フラウウインド浮上!:空飛ぶヒマワリの謎



<オープニング>


●フラウウインド浮上!
 新大陸、フラウウインド大陸の浮上!
 それは、ドラゴンズゲート白虎帝城周辺の海域を探索していた、サンダース3号よりもたらされたのは、驚きの報告であった。
 フラウウインド大陸は、千年以上もの間海底に沈んでいたにも関わらず、浮上と同時に、その生命活動を再開させていた。
 海の底深くで眠っていた森は、太陽の光をあびて深緑に輝き、鳥のさえずりと動物達の息吹に包まれる。
 それは、神の奇跡であったのかもしれない。
 七柱の巨大な剣により封じられていたフラウウインド大陸は、いままさに、封印を解かれて蘇ったのだ。
●空飛ぶヒマワリの謎
「フラウウインド大陸の浮上……皆さんも、すでにお聞き及びの事と思います」
 夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)はそういうと、珍しく目に興奮の色を映し冒険者達に語りかける。
「今はまだ、白虎帝城の地上側の出口周辺しか探索が進んでいませんが……冒険者たるもの、この未知を大陸を放っておいては名がすたるというものです。そうでしょう?」
 ミッドナーはそう言って、ワインの栓を開けるのだった。
「白虎帝城の周辺は、深い森になっています。そこからは、古代ヒト族の建造物や、遺跡のようなものは、見当たりません」
 しかし、と区切ってからミッドナーは話を続ける。
 それは冒険者達にとってはある種の高揚感をもたらすものでもあった。
「このフラウウインド大陸にドラゴン化した古代ヒト族が暮らしていた事は間違いないのです。探索範囲を広げる事で、色々な新事実が判明する事でしょう」
 そこまで言ってからミッドナーはワインを注ぎ、一息のもとにそれを飲み干してしまう。
 何やら満足げに頷くとグラスをテーブルに置く。
「……それで、ですが。フラウウインド大陸に存在する動物達は、大陸の探索の障害となるでしょう。たかが動植物……と思われるかもしれませんが、フラウウインドの動植物は、ランドアースに生息するものと比べると相当高い能力を持っているようです」
 その中にはアビリティと似たような特殊能力を持つものも多く、探索範囲を広げるためには、そういった危険な動植物を倒していかなければならないだろうとミッドナーは語る。
「さて、今回の依頼ですが……空飛ぶヒマワリの殲滅になります」
 殲滅、という事は群れという事でもある。
 ミッドナーはその想像を肯定すると、説明を始めた。
「大体頭の上くらい……5M弱くらいを常時浮遊して移動する植物なのですが。大体10本前後の群れで行動しているようです」
 恐らくは繁殖の為にそう進化したのだろう、とミッドナーは語る。
 それだけなら問題は無いのだが、彼等が移動中に摂取する養分には人間も含まれるのだ。
「つまり、フラウウインドの探索を進める上で、このヒマワリのようなものとの戦いは避けられません。今回は、その中でも特に邪魔となる群れの殲滅となります」
 そのヒマワリのような植物は、麻痺効果を備えた光線のようなものを乱射する能力と、ある種の回復能力を備えているのだという。
「光線には乱射攻撃の他にも凝縮による強力な単体攻撃、拡散による広範囲攻撃の2種類があるようですね。回復能力は、バッドステータスをも回復する広範囲型のようです。一体一体は強力すぎる、というわけではありませんが……仲間と行動する事によって力を何倍にも出来るタイプと言えますね」
 ミッドナーは2杯目のワインを注ぐと、冒険者達の目を見上げるように覗き込む。
「今回遭遇する、このヒマワリのような敵ですが……同盟諸国にとっては新発見の植物となります。折角ですから、名前をつけて頂けませんか?」
 それは当然の権利だろう、とミッドナーは語る。
「外見や能力に沿った名前を考えてもいいし、自分の名前を冠したものでも構いません。ただ、長すぎる名前や読みにくい名前などは、略称になるかもしれませんね」
 それは、冒険者にとっては至上の幸せと成り得る。
 誰も見たことの無いものに、初めて自分達が出会い命名まで出来るのだ!
「それでは……新大陸の冒険……頑張ってくださいね、皆さん。私、信じてますから。最良の結果を持って、私の所に帰ってきてくれると……」
 ミッドナーはそう言うと、軽く一礼するのだった。
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!グリモアエフェクトについて!
 このシナリオはランドアース大陸全体に関わる重要なシナリオ(全体シナリオ)ですが、『グリモアエフェクト』は発動しません。
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参加者
無限の旅人・セイン(a04603)
業の刻印・ヴァイス(a06493)
エンジェルの医術士・アル(a18856)
狂気が乱舞の赤ペンギン・ヒナタ(a40516)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
青銀の飛竜・ウィル(a47045)
千篇挽歌・テラ(a48288)
暁天の修羅・ユウヤ(a65340)


<リプレイ>

 森の中は、不思議な静けさに満ちていた。これより先は、何もかもが未知。
「フラウウインド大陸か、こうやって大地を踏みしめると新しいところに来たという実感が湧く……心が躍るねぇ」
 白銀の騎士・ユウヤ(a65340)の言葉は、まさに全員の心境を現していたと言えよう。
 前人未到の新大陸。これから出会うは、未発見の新生物。
 しかも、変異植物などではない真っ当な……いや、真っ当というには少々危険だが、種として存在する植物である。
 冒険者であるならば、これに心躍らないものなど居ない。
「動植物がアビリティのような力を持つとはな。これも古代ヒト族の仕業なのだろうか。全く厄介な……しかし、冒険のし甲斐があるな」
 千篇挽歌・テラ(a48288)が見上げた空は、何時も通りの……いや、いつもとは違う空。
 この感覚もまた、新たな大地のもたらすものなのだろうか?
「今回の依頼はフラウウインド大陸の在来種に対し、外来種である私達が侵略行動を行うと言う事になるのでしょうか」
「そう言ってしまうと身も蓋も無いのう」
 エンジェルの医術士・アル(a18856)に光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)が苦笑して。
「くぁ、その程度の珍植物、ワイルドファイアで見慣れてるオチよ♪」
「ワイルドファイアも大概だが、フラウウインドはフラウウインドでとんでもないな……、人喰いヒマワリとは可愛げが無い。向日葵、の字の如く太陽の方向を向く習性は同じなのだろうか?」
 狂気が乱舞の赤ペンギン・ヒナタ(a40516)の笑い声を聞きながら、業の刻印・ヴァイス(a06493)がそう言って溜息をつく。
 確かにワイルドファイアの怪獣のようにも思えるが、こちらは植物だ。このような植物ばかりだというのならば、まさに可愛げの無いものばかりの大陸ということになる。
「ペットにできる人畜無害な動植物はいないのか?」
 思わず青銀の飛竜・ウィル(a47045)がそう呟いてしまうのも、無理は無い。
 ……まあ、あまり期待できそうにはないが。
「未知の大陸……私も冒険者の末席に名を連ねる者として思う所も御座いますが、まずは成すべき事を成さねばなりませんね」
「……だな」
 黒白・セイン(a04603)の言葉にウィルが頷き、冒険者達は上を見上げる。
 今のところ、例のヒマワリのようなものはいないようだった。
「さて……行こうか」
 ヴァイスの合図に、冒険者達は頷き合って静かに動き出す。
 出来るだけ音を立てぬように、目立たぬように。静かに草をかき分ける。
 むせ返るような、濃い草の香りが漂う。今まで沈んでいたという事が信じられなくなるような、草の香り。
 それら全てが。決して慣れていないわけではないはずの、その全てが。
 何故か、その全てが新しく感じられて。抑えようとしていた感情が爆発しそうになるのを感じていた。
 そう、自分は今……紛れもなく新大陸に立っているのだと。
 一寸先の地理すら分からぬ新大陸。自分の進む先にはまだ、ただ1つの「確か」すら無い。
 白紙の地図を、自分の手で描いていく感覚。思うままに進んでよいのだ。
 360度、何処を向いても新世界なのだ。
 誰もまだ足を踏み入れぬ、純白の雪原を踏みしめる感覚。思うままに進んでよいのだ。
 今、その為に来ているのだから。
 そんな感覚を抑え込むと、アルが何かを見つけて仲間達を手招きする。
「……あれ、でしょうか」
 アルの指し示した先、森の中。何やら黄色の物体が浮かんでいる。
 その数は、丁度10。良く見てみると、黄色い立派な花を咲かせたヒマワリ……のように見える。
 ヒマワリというにはあまりにも立派で。
 ヒマワリというには……あまりにも、強烈なオーラを放っている。
「ちょっと遠いが……ここからなら奇襲をかけられるか?」
 ヴァイスの言葉にプラチナは同意の頷きを返すが、すぐに何かに気づいて鼻を動かす。
「……何やら、物凄く良い香りがするのう」
「……確かに。これは……?」
 草の香りに混ざって一瞬分からなかったが、確かに何かの香りが漂ってくる。
 甘い……とても魅力的な、誘われるような香り。屋台から漂ってくる香りであるならば、思わず足が向くような……そんな香り。その香りの漂ってくる先は、すぐに特定できた。
「なるほど……この香りで獲物をおびき寄せているのですね」
 セインは、思わず感心したように頷く。
 ただ飛び回るだけではなく、獲物をおびき寄せる香りを撒いているのだ。よく出来た生態だと言わざるを得ないだろう。
 ただ、同時に気づく。あのヒマワリは、さっきから動いていないのだ。
「……気づかれてるのか?」
 ユウヤが小声でテラに囁く。
「……いや、そういう風には見えないが……」
 しばらく観察していても、ヒマワリは動かない。
「……そうか。獲物を探してるんだ」
 ウィルが、ハッとしたように呟く。
 つまり、こういう事だ。何処かに陣取り、獲物を引き寄せる香りを撒く。
 それに引き寄せられてきた獲物を摂取する。
 考えてみれば、単純な事だ。恐らくはこの香りも、その為の網のようなものなのだろう。
 そうと分かれば、突然この香りが漂ってきた香りも説明がつく。
「いいタイミング……なんだろうな」
 ヴァイスは仲間に目配せをする。偶然ではあっても、まさに千載一遇のチャンス。このタイミングを逃す手は無い。
 抑え込んでいた高揚感を爆発させるかのように、ヴァイスは飛び出す。
 その動きに、一切の迷いも躊躇も無い。ツェペシュを突きつけるようにして呪痕撃を放つ。
 即座に飛び出して放った呪痕撃は、ヒマワリの1体に禍々しい呪痕を刻みつける。
「相手はコイツだ。集中攻撃頼む」
 ヴァイスの合図と共に、仲間達が次々と飛び出す。
「くぁ! ロック・オン! ファイヤー!」
 プラチナとテラのサンダークラッシュとヒナタのレイジングサイクロン、更にはユウヤのワイルドキャノンが炸裂し、ウィルのジャスティスレインとセインのエンブレムシャワーが降り注ぐ。
 最初の1体のヒマワリは耐え切れず、その身を砕かれるかのように地面に力無く落ちる。
 だが、セイン達の攻撃が終わった時。ヒマワリ達が残った9体で陣形を組む。
 癒しの光を2体が放ち、残りの7体が拡散する光を放つ。
 ランドアースの変異植物や、ワイルドファイアのちょっとした怪獣程度ならば、今の奇襲で充分に倒せていたほどの会心の攻撃。
 それでも倒れなかったという事実は、フラウウインドに住まう者達がランドアースのそれよりも数段上にあるという事実をヒナタ達に突きつけていた。
 それは、恐れよりも心躍る事実。
 世界は、こんなにも広いのだ。
 こんな化け物のような動植物が、このフラウウインドでは当然のように闊歩しているのだ!
「ぐっ……くっ……ふふっ」
 光線をまともに受けたテラ達は、痛みに顔を歪め……しかし、喜びに顔を歪める。
 ランドアースを統一し、コルドフリートへと足を伸ばし。
 それでもまだ、こんな強敵の居る大陸がある。
 そう、此処には。始まりの冒険がある。
 自分達は今、誰よりも冒険者であるはずだ。
 それを自覚した今、気力は自然と身体に漲ってくる。
 アルのヒーリングウェーブを受け、冒険者達は次の目標を見定める。
「仲間と共にいる事で力を高めあう、か。こういう敵は、やはり厄介だ」
 言いながらも、テラの口調からは高揚した雰囲気が隠しきれない。
「じゃが、それは此方も同じ……じゃろ?」
「だな」
 プラチナとユウヤが、テラのサンダークラッシュに合わせるように攻撃を繰り出す。
 ヴァイスの呪痕を刻み込まれたヒマワリは、続くウィルやセインの攻撃の前に、倒れるように落ちていく。
 続くヒマワリ達は、ここにきてヴァイスが攻撃の起点である事を本能で理解する。
 残り8体のうち、6体がヴァイスに対して凝縮光線を放つ。
 意識を一欠けらも残さず削り取るような、強烈な集中攻撃。
 何とか残る意識をかき集め、ヴァイスはフラフラとした足取りで、しかし、しっかりと大地を踏みしめる。
「次はあいつだ!」
 呪痕撃を放ち、仲間に叫ぶ。
「任せるのオチよ!」
「人間も養分にしてしまう花か……此処で散華させてやる!」
 ヒナタとユウヤが飛び出し、仲間達がそれに続く。
 再び力尽き地面に落ちるヒマワリ。
 しかし、まだ残るは7体。
 単体攻撃を選択したウィル達の戦略は、正解であった。
 1体ずつ潰していけば、時間はかかるが確実に相手の総合力を減らしていける。
 それは、1度に全部を相手するよりはリスクが確実に低くなる。
 つまり、この戦いは。先に消耗しつくした方が負ける。
 だからこそ。最初の奇襲の効果は、両者の天秤を傾けるのに重要な効果があったと言える。
「皆さん……頑張ってくださいませ」
 アルのヒーリングウェーブを受け、セイン達は武器を構えなおす。
 負けはしない。まだ、始まったばかりなのだから。
 まだ、何も探索していない。貪欲というのならば、この感情はまさにそれだ。
 少年のように無邪気で、少女のように無垢なこの感情。
 この先へ、もっと先へ。更に先へ。
 その為には、こんな所で負けてなどいられない。
 セインに、テラに、ヴァイスに、ユウヤに、プラチナに、ウィルに、ヒナタに、アルに。
 全員の目に、更なる強い意志の光が宿る。自然と武器を握る手に力が篭り、大地を踏みしめる足は、より強く。
 4体目のヒマワリが地面に落ちた時。冒険者達の勝利は、すでに確定していたといえよう。
「……こんなのがまだまだいるのか」
 地面に力無く落ちた10本のヒマワリを見て、ユウヤは呟いた。
 このヒマワリ達が自分達と戦ったのは、繁殖の為。
 つまり、充分に繁殖した数のヒマワリ達が、このフラウウインドには存在している事になる。
「ヒマワリっぽいのに必ずしも太陽の方を向いてるわけじゃなかったんだな」
 テラが、そんな感想じみた事を口にする。
 見た目こそヒマワリではあるが、色々と知っている「ヒマワリ」とは異なる生態系に存在するもののようだ。
「このヒマワリの種は食えるのか? ……止めたほうがいいかな」
 食べられないことは無いだろうが、何しろ未知の植物である。
 全容が判明するまでは、下手に口にしないほうが無難だ。
 ウィルは少し迷った様子を見せると、種を地面に捨てる。
「サンダース号で探索中、海底にあった際に幾度か森も見てはおったが……ここまで面白おかしい者共が居たとわのぅ」
「まだまだ。この超ヒマワリの他にも、一杯いるのオチよ」
「超……なんじゃと?」
 プラチナが、その単語を聞きとがめる。
 どうやら適当な名称がないのでヒナタが仮命名したようだが、全員それぞれの名称を持ち寄っている。そう簡単には譲れない。
 森の中で火を使うわけにもいかずヒマワリを埋めていたセインが、その様子を眺めて笑う。
 普段の冒険では、こんな機会など無かった。何もかもが、とても新鮮だ。
 今回の冒険で得た事を軽く書き留めつつ、埋めた地面を踏み固める。
「……皆、異存はないな?」
 ヴァイスの確認に、全員が同意の意を示す。
「よし、俺達の出会ったヒマワリの名前は、サンシャワーフラワーに決定だ!」
「いやあ、有意義な話し合いだったのう」
「最後はジャンケンでしたけどね」
 存分に意見を戦い合わせた冒険者達は、互いの肩を叩き合う。
 何と素晴らしき感覚だろう。この場において、自分達は歴史を1つ作り、図鑑を彩るべきものを1つ作ったのだ。
「……じゃあ、戻るか」
「そうですね」
 そう言って、冒険者達は踵を返す。
 そう、今回はここまで。それが、非常にもったいない。
 この大陸には、両手から溢れてしまうほどの「冒険」がある。
 冷め切らぬ興奮と喜びを顔に浮かべ、冒険者達は帰路につくのだった。


マスター:じぇい 紹介ページ
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作成日:2008/07/18
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重傷者:光纏う白金の刃・プラチナ(a41265) 
死亡者:なし
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