ダークムーン



<オープニング>


「最近、この辺りの界隈で夜な夜な商人ばかりを狙う殺人鬼が出没しているらしい。コイツは標的を見つけると音もなく忍び寄り、刃物で喉元をバッサリとやっちまう。もちろん、その正体は分かっちゃいない。そのせいか商人達の間じゃダークムーンなんていう大そうな名前までついている。しかも殺された商人ってのが、みんな悪い奴ばかりでな。村人達の中にはダークムーンに対して協力的な奴も少なくはない。だからと言って商人達を見捨てるわけにも行かないだろ。そこでお前達にダークムーンを捕まえて欲しいんだ。俺としてもこんな依頼は引き受けたくないんだが……。ダークムーンの正体は分かっていない事が幸いだな」
 そう言って赤狼の霊査士・ガイ(a90048)が含みのある笑みを浮かべるのであった。

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参加者
蒼天に昇りし黄金の守護者・タツキ(a00048)
宵咲の狂華・ルビーナ(a00172)
境界の医術士・リタ(a00261)
毒林檎・ヘルガ(a00829)
軍医・ザイン(a00835)
破壊魔導師・ベトレイヤー(a00870)
狂刻の牙・ウォーレン(a01908)
蒼氷の忍匠・パーク(a04979)
気儘な矛先・クリュウ(a07682)
サイレントシャドウ・ガス(a07813)
虚飾の迷図・リゼルヴァ(a08872)
悶える闘志・ジョッシュ(a08992)


<リプレイ>

「ダークムーン……闇月か? ちっ、厄介な名前を思い出したぜ。ハルバートを装備している髭のオッサンが敵じゃねぇ事を切に願うぜ、俺は」
 苦笑いを浮かべながら、軍医・ザイン(a00835)が冗談まじりに呟いた。
「音も無く忍び寄り、一撃でバッサリ……か。相当の手練だね。忍びとして憧れなくはないけど……。だからこそ野放しには出来ないね」
 報告書を読み終え、蒼氷の忍匠・パーク(a04979)が大きな溜息をつく。
「……ガイの話じゃ、ダークムーンは黒ずくめで、鋭い瞳が特徴だ。逆に言えば、それしか『見えて』いないらしい」
 嫌な予感を襲われながら、ザインが資料に目を通す。
「手口からするとおそらく単独犯。動機は怨恨かしら。実行性を考えると、客の貴族だって怪しいわね。護衛を強行突破して犯行に及ぶタイプじゃないみたいだし、わざとグラスを一人きりにするタイミングを作れば襲撃を誘導できるかも知れないわね」
 ザインから資料を受け取り、虚飾の迷図・リゼルヴァ(a08872)が表情を険しくさせる。
「グラスは殺されても仕方ないような悪ぃクスリでもバラ撒いてやがるかね? 私腹を肥やすのが悪いとは言わねぇが、他人を不幸にするような薬なら制裁は必要かねぇ?」
 とある噂を思い出し、ザインがボソリと呟いた。
「殺された商人達は裏でかなりあくどい事をしていたようじゃのう。殺された当然の事をしていたというか……。いい噂は聞かんのぉ」
 殺害された商人達の噂を集め、ルビーナが疲れた様子で溜息をつく。
「だからと言って殺人鬼は見過ごす訳にはいかないよな」
 パーティーの参加者リストに目を通し、静斬の黒琥・ウォーレン(a01908)がウェイターに変装する。
「どっちも似たような者かと思いますけどねぇ……。犯罪により私腹を肥やす者、犯罪により己の理念を押し通す者、まっ今回の場合、後者の方がまだマシのようですが……。とりあえず警備・警護に関しては皆さんにお任せして、自分は『怪しげな薬』とやらでも探しに行こうか」
 暗闇に紛れて屋敷に潜入するため、サイレントシャドウ・ガス(a07813)が漆黒の衣装を身に纏う。
「……否定するつもりはねぇよ。こいつと俺達冒険者のやっている事に大した差はないと思っているからな」
 髪を下ろしてドレスを纏い、境界の医術士・リタ(a00261)がボソリと呟いた。
「幾ら悪人しか狙わんと言えども殺人は殺人……犯罪じゃな。きっちりお縄について貰うのじゃ♪ しかし……、寄りによってダークムーンと呼ばれているとは……。一筋縄では行かないかも知れんのぅ……」
 そう言って宵咲の狂華・ルビーナ(a00172)が、困った様子で腕を組む。
「確かに悪を断ずる事はいいと思うが、ちとやり方が気に喰わないな。殺すだけが答えじゃないはずだ……」
 納得の行かない様子で屋敷を見つめ、守護武刃・タツキ(a00048)が拳を握る。
「ど〜も、納得いかねぇ。実際はどうだかわかんねぇけど、普通は野外で暗殺っていう手口だよな? なんで、パーティー会場なんていう場所を選んだんだ。悪事を暴かせようってでもいうのかね?」
 襲撃場所に疑問を感じ、リタがダークムーンの目的を予想した。
「とりあえず今までの手口を考えると、パーティーの料理に毒を混ぜるような真似は無いだろう。そうなると無差別に人を殺す事になるからな。関係のない人を殺すのはダークムーンのやり方では無いはずだ」
 今までの手口からダークムーンの出方を予想し、タツキが関係者のリストを睨む。
 リストにはここ数日の間に来客した貴族達の名前が書かれており、その中には有名な貴族の名前も載っている。
「これだけしか来客者がいないなんておかしいな……。何が何でも少な過ぎる」
 リストを再度確認し、タツキが疑問に思った事を言う。
「さすがにビジネスパートナーを売るような真似はしないさ。自らの命を守るためにもね」
 そしてリタはタツキからリストを奪い取り、含みのある笑みを浮かべるのであった。

「パーティーに参加した連中の顔ぶれを見る限り、どいつもこいつも裏の顔を持っていそうな奴らじゃのう。さすがに妾達がいる時に尻尾を出すような真似はしないと思うが、なんとなくダークムーンの目的が分かってきたのじゃ」
 護衛役としてグラスのパーティーに参加し、ルビーナがダークムーンの侵入経路を特定する。
 いつもと比べて警備が厳重になっているため、容易に侵入できる場所はほとんどない。
「怪しい場所にはシャドウロックで封印を施しておいたよ。無理に開けようとすればワイヤートラップが発動するから、迂闊な事は出来ないんじゃないのかな?」
 屋敷のあちこちにトラップを仕掛け終え、パークが葛藤しながら目の前の料理に手をつける。
「念のため屋敷を調べてみましたが、特に怪しいモノは見つかってません。何処かに隠してあるのか、それとも自分で持っているという事でしょう」
 ハイドインシャドウを使って気配を消して屋敷内を調査したのだが、ガスが調べた限りでは特に怪しい所は何もない。
「確かパーティー客は貴族が8組、ね。命を狙われている人物のパーティーに出るくらいだから、まんざら無関係ってわけでもないんでしょ。そういう後ろ盾があるなら、怪しげな薬の取引も合法に見えるよう偽装しているかも知れないし……。半端な証拠でグラスを捕まえても、すぐに釈放かもね」
 警戒した様子で辺りを睨み、リゼルヴァがゴクリと唾を飲む。
 貴族達にとっては冒険者達も敵らしく、グラスに関する情報は何も語ろうとはしない。
 それどころかリゼルヴァ達をダークムーンの仲間だと思い込んでいるようだ。
「ダークムーンはプロだと認識してる。きっとここにいる貴族を潰せるだけの情報を持っているはずだ」
 辺りの様子を窺いながら、リタが怪しい人物を探す。
「情報だけで貴族を捕まえる事なんて出来るのかねぇ。僕にはダークムーンの挑戦状ってとれるけど……。君達の事はいつでも殺れるってね。噂じゃグラスと関わっている貴族って多いんだろ。今回のパーティーに参加した客の中には、他の貴族にまで捜査の手が回らないように手を打った奴もいるようだし……」
 横目で貴族達を睨みながら、悶える闘志・ジョッシュ(a08992)がクスリと笑う。
「そうする事で被害は最小限に抑えるわけね。確かにこの状況じゃ、パーティーに参加した貴族以外グラスと関係のある貴族なんて分からないものね」
 貴族達の態度が怪しかった事を思い出し、リゼルヴァが納得した様子でワインを飲む。
「なんとなくバラバラだった線が繋がりそうですね。怪しいクスリと貴族達……。これは思っていた以上に大きな事件かも知れませんよ」
 そう言ってガスがグラスから貰ったリストの事を思い出す。
「ひょっとしてボクらも利用されているのかも……」
 嫌な予感が脳裏を過ぎり、パークが大粒の汗を流す。
「そりゃそうだろうね。僕達もグラスと貴族の関係について調べまわっていたから……。そうそう尻尾は出さないと思うけど……。取引は待ってはくれないからね。多少の無理をしてでも今回取引をするんじゃないかとは思っているんけど……」
 ワインを口に含みながら、ジョッシュが辺りの様子を窺った。
「今日は小麦粉の取引に来たって言うわね。今度のお祭りでたくさんパンを焼くからって……。一応、中身を舐めてみたけど普通の粉よ?」
 大量の小麦粉が倉庫に保管してあった事を思い出し、リゼルヴァが不思議そうに首を傾げる。
「……グラスが動き始めたな。予定より早く動いているが、このチャンスを見逃すわけには行かないか」
 険しい表情を浮かべながら、ウォーレンが貴族達を一ヶ所に集める。
「余興にこんなのはどうだ。景品はこっちで用意した。景品はこの通り持参した。おたくには損は無いはずだ。今から俺がこの宝石を1階の何処かに隠す。おたくらはそれを見つけてくれ」
 そしてウォーレンは宝石を高々と掲げ、貴族達の注意を逸らすのであった。

「こんな美しいお嬢さんが護衛とは、今日は最高の日になりそうだ。まさか暗殺者って事はないよな」
 いやらしい笑みを浮かべながら、グラスが毒林檎・ヘルガ(a00829)のお尻を触る。
 ヘルガも一瞬ピクンと反応したが、作り笑いを浮かべて拳を隠す。
「こ、こんな場所で……いけないわ。どうせならあなたの部屋に行きましょう」
 妙にしおらしい態度で接し、ヘルガがむぎゅっと胸を押し付ける。
「お前も分かっているじゃないか。わしの部屋で一杯やって、それからは……」
 ヘルガの持参したブランデーを受け取り、グラスが彼女を部屋に案内した。
 部屋には珍しい動物の剥製や奇妙な像が置かれており、グラスが彼女の腰を抱きベッドの上まで連れて行く。
「お酒強い人って好きなのー、ぞくぞくしちゃう」
 グラスの背中につーっと指を這わせ、ヘルガがワイングラスにワインを注ぐ。
「がっはっはっ、お前は本当にじらすのが上手だな。よしよし、お前に珍しい薬をやろう。気持ちの良くなるお薬だ」
 そう言ってグラスが懐から真っ白な粉を取り出した。
「ひょっとして……麻薬?」
 グラスから真っ白な粉を受け取り、ヘルガがそれをマジマジと睨む。
「言ったろ、魔法のお薬だ。世間じゃ小麦粉なんて言われているがな」
 意味深な笑みを浮かべながら、グラスがゆっくりと服を脱ぐ。
「ちょっと待って。……試してみてもいいかしら?」
 真っ白な粉の匂いを嗅ぎ、ヘルガが納得した様子でニコリと笑う。
「随分と上質な小麦粉ね。匂いを嗅いだだけでも天国に行っちゃいそう」
 グラスの耳元で甘い言葉を囁きながら、ヘルガが真っ白な粉を懐にしまう。
「ぐっへへっ! それじゃ、お楽しみと行くか」
 そう言ってグラスがヘルガにむかってダイブする。
「そこまでだっ! グラス!」
 それと同時にウェイターの格好をした何者かがドアを蹴破り、グラスの傍まで駆け寄ると素早くナイフを振り下ろす。
「随分と大胆な行動に出たようじゃな」
 ハイドインシャドウを解除し、ルビーナが大地斬を叩きこむ。
「お前のモノはオレのモノってか。余計な事をするんじゃねぇよ!」
 君を守ると誓うを発動させ、ヘルガがグラスの身を守る。
「助けてやったのに、そんな言い方はないだろ」
 ヘルガの喉元にナイフを押し当て、ダークムーンがニヤリと笑う。
 ダークムーンは中性的な顔立ちをしており、男か女か分からない。
「人質を取るとは、らしくないな。本当にダークムーンなのか」
 フォーチューンフィールドを発動し、ザインがダークムーンと間合いを取る。
「さあな。ご想像にお任せするよ。だが、お前達が来てくれたおかげで助かったぜ。サポートにやって来た冒険者だと言ったら、見張りの奴らも信用してくれたしな」
 ヘルガを人質に取りながら、ダークムーンがグラスを踏む。
「人質を解放してもらおうか。お前だって無関係な人間を巻き込むつもりはないだろ?」
 ゆっくりとダークムーンに近づきながら、タツキが何とか説得を試みる。
「俺達がしっかりしてねぇといけなかったのにな。手を汚させちまった……。対処が遅れちまってすまねぇ。情報網をいかして今度からは暴露記事でも書いてくれよ」
 何も武器を持っていない事を証明するため、リタが両手を挙げてダークムーンに近づいた。
「見えているものがすべてじゃない。お前達の見ているものが、単なるパーツのひとつでしかない事だってあるんだぜ。事件の真相を見極めたいのなら、ここで俺を逃がした方が正解だ」
 リタにむかってヘルガの事を突き飛ばし、ダークムーンがグラスを人質にとって後ろに下がる。
「それでも犯罪は犯罪です。人を殺す正義なんてありません……。自分も含めて……ね」
 そう言ってガスがヘルガを守るようにして前に立つ。
「コイツに恨みをもっている奴は多いんだぜ。だったら死んで当然だろ?」
 気絶しているグラスの喉元にナイフを当て、ダークムーンが慎重に逃げ道を探す。
「例え相手がどんな奴だろうと、生きて罪を認め償わせねーと駄目だろ。殺した方が世の中良くなるだろう奴は幾らでも居るが、それを言っちゃあお終いよw」
 ダークムーンを睨みつけ、ヘルガが影縫いの矢を放つ。
「……かもな」
 どこか寂しげな表情を浮かべ、ダークムーンがクスリと笑う。
「だからって殺す必要なんてないはずだ」
 すぐさま紅蓮の咆哮を発動し、ウォーレンがダークムーンとの間合いを詰める。
「クッ……」
 そしてダークムーンはグラスの事を突き飛ばし、倒れるようにして窓から外へと逃げ出した。

「……何か妙な物音がしましたね」
 窓ガラスが割れた物音に気づく、当事者を気取る傍観者・クリュウ(a07682)が現場に駆けつける。
 現場にはダークムーンが倒れており、脇腹を押さえてクリュウを睨む。
「……現れたか」
 ダークムーンの姿を確認し、破壊魔導師・ベトレイヤー(a00870)がニードルスピアを放つ。
「こんな所にも冒険者が……」
 気まずい様子で舌打ちし、ダークムーンが物陰に逃げる。
「観念するのじゃ! これ以上逃げても自分のためにはならんぞ!」
 鞘に入れたまま愛用の剣を構え、ルビーナが2階からダークムーンの背後へと着地した。
「チィッ……」
 後ろに振り向いた瞬間ルビーナにむかってナイフを飛ばし、ダークムーンが小さく舌打ちすると再び逃亡を図る。
「危なかったな」
 着地と同時に銀のトレイを盾にして、ウォーレンがルビーナの前に立つ。
「もう少し遅かったら妾が死んでいた所じゃぞ」
 苦笑いを浮かべながら、ルビーナがダークムーンを睨みつける。
「グラスはボク達で捕まえたよ。小麦粉と称して怪しげな薬を売買していたからね。もう諦めなよ」
 そう言ってパークが再びダークムーンを説得した。
「……甘いな。まさかお前達は倉庫にあるのが、例の薬だと思っているのかい。あれは単なる小麦粉だ。本物は別の場所にあるからね」
 荒く息を吐きながら、ダークムーンがニヤリと笑う。
「やっぱり何か知っているようだね」
 ヨーヨーのチェーンを使ってダークムーンの腕を縛り、ジョッシュが次第に間合いを詰めていく。
「……言ったろ。お前達の知っている事は、パーツのひとつでしかない事を……。騙し絵と同じさ」
 含みのある笑みを浮かべ、ダークムーンがジョッシュを睨む。
「もうあなたに逃げ道はありません」
 貴族達が騒ぎに気づいて集まってきたため、クリュウがダークムーンを拘束する。
「……大人しくするんだな」
 スキュラフレイムをわざと外し、ベトレイヤーがニヤリと笑う。
「詳しい話は自警団の方達にでも話してください。私達の役目はここまでです」
 そしてダークムーンはクリュウ達の手によって自警団へと突き出され、事件は一応の解決を見せるのだった。
 その後、ダークムーンは自らの目的を果たす事なく処刑されてしまったが、その死体は明らかに別人のものだったらしい。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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