなかったいじらしい彼女に、ユーティス(a46504)が慰めの言葉を掛ける。
 そんな中、足下を確かめていたラグ(a72884)とラセッド(a52956)が、同時に声を上げる。
「やはり、氷の下に金属のような何かが……」
 エル(a08082)と共に、彼女が頑張って書き記した地図を眺めていたシェード(a10012)の呟きが……
「ノソリンのような動物も居ない、氷の下は土ではない……やはり、この大陸は普通じゃないですね……」
 氷の狭間に、消えていった。

 ──厳密に人数を調整したわけでは無い以上、手薄な方角も出る。
 そこで、人数の少ない場所のフォローとして南西を選んだのは、マギネ(a72051)達【おさんぽ】のメンバーだった。
「じゃ出発だ!」
 と、斥候として、地図を記しながら先頭を行くのはヴェック(a19321)とトゥシェ(a05627)。それと……キルドレッドブルーにソリを括りつけようと四苦八苦しているティルミー(a05625)の三人。
「代わりに僕がソリを引きましょうか……?」
 見かねて申し出るハヤタケ(a14378)を横目に、クロゥンド(a02542)が呼びかけた。
「確認しよう。我々の目的は、スキルディスクの探索だったな」
「はい。形状は円盤状だそうですが……」
 リン(a72053)の話を聞きながら、アンナ(a05624)は呟いた。
「……探索にはどのぐらい掛かるかわからないから、撤退条件を決めたほうが……」
「戦闘系アビリティの使用頻度が半分をきる事が起きたら撤収に──」
「──頻度?」
 オカミ(a05622)の言葉に首を傾げながら、ミツハ(a05593)がその後を追った。

●西
 西に向かった冒険者のうちで──目の前を塞ぐように立ち塞がるそれに最初に気付いたのは、高台で不審な場所を探すウィズ(a65326)だっただろうか、それともレイ(a34300)の牙狩人の視線だっただろうか。
「あれは……山、かしら?」
 ジンエ(a60164)が手書き地図に落としていた視線を上げれば、冷たい大気越しに垣間見えるぼんやりとした稜線。
 ──その輪郭がはっきりしたのは、同じように西へと向かっていた、リュウ(a36407)率いる【笑顔】の面々が更に数時間ほど進んだ頃だった。
「やっぱり山みたいだね〜」
「ああいう目印がもっとあれば、手間省けたんだがなぁ」
 目印の赤い旗を立てながら、ワング(a48598)がぼやく。
「……この地では、山と言っても土で無く氷の山みたいですわね」
 キラキラしててとても綺麗♪と呟くサテラ(a73113)の話を耳に、ノリス(a42975)が頭を巡らせると、エンヤ(a64562)がカモメと話している姿が見えた。
「この鳥達も、土の地面が出ている所は知らないそうなぁ〜ん」
 この答えに、フラレ(a42669)とカショウ(a68562)、そしてメガラス(a73112)が顔を見合わせた。
「確かに……土じゃないな」
「うむ。この老骨の眼で見る限り、この氷の下は──」
 三人が落とした視線の先、氷の下には……やはり、ギアのような金属質の何かがあった。
 これは何か。答えの出ない思考に、サイカ(a37845)が頭を振った。

 【笑顔】と同じ方向ながら、グランスティードのおかげで先に山の麓まで着いていたルワ(a37117)率いる【黒鴉】の面々も、山脈の険しさに立ち往生していた。
「……登れそうか?」
「厳しいな。上のほうでは吹雪いているようだ……山頂が見えん」
 スティードから降りたジョルディ(a58611)が立ちはだかる山脈を仰ぎ見る。
 【黒鴉】の面々は、全員が鎧の上にマントを羽織る程度の軽装。標高の高い雪山登山には、厳しすぎる。とセラシオン(a62546)とグリンディエタ(a58959)が顔を見合わせた。
「断念するしかないか……」
「叶うなら、山の向こうに何があるか見てみたかったが」

 ──うう……と。
「? 獣……でございましょうか」
 地図から目を上げたシフィル(a64372)が唸り声のような音を聞いたのは、道すがら偶然合流していた【城壁隊】と【雪花】の面々が休憩を入れようとした時のことだった。
「動物なら魅了の歌で話が聞けますね。任せて下さい」
 音の出所は、小さな氷山の陰だろうか。
 ホカゲ(a18714)が慎重に近づいていくと同時、彼の気配を感じ取ったのか、響く音が止まる。そしてホカゲが澄んだ歌声を響かせる前に──
「お、俺は食えないぞ……? むしろ食ったら腹壊すね。だから齧るのはやめとけ。頼む……」
 ──そんな声が響いてきた。、
 ケラソス(a21325)の目に最初に入ってきたのは、うつ伏せで倒れ伏す鋼の体。
 ……それが、氷原を彷徨う野良タロス──ルカイザと同盟冒険者とのファーストコンタクトだった。

●彷徨えるタロス
「た、タロスの方ですか!? はじめまして!」
 リゼッテ(a65202)の挨拶から、
「──というわけで、ドラゴンロードを俺たちが倒し、現在に到ると」
 リヴィール(a64600)が軽い説明を締めくくるまで、軽く三十分。
 お腹が空いていたのだろう。ルカイザと名乗ったタロスは渡された食物を実にありがたがって食べた後、改めて冒険者たちに向き直った。
「ロードとか別の大陸とか、にわかに実感できないが……ともかく助けてくれて感謝する。俺はてっきり獣の類が近づいてきたもんだと思ったぜ」
 デュンエンと比べた細身のフォルム。とんがり帽子にボロボロのマントに旅人っぽさを連想しつつ、ディッカ(a62274)は口を開いた。
「しかし……何故一人であの場所に?」
「……うちの集落は、一月少し前あんたらの言う『ドラゴン』に攻撃されて、な」
 彼の語る集落が、ここよりずっと離れた先、ちょうど【北縁】の目撃した集落跡だったとは、この場に居る冒険者の誰も知る由は無い。
 途切れた言葉を縫って、ドライザム(a67714)が真摯に言葉を紡いだ。
「……もし……もし、宜しければだが、行く当てが無いのであれば、我々の拠点の辺りまで来ては貰えないだろうか。……貴方方とは、良き隣人、家族ともいえる関係を築きたいと願う」
「うむ。それに復興支援というか……此方に出来ることがあれば手伝えるでござる」
「そうだな……俺以外にも、集落を潰されて放浪してるタロスが居るはずだ。厚かましいと思うが、そういう奴らが集まれる場所が出来れば、ありがたい」
 ルルティア(a71661)達の申し出に、ルカイザは深く頭を下げた。

 ──そして、グレートツイスター。
 【城壁隊】に【雪花】達が連れてきたタロス──ルカイザの姿を見て、真っ先に声を上げたのは、アドミニ(a27994)やアロイ(a68853)だった。
「初めまして! お目にかかれて光栄です」
 ──はじめまして♪私達はけっして怪しいものではないですわ。
 ──怪しくない証拠に私は武器を置きましょう。盾も外しますし、鎧も脱ぎます。そして褌も外──
 ──ガラクタに興味はありますかなぁ〜ん?
 ニーナ(a48946)はともかく、ツァド(a51649)やトリン(a55783)辺りの挨拶は怪しさが混ざっていた気がするが……ともあれ歓迎ムードを受け取って緊張を解いたルカイザの姿を見て、バルザック(a74779)が唸った。
「ぬぬ……タロスは果たしてギャグの通じる相手か、実に重要な命題だ……!」
「バルザックの意見はともかく、タロスの歴史や、種族タブーが無いのか等は是非教えてもらいたいね」
 鋭いクリス(a73696)の視線に面食らったように、ルカイザは頭を掻く。
「割と最近再起動した俺は、歴史とかあまり答えられないぞ。タブーは、えーと……人の部屋に入るときはちゃんとノックしろとか?」
 ……まぁ、要するに普通の人が嫌がることはしないのが一番ということだろう。
「再起動……には、確か専用の施設が必要なんですよね」
「一体ルカイザはどこで再起動を?」
 と、シオン(a16982)に続く、ングホール(a61172)とグレッグストン(a63039)の問いに、彼は、ああ、と頷いた。
「……俺の居た居住区にはその施設が在ったんだよ」
「そこも破壊されたんですか……?」
 再起動施設こそがタロスのグリモアだと検討をつけていたクロウハット(a60081)が眉を寄せる。悩む様子の彼らを見て、ルカイザは戸惑ったように瞳を明滅させてみせた。
「あんたらも再起動するのか? なら、別の集落の施設を当たったらどうだ?」
「いやいや私達は再起動とかしませんが……その施設って、複数あるんですか?」
 質問ですっ、と手を上げたサクラコ(a32659)の問いに、ルカイザは不思議そうな声音で答えた。
「というか、大きな居住区ならば、大抵あるだろ?」

●クレバスの中腹に
 一方。
 グレートツイスターからそれほど離れていなかったおかげで、居住区の見つかったクレバスの付近には合図を受けた冒険者達が続々と集まってきていた。
 ──ローザマリア達が出会ったタロスは、自らをアトラと名乗った。
 最初は若干警戒していたが、人懐こい性格なのか、エルヴィン(a36202)やサータリア(a65361)、そしてライカ(a65864)が、以前出会ったタロスについてや女神フォーナ、別大陸の話をすると興味を示したらしい。
 今は、自分から崖上に登ってきて、集まる冒険者を物珍しげに眺めていた。
「はじめましてー!」
 と、アトラへと突撃タックルで元気良く挨拶するユタ(a74547)や冷凍蜜柑をプレゼントするセト(a47397)に視線をやりつつ、クッカード(a21051)は彼へと笑いかけた。
「大勢で押しかけてしまって申し訳ないですな」
「いえ、お客様が多いのは嬉しいことです。我らや同胞の危機を救って下さったというなら尚更」
 その様を見て、コーマ(a74434)が呟いた。
「なんといいますか……タロスって良い人が多いみたいですね」
「うん、お友達になれそうだよね」
「……タロスパラダイスー……」
 リン(a50852)やイコン(a45744)が話しているうちに、居住区を案内してくれることになったらしい。アトラの導きに合わせ、冒険者の流れが動き出した。
「俺はシリュウ。こっちはソウジュで俺の妻になる予定だ」
 シリュウ(a62751)、ソウジュ(a62831)と挨拶を交わしながら、アトラは横穴となった洞窟を奥へと進む。彼らはこの奥の居住区が彼らの住処らしい。
「性別のないタロスさん達は、夫婦という関係がピンとくるのかしら……」
 シュチ(a42569)の声を耳にアトラがパネルのような物に触れると、ドアが滑らかにスライドして道を開いた。
「ようこそ、私達の居住区へ」

 ──室温は、厚着をしたポーラリス(a11761)達が暑さを感じる程。全体的な雰囲気は、探索部隊の報告にあった居住区と類似している。
 実際に別の居住区を見たことのあるリオネル(a12301)からすると、ここはなんとなく小さめの印象があった。冒険者達が入ると結構手狭。
「タロスの居住区と言っても色々あるんだね」
「私達はしばらく前、集落を離れて冒険をしている途中でここを見つけたのです。……その後、あなた方の言う『ドラゴン』の動きが激しくなって、ここから出ることもままならなくなったわけですが」
「冒険してたの? ……じゃあ、こんな小さい動物見たことない?」
 ガマレイ(a46694)が見せたのは、猫と鶏の絵。
 残念ですが……と首を振る姿を見て、お土産の花束を抱えていたキヤカ(a37593)が僅かに眼を伏せた。
「…………」
 ヘルムウィーゲ(a43608)の瞳に移る壁床天井、その全てが金属の輝きを放っている。
 だからなのか──住民が金属の肌を持っていても、なんら不思議ではないように感じられた。何人ものタロスが顔を覗かせているのを見て、スズリ(a63695)がその数を数え始める。
「ん〜、三十人ぐらい……お菓子、沢山持ってきて良かったのです、なぁ〜ん!」
「この中には紋章術士の人は居ないのかい?」
 ロルフ(a33729)の問いに、アトラは首を振る。
「ここには居ません。ただ、私達の居た本来の集落は、付近でも有数の大きい集落ですから、居たと思いますよ」
「他のタロスの集落がこの近くにあるのですか?」
「海岸沿いには、それなりの数があるはずです。……幾つかは、皆さんがドラゴンと呼ぶ怪物に滅ぼされてしまったようですが……」
 フォーネ(a11250)やセリア(a28813)の問いに答えるアトラを見て、セレナード(a65333)は小さく拳を握り締めた。
「すまない……ドラゴンを刺激してしまった我々にも原因があるはずだ」
「倒してくれたというあなた方に、感謝こそすれ恨む理由などありません」
 純粋にそう思っていると思しきアトラの言葉に微笑んで、アキュティリス(a28724)とヴィクス(a58552)が一歩前に出た。
「……貴方達の優しさと好意に甘えるつもりはありませんが……友となり手を引く事をお許し願えませんか?」
「その上で……可能ならだが、俺達の調査に協力して貰えないだろうか」
 タロスが再起動する施設や遺跡を知っていれば案内して欲しい──続くコハク(a39685)の視線を受けて、数秒。アトラは口を開いた。
「……私達もいずれは、元の集落に戻るつもりでした。その最大の障害であるドラゴンを倒してくれたと言うなら、この居住区にずっと留まる理由はありません。……私達の集落に戻るとき、ご一緒しましょう」
 アトラは告げながら、少し首を曲げた。……笑ったのかもしれない。
「仲間達にも説明と……ここを引き払う準備をしなければなりませんね。そうですね、数日後にでもまた来て頂けますか? その時までに準備を整えておきますから」

●ランドアース
 ──結論から行くと、コルドフリードは想像以上に広大だったと言えるかもしれない。
「探索結果をまとめるの、手伝いましょう」
 とのシャスタ(a42693)の申し出に感謝しながら、テスリアは霊査用にと渡された物品を横目に、各自が書き連ねた何十枚もの地図の写しをぺらぺらとめくっていた。
「グレートツイスターから南と東は、崖……というかクレバス、と」
「私の向かった北西には山の姿が見えました……いえ、西の方角にまで連なっているようなので、山脈と言ったほうがいいのかもしれませんね」
 フィリア(a11714)の報告を引き取って、今度はナツルォ(a61049)が口を開く。
「北は、どこまでも氷原が続いていたな。とりあえず、スティードの脚で三、四日ばかり走った限りでは山や海岸に辿り着くことは無かった」
 ナツルォ(a61049)の言葉に、最北を目指していた【北縁】の面々が無念そうに首を振る。
 報告を聞き終えたテスリアは、なるほど……と口を開いた。
「とりあえず……その情報は無駄ではありませんね。少なくとも一週間やそこらの探索では足りない──つまり、詳しく調べるには、数ヶ月掛かりの探索隊が必要となるとわかりましたから」
 他の霊査士の人にも色々話してみます、と考え込んだ後、テスリアは「寒い中、本当にお疲れ様でした」と頭を下げる。
 ──後に訪れる必要のあるクレバス中腹のタロスの集落と、ひとまずグレートツイスターの近くに留まることになったタロス。大陸のいたる所で見られた、地下の何か。
 同盟にとって、コルドフリードはまだまだ長い付き合いになりそうだ。
 夏のランドアースだというのに、どこか涼しげな風が酒場を抜けていった。


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玄天卿・クリス(a73696)  2011年11月22日 22時  通報
まさか本当に浮くとは……ねえ?
タロスさんも狩りしているって言うのがちょっと意外だったね。
もっとなんかこう……栄養を固めたような固形物みたいな物を食べてるような印象だったので。

雷獣・テルル(a24625)  2009年09月12日 17時  通報
誰か突っ込んでくれ……と思ったら旅団全員でボケてました。
結局、見つけられなかったけど目立ちまくったからまぁいいか?