フラウウインド浮上!:星の舞う森



<オープニング>


●フラウウインド浮上!
 新大陸、フラウウインド大陸の浮上!
 それは、ドラゴンズゲート白虎帝城周辺の海域を探索していた、サンダース3号よりもたらされたのは、驚きの報告であった。
 フラウウインド大陸は、千年以上もの間海底に沈んでいたにも関わらず、浮上と同時に、その生命活動を再開させていた。
 海の底深くで眠っていた森は、太陽の光をあびて深緑に輝き、鳥のさえずりと動物達の息吹に包まれる。
 それは、神の奇跡であったのかもしれない。
 七柱の巨大な剣により封じられていたフラウウインド大陸は、いままさに、封印を解かれて蘇ったのだ。

●星降る夜の森
「既に話は聞き及んでいるな?」
 念押しとしてそう問いかけたその直後、ヒトの霊査士・ヴァルタザール(a90381)の口元に珍しく微かな笑いが漏れた。
 彼の周りをぐるりと囲む、好奇と期待に満ちた皆の目線。
 そう、この酒場に集う彼らは心底の冒険者なのだ。こんな興味深い異郷の出現、みすみす見逃すはずもない。
 サンダース3号がもたらした大陸浮上のその報せ。その影響は大小問わず数あれど、何より彼らにとってはっきりしている事が一つある。
「つまりだ、諸君。今また新たに一つ、諸君らの冒険の舞台がこの天地の間に生まれたという訳だ」
 悪意のない笑いと共に、霊査士はそう告げたのだった。
「えとえとそれで、ヴァルタザール様?」
 応じてぴょこん、と人垣の中から手が挙がる。
 早く説明を進めろとの督促らしい、一通りの話さえ終わればすぐにも飛び出して行きそうな、そんなせせらぎの小石・ミゲル(a90330)の様子に霊査士の笑みが苦笑へと変じた。
「そう急かすな。未知の大地が逃げる訳でもなかろう」
 とは言え他の皆も説明を待ちわびた様子。ヴァルタザールは呆れた様子で肩を一つ竦めると、懐から取り出した羊皮紙の紙片に目を落とした。
 曰く、拠点である白虎帝城の周囲には人工物の影もなく、ただ深い森が広がるばかりであるらしい。だがそれは、飽くまで白虎帝城から視界に納めることの出来る僅かな地域の状況であるに過ぎないのだ。
「この大地にかつて古代ヒト族が栄えていた事は間違いない。今我々が目にする範囲にその名残が見当たらないのなら、その更に外側の地域へと見聞を広げて行けばいずれ何か、見出すものもあるだろうよ」
 全てはこれからの冒険者達の活躍次第。何もわからない事が、却って冒険者の心を踊らせる。
 そう、全てはここからだ。
「それで今回の依頼だが。探索範囲を広げるに辺り、障害となる野生動物を駆除して欲しいのだ」
 野生動物。その言葉に勢い込んでいたミゲルが肩透かしを食らった様子で、きょとんと小首を傾げて霊査士を見た。
「野生動物、です? 変異動物とか――」
「変異動物やモンスターなどではなく、野生の動物だよ。フラウウインドの野生動物は、ランドアースの種と異なり相当程度に高い戦闘力を有しているようなのだ」
 怪訝そうなミゲルの言葉を遮って、ヴァルタザールは少しばかり難しい顔をした。
「ヒトデ、と言う生き物を知っているかね? 一般的には星型に広がった複数の腕を有する海生の小動物を指すが、今回討伐してもらう種は陸生でな」
 普段は群れで樹上に棲息し、獲物が下を通りかかると一斉に宙を飛んで襲い掛かる。
 一体一体の耐久力は高くはない、しかし硬質の刃と化した腕を伸ばし、高速回転を加えたその一撃は冒険者にも無視できない傷を刻むだろう。
 回転の仕方によっては、鋸で切りつけられた癒えにくい傷を残すとあれば尚更だ。
「一体一体ならばさして問題にならない敵だが、この群れは二十匹程もいる様だ。油断すれば怪我の下にならんとも限らん」
 重々注意したまえ、ヴァルタザールは表情を引き締めたままそう告げた。
「――なお、このヒトデは同盟諸国が初めて遭遇する動物になる。恐らくは今後も、他の場所で見かける事もあるだろう」
 と、その面差しが再び少々緩む。唐突に変わった話題に不審げな眼差しを送る一同にヴァルタザールが告げる事には、
「であるならば、呼び名がないのも不便な事だとは思わんかね?」
「なるほど、俺達がつけてしまって構わないって事か」
 と、話の筋が見えた冒険者がにやりと笑う。
 見た目や能力に由来するものであれ、発見者である自分達の名前を冠するものであれ、それは冒険者達の好きにして構わない――ただ、長すぎたり発音困難な名前であれば、略称になってしまうかもしれないが。
「では諸君、人跡未踏の地での冒険を心行くまで楽しみたまえ」
 そして説明の締めにとヴァルタザールが最後に贈った言葉は、沸き立つ冒険者達の耳には届かず。
 ばたばたと出て行く彼らの背を、霊査士は羨望交じりの苦笑で見送るのだった。

!グリモアエフェクトについて!
 このシナリオはランドアース大陸全体に関わる重要なシナリオ(全体シナリオ)ですが、『グリモアエフェクト』は発動しません。


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参加者
月吼・ディーン(a03486)
レインボーアフロな嫉妬殿下・シヤン(a07850)
冬将軍の末娘・アリエル(a08779)
ふわふわ綿毛のヒヨコ・ネック(a48213)
繊月・マヒナ(a48535)
ノソ・リン(a50852)
金色の風狐・クオーツ(a52276)
紫穹の医術士・パナム(a58767)
NPC:せせらぎの小石・ミゲル(a90330)



<リプレイ>


「封じられし大陸、フラウウインドか……」
 がさごそがさりと草掻き分けて、抜け出た先は少し開けた場所だった。葉っぱを一片ちょこんと髪の毛に乗せて、ふと呟いたのは銀花小花・リン(a50852)。
 木々は鬱蒼と多い茂っているけれど、視界を遮るほどでもない。前中後の三列に分かれて進む冒険者、その先頭に立つリン達三人よりもう少し前方を囮役として進む二頭のフワリンの姿を視界の端に留めながら、周囲の様子を窺う彼女の尻尾がぱさり、戸惑ったように小さく揺れた。
「この地が海底に沈んでいたなんて思えないですね。こんなに緑豊かだなんて……」
「封印されるくらいだからもっと怖い所かと思ったけど、そうでもないのかな?」
 続いて茂みを抜け出て来たのは紫穹の医術士・パナム(a58767)と風狐の便り・クオーツ(a52276)の二人。
 この風は、未知の風。古くて新しい、不思議な風。吸い込む風に未踏の大地の息吹を感じ、クオーツは表情に好奇心と緊張感をない交ぜにして深い吐息を吐く。
 一面に広がる緑の世界、一見すると何処にでもあるようにも見える景色。だが、ここはつい先日まで海底に封じられていた伝説上の大陸なのだ。
「……なんつーかこう……方向性の定まらない遊技場みたいやね……」
 たった今、前を横切った名状しがたい小動物の姿を目にしてリンがちょっぴり尻尾を巻き気味にして呟くように、この地の生き物の中には彼女らの常識からすると突拍子もない生き物が少なからず溶け込んでいる。
 今回の討伐対象もその一種。樹上から襲い掛かるという変なヒトデ、約二十体。そろそろ出てきてもいい頃なのだけど……。
「海に沈んでた生物が活動してるから、今回の依頼なんだよな。てことは、古代ヒト族とやらもどっかで眠ってて、今頃どっかで起きてたりしてな」
 今のところ、まだ見当たらない。長い事頭上を見上げ続けていた首を水平に戻すと、いい加減こきりと強い凝りを感じた。その感触に軽く眉を寄せ、レインボーアフロな嫉妬殿下・シヤン(a07850)はぐるりと首を回しながらそんな事を口にした。
 背後に続くふわふわ綿毛のヒヨコ・ネック(a48213)は、シヤンの言葉にふわふわの羽毛に包まれたこうべを愛らしく傾げ、
「う〜ん。でも、確か古代ヒト族の遺跡とか見つかってないんだよねぇ〜」
「今のところは、だろ? もしそうならいろいろひっくり返りそうだぜ!」
「ひっくり返るって、何がなぁ〜ん?」
 訝るネックに熱く説くシヤン、そんな二人の会話に晦冥なる月・マヒナ(a48535)がちょこんと首を突っ込んだとき、
「へぎゅっ!?」
「「「!?」」」
 奇妙な悲鳴が上がると共に、べしゃっと湿った地面に何かが落ちる音がした。
 すわ、敵の攻撃か!? 冬将軍の末娘・アリエル(a08779)がはっとして振り向いた先にあったのは、誰も背に乗らぬグランスティードの姿……と、まだ揺れ収まらぬ太い木の枝。
 ……その召喚獣が誰のもので、その太い枝がどの位の高さだったか。状況を素早く理解して、彼女はため息一つ零して視線と肩を下方へ落とす。
「足元にも気をつけて下さいね、ってさっき言ったばかりなのに……」
「……ひっくり返ったねぇ〜」
「そう言う意味じゃないんだけどな……」
 釣られてシヤンとネックも視線を召喚獣の足許へと落とし、やっぱり軽いため息を漏らすと共に誰に言うとでもなく呟いた。
「う、うぅ〜」
 ……注意一秒、怪我一生。文字通りひっくり返り、土塗れでぴくぴく震える奇怪なオブジェ――せせらぎの小石・ミゲル(a90330)に助け起こす手が差し伸べられるのは、とりあえずその場の全員に漏れなくため息が一巡してからの事だったらしい。


「ヴァルタザールの言葉によると普通に注意すれば発見できるとの事だが……」
 大雑把に告げられた目的の場所、ヒトデのような生き物の住処。
 月吼・ディーン(a03486)が前方の一点を見詰め、何気なく首と肩を鳴らして呟く頃には、既に数回フワリンを召喚し直す程度の時間が経っていた。
「……確かに、あらかじめ知っていたならそれほど見つけるのは難しくないようだ」
 彼がソレを見出すのが早かったか、それとも囮たるフワリンがソレに見つかるのが早かったのか、そのどちらなのかはわからない。ただ、ディーンの呟きを覆い隠すようにして、ひゅーんっ、ざくっ。落下音と硬質な何かが地に突き刺さる音が森の中に連続した。

 先を進むフワリン達の姿が霞のようにかき消えたのは、その瞬間だった。ディーンが間合いを保って見守る中、そのつい先ほどまでフワリンの姿があった空間へと風を切り裂く音を引いて、ぎゅぃぃんと回転するナニかが落ちてきて、そのまま地面に突き刺った。
 じたばた、じたばた。ぎゅいぃぃぃんっ。横に跳ねたり、縦に回転したり。落ち葉に覆われた地面に半ば埋まった状態から脱出しようと暴れているソレに、皆の視線が集中――仕掛けて、はっと気付いて頭上を見る。
 ソイツは一つ、ではない。森の中に潜んでいた狩猟者たち。落下音と回転音が幾つかすぐに、明確な殺気を伴って上方に現れたのだ。
「星が降る森、ですなぁ〜ん」
 見上げた先に在ったのは、包み込むように降り来る星見えぬ森の流星群。葉っぱの合間から差す陽の光が金属質な皮膚に照りかえり、その光景は意外にも美しく目に映った。
 でもそれは変異動物でもないのに凶暴なヒトデ達。愛でている暇などない。マヒナは少しがっかりしつつ、手にした弓に矢を番える。
「おお〜、本当に金属みたい……って、言ってる場合じゃないっ! 皆、前だけじゃないぞっ!」
「まだ、降りますよ!」
 クオーツの声音に、パナムの叫びが被さった。前に落ちた星の数が五体、霊査士が示した数は約二十体。その差分十五体は、今どこにいる?
 答えは……決まっている。警告を発した二人が揃って見上げる、まだこの四方に枝を大きく張った大木の上――つまり、自分たちの頭の上、だ。
「……っ右斜め上です!」
「わわっ、とぉ〜」
 周囲の警戒を続けていたパナムの放った警告の声を、彼の足元から周囲へ広がる淡い光が追いかけた。咄嗟に頭の上へとネックが掲げた盾に、がつんと激しく音を立てて重みのある何かがぶつかる激しい衝撃が走る。
「こいつで、吹っ飛べ……ちっ!」
「飛び越して……後ろにっ!?」
 奇襲を受けた訳ではない。だが強襲を受ける形にはなってしまった。シヤンの一閃が粉微塵に粉砕した同族の姿には目もくれず、その頭上を背後へと飛び去った影を追って素早く振り向いたアリエルの肩口が紅く飛沫いた。自らの暖かい血が勢い良く流れを成して、腕を下方へと伝うその感覚。自身に刻まれた決して浅くはないその手傷を、彼女は苦味を含んだ面持ちで一瞥する。
 最初に囮を配し、攻撃させ、目標の群れの所在を大まかに掴んだまでは順調だった。だが、相手の数と、囮の選定、付け加えるなら宙を飛ぶ事への配慮に若干欠けているところがあったかもしれない。
 ネックとパナムのフワリンは一斉に飛び掛ったろうとした内の数匹の攻撃は引き付けた。だが、フワリンは戦いを仕掛けられた瞬間に消失する。飛び掛ったと同時、或いはそれより早く目標を見失った後続の星型達は、やや混乱を見せながらも速やかに獲物と見定めた次の目標柄――即ち、僅か十メートルの距離しか離れていない冒険者達へと飛び掛る先を移したのだ。
「そっちには、行かせてやんない!」
 その中で一匹、後衛の間近に着地した敵を目ざとく見つけ、その間合いに割って入ったリンが飛び掛る隙を窺う星型を吹き飛ばす。
「うやっ。もぅ、こっち来るのはダメですよ〜?」
「こ、こうなったら一匹残らず打ち落として、流星にしちゃいますなぁ〜ん!」
 だが、周囲をぐるりと取り囲むヒトデの跳梁は止まらない。槍を振るって応戦するミゲルの髪の毛を一房切り飛ばして飛び去る獣にマヒナが幾本もの矢を続けさまに放つと、射抜かれた矢が軌道を乱してまさに流星のように草むら中へと落ちてゆく。
 戦いは、こうして混戦模様から始まった。
 

 前衛後衛の区別は、早々と無くなっていた。ただ、静かに祈りを捧げるパナムを戦場の中心とし、やはり彼を基点に生み出された淡い光の円陣――ヘブンスフィールドを戦場の限度として、冒険者達と星型の戦いは続いている。
「冒険者と互角に戦える動植物が棲むとは流石に想像外だった……が!」
 そんな中、ディーンは飛び掛ってくる星型を槍の柄で打ち払い、叩き落し、
「コード、ワールウィンド!」
 飛び交う連中をまとめて闘気の渦の中に巻き上げる。たちまち竜巻を形作った苛烈な闘気の中に、複数の星型の姿が消えていった。
「どーだヒトデども!? これならひとたまりもねえぞ〜〜!!」
 時ならぬ竜巻が、二つに増えた。シヤンの前に新たに生まれたサイクロンもまた、周囲の星型を傷つけ、屠っていく。
 竜巻が収まれば、今度はアリエルとマヒナが矢の、クオーツが光線の雨を散々に降らせる。その度に無傷の星型が傷つき、傷ついた星型が斃れてゆく。
「これで止めを刺せなくても……」
 新たな光る矢の雨を打ち上げて、アリエルは目標と定めた数体の敵を見据える。見る間に降りかかる矢が大地ごと星型を貫き、新たな朱の色を地表に広げた。
 霊査士の言ったように、ヒトデもどきの耐久力はそう高いものではないようだった。冒険者達が幾重にも重ねた範囲攻撃に打ち減らされ、既に最初の半数以下にまでなっている。
 もちろん、彼らの鋭利かつ粗雑な刃が刻みつける傷口、それがもたらす不治の出血は決して侮ってよい類のものではなかったが、
「ディーンさんとシヤンさんは、っと。うん、大丈夫だねぇ〜」
 アビリティの反動を招きやすい狂戦士のフォローもかねてネックとパナムらが呪詛を解くための祈りをささげ、
「えっぐいのは、早めに治療治療! 一曲いくぜっ」
「新しいアビ……ヒーリングアロー、お披露目ですなぁ〜ん」
 その為に傷そのものを癒す手が足りなくない時には、それを見越して癒しの手段を準備したクオーツやマヒナ達が急場をしのぐべくその術を振るう。
 そして彼ら元の後衛、癒し手たちへと向けられる殺気には、リンやがその盾となり可能な限りの攻撃を引き受ける。
 地道な消耗戦が長く続き――そうなれば当然、結果は地力と回復で勝る冒険者達の優位へと推移しつつあった。

 ――やがて。
 何時しか、星型の数は減りもはや一匹を残すのみとなっていた。途中から、逃走を図ったものも少なくはない。だが混乱のうちに連携を立て直した冒険者達に阻まれ、結局骸をこの場に晒す羽目になっている。
 そして最後に残った星型が選んだのも、やはり退路を求めての跳躍だった。その方角にはリンが一人佇んでいた。
 既に穿たれた傷は深く、速度感のまるでないその体当たり。リンは半歩身を引いてこれを捌き、ほとんどスローモーションのように肩の高さを通り過ぎようとするそいつを間近に見る。
「こいつで、最後っ」
 間近に見て、その体の中心を気を込めた指先でトンッと軽く突いた。
 途端にびくんと大きく打ち震えた星型はゆらゆら軸を揺らしながらそのまま飛び行き、木の幹に突き刺さる。
「……討伐完了、だな」
「これがこの大陸の野生動物、ですか」
 冒険者をも傷つける、星型の『手』は未だその張りを失っていない。だがディーンとパナムが交わす言葉は、既にリンの一突きが確実に星型の命に達している事を疑わぬ様子で。
 はたして二人の声で己の死を察したかのように、星型は直後にその硬度を失ってぐにゃりと捩れ、布か何かのように垂れ下がったのだった。


「……で、なのですけど。皆様、このヒトデさんの名前どうします?」
 ぴらぴら、ぐにゃぐにゃ。
 どんな作りなのかは知らないが、ヒトデさん(仮名)は生きてる時と違って死んでしまうと本当にただの軟体動物らしい。
 戦の後の一休み。腰を下ろした皆に注目を促してちょこんと足を摘んだヒトデを掲げ、ミゲルが皆へと投げた問いにリンがビシッと挙手して言うには、
「ユリシ……」
「い……いのちをだいじに、ですよ?」
 ……来たなぷれっしゃー!
 なんかそんな感じで言い終える前に猛烈な悪寒を感じたらしく、ミゲルが向けた哀れみの視線を背にして草むらの中に逃げ込んだ。もちろん尻尾はこれでもかってくらいに巻いている。実に予定調和である。
「すたーぷらち……は辞めといて、フォレスト・ミーティアとか?」
 とりあえずそちらはさておいて(主に危機回避のために)。まずは一つ、クオーツが自分の案を上げてみる。
 するとそれをきっかけに、大方の冒険者が某かの案を練ってきたようで、一時に命名談義に花が咲いた。
「メタルホッシーとかどうだ?」
「ええと……リクヒトデとか」
「あ。それ、サボテンの花の名前でもあるんだとか」
「えっ、そうなんですか?」
「森の『フォレスト』とヒトデの『スターフィッシュ』からの造語で『フォレスター』ってのはどうかな?」
「「シューティングスター、とかどう(かなぁ〜?・でしょうなぁ〜ん?)」」
 シヤン、パナム、ディーンと居並ぶ面々をほぼ一巡、最後に異口同音の声が上がる。はっとして互いを見交わすのはネックとマヒナ、その二人に他の皆の視線も集中した。
「ずばり流れ星、ですか」
 ふと、アリエルは思い返す。彼らの姿を樹上に見つけた直後、森に降り注ぐ流星群の姿を。そして、皆の名付けに多く共通する『流れ星』のイメージに改めて重ね合わせる。
 きらきらと乱舞するそれは決して儚くは無かった(むしろ逞しかった)けれど、確かに綺麗でその名に似つかわしくも思えた。
「……うん。それだけだと普通の流れ星と区別がつきにくそうだし、スターの次にフィッシュ付けてみないか?」
 クオーツがふとディーンの案から思いつき、ただ一点の補足をつけた。それ以外、更なる意見を上げるものは誰も居ない。ミゲルはぐるりと円座になった皆を見渡して、一つ頷き、そして皆と同時に表情を綻ばせた――この名前で、決まりだ。 

 フラウウインドで発見された新種の生物の名前が、討伐に参加した冒険者達によってまた一つ新たに書き加えられるのはこのしばらく後のことだった。


マスター:朝比奈ゆたか 紹介ページ
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