氷の大陸コルドフリード〜氷原の民・タロスを訪ねて〜



<オープニング>


「ずいぶんいろいろな成果があったようだね」
 鍛練の霊査士・ジオ(a90230)が、報告書から顔を上げる。
「探索に参加してくれたみんなは本当にお疲れ様だった。……まだ報告書を読んでない人はぜひ確認してみてくれ」
 報告書とはむろん、先だってのコルドフリード大陸探索の結果のことだ。
 たくさんの冒険者がかの地に足を踏み入れ、情報を持ち帰ってきたのだった。
 その中には、タロスの集団との接触も含まれていた。そして冒険者は、かれらの集落を訪問させてもらう約束をとりつけてきたのである。
 かつて、『コルドフリード探索隊』が別のタロスの集落を訪れたことはあるものの、今度のそれはまた違う場所だ。規模の大きい集落に、多くのタロスが暮らしているというから、そこへ赴くことができれば、新たな情報を得ることが期待できるだろう。
「と、いうわけで、コルドフリード大陸のさらなる探索を行おうと思うんだ」
 霊査士が酒場の冒険者たちに呼びかけを行う。
 
「探索の流れを説明しよう。まず、きみたちはグレートツイスターへと転移を行う。今のところ、それだけがあの大陸への実用的な移動手段だからね。現在、グレートツイスターの周辺には、さまよっていたタロスの難民たちが集まってきている。ドラゴン界が出現したことで住処を失ってしまった人たちだね。かれらにも何かしてあげられるといいなあとは思うのだけれど……」
 探索の本題からは外れるかもしれないが、困っている人々に手を差し伸べるのは冒険者として正しい行為だろう。ましてそれが、ドラゴンの脅威にさらされた種族であり、もしかすると未来の同胞となる種族であるならばなおのこと。
 
「さて、それからまず向かってもらうのは、クレバスの中に見つかった小さな居住区だ。アトラさんと言ったかな? ドラゴンの出現で孤立してしまっていたというタロスさんとその仲間たちだね。今回の探索は、かれらが元いた集落へ戻るのに同行する形で行う。氷原を旅することになるから、備えを忘れないように。グレートツイスター周辺は、前回の探索でかなり安全が確保されたけれど、他の地域では危険な動物や、ひょっとするとはぐれドラグナーと遭遇するかもしれないしね。あるいは吹雪など自然の脅威に行く手を阻まれることもあるだろう」
 備えあれば憂いなし。前回の報告書を参考にしたり、状況を予測したりして、対策を立てておくことが大切だ。
 
「そして、タロスの集落に着いたら、そこからが肝心。ここで得られる情報は、今後のコルドフリードの冒険の方向性を決める重要なものになるだろうから、しっかり頼む。前回の報告書や、『コルドフリード探索部隊』の記録を見る限り、タロスたちはとても友好的な種族だ。でもその好意に甘えるばかりでなく……そうだな、きみたちは『ランドアースの代表』だと考えて、それにふさわしい行動をしてほしいと思う」
 霊査士はそう言うが、コルドフリード大陸についてまだまだわかっていないことが多い現状、考えられることは何でも試してみたい。集落でどのような行動をするか、タロスたちにどんなことを訊ね、あるいは要求をするのか――。冒険者の機知が必要になるだろう。
 
 未知の大陸、未知の種族との接触。
 このことに好奇心を刺激され、心の躍らない冒険者はいないのではないだろうか。
 冒険者たちの瞳に、その輝きを見てとった霊査士は、深く頷き、皆を送りだす。
「では、頼んだよ」


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参加者
NPC:走る救護士・イアソン(a90311)



<リプレイ>

●極北
 コルドフリード大陸に、同盟諸国より多数の冒険者が降り立った。この地の種族・タロスたちと交流を持つためである。
 グレートツイスターの周辺には、先の探索の際、付近で見つかったタロスたちが集まっていた。かれらはドラゴンが出現したことで住処を失ったものたちである。
 今、かれらの間にいい匂いが漂っていた。
 ペルレ(a48825)、そしてクリス(a71323)が、シチューやカレーといった体の温まる食べ物の炊き出しを行っているのである。
 ラトレイア(a63887)はヴァイオリンを奏で、幸せの運び手の恩恵をもたらす。
「なにかお手伝いできることある?」
 そう訊ねると、多くのタロスからは、
「旅に出る準備を手伝ってもらえると嬉しい」
 という応えがあった。
 住処を失ったのに、旅とはどこへいくのかと反問すれば、まず沿岸へ行って食糧を確保し、それから新しい居住区を探したいのだそうだ。
「タロスの人たちって釣りをするの?」
 ラルド(a74703)が聞くと、よく海で魚を釣るというので、ラルドはなんだか嬉しくなる。一緒に釣りができればきっともっと仲良くなれるだろうと思ったのだ。
 同時にふと、機械の体をもつかれらが、魚を釣ってそれを食べるのだろうか?と考えたが――振舞われている炊き出しの食糧のゆくえを見る限り、タロスも普通に食べ物を食べるらしい。
 どうも同盟の冒険者が思うほど、タロスたちは、ひどく困窮しているというわけでもなさそうだった。ドラゴンの襲来は災厄であったが、それを越えて今、生きているタロスは、前向きに生き続けることを考えている。
 それでも惜しみなく援助の手を差し伸べる冒険者たちに、タロスは素直に礼を言い、感謝を述べていた。
「タロスさんたちって、いい人たちだよね……」
 呟くラトレイア。

 キヤカ(a37593)はヘルムウィーゲ(a43608)と連れだって、もしやデュンエンの集落のタロスたちがいはしまいかと聞き込みに回ったが、残念ながら収穫はなかった。
 正確にはわからないが、あの集落と、現在地とでは離れすぎているということだろう。
 一方、フーリ(a26627)たちは、尋ね人を探し当てていた。
 先の探索隊が出会ったタロス――ルカイザである。
 フーリが属する【北縁】の面々や、他の冒険者たちも、彼の周りに集まってきた。これが再会となるものはその挨拶を、初対面のものは名を名乗る。
「お腹すいてない? 飴ちゃんいる?」
 フーリが差し出した飴玉を、ルカイザは、いただくよ、と言って――顔の、口に当たる位置がぱっくりと開き、飴玉をそこに放り込んだ。
 口だ! 口が開いた! ざわ……と、ひそかなどよめきが一部の冒険者の間に起こった。 マルクドゥ(a66351)は興奮気味にその様子を絵日記に描きとめ、クィンクラウド(a04748)はルカイザが飴玉をかみ砕く音を聞く。
「?」
 大勢に注目され、やや戸惑った風のルカイザに、冒険者たちはその後の様子を訊ねた。
「おかげで、だいぶ落ち着いたよ。ここで同じ集落の生き残りにも会えたんだ」
 その話に、ルドフォーン(a57266)は何よりだったと安堵の息をつく。
 そんな中、グウェン(a65958)は、地図を広げて彼に質す。
「……貴殿の集落は、此処ではないだろうか」
「俺らは、前回の探索の時に、ひたすら北を目指しててさ。グウェンの旦那が見せた地図にある集落の中で雪嵐を避けて助かったんだ」
 と、ラドファーン(a57263)。
 冒険者たちが位置関係を説明すると、どうやらルカイザの集落ではないかと思われた。
「……良い知らせではなくて、残念だけれど」
 シュウ(a41964)が切り出したのは、その集落が、完全に破壊し尽くされたあとだったという話だ。
 酷かった、と同じくそれを見たハーツェニール(a52509)も言葉を重ねる。
 どうすることもできなかった無力感をにじませる冒険者の様子に、ルカイザは、そうか、やっぱりダメだったか、と言った。
「それでも元の集落へお戻りになりたいならば再度準備を整え送り届けよう。我々は貴殿の意志に従う故」
 ロー(a13882)のその言には、しかし、ルカイザは首を傾げた。
「でも壊れてるんだろ? なら戻っても仕方がない」
「いつまでもここにいられないのじゃない? まだはぐれドラグナーがいるかもしれないし……」
 戻らないならこれからどうするのかと、シルキー(a74872)が意向をうかがう。
 そこへケラソス(a21325)が、提案を述べた。
「この先のクレバスの居住区におられるタロスの方たちが元いた大きな集落に戻ろうとされていますわ。その集落に受け入れてもらえるようお願いしてみてはどうでしょう。あるいは他にご存じの集落があれば、そこまで送らせていただきますけれども」
「そうか、そんな場所があるなら、それもいいな。空きがあるなら入れてもらえるだろうし」
 ルカイザは応えた。

●出発
 リン(a50852)の駆るグランスティードと、それに同乗するカルア(a28603)とが戻ってきた。先駆けて、クレバスの居住区のタロスたちと話をしてきたらしい。
 グレートツイスター周辺のタロスを同行させても、そのあと空き家になる居住区を引き渡すのも、何も問題もないそうだ。
 タロスたちにホットチョコレートを作ったり、サンドイッチを配ったりして、グレートツイスター周辺で待っていたセト(a47397)たち【白秋】の仲間にとっても、それは朗報だった。
「どちらのほうに行くんですか?」
 獣除けに立てた松明の火にあたりながら、リゼッテ(a65202)が訊けば、経路を確認してきたリンの口から、沿岸部を目指すのだと答えがあった。
「よし、じゃあ、準備を手伝うぜ」
 ルゥイ(a74320)が、タロスたちの出立の支度に手を貸すべく動き始めた。

「ハイ、アトラ。元気だった?」
 移動を希望するものたちを連れ、クレバスの居住区へ向かった冒険者たち。その中のひとり、ローザマリア(a60096)こそ、タロスのアトラと初めて出会った冒険者だった。
「ええ、調子はいいですよ。いつでも出発する準備はできています」
 アトラたちに変わりはない様子だった。
「この居住区が空いたあと、使わせてもらってもいいの?」
 コトリ(a70928)が問うのへ、アトラはちょっと不思議そうに肯定の返事をする。
「空いている居住区なら、誰が使おうと自由ですから」
 そんなわけで、グレートツイスター周辺にいたもののうち、遠くまで旅しなくてもここに空いている居住区があるのならそれでいいと考えた幾人かが、ここに移り住むことになった。
 ルカイザたちはアトラの集落へ赴くことになるが、「おそらくまだ空きはあったと思いますから」と、これについても、さして頓着していない様子だ。
「今後、皆様の生活の安定を図るのであれば、集落の修復か新規設立が必要ではありませんか?」
 ロティオン(a38484)がふと口を開いてそんな意見を述べた。
 たしかに、ドラゴンによって破壊された集落もあるのだから、もっともな話だと同盟の冒険者には聞こえたのだが。
「労働力や資材が不足なら、同盟も助力できます。宜しければ国交を検討いただけませんか」
「国交というのは……どういう意味でしょう? 新しく居住区を作るなんてできませんし、探せばまだあると思いますから大丈夫ですよ」

●旅路
 そうして、数十名のタロスたちと、同盟の冒険者との、氷原の旅が始まった。
 タロスたちを内側に護るようにし、周辺を同盟の冒険者が囲んで、隊商のごとく列をなして進む。
 冒険者たちは何名かずつのグループをつくって護衛についた。列の先頭は【爪】が、殿は【アシュラバスター】が務める。そしてもっとも人数の多い【北縁】はその内でさらに3つに人員を分けて、列の先方、中間、後方を担う。そして【南の翼】【花緑】【城壁隊】【白秋】といった他のグループがその間を埋めるように付き添った。
 ニール(a66528)は移動しながら、コルドフリードの大地は見渡す限り雪と氷ばかりなのを見てとる。多少の起伏はあれど、おおむね、どこまでも平らな地平が続いていた。こんなところに人が住めるというのが驚きだ。先の冒険で負った傷に、気温の低さがこたえた。
 カナタ(a32054)は地図とにらめっこだ。すこしでも特徴的な地形をみとめると、せっせとそれを書き込んでいく。未知の地を行く緊張感にまじって感じる気持の昂ぶりは、冒険者のさがというものだろうか。
 アガート(a01736)はグランスティードに騎乗して、隊列からつかず離れずの距離を保って歩く。コツコツと、蹄が硬く凍った地面を叩いた。
 同じくグランスティードに跨ったバド(a26283)は、雪に隠れた氷の亀裂などがないか注意しながら歩いていたが、ふと顔をあげると、タロスが自分やアガートらのグランスティードを興味深そうに見ている視線とかちあった。
「歩き疲れたら、乗るか?」
 と、誘ったが、相手は遠慮してかそれを辞した。
「コルドにはこういうのいないのか?」
 その質問に、タロスは首を横に振る。

 陽が射せば、雪と氷がそれを反射し、あたりは眩しいくらいだ。気温は低いがそのぶん空気は澄んで、高い空は抜けるように青い。そんな風景の中を歩きながら、自然と、タロスと同盟冒険者たちの間に会話が交わされ始めていた。
 【花緑】のタケル(a06416)はタロスの荷物を持ってやったりしながら、コルドフリードには草花はないのか、と訊ねた。タケルの髪に咲く薔薇を一瞥し、タロスは言う。
「集落の中でそういうものを育てているところもあるみたいですよ。でも外では育たないでしょうね」
 そんな言葉を聞いて、メリーナ(a10320)が瞳を輝かせる。前回の探索では、植物を見つけることができなかったのだが、まったく花の一輪も咲かないわけではなかったのだ。
「ランドアースは花や緑がいっぱいの土地で、ここより暖かいところなんです」
「へえ、それは面白そうなところですね」
 そのタロスはメリーナの話に興味を示したようだ。
「……それで、そのランドアースという場所は、歩いてどれくらいの距離なんです?」
 だがそう続けられるとメリーナも苦笑するよりなく。

 一方、ルカイザは、グウェンのグランスティードの後ろに乗せられていた。
「歩かなくていいのは楽だが、妙な感じだな」
 そんな感想を述べながら揺られているルカイザに、グレイ(a27749)はタロスの集落はどんな所かと訊ねた。
「……じゃあ、みんな氷の中に?」
「そうだな」
「狩りをしていると聞きましたが、どこでどんなものを?」
 と、これはフィズ(a28944)。
「海辺のほうで、アザラシやトドとかかな」
 そんなやりとりを漏れ聞いたのか、カルマ(a31235)は、ふと、近くを歩くタロスに、
「普段は何を食べているんですか?」
 と聞いてみる。
「魚やアザラシ、あと海草なんかだね」
「はい、僕からも質問。趣味は……?」
 ラズリオ(a26685)が会話に加わる。
「え、趣味? うーん、そうだな……最近は――前いた集落で、セイウチの牙を彫って人形を作るのが流行ってたんだけど……」
 旅路をともにする中で、徐々に、お互いのことがわかり始めてゆくようだった。 

●危難
 旅は続いた。
 その道程は常に順調だったわけではない。
 ルーク(a06668)が遠眼鏡の視界の中を動く影を見た。動物ではなく、さりとてタロスとも違う人影が数体。
「ドラグナーだな。楽しい旅の邪魔はさせねェぜ!」
 ディラン(a17462)が先行して駆け出していく。隊列の進路から外れていれば無視することもできたろうが、この場合はそうもいくまい。セニア(a45563)がタスクリーダーの声で状況を知らせる。
「わたしたちがいるから大丈夫」
 タロスたちを安心させるように言い置いて、ヤマ(a07630)は隊列の最後まで情報が伝わるよう、伝令として駆けた。
 北の空に、剣戟とアビリティが炸裂する音がしばし響いた。
 十分に備えのある冒険者が多数同行していたので、数体のドラグナー程度は深刻な障害ではなかった。
 その後も、時折そうした遭遇はあったものの、いずれも無事、敵を倒してタロスたちに害が及ぶことはなかった。
「こういうことが積み重なって信頼を成就して……同盟に参加できる結果となれば良いわよね」
 武器を収めながら、イツキ(a00311)は呟く。

 一行の行く手を阻むのは、ドラグナーだけではなかった。
「吹雪きそうですね……」
 雲の流れを見て、シリル(a06463)が言った。
 吹雪でバラバラにされないように、と、皆が一本のロープを持つことをヴィクス(a58552)が呼びかけて回る。
 土地が窪んで、風を避けられる場所をワスプ(a08884)が見つけ、一行を誘導する。
 やがて襲いかかってくる猛烈な雪と風に、視界は白一色に閉ざされた。
 かろうじて、フィリア(a11714)の灯すホーリーライトの光と、隣にいる誰かの体温が頼りだ。
 皆でひと固まりになり、吹雪がやむのを待ちながら、ナオ(a26636)は傍らのタロスに「寒さって感じるのか?」の訊く。
「そりゃあ寒いさ。早く暖かい居住区でやすみたいもんだな」
 そんな答が返ってきた。

 陽が落ちれば、野営となる。
「みなさーん、お疲れさまでした。これで体力を付けてください」
 カズハ(a01019)をはじめ、シフィル(a64372)やダディアーナ(a48284)らが幸せの運び手を奏で、セリア(a28813)は口に入れられる食べ物や飲み物を配る。
「テントを立てるなら手伝うゾイ」
 ハヤテ(a59487)たちが野営の準備をする傍ら、マイト(a12506)は余興のつもりで、舞を披露する。
「遠い遠い異国の舞、楽しんで頂けました?」
 弓の弦を鳴らして行う楓華風の舞踊を終え、そう訊ねれば、幾人かのタロスが拍手をしてくれた。タロスにも芸術を解する心があると知って嬉しくなる。クィンクラウドも幸せの運び手を乗せたランドアースの歌を歌ってみせ、タロスたちにも古くから伝わる詩歌などがないか聞いてみたが、歌を歌ったり音楽を奏でたりはするが、特に昔から伝わっているものはない、とのことだった。
 そして夜には空にオーロラが舞い――。
 安全な寝袋による安眠空間の中で、旅人は寝息を立て、見張りが交替で立つ。
 タロスも眠るのだな、と思いながら、シフィルはラトゥラーラカ(a62851)が回してくれたメモを確認する。それには今日までにタロスからわかった様々なことがまとめられているのだった。

●会見
 そしてどれくらい、旅は続いただろうか――。
 凍てつく地平線に躍る影。そして冷たい風にちぎれて届く戦闘音。
「またドラグナーかな」
 真っ先にその変事に気づいたシファ(a40333)が遠眼鏡をのぞく。大きな何かのまわりに、小さいものが動いている。傍らのナツルォ(a61049)が武器に手をかけ、いつでもグランスティードで駆け出せるように身構えたが、ルカイザが後ろからのんびりした声を出した。
「あれは狩りじゃないか?」
 え?と振り返る冒険者に、アトラもまた、頷くのが見えた。
「私たちの集落のタロスかも」
 コルドフリード大陸には、元来、大きなアザラシやトドが棲息していて、それらを狩ってタロスは暮らしているのだという。
 もしも動物に道を阻まれるようなことがあれば、魅了の歌で説得したいとルウティア(a70638)は考えていた。この場合、それも必要はなさそうだが……。
 近づいてみれば、はたして、そこには大人の背丈よりもはるかに高く首をもたげた巨大なトドと、それを追いたてているタロスたちがいた。氷原の起伏をうまく利用し、間合いをとりながら攻撃を加えている様子を、ポーラリス(a11761)は見る。
 誰からともなく、冒険者の加勢が加わった。
 突然の協力者に、タロスの狩人は驚いたようだが、アトラが進み出て事情を話す。
 ほどなく、アザラシは首尾よく仕留められ、その獲物とともに、一行はタロスの集落へと案内されることになったのだった。

 氷の丘に開いた入口から地下へ――。
 そこに、居住区は広がっていた。
 意外なほど天井が高く、広々とした広場を中心に、四方八方に地下道が伸び、その先にいくつもの居住区画が開けているらしい。
 見慣れぬ客人の到着に、そしてかつての居住者だったアトラたちの帰還に、その居住区は沸き立っているように見えた。
 たくさんのタロスたちが、物珍しそうに姿を見せ、広場に集まり始めたのだ。
 ドライザム(a67714)が進み出て、タロスたちに事の次第を説明する。
 そうして、タロスたちとの会談が始まった。

 広場に集合したタロスたち。
 そして相対する同盟の冒険者。フリッツ(a66410)やアキュティリス(a28724)が同盟諸国の種族や歴史などについてを、タロスたちに向かって話した。まずはこちらのことを知ってもらうことから始めようというわけだ。
 タロスたちはそれぞれに驚いたり感心したりしているようだったが、ほとんどこちらを疑うそぶりを見せない。素直で実直な種族なのだろう。
「他の集落とは頻繁に連絡を取ったり交流しているの?」
 そして、同盟側からの最初の質問は、リオネル(a12301)が発したそんな一言だった。
「時々、旅人がやってくるくらいだな」
「そもそも集落はどういうつながりでできるのかな」
「ここに住みたいと思うものが集まっているだけだ。いっぱいにならない限り、住みたいと思うものが住むことができる」
「じゃあ、家族で住んでいるとかじゃなく……」
「家族とは?」
「私たちは婚姻することによって人口を増やしています。そして家族ができるんですけれど……」
 ネフィリム(a15256)が引き継いだが、タロスたちはよく意味がわからないようだった。
「気の合うもの同士で生活や行動をともにすることはあるだろう。だが集落の人口は、出入りがあれば増減するだけだ。あとは再起動するものがいれば……」
 再起動。
 それはタロスにまつわる謎のひとつだ。
 再起動の施設を見せてくれないか?というリッケ(a66408)の申し出に、タロスは集落の中を見て回ることを許してくれた。

●集落
「ここが再起動施設……?」
 シオン(a16982)は、ここはタロスにとって大事な場所だろうから、と考え、慎重に足を踏み入れる。
 部屋の壁面に、タロス一人が入れる筒というか、蓋つきの寝台というか、柩というか、そういうものがあり、そこに入れば再起動が行えるらしい。
「この居住区はこういう形だが、他の形の場合もある」
 案内のタロスが説明してくれた。
「起動していないタロスはどんな感じなの?」
「ただ動かない」
「なぜ再起動をするのかな」
「長く起動していると自然としたくなってくるものだ」
 それを聞いてカラート(a73596)は、もしも将来、タロスがランドアースで暮らすようになった時のことを考えた。
「再起動施設のない土地で暮らすのは不便なのでは? それとも、ランドアースにも再起動施設を作ることができるだろうか?」
「そんなに頻繁にするわけではないから、再起動したいときにある場所へ来ればいいだろう。……施設を新しく作るなんていうのは無理だ」
 それにはそんな答が返ってきた。

 他の冒険者たちは、集落のあちこちに散って、それぞれ思い思いにタロスとの交流をはかっていた。
 アルジェン(a74039)はタロスたちの料理を見せてもらい、アザラシ肉や魚を使った食事や保存食について知る。
 バルザック(a74779)はソルレオンの筋肉体操(?)を披露し、親睦を深めようと努めた。
 ロドリーゴ(a73983)はタロスの子どもたちを探して遊びを教えたいと考えたのだが……、どこを探しても見てわかる「子ども」はいないのだ。訊ねてみても、「わりと最近、再起動したタロス」を紹介されたのみ。そのタロスと話して見たが普通に大人だった。
 イコン(a45744)は自分が描いたランドアースやワイルドファイアの風景、そこに暮らすノソリンやグリモアを絵にしてタロスたちに見せていた。そこに描かれたものを見たことのあるタロスもいないようだ。
 そんな中、ピヨピヨ(a57902)が気になる情報を持ち帰ってきた。詳細はわからないが、タロスの重騎士は同盟の重騎士よりも多くの技をもっているらしい。

「集落の近くでドラグナーを見かけることはありませんか? もしいるなら手が空いている冒険者で討伐に参りますので」
 ググリム(a61023)がそんな申し出を述べた。
「この大陸に危険なドラグナーが散ってしまっている。できればタロスと同盟とで協働して根絶をはかりたいのだが」
 ドライザムも言葉を付け加える。タロスたちは、この付近でそのようなものは見ていないが、と前置きした上で、自分の意志でそれに協力するタロス冒険者はいるだろうし、それは各人の自由だと言った。
 アガートが、ドラゴンについては最近まで何も知らなかったのかと問えば、皆、頷く。
 タロスはかつて神とともにドラゴンと戦った――フォーナ女神の言葉は嘘ではないだろうが、それを記憶しているものはここにはいない。
「じゃあ、フラウウインド大陸や、『七柱の剣』についても何も知らないのか?」
 サンダース号3号の航海に参加していたヴォルス(a65536)は、期待していた情報が得られず失望を隠せない。
「ではタロスにとって神とはいかなる存在なのでしょうか?」
 ググリムの問いには、神は良きものだと考えている、と言われるのみであった。

●遺跡
「いろんなお祭りや催しものがありますよ。タロスのみなさんも同盟に遊びにいらっしゃいませんか?」
 サクラコ(a32659)がにこやかに提案した。
 興味を示すタロスたちもいたが、いかんせん問題がある。
「大陸間移動手段の確保が必要ですね。あの飛行遺跡のようなものがあればいいのですが」
 と、ホカゲ(a18714)。
 ヨアフ(a17868)も飛行遺跡についての情報を得たいと思っていたので、熱心に、その特徴などを説明するが、タロスは首を横に振るばかりであった。むろん遺跡を動かすのに必要なスキルディスクの手がかりもない。
「ドラゴンと戦うためにも、遺跡に関して教えてもらえないだろうか」
 ティキ(a02763)が言った。
 ビュネル(a73520)やルークが、この大陸には不思議なものがたくさんあるようだけど、と訊ねると、
「それはよくわからないが、遺跡はあちこちにある。皆、氷の中にあって居住区として使われている」
「この大陸の“中”って……入れるのでしょうか?」
 ウサギ(a47579)は、氷の大地の下に埋まっているように見えるギアのようなもののことを念頭に質問する。タロスたちは行けるかもしれない、と言った。
「居住区の中にはずいぶん、深いところまで広がっているものもある。入口があれば降りられるだろう」
「図書館のような……伝承や歴史が記録されている場所はないだろうか」
 エルヴィン(a36202)が訊ねた。
 不思議なほどタロスは過去のことに無頓着だ。しかしかつて神とともいたかれらこそ、古代の知識を持っていていいはずなのだ。
 タロスの一群の中で、「わりと昔に再起動した」という一人が進み出て、その話を冒険者たちに語って聞かせた。
「わしらタロスは過去の記録というものを持たん。居住区にもそのような場所はない。しかしこの大陸のもっとも北の果てに、『すべての知識を封印した場所』があるというのだ。だが様々な試練を乗り越えねば必要な知識を得ることはできないそうじゃ。この話は、わしがまだ再起動したての頃に聞いた話だ」
「そこを私たちで探索してよいでしょうか?」
 キール(a58679)の言葉に、タロスは頷く。
「冒険の場は誰にでも開かれており、制限すべきではない。北の遺跡に向うのならば、今は使われていないが山中を通る大トンネルがあるので、地図を描いてやろう」

 今回、様々な情報が得られたが、具体的な次への指針という意味では、それは注目すべき内容だった。
 再起動を繰り返し、過去の記憶を継承しないタロスという種族。
 いまだドラゴンズゲートやグリモアが見つかっていないという状況。
 その中にタロスをして「すべての知識を封印した場所」と言わしめる遺跡の存在は、調べてみるに価値あるものではないだろうか?
 極北の大陸コルドフリードの、さらに北の果てにあるという、まだ見ぬ遺跡へ思いを馳せながら、冒険者たちは報告をもって同盟へと帰還する。
「まだ暫くはグレスターは動かせそうにないか……」
 ワスプのそんな呟きをよそに、新たな冒険が始まろうとしていた。


マスター:彼方星一 紹介ページ
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作成日:2008/08/04
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