フラウウインド浮上!:鶏声の響く森



<オープニング>


●フラウウインド浮上!
 新大陸、フラウウインド大陸の浮上!
 それは、ドラゴンズゲート白虎帝城周辺の海域を探索していた、サンダース3号よりもたらされたのは、驚きの報告であった。
 フラウウインド大陸は、千年以上もの間海底に沈んでいたにも関わらず、浮上と同時に、その生命活動を再開させていた。
 海の底深くで眠っていた森は、太陽の光をあびて深緑に輝き、鳥のさえずりと動物達の息吹に包まれる。
 それは、神の奇跡であったのかもしれない。
 七柱の巨大な剣により封じられていたフラウウインド大陸は、いままさに、封印を解かれて蘇ったのだ。
「っつーわけで、どうにも大陸が浮上したらしい」
 ひどく簡単にその事実だけを伝えると、紫煙の霊査士・フォルテ(a90172)は酒場の窓に一度視線を投げた。日差しは眩しく、雨の予兆はない。もっとも『此処での』話だ。
「……フラウウインド大陸。お前さん達、興味はないか?」
 あるのならば、と霊査士は一つ言葉を切った。
「探索の依頼だ」
 白虎帝城の周辺は深い森となっている。木々は生い茂り、様々な花々が咲く。幹は太く、思うがままに育った森は日の光を細い筋として届かせる。この地には、ドラゴン化した古代ヒト族が暮らしていたという。だが、その痕跡たる遺跡や建造物というものが見つかってきてはいない。
「まぁ、現状見つかっちゃいねぇってだけの話ではあるんだがな」
「探索の範囲を広げようって話?」
 つまりは、と息をつく庭園の守護者・ハシュエル(a90154)に霊査士は笑みを浮かべた。
「そういうわけだ。探索の範囲を広げれば、何かしら情報が得られるだろう。……そうすりゃ、いろんな新事実も判明するだろうな」
 何が出てくるかはお楽しみ形式ではあるが、と霊査士は息をついた。
「探索の際、気をつけてもらいたいのは、鬱蒼とした森に住まうフラウウインドの野生動物だ」
 動物? と繰り返される言葉に霊査士は一つ頷いてみせた。
「あぁ。動物だ。フラウウインド大陸の動物は、ランドアースの動物に比べて能力も高くてな。アビリティに似た能力さえ持つようなやつもいる。探索の範囲を広げるには、そこら辺をどうにかしねぇといけなくなってな」
 霊査士は手に持っていた羊皮紙を広げた。
「で、お前さん等に相手にしてもらう羽目になるのが、鶏だ」
「……鶏?」
 首を傾げたハシュエルに、霊査士は一つ頷いて見せた。
「あぁ、鶏だ。言っとくが、普通の鶏じゃぁねぇぞ。鶏冠は炎。その嘴から発される鳴き声は出血のバッドステータスを与える。半径10mばっちりだ。奴さん等の登場は木の枝の上だ」
 白銀を思わせる白い羽毛。赤く尖った嘴は刃ほどに鋭く、その足は速い。
「まぁおっそろしい程強いっつーわけでもないが、向こうは25羽前後だ。数がいるっちゃーいるからな。気をつけろよ」
 戦場となるのは、木々の密集した未知を抜けた場所となる。円形に開けたそこは、下草が生え、足元に邪魔になるようなものこそ無いが戦場としては狭いものになってしまう。
「地の利は向こうにあるだろう。気をつけて戦ってくれ」
 そう言うと、霊査士は羊皮紙を片付けた。
「情報が少なくて悪いな……。あぁそうだ。今回遭遇する相手だがな、同盟にとっちゃ新発見になる。新発見つーことは、名前もなくてな。折角だからつけてやってくれ」
 外見や能力に沿った名前を考えるのも、自分の名前を冠したものでも構いはしないのだと霊査士は笑みを見せた。
「まぁ、長すぎたり読みにくかったりすると、略称になるかもしれねぇからまぁ気をつけてくれ」
 じゃらり、と霊査の鎖がなる。霊査士は静かに立ち上がると、冒険者達に向き直った。
「新大陸での初めての依頼になるな……。無事に帰って、いい土産話でも聞かせてくれ」
 武運を。と霊査士はそう言った。
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!グリモアエフェクトについて!
 このシナリオはランドアース大陸全体に関わる重要なシナリオ(全体シナリオ)ですが、『グリモアエフェクト』は発動しません。
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参加者
久遠に遠き予兆・ウィヴ(a12804)
此岸の・シス(a20449)
風声鶴唳・ゼアミ(a21108)
月蝶宝華・レイン(a35749)
薬草遣いの・リーナ(a38286)
戀唄・メロー(a48163)
荊蛇・ユダ(a48713)

NPC:庭園の守護者・ハシュエル(a90154)



<リプレイ>

●浮遊大陸
 浮遊大陸としてその姿を見せたフラウウインド。海中からその姿を見せたという大陸に足を踏み込んだ一行は重なりあった枝葉を仰ぎ、目を細める。差し込んでくる陽は弱く、少ない。
「封じられていた大陸……あの冗談みたいな剣を見れば納得するしかないですが」
 七柱の剣。上陸する前にだが、僅かに見えたものを思い出して久遠に遠き予兆・ウィヴ(a12804)は一つ息をついた。
「コルドフリード同様秘密の多そうな場所ですね」
「……確かに、不思議な場所だね」
 太い木の幹に触れ、庭園の守護者・ハシュエル(a90154)は少し考えるように目を細めた。
 霊査士より出された未知の大陸の探索依頼。踏み入れた地、鬱蒼と茂った森は柔らか陽射しの降り注ぐ地とは遠い。すん、と鼻先で潮の香りの残る風をかいで、金魚らぶ・メロー(a48163)は笑みを浮かべた。
「未知の大陸って……いかにも冒険ー! って感じでわくわくするな! しかも動物たちの王国って言うじゃないか!」
「動物の王国……なんか、ある意味間違ってもいないような気はするな……」
 フラウウインド大陸の住まう動植物は、どうにもランドアースのそれよりちょっとばかし危険で元気らしい。霊査士の話を思い出し、今回出会うであろう敵を思い浮かべハシュエルは揺れる枝葉に視線を投げた。風にまだ、少しだけ潮の香りが残っている。
 森を進む中、次第にごつごとした木の根が目立ち始めていた。興味深そうに辺りを見渡していた此岸の・シス(a20449)は、こつん、と靴の先でそれに触れながら足を止めた。
「すごいねー。ずっと海の底に沈んでたんでしょう? 海草とか生えてて景色も岩ばかりかと思ったけれど……こんに深い森もあるんだー」
 ふわり、とホーリーライトが辺りを照らし出す。柔らかな光が照らし出した足元には、細い草と思い思いに伸びた木の根が顔を見せていた。しっかりとした根は切り落とすのには時間が掛かりそうなほど、太い。とん、と飛び越え弱く吹く風に羽根を揺らしながら葬翼・ゼアミ(a21108)は口元で笑みを作った。フラウウインド大陸。そうなぞるように紡ぐ。
「面白そうですね、未知の領域というものはわくわくします」
 しっかりとその葉をつけている木。乳白色の花。木の枝をさわさわと揺らす風はほんの少しだけ潮の香りを残し、緑は濃く香る。不思議な場所だ。ホーリーライトに淡く照らし出された地面には、色の薄い草が生えていた。背の高い草をかき分け、月蝶宝華・レイン(a35749)は目を凝らす。遠眼鏡を一度おろし、地図に筆を滑らした。
「この辺りの枝は細いのね……」
 呟き、唇はゆるゆるとレイン笑みを作った。未知なるものへの興味は何時になっても絶えない。
「新大陸……やっぱりわくわくしますねっ」
 地面が少しだけ軟らかくなった。地上に姿を見せている根を飛び越え、足に触れた草に興味深そうに視線を向けた薬草遣いの・リーナ(a38286)はすい、と顔を上げた。
「……」
 耳が、音を掴む。畑に良さそうな土地はあるかと、考くえを巡らせていたリーナはついと目を細めた。不可解な音だった。風に揺れ、葉と葉が重なり合う音ではなく、かつり、と少しだけ硬質に響く。その、音にメローの指先に止まっていた小鳥が飛び立った。話しかけるはずの魅了の歌は空に残る。遠眼鏡を構えたレインがす、と先にある枝を指さした。焦げ茶色の枝には3本白い線が残っている。かぎ爪のように鋭い跡。すい、とウィヴが先を示す。細められた瞳は、木々の合間から見える日だまりを示していた。鬱蒼と生い茂る森に生まれた光差し込む場所。きらきらと光るそこに幾つか影を見つけて荊蛇・ユダ(a48713)はゆるり、と笑みを作った。
「そろそろ到着ね」
 さわさわと、何かが揺れる音がする。羽根ですかね、と静かにゼアミは言った。種族のもたらす勘は森に足を踏み入れた時から、何かを伝えようとしていた。メモをコートのポケットに畳んでいれ、双六を持つ手に少し力をいれる。弓を下に構えウィヴは足を擦るように進めた。かさり、と斜め上で音がした。ざ、と見上げれば最初に目に入ったのは燃えさかる炎の冠。鋭い嘴が開かれた。

●叫声
 耳をつくほどに高い鶏の鳴き声が響き渡る。空気を震わせたその音は、肌を切り裂く。ぴりり、という痛みと共に流れ出した血に息を吐き、ウィヴは音の出た場所へと矢を放った。
「後ろですか」
 上空へと放たれた矢が四散する。無数の矢が雨のように降り注ぎ、葉を散らし羽根を散らす。慌てたか、驚いたのか。僅かに上がった鶏の声を耳に、ゼアミは胡弓の弓を引く。高く響く音色は、高らかな凱歌となり出血をとめて、浅く残る傷を癒していく。響き渡るのは、鶏の声ばかりだ。先の一撃で数体、地面に落ちていた。飛び散った、羽根を目の端に敵に囲まれないよう背後を気にしながらレインは邪竜の炎を身に宿す。ゆるり、艶やかな銀の髪が揺れ、近く響いた音に杖を上げる。
「ゆきます」
 声は短く、静かだった。中空に描かれた紋章が、光の雨となって降り注ぎ、逃げまどう鶏たちを撃ち抜いていく。戦場は、さほど広くはない。落ちた枝に再び戻ることはできないのか、走り回る鶏たちがユダの足元を抜けていった。けこーけこー、と声高く、鶏たちが嘴を開く。頭の冠の炎が滾り、大きく羽根を広げて見せた鶏の一撃にユダはすい、と足を引いた。
「賑やかね」
 見たこともないような生き物。新しい大陸の冒険なんて王道ネ。とユダは唇に笑みを作り、しなやかな足で鶏の一撃を避けた。ふわり、と流れた髪の一房が飛んできた鶏の羽根に叩こうと飛ぶ。その一体が、振り上げられたしなやかな足に沈められる。
「っとぉ」
 鉄さえも粉々に砕くという武道家の一撃に「けこーっ」と声を上げながら鶏が飛んでいく。そのまま、二度、三度地面で転がっていく。くたり、としたその背を目で追い、僅かに下げたメローはく、と拳を握りしめた。
「動物好きとしては辛い! 身が切られるようだけど……ここは遠慮なくやらせてもらうぜ!」
 そうして、再び蹴り上げられた鶏が「けこー」と反撃の声を上げる。見事に遠慮ない、と言ったのは誰だったか。重なり、響き渡る鶏の声に負けぬようにリーナが声を上げる。
「向こうの一体、枝から落ちそうです!」
 黒炎覚醒によって上げられた力が紋章を描き、そして一気にその力を解放させていく。耳を澄まし、余すことなく音を疲労。近くに遺跡はなかった。周りは木だけだ、今のところ傷つけそうなものはない。でも、終われば植物調査もやるのだし、とリーナは力強く飛び上がった鶏の軌跡を目で追いながら、足を引き杖を掲げた。

●エンカンユキヤケイ
 レインの歌声が響き渡る。掲げられた錫杖は彼女の腕と共に揺れ、凜とした音を残す。鶏の声は響き渡っていた。数度続いたその声に、ゼアミは警戒を含め辺りを見渡す。広いとは決していいきれない戦場に、合計25羽となる鶏が現れるという霊査士の話を思い出しながら指を折る。けこーけこーと相変わらず賑やかな戦場に飛び散った羽根は10を数えた。
「半分ですか……」
 だいたい、と再び戦場を見た赤茶の瞳はすい、と細められる。鶏が枝の上を走っていた。けこけこけこけこ、と甲高く鳴く声を耳にしながらシスは純白の手袋の包まれた手を、すいと伸ばした。二度、三度と繰り返し響かされる鶏の声は、出血のバッドステータスをもたらしてくる。すん、と鼻先でかいだ匂いに血の匂いが混ざっていく。炎の鶏冠を立てた鶏達はいきり立ち羽根を広げる。不思議な鶏たちだ。これが、フラウウインド大陸に住まう普通の動物というのだから。さすがは海の底に沈んでいた大陸ということか。
「……いきなり浮上して、彼らもびっくりしてるかもね」
 けこーけこーと響く声を聞きながらシスは足で地面を叩く。ふぉん、と地面が淡い光を抱き、ヘブンズフィールドが形成された。
「これで、少しは違うかなー?」
「ーー恐らく」
 静かに応じるウィヴは、足元をすり抜け、奥へと向かっていこうとする鶏にホーミングアローを放った。追跡の矢を視界の端に、枝から飛び降り、襲いかかってきた一体を腕で凌ぐ。噛みつかれた腕を羽根で叩き、着地と同時に声をあげんとする一体に、白刃が突き刺さる。眼前、風に揺れた赤い髪にウィヴはどうも、と笑みを浮かべた。双剣を持ち直したユダがするり、と鶏の爪を受け流す。返した言葉は小さく、ゆるり、と尻尾だけが揺れる。身の軽い翔剣士は踊るように足を引き、刃を鶏へと振りかざす。白刃がきらり、と光った所で瞳が僅かに細められる。
「そこの一羽、逃げそうよ」
「木々の合間に逃げ込むということかしら……」
 応じたレインが紋章を描く。倒れた鶏たちを飛び越え、森の奥へと戻ろうとする一体にユダは地面を蹴り出し駆けた。
「ふふ、逃がしたりしないわヨ?」
 突きだした両腕が組まれ、刃を持つままに振り下ろされる。紋章の雨で足を縫われた鶏が刃を受けるのを音だけ利き、メローは足先に鋭い爪で一撃を入れ込んできた鶏に身を捩る。羽根を叩きつけ、炎の鶏冠を立てる姿に一度身を引けば、ハシュエルのエンブレムシャワーが降り注いだ。
「これで一応全員下にいるのかな……?」
 枝の上を仰ぎ見る限り、敵の姿は無い。一応、ともう一度口にしてハシュエルは戦場を見た。けこーけこー、声を上げる鶏たちはその数を半分に減らしても尚逃げ出すのは少ない。白銀を思わせる白い羽根は地面に落ち、走り抜ける冒険者たちの足元で揺れる。たん、とメローは地面を蹴り距離を開けた。ふわり、と羽根が舞う。は、と一声上げた彼の手に集まった気が一気に放たれる。こけーと相変わらずの声を聞きながらウィヴは弓を構えた。狙うは一点、敵の固まっている一角。きりり、と弓がなった。
「一気に行かせて貰います」
 そうしてナパームアローが放たれた。
 けー! と高く鶏の声が響き渡った。相手の数も最初より随分と減ってきている。何度目か分からないほどの紋章を描いたリーナは、目の端に収めた一体がよろり、とその体をよろめかしたのを見ながら声を上げた。
「アレ大怪我してますっ」
 声を上げ、指を差した一体にユダが振り返る。レインは杖を掲げれば紋章が空に輝く。
「早く終わらせましょう」
 高く、響いた鶏の声を聞きながらシスは回復を紡いだ。ひりひりとする肌。流れる血が一滴地面に落ちる。戦場は変わらず淡く輝いていた。鶏たちの白銀の羽根が、戦場を駆け抜ける両者の間がひらひらと舞う。一気に、陣を抜けようと駆けてくる鶏数体を見つけ、ゼアミは双六を持つ手に力を込めた。走り込むメローの足が一体を蹴り上げ、ハシュエルが紋章を叩き込む。崩れ落ちた仲間を見送るように、鶏が飛び上がり羽根を広げた。けこー、と相変わらずの声が響く。ウィヴが弓を引き絞り、ゼアミは黒炎に包まれた腕で胡弓を弾く。ブラックフレイムが鶏を捕らえ、空に向かい、放たれたジャスティスアローが地に沈めた。それが、最後の1体だった。

●フラウウインド大陸
 最後に倒れた一体を数にいれ、ゼアミは確かに25羽いたと皆に言った。ふわふわと、日だまりで光る白銀の羽根を見送り、ウィヴは息をついた。
「野生動物でこれとは中々手強い地のようにですね」
 ゆるり、と辺りを見渡す。一応、周りを見て回るだけの時間はありそうだ。この開けた場所は、見るかぎりは行き止まりだ。木の表面を触り、感触確かめる。リーナは少し考えるようにしてからメモにペンを滑らした。それから、また少し唸って枝に手を伸ばす。枝までは少し距離があった。
 少し当たりを探索してみることとなった一行は、注意深く、周囲を警戒しながら足を進めていた。目を細め、エルフの夜目で辺りを窺うレインの手の中には、さきの鶏の羽根があった。今のところ、遺跡の跡地のようなものには出会ってはいない。うねるように伸びた木を、興味深そうに見上げていたシスがスケッチをとっていく。奥へと歩き続け、自らの影が伸びてきた所でウィヴは足を止めた。これ以上の探索は、戻る時間が足りなくなってしまう。夜のフラウウインドはまだ危険かもしれない。ふいに、さっき戦った鶏が思い浮かんだ。この地は、中々に手強い。
「そしてこの先にあるものも……今回はとりあえずここまでですか」
 ひとまず戻りましょう。とウィヴは言う。探索の合間、描いたスケッチやメモをポケットにいれ、一行はひとまずの帰路についた。 


マスター:秋月諒 紹介ページ
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作成日:2008/08/04
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