波際の花籠



   


<オープニング>


●波際の花籠
 太陽に近い海岸のそば、常花を咲かせる村がある。
 照りつける陽射しに晒された家々は、熱を弾くよう白一色で塗られていた。

 夏が盛る頃に執り行われる、ささやかな花祭りが村の娯楽だ。
 銀砂の海岸『コスタ・デラ・ルナ』――夏の宵、美しい浜辺は生ける彩りに包まれる。

●風待の餞別
 祭りが催されるのは何のためか。
 白い村に住まう彼らの目的は、都会に住む裕福な人間と関わらない。
 朝露に濡れた草すら夕べには枯れ果てる灼熱の地で、彼らが生きて彼らの心を慰めるため、いつしか村の誇れる花と海とに触れる祭りが催され始める。高い山の頂より流れ来る川は、彼らの命そのものだった。生を潤す水は村に清涼な風を運び、赤茶けた大地にも青々とした緑を育む。白き外塀に囲まれたその村だけは、極暑の辺境にあり人が住まうに足る地だった。
 夏の盛りに開かれるフロルの祭りは、厳しい日々を乗り越えるための儀式とも似る。
 細い町の通りを埋め尽くすのは花染めの衣装を纏う若者たちだ。
 今日のためにと親に仕立てられた姿で、幼き子らまで楽しげに足取りを弾ませ、思い出したように響く祭り音に合わせて踊る。花籠を抱えた娘たちは向けられる眼差しに撒く花弁で応え、趣向を凝らされた小さな噴水を置く広場に急いだ。
 午後になれば、七色に変じるランタナの飾られた山車が町中を巡り始める。
 葡萄、真朱、鬱金、象牙まで様々な濃淡に分かれた花々は楽園の存在すら人々の胸に抱かせた。
 ブーゲンビレアの木々は鮮やかな躑躅と紅緋の色に花を咲かせ、深く枝先を垂れて風の過ぎる憩いの木陰を作り出す。人目を忍ぶように身を潜ませて、日の高い頃合いを微睡み過ごすも良い。
 休息を求めて屋内に入れば、白きゼフィランサスを編み込んだ美しいカーテンが窓辺で揺れる。
 夕照も沈み夜空を澄んだ星明かりが包めば、人々は終焉を感じて町外れの川原を目指した。
 そして彼らは深窓の令嬢とも劣らず大切に育まれた、繊細なカーネーションの花を水に流す。

 それが、祭りを終える合図だ。
 白と紅の交じり合うチェリーセージが作る道に導かれて歩けば、死んだ珊瑚より化した輝く銀砂の浜辺にまで辿り着くだろう。鮮烈と呼ぶよりは只管に優しい色合いのハイビスカスが花開き、潮風の吹きつける黒々とした海に顔を向けていた。
 やがて夜の海には白い花々が流れ出す。
 月の綺麗な晩であれば純白の絨毯がより鮮やかに見えるだろう。
 本来の嘆きは失われたものだとしても、その色に今の彼らは何を篭めるのか。

「噎せ返るような花の香りに興味があるわけじゃないの」
 ただ気が向いただけ、と荊棘の霊査士・ロザリー(a90151)は微かに視線を伏せた。
「向かうのであれば自分のために動けば良いと思う。……昼間はとても暑いけれど、夜になれば冷え込むみたいだから、風邪を引かないように気をつけて」


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参加者
NPC:荊棘の霊査士・ロザリー(a90151)



<リプレイ>

●波際の花籠
 燦々と輝く真夏の陽射しから逃れて日陰に入る。
 華やかな祭りの喝采よりは、背を預けた壁の冷えた熱に気が向かう。
 何が楽しくてか踊り続ける人々を眺め、無意識に懐へ手を伸ばすも、指先が煙草に触れてからグラースプは僅かに逡巡した。軽く息を吐き出しながら、何を得るでもなく腕を落とす。陽光は如実に世界を区切るようで、凍った体温ばかりを身近に感じた。近く聞こえる笑い声さえ酷く遠い漣のようだ。
 ふと深緋色の花弁が舞えば、彼は眉を顰めて顔を背けた。
 煙るような香りに微か呼気が乱れるも、知人の姿を見い出せば薄い笑みを敷き直す。
「……何処へでもお付き合い致しますよ」
 感謝に続けて彼が語れば、コーリアは少しだけの躊躇を挟んだ。
 言葉に甘えようと決めれば、こっち、と微笑んで思う方角に足を向ける。照らされる夏の白さは痛いほどに鮮烈だから、胸の軋みから逃れるように色の和らぐ影を選んだ。路地を進みながら潮の香りを鼻先に感じる。気侭な足取りを許してくれる同行者を振り返り、有難う、と彼が費やしてくれる付き合いの手間を喜んだ。
 村をぐるりと囲んでいる背の高い塀に登り、シラヌイは賑やかな花祭りを眺めている。
 あちこちに咲いた花々の美しい色彩のみならず、明るい広場の空気まで描き留めようと画用紙を広げた。筆先を浸せば、水に絵具が波紋を生む。それだけの時間が不思議なほど楽しい。置く色を増やすたび、新たな喜びが胸の裡に湧き上がる。
 天頂に達した太陽の光は、じりじりと肌を焼くようだ。
 気難しい土地に住まう彼らに驚きはするも、守るものがあれば離れがたいのかもしれない。
 シャルティナは額に滲んだ汗を拭いながら、輪から離れた村人たちに祭りの理由を尋ねた。彼らは顔を見合わせ、死者が迷わず海に発てるようと答える。多岐に渡る意義を思い返せば問い方が悪かったと気づくも、質問を重ねて内情に水を差すのは気が引けた。
 特に大気が熱を帯びる刻限、シーナは現れた待ち人に恭しく礼をする。
 持参した白の影を差し掛けようとすれば、王女は微笑んで「気に入りの品がありますから」と淡藤色の日傘を広げた。緑の気配に包まれた噴水の脇を過ぎ、がらがらと動き出した山車を避け、木陰を目指しながら彼は思う様を語る。
「人々が託した想いが、どこへ行き着くのかを見届ける為に」
 夜は海辺へ赴くつもりだと彼が告げれば、ベアトリーチェはころころと笑い、誘って頂きたいくらいですのにと目を細めた。
 そんな彼女をエリスは棘の生える蔓が作り出す陰に迎えて、花を見上げながら夏らしいものを好ましく思うらしい自身を述べた。灼熱の地で咲き誇る力強さが、より彼らの魅力を増しているのかもしれない。常夏の大陸も大好きな場所だと続ければ、とても楽しみだと王女はそつの無い笑みを湛える。
 更に暑さも増したかと思えば、リューは王女を休憩所に誘った。
 弧を描く階段から通じる窓辺の露台が持つ役割は、眺めの良さを齎す以上に爽やかな風を運び込むことなのだろう。視線の高さまで舞い上がる花弁に目を留める素振りもなく、王女は長椅子に腰掛けると穏やかな眼差しを軽く伏せる。情景は人により姿を変えるのだろうから、彼女の瞳に映る何かもまた興味深いと彼は感じた。
 やがて太陽は傾き始め、世界を照らす輝きが深い赤みを帯びていく。

●風待の餞別
 人々の想いに触れるのは原点を見詰め返す良い機会だ。
 彼らの言葉を耳にする必要などなく、ただ笑顔さえ在れば全て届けられる。自身に掛けられた重みを実感するたび、先に続く誓いの喜びに胸が震えた。白い村に存在する全てのものたちから、自分の守りたいものが何であるか確かめることが出来る。内にある人々の想いも忘れられぬのだとガルスタは強く己の肝に銘じた。
 月桂樹の葉を思わせる深い色合いのショールを腕に引っ掛けて歩くと、何故か荊棘の霊査士・ロザリー(a90151)は首を傾げる。気に入っているのだと微笑めば、霊査士は少しだけ目を逸らして悩めるように沈黙した。レインは特に問いを重ねず白の積まれた山車を見遣り、夜に海を満たすだろう花灯りに思いを馳せる。
 もしも自身が花を流すのであれば篭める想いは感謝だろうか。
 ずっと変わらないものだからこそ選び取りたく思う。
 後はまた出掛ける機会を得られるよう望む気持ちかと呟けば、目的を知らずに篭めて構わないなら、好きにすれば良いと思うけれど、とロザリーは気遣いにも似た曖昧さで息を洩らした。
 村を外れて、高台を目指す。
 乾いた岩々に躓きかけながらも登り切り、振り返れば茜色の空が朱色の雲を漂わせていた。
 まるで村自体がひとつの籠であるように思えて、内包する花々の潤いもより愛おしく感じられる。
「……あのね、クロ」
 ルーツァは微かな躊躇いを振り払いながら囁いた。
 どんなに素晴らしい景色だろうと、欠かし難いものがひとつだけある。
「美しい風景を目にするたび、貴方の姿を思い浮かべるようになりました」
 告げながらも、導き出した答えを隠すように俯いた。
 精一杯に意地を張る、臆病な自分に泣きたくなる。
 思いを語る言葉が途切れると、クローチェは溜息混じりに手を伸ばした。彼女の表情を隠す帽子の鍔を捲くり上げ、今のは告白かと揶揄するような口振りで問う。判り易い狼狽を映して揺れる瞳を眺めれば、彼自身にも平穏から遠い動揺染みたものが浮かんだ。
「別に、どんな結論を導き出しても構やしねェけど」
 気懸かりなことは他にあると呟きながら、彼女の額に掠めるような口付けを落とす。
「なァ、笑って」
 強請るように囁けば、ふたりの間を冷えた風が過ぎた。
 夜の気配は知らぬ間に足元まで忍び寄る。
 この高台から村を見下ろせば、花の絨毯も見えるだろうか。
 朱の濃淡に導かれて辿り着いた浜辺で、エッシェはちらりと白の村を見遣る。その有様は花を抱えた籠のようにも、花を包む萼のようにも思われた。夕陽が半ばまで沈む頃、不意に風が止まり遠い白波は姿を消す。凪の刻限と知れば息も止め、静止した世界で音もなく打ち寄せる海を見た。
 留まらぬ時間に指先を掛けて佇むも、終わらぬよりは好ましいかと胸一杯に息を吸う。
 日が落ちれば程無く上流より花々が流れ出で、動き出した波たちが白さを少しずつ攫い始めた。星月夜の下で漆黒に染められた水の上、思う様に揺蕩いながら花の絨毯は柔らかに広がり行く。祭りの意義が村人の儀式にあるならば、彼らの信仰は不可侵のまま留めておきたい。濃厚な甘さから漸く解放されたような気もして、髪に絡む潮風は安堵に似たものをヴィアドに齎した。けれど、見目に現れる花祭りの華やかさは、何処か彼女に似ていると思う。
 それぞれに見える白は異なるのだろうと彼は僅かに瞳を細めた。
 ネフィリムは夜の水辺に漂う独特の冷気を払おうと、鮮やかな珊瑚色に染められたストールを確りと羽織る。海に揺れる儚さは空恐ろしくて背筋が凍えるようだ。元来、咲く花はとても好ましいものだけれど、黒い海は本当に想いを護ってくれるのだろうか。
 それでも隣に立つ人を思えば、心の漣はすぐに安寧を取り戻す。
「……大好き、です」
 彼女は気恥ずかしげな笑みを見せ、彼から与えられる幸福に深く感謝した。

●銀砂の海岸
 大地から熱が引けば、風は急激に冷えていく。
 温いのかも判然としないようなサングリアには、檸檬と白桃の果肉が浸されていた。エルサイドがグラスを手にしたのは酸味と甘味の滲み出た飲み頃で、つい杯を増やして心地良く酔えば足取りも軽く水辺に向かう。海と浜との境目は白と黒を別つ線のようだけれど、寂寞とは思わないから逃れず砂地に腰を落とした。
 何処を眺めても視界には綺麗なものばかり映るようだ。
 強い明かりに照らされるほど深みを増す海は、静かに波音を立てて人を眠りへ誘う。
 木々に包まれた緑の静けさとも異なる、隔てられた肌寒さは温い風より余程好ましい。
 もしや夢の側に踏み込んだかと錯覚するような数瞬が確かに訪れては去って行く。紡ぐ役割には未だ届かず、生む立場は然して望まず、ただ秘められた煌きに気が惹かれた。慰めに篭められたのは願いなのか祈りなのか判らずとも、厳暑の地に在ればこその美しさは確かにあるのだと知っている。
 ツェツィーリアは少しだけ眉を寄せ、誰にも届かぬ密やかな呟きを零した。
 例え意味を持たぬにしろ、繰り返される営みは命を満たすだろう。
 冷え行く砂浜に膝を抱えて座り込めば、自分の体温が徐々に削られていくような感触を覚える。心穏やかに過ごしたいと願うのに、何故か涙が頬を伝った。今日は零さないため人を避けたはずなのに、海から感じられる優しさが想いを掘り起こしてしまうのかもしれない。無理に自分を落ち着かせると、マシェルは寝転んで耳を閉じた。心を動かす誰の声も聞こえない代わりに、波の砕ける音ばかりが彼女のもとに届けられた。
 靴の先が潮水に触れて濡れ始める。
 ヨハンは波際に立ち尽くしたまま、人の至れぬ海上を進む花々を見送った。流れる花々の行く末は、限りある命の様にも重ねられる。瞳に宿す羨望が別れの言葉を紡がせた。既に発った友を思えば、何れ去る自身の未来さえ見通せる。祭りの仕舞いを告げる白さは、どうにも避け難い物悲しさを呼んだ。流れて消える花々が例え戻らずとも実を残すように、僅かなりとも何かを残すことが出来ればと願われてならない。
 月光を好む人なら、浮かぶ灯火を厭うだろうか。
 他者の邪魔はしたくないと思い改め、カナエは同行者の手を引きながら星明かりに照らされた道を下る。夜の輝きが照らし出せるのは僅かな白の揺らぎ程度で、花が彼方に姿を消すまで見守り続けるのは困難だ。波間に呑まれる白さだけが近く見えたから、彼女の存在を確かめようと強く手を握る。抱えた不安が伝播したろうかと微かな焦りも感じながら、カイは安堵を促すようにその手をそっと握り返した。
 ふと洩らされた呟きに、別れは等しく辛いものだと思い出される。
 カイは他者の痛みを忘れていた自身の浅慮を恥じながら、自分もまた彼女の存在を喜ばしく思うと同調した。肩を寄せ合いながら見る波間に、まだ多くの花々が飛沫を浴びつつ浮いている。あの白さに篭められた想いが、全て昇華すれば良いのにと他人事ながらも願われた。
「お帰りなさいませ。……やっと、お会い出来ましたわね」
 肩に外套を掛けてやれば王女は挨拶を述べ、様々な感情の入り混じる複雑な笑みを湛える。
 ドライザムは軽く顎を引いて頷きながら、いつかと同じように摘まみの類をずらりと並べた。乗り越えた日々は笑みに深さを与えるのだろう。藤花の意匠が施された玻璃杯には、それぞれ淡い黄金色の葡萄酒を注ぐ。銀砂の地から見遣る遠い花々は、生きる想いそのものと見えて共感すら覚えた。
「今この時、この幸せに」
 言葉を重ねて幸福を願う花束を渡せば、彼女は瑞々しい青に目を落として緩やかに瞳を細めた。
 そして戯れるような響きに連ね、ベアトリーチェはにっこりと微笑む。
「何れ、わたくしから強請れるような関わりが持てれば良いのですけれど」

●純白の絨毯
 花の編まれた窓紗が夜風に煽られて音を立てる。
 触れているだけで満たされるから不思議、と甘えるように身を寄せながら彼女は穏やかな声音で呟いた。月が天上に達して部屋に影ばかり落ちれば、冷えた頬を優しく撫でて唇を重ねる。生まれた熱が白い頬さえ朱に染めるまで、奪うような深い接吻が続けられた。柔らかな白い寝台に、夜を思わせる深い蒼の髪が散らばる。
「……求められるほうが何よりも愛しいから」
 その上に長い銀の髪を重ねながら、身を震わせる彼女の耳元で低く囁いた。
 嗚咽を堪えるように声を抑え、潤んだ瞳の見開いた端から涙を零す。
「愛して、欲しい、です……」
 願いを紡いでしまえば、身の置き場も無いような顔をした。
 籠の花を愛でるように腕で閉じ込めたまま囁けば、彼女はイドゥナに抱きついたまま繰り返し頷く。束縛すら甘くて、彼女は声もなく静かに泣いた。
 作られた水の美しさも、陽に透けた花の彩りも覚えている。
 それでも昼しか映らぬ祭りの鮮やかさが失せ、闇の中でこそ見い出せるものばかり場に現れた。
 綺羅星が瞬く間にも海原に散り浮かぶ白は身を隠し、また波間から姿を見せる頃にはどちらが夜空かも判らなくなる。夜を映して黒々と広がる海に咲いた白い花は、黒い空に咲いた白い星に似て見えるのだ。互いに補い合うような輝きが、ファオに命の交わりを彷彿とさせた。天に還る魂が、地と空を繋げるようだ。
 白い花々は彼女の身近にも、様々な記憶を伴い咲いている。
 巡り巡る全てを胸に抱いて、日々を歩もうと先を見遣った。
 切り立った崖の縁から弾ける波を見下ろせば、心が落ちていくような言い知れぬ恐怖に包まれる。
「こうして見送るだけなのは、寂しくて……」
 恐ろしくも感じるのだとエニルは静かに目を伏せる。
 波に攫われる白さは、まるで死者へ手向ける告別の花だ。
 羽毛を織り込んだ温かな外套を纏っていても、寒さとは無縁のところにある何かが身を震わせた。尖る潮風の吹き荒ぶたび、突然の別離を確かな実感に変えてしまう。想いさえ切り離せばただ美しいと述べられる情景を前に、深い影ばかりが差していくような錯覚に囚われた。
 初対面の相手に同行を願った点を詫びれば、ベアトリーチェは言葉少なに返答する。
「……いいえ、お誘いは嬉しく感じています」
 彼女の眼差しは、海に映る白い月へと向けられていた。
 顔見知りと擦れ違う偶然にも巡り合わず、冷たい静けさばかりを間近に感じながら、ジョージィはざりざりと音を立てて砂浜を歩く。漆黒の外套を風に靡くまま好きにさせれば、刺繍された金の薔薇は幾度も月光に煌いた。死んだ珊瑚たちは夜の光を吸い込んで絶えず白銀に輝いている。死が産んだものは繰り返される生なのかと、答えを求めるでもない夢想を浮かべた。
 まだ戦えるだろうかと、自分自身に問い掛ける。
 大切なものは櫛の歯が欠けるように消えて行くから、誰のせいでもない虚しさの量は胸の裡に増すばかりだ。それでも、まだ己の終わりには遠いと取り戻せるものに意識を向けた。
 白い村に住まう人々が、自らの命を育む川に白を流す。
 その在り様に因果を感じながら、ヒヅキは冷えた世界を見渡した。
 やがて花の白さすら闇に包まれて溶けるのだろう。篭められた想いが水に沈めば忘却を招くだろうか。重ねる日々に本来の嘆きが失われるなら、何れ仕舞いすら訪れるのだろう。それでも命が溢れる夏に失ったものは多過ぎて、刻まれたものは消えず胸に留まり続けた。
 此処も何処かに似ているのだろうと詮無き想いが脳裏を過ぎる。
 溶け出したものが再び凝り固まる時を待ち、ヒヅキはただ只管に夜の海を眺め続けていた。


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参加者:26人
作成日:2008/07/30
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