≪腐敗の森ナビア先遣隊≫迷宮に棲む者−Despair−



<オープニング>


●破竹(裏)
「……♪」
 真深い闇を駆け抜ける一つの気配。
 形の良い唇に小さな笑みさえ乗せ、艶めかしい吐息を吐き出す女。
「切り崩すか……いや、叩き斬るのも悪くないな……」
 壊れた弱者・リューディム(a00279)は些か脆い木偶共に多少の不満は感じつつも、それなりに嬉しそうに『解体』を繰り返していた。
 広大にして深淵。それは地獄第二層と第三層をぶち抜く通路。三十七名からなるナビア先遣隊はそこをひたすら下に降りている。
「道はつづくよどこまでも。進むよホネホネがある限り……と、怪我人さんはどうぞ言ってくださいね」
「ほぅおっ! 森羅点穴! ……ん〜? やっぱり間違えたかな?」
 何処か恍惚とした顔で白骨夢譚・クララ(a08850)が癒しの力を紡ぎ、何処か所の騒ぎではなく壮絶な笑みを浮かべた食通でも陶芸家でもない雄山・ドクター(a04327)が、腐肉だの骨だのを突いては潰していく。
「それ、良いから燃えたまえ!」
「弱い、弱いぞ! ははははははは!」
 獅天咆哮・デューク(a10704)に続き、ヤケクソ気味に高笑う緑青の剣・ライカ(a65864)。
 果てなく続く『墓穴』を柔らかなホーリーライトが照らしている。視界は問題なく確保出来たが、それは同時に誘蛾の光ともなっていた。間断なく襲い掛かってくるアンデッド達。既に何百の敵を撃破したのかは分からない。
 士気高く実力を備える先遣隊は文字通り破竹の勢いで降下を続けていたが、数時間以上にも及ぶ強行軍はそんな彼等にも少なからず消耗を与えていた。
 延々と続く単純作業。麻痺すら覚える繰り返し――
「はーい、死に損ないのお客様はどうぞこちらへー」
 ――一閃し、何故だかキラキラ笑う白鴉・シルヴァ(a13552)の気持ちも良く分かる。
 確かにこれは大した重労働。
「……♪」
「ホネホネ〜」
 ……いや、辛く無い人には辛くないのだろうケド。

●Despair
 ランドアース出発より既に一日以上が経過。
 漸く到着した折り返しの地下百階は不気味に静まり返っていた。
 縦横に広がった通路は同じ。探索者を惑わそうとする意地悪な迷宮は、大して変わり映えのしない光景だ。
 だが、進む程にパーティは違和感を覚え始めていた。
「……静か過ぎませんか?」
 長い通路を警戒しながら行く詠唱兵器・エクストラ(a37539)が呟いた。誰ともなしにその言葉に頷き合う。嫌気が差す程に襲ってきたアンデッド共がこの階には殆ど居ない。それを素直に喜べる程、そこは気持ちのいい場所では無かった。
 通路の先には大きめの部屋があった。丁度部屋を中心に十字に通路が伸びている。前方、後方、左右両方にも同じサイズの部屋がある。
「丁度良いです。ここで休憩を……」

 おおおおおおお……!

 舞朱色・ベージュ(a90263)の言葉を遮るような嫌な音が前の方からした。
「……成る程、やはり碌でもない場所ですね」
 前方の部屋を睨み、ベージュが苦く呟いた。
 そこには何処から現れたのか、奇妙に手の長い『何か』が居た。
 長い腕の先に鋭い爪を備えたそれは四足に近いような低い姿勢で乱杭の歯をむき出している。その頭部が半分『欠けている』事はご愛嬌。一気に濃密になる死臭と独特の空気は冒険者にとって慣れたもの。それがこれまでの相手とまるで違う『いけないモノ』である事は本能的に理解出来た。
「態勢を整えて――」
 ベージュの判断は早く、的確だった。
 先遣隊は三十七名。戦力を集中すればモンスターアンデッドと言えど負けはすまい。それは確かに間違いの無い事実だったのだが――

 ひひ、ひひひひひ……!

 ――しゃがれ声に似た殺気が続けて空気を震わせた。
「――っ!?」
 慌てて振り向いた誓夜の騎士・レオンハルト(a32571)の視線の先には襤褸を纏った影が居た。濃い茶のフードを目深く被ったそれの貌は見えない。まるで老人のように背を曲げ、奇妙に節くれだった杖を持つそれは前のバケモノに劣らずに、尋常ではない気配を発していた。
 影の現れたのは、先程通ってきた部屋である。
 何処からか回りこまれたのか出現のタイミングは最悪だった。
「……これは……」
 浄火の紋章術師・グレイ(a04597)は、慌てて左右の部屋に視線を投げる。そこに新たな敵の気配は無かったが……頭の回転の早い彼は瞬時に理解する。
(「戦力の集中は不可能――!」)
 前後に気を取られ戦力を配置した場合、左右に新手が現れれば中央の部屋に侵入される恐れがある。危険な敵に挟撃を受けたならば、運命は一つきり。
 つまりそれぞれに割ける戦力はせいぜいが普段の依頼と変わらないという事だ。
「やはり碌でもない場所ですね」
 ベージュは一つ溜息を吐いて、それから表情を引き締める。
「前後に十二名。残りはこの部屋で防御態勢です!」
 最初の関門が、今開く――。


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参加者
楽風の・ニューラ(a00126)
壊れた弱者・リューディム(a00279)
ファイエリィ・シエヌ(a04519)
鋼帝・マージュ(a04820)
風の・ハンゾー(a08367)
白骨夢譚・クララ(a08850)
獅天咆哮・デューク(a10704)
白鴉・シルヴァ(a13552)
超絶究極絶対無敵皇帝・ギルガメッシュ(a33171)
黎旦の背徳者・ディオ(a35238)
伐剣者・コウ(a38524)
赤髭重騎士・ウィンストン(a53335)


<リプレイ>

●不幸な遭遇II
 目の前に絶望が居る。
 文字通り心底から嫌悪感を覚えるような、根源に問いかけるような絶望が在る。
 上手くいかないから人生のようだ――とは誰が言ったか。
「……さて、案の定と言いますか。何と言いますか……」
 分かって居ても難儀はやはり難儀である。楽風の・ニューラ(a00126)は一つ溜息。帰ってきた卓袱台聖人・マージュ(a04820)がそれに応えた。
「勝手知ったる住処って事ですかね。なかなかいい場所で出てきましたねぇ」
 声。
 声がする。

 ひひ、ひひひひひひひひひ……!

 ヒトのそれに似た声。それで居て異なるモノ。
 肝胆を寒からしめ、心の奥を覗き込んでは揺さぶるような気味の悪い声がする。
「随分と御丁寧な『歓迎』なようで……」
「歓迎してくれんのは嬉しいけど……とっとと倒して休憩してぇー」
 襤褸を纏い節くれだった杖を持った老人の影。
 迷宮に響く哄笑は、不快に鼓膜を揺らす呪いの言葉のようだった。ぬめり纏わりつくかのような緊張感。僅か十数秒の内に状況そのものを変えた『それ』の存在感に白骨夢譚・クララ(a08850)は苦笑いをした。大きく息を吐き出した白鴉・シルヴァ(a13552)の口調も台詞程は気楽では無い。
「先ずは、といった所ね……。
 私達の実力を示せ――そういう事かしら」
 油断無く敵影を見据え、構えを取りながら無敵の・ギルガメッシュ(a33171)。
 現在地、迷宮百階。十字を描くように配置された四つの部屋は短い通路で繋がっている。ナビア先遣隊が中央の部屋に入った時、前後の部屋から挟撃するように二つの敵が現れた――それが始まりだった。
「まぁ……この広い場所で遭遇しただけ好し、カナ」
 判断を下したベージュの命を受け、先遣隊は戦力を三つに割った。即ちこの黎旦の背徳者・ディオ(a35238) をはじめとした『絶望』に向かう後十二人。前方を脅かす『恐怖』に向かう前十二人。中央の部屋で前後の支援と左右の警戒に努める十三人とにである。
 後方の部屋に飛び込んだ十二人の戦陣は、前衛に壊れた弱者・リューディム(a00279)、マージュ、シルヴァ、ギルガメッシュ、抜剣者・コウ(a38524)、赤髭重騎士・ウィンストン(a53335)等を立て、中衛から後衛に残るニューラ、ファイエリィ・シエヌ(a04519)、忍道・ハンゾー(a08367)、クララ、獅天咆哮・デューク(a10704)、ディオ等を配したオーソドックスなモノである。
 回避に優れ状態異常を駆使するという絶望に対し、パーティは前衛陣をU字型に包囲するような形で展開し、分厚い後衛がそれをサポートするという作戦である。
 その分担は理想的に素早い判断の下になされていたが、それは彼等が『戦い慣れた人間だから』為せる術である。彼等は咄嗟の出来事にも迷う事は無く、突破されない為に、敵を倒す為に――実に効率的な布陣を敷いたのだった。
「さて――楽しませてくれるのよね?」
 リューディムの声には隠し切れない喜色がある。
「歓迎しているのか、それともバカにされているのか」
「理由は知れぬが……計略と覚悟を持って立ち向かうのみであるな」
 理由は関係無く――只倒すのみ。シエヌの想いの後半をウィンストンが代弁した。それは言い換えれば『理由を測る余裕等無い』という事でもある。
 パーティの眼前にある絶望は言い様の無い不気味さを湛えていた。油断をすれば即座に取り返しのつかない事になりそうな、不吉そのものを体現しているかのような。彼等は何となく理解をしていた。あの襤褸が粘つく闇を吐いたなら、戦場(ここ)はどうしようも無い魔境に変わるのだろうと。
 酷く遅く感じる数秒。
 布陣を整えたパーティを嘲るかのように襤褸の影が肩を揺すった。ローブから覗く半ば実体のぼやけた闇色の霧――その死臭が吐き気を催す程に鼻に付く。
「やる事はひとつ」
 敵を見据えたままコウは静かに口を開いた。
「道を切り開く……皆の力を合わせて、ね?」
 確かにそうしなければ先は無い。
 無明の闇に呑まれぬように、絡み付く絶望を払えるように。
「腑抜けは此処まで。それでは、参ろうか」
 言い放ったデュークのロッドが、動き出した隠者を指し示していた。

●嘘吐き隠者
「後手に回るのはここまでにしたいものですが――」
 戦場をクララのホーリーライトが照らし出す。
 絶望を中心に足元を広く侵食するのは黒い澱み。
「さぁ、はじめましょうか……」
 ディオが微笑み、幕が開く。
 かくして戦いは始まった。
 迫り来るは絶望の影。迎え撃つは冒険者一同。
 競り合いの先手を取ったのは速力に勝るパーティの方だった。
「……♪」
 虚空にハミングにも似た小さな呟きが漏れ出した。
 体勢を低く獣の姿勢で床を蹴るのはリューディム。更に連携良くマージュ、ハンゾーが動き出す。
 敵の厄介さは十分に分かっていた。搦め手を得意とする敵に長い時間を与えるのは愚の骨頂。鮮やかな先制攻撃に続く短期決戦こそ勝つ為の論理に違いない。
「さて、参ろうか」
 初手を取ったのは後方から燦風を構えたハンゾーだった。鋭く逆棘の生えた力ある矢が撃ち出される。一撃は捉えぬまでもふわりと浮遊するようにして動き出した絶望を牽制する。
「ここから先は通行止めだよ」
 中央への通路を背に正面から敵に相対したマージュが言う。
「こいつを受けてみなっ!」
 ウェポン・オーバードライブにより更なる力を得た彼のモルゲンステルンは、裂帛の気合に恥じぬ威力を持って振るわれた。

 ――ガッ!

 鈍く鋭い音がして叩きつけられた超重のメイスが石床にヒビを入れる。
 一撃は絶望の襤褸を掠めたが実体の定かではないそれはいまいち手応えがない。
「まったく――」
 これまでの二手をブラインドにするようにして肉薄したリューディムが嘯いた。夢幻の如き敵の動きを彼女は逐一観察していた。
「――つれないわね、いちいち」
 得た結論は簡単だ。動きを捉えるのは極めて厄介。
 早い段階で読み切る事も難しく、前評判通り面倒が多い相手という事である。ついでに言っておけば、直接的な彼女からすれば手応えが薄そうなのも美味くない。
 だが、リューディムはそんな事には構わない。鋭く閃いた贄呑の切っ先が襤褸を散らす。
「次よ」
 短く端的な言葉は次を紡ぐ仲間への指示だった。
 素早い連続攻撃に幾らか怯んだか絶望は僅かに後退している。
「はいよ!」
 声を受けその動きを邪魔するように前に出たのはシルヴァだ。
「畳み掛けるわよ」
 そこにやはり連携良くギルガメッシュが続く。側面から間合いを詰めた彼女は、残像すら残して敵に肉薄する。
 この辺りは勝手知ったる間柄。まさに阿吽の呼吸である。
「行くぜ――!」
 シルヴァも負けじと気合一閃。鈍く爆音が空気を揺らす。二方向から僅かな時間差を経て繰り出された斬撃に黒い靄が噴出した。
「ちったぁ、効いたか……?」
 強い踏み込みにやや勢い余ってたたらを踏み、シルヴァ。やはり手応えは強くない。
「まだだ――!」
 コウが一気に間合いを詰めた。
 繰り出された重斬撃に今度は幾らかの手応えが残っていた。

 ひ、ひひひひひ……!

 だが、敵もさるもの。
 爆炎から逃れるように後ろに跳んだ絶望の身体がぶれる。
 ブン、と羽音に似た音を立てたそれは次の瞬間、複数の分身を生み出していた。
「脆弱に見えて実に磐石……」
「成る程」
 ハンゾーの呟きにデュークが応えた。彼は闇を掻き切るようにその手の杖を振るう。呼び出された虚無の爪が隠者の影を切り裂いた。
「成る程、実にそれらしい」
 影は虚ろ。攻撃が当たっていない。
 彼だけではなく、同じように虚無の腕を振るったディオもそれは同じ。
「簡単にやらせてはくれないか――」
「まぁ、そうであろうな」
 回復の柱になるクララに鎧聖の付与を与えたウィンストンが頷く。
「短期を狙うっつーことで! 当たってよ!」
 シエヌの頭上に生み出された巨大な火球が床に弾ける。赤々と燃え、空気を焦がす一撃にも絶望は平然としたものだった。
 効いていないというよりは、完全に捉えていないのが原因だろう。
 ここまでは敵は攻撃らしい攻撃をしてきていない。続け様に繰り出されているのは冒険者の攻撃ばかりでパーティは無傷の状態である。
 だが、当然いつまでもそれは続かないだろう。足元から絡み付く闇色の霧が何とも不気味で、当たらぬ攻撃は何とも言えずパーティを焦れさせる。
 そして――そんな嫌な予感は果たして現実のモノとなったのだった。
「どうも……来るみたいですよ……」
 足元に絡み付く領域の上書きには失敗。
 クララの視線の先には、杖を頭上にかざす隠者の姿があった。
「……これからが、本番です」
 そして――黒い光が雨のように瞬いた。

●絶望しない?
 呪いの雨は例外なく戦場に降り注ぐ。
 精神を冒し、毒をも与える黒光は戦場を覆う黒の領域と重なれば容易に致命傷になるそれだった。
「まだ――しっかり」
 だが、結論から言えば――ニューラがこの時を待っていたのは正解だった。
 動きのさして素早くない絶望に対し敢えて受けに回った彼女は、混乱が戦場に影響を齎すより早くその歌声を紡いでいた。

 ――――♪

 心を冒す呪いも不幸も。タイラントピラーの強力な加護の前にはまだ不足。
 少なくともこの瞬間素早く復帰する事に成功した彼女は戦場の態勢を完全ではないにせよ立て直していた。
 否。彼女は祈れば良かったのである。
「助かりました、ニューラさん」
 傍らで静謐と祈りを紡ぎ出すクララが混乱から立ち直る事だけを。
 あらゆる異常を強力に払う祈りによって、戦場を支配した一瞬の狂騒が瞬く間に晴れていく。全員が復帰出来た訳では無かったがこれは十分な効力を上げていた。
「出来るだけ急いで――仕留めて下さい」
 ニューラの青い瞳が蟠る影を映し出していた。

 ――――♪

「同感だ」
 凱歌を歌うデュークが応えた。
「何より、この部屋は居心地が悪い事この上無い」
 今は素早く復帰する事が出来たが、この後も確実にそうなるとは言い切れない。攻防が繰り返されればされる程に破綻は可能性を増すだろう。パーティが一撃で受けるダメージは決して小さなモノでは無かったし、元より地力勝負では差があり過ぎる。
 十二という別を一個に束ねて戦う事。それは今日、この時のみならずモンスターやそれ以上の脅威に向かう時、必ずと言っていい程に冒険者達に求められる必須である。『全員による同士討ち』という混乱は一瞬で勝負を決める危険性を孕んでいた。
「言われなくても」
 リューディムの切っ先が気砲を放つ。偽の影が消え失せる。
「今度こそ!」
 マージュの重い一撃に黒い靄が散る。
「……君は絶望を恐れる隠者だ」
 その動きを封じんとハンゾーは蜘蛛糸を放ち、
「そう何度も――外さないよっ!」
 今一度シエヌが作り出した火球が弾けて赤い炎を散らす。
「もう一丁!」
 大きく闇鴉を振りかぶったシルヴァは、炎に巻かれた影目掛け、叩き斬るように一撃を振り下ろした。

 ――どむっ!

「どんどん行こうっ!」
 よろめく影にギルガメッシュが追いすがる。
 パーティの攻勢はこの瞬間、確実に絶望を押していた。
 幾度と続く攻防は徐々に徐々に強力な敵を追い詰めつつあった――

 ――その瞬間が訪れるまでは。

●絶望する?
「何とか……堪えるのだ」
 殲術の構えにより攻撃こそ返したものの――同士討ちの混乱により傷付いたウィンストンは消耗を隠せない。
 戦場は酷い混乱に満ちていた。状況はほとんど最悪を極めている。全体を通じて優位に立っていたパーティだったが、それが崩れたのも一瞬の出来事だった。
 懸念していた通りの事態。這う泥の鎖を受けた時、ニューラが即座の復帰を果たせなかった時、戦況はこれまでにない悪化を見せていた。
 そこかしこで始まった同士討ちにシエヌ、ハンゾーが倒れている。ギルガメッシュに、更なる追撃から要のクララを庇ったデュークも倒された。
「このままでは……」
 絶望に電刃の斬撃を見舞ったウィンストンは苦く呟く。
「申し訳ありません――」
 ディオの毒消しの風で運良く復帰したクララの静謐な祈りを受けたパーティはこの時点で漸く我を取り戻してはいたが、パーティは短時間ですっかり傷んでいる。
「……まずい、ね」
 コウが、シルヴァが回復に回っているが、それは攻め手の減少をも意味していた。攻めが緩めば敵のペースになるのは道理である。そして、今一度先程のような事態が起きれば今度こそ致命傷になりかねない。
 攻防は続く。
「っ、ぁ――!?」
 押し切られ、脆いディオが倒された。
 戦力はこの時点で半壊。だが、絶望にも余力はあるまい。元より打たれ弱いというそれは、パーティと同じくほぼ限界で戦いを続けている筈であった。
 故に諦めない。パーティは通路に引かない。この場を任された以上は、後背の仲間達を危険に晒す訳にはいかないのだった。
「く……!」
 向かってくる影に対し、ニューラは得物の剣を構えて迎撃の姿勢を取る。
「オレが――出る!」
 そこで、ここまでは守りの動きを見せていたウィンストンが前に出た。その背後にはクララ。
「……零距離聖槍なんて如何ですか?」
 同じく身を挺しても聖槍を叩き込み、通路を死守する構えである。
「行かせないって、言ったろ」
 荒い息でマージュ。
「……♪」
 何処か恍惚。すぅと息を吸い込んでリューディムが構えを取った。
「決着、つけようぜ」
 床を蹴ったシルヴァが巨大剣を振りかぶったのと、ローブが弾け闇色の霧が辺りを包み込んだのはほぼ同時だった。
 幾つもの悲鳴と怒号、おぞましいアンデッドの怨嗟の声が迷宮に響く。

 ――決着の時。

 混乱の戦場でニューラは見た。後方の通路に逃れる黒い影を。
(「任務は、果たせた――」)
 仕留めるには到らず、追撃の余力は無くとも。背負った通路は守られた。
 気が遠くなりそうな消耗感も、それで十分報われた。


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