【トレジャーハンティング】迷宮で髑髏が踊る



<オープニング>


 とある辺境の地にて、古い迷宮の扉が発見されたという。
 錆付き重い扉はビクともしなかったが、恐らくは冒険者の力であれば開けられるだろう。
 迷宮の奥に何があるのか知りたい。それが、今回の依頼の理由であった。
「扉を開けること自体は、然程問題ではないでしょう」
 夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)の言葉に、トレジャーハンター・アルカナ(a90042)が怪訝な顔をする。
 そう、他に何か問題があるかのような口ぶりである。
「……問題の迷宮は、非常に崩れやすくなっています。何もなければ気をつければ済む話ですが……そうもいかないようなのです」
 つまり、迷宮にはモンスターがいるということなのだという。
 今のところは迷宮の中を彷徨っている様だが、扉を開け放ってしまったなら、そこから出てきてしまう可能性がある。
「うーん、と。つまり、中に入るならモンスターも倒さないと問題が出てくる……ってことだよね?」
「その通りです。迷宮を崩してしまわないよう慎重に全てを終わらせる必要があります」
 迷宮は暗く、然程広いとも言えないようだ。万全をもってあたる必要があるだろう。
「無論、迷宮の奥に何があるのか……も重要な条件です。とはいえ、何処まで行けば「最奥」になるのかは分かりません。最奥だと思っていた場所はただの行き止まりだった……なんていうのは、よくある話です」
 つまり、マッピングや冒険者の勘、更には地道な作業といったトレジャーハンターとしての能力も試されるのだろう。
「うーん、何だかワクワクしてきたんだよ。お宝はあるのかなー?」
 目に見えてやる気を出すアルカナに、ミッドナーは無表情のまま答える。
「宝箱のようなもの……は幾つか点在しているのは見えましたが。中身が何なのか……そもそも、中身があるのかないのかすらも保障はできません」
「それで充分なんだよ♪」
 宝箱、という言葉を聞いてスイッチが入ったらしいアルカナは、バタバタと準備を始める。
「モンスターの数は4体。それぞれ、油断はできない敵です」
 1体は、錆付いた剣と盾を持った髑髏の剣士。
 1体は、大きな宝珠の嵌った、朽ちた杖をもつ髑髏の術士。
 1体は、青銅と思わしき弓を持つ髑髏の弓士。
 1体は、豪奢な全身鎧を身に纏った髑髏の両手剣士。
 恐らくは、最後の1体がリーダー格なのであろう。それぞれのモンスターは人間の冒険者に似たアビリティを駆使して戦ってくるが、最後の一体はその他にも、超呪痕の能力を秘めた斬撃を放ってくるようだ。
 髑髏……という響きでアンデッドのようにも思えるが、ミッドナー曰く普通のモンスターのようである。
「……私から言える事はこのくらいです」
 ミッドナーは最後にこう言うと、軽く頭を下げる。
 どうか、最良の結末に辿り着きますように……と。


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参加者
自然と昼寝愛好家・ファンバス(a01913)
紅虎・アキラ(a08684)
幻の桃色ガイア・エンフェア(a26732)
真っ赤なお伽話・デスペラード(a27803)
終末存在・デス(a29919)
笑顔のヒーロー・リュウ(a36407)
黎明を待つ夢・ユーセシル(a38825)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
時空を彷徨う・ルシファ(a59028)
深緑の枝を撫でるそよ風・ミユリ(a74301)
NPC:トレジャーハンター・アルカナ(a90042)



<リプレイ>

 迷宮の扉の前に、冒険者達は立っていた。
 扉は錆付き重く、確かに一般人の力では開けられそうにはない。
「うーん、如何にもって感じなんだよ。ワクワクするね♪」
 トレジャーハンター・アルカナ(a90042)は、扉の前で元気に跳ね回っている。
「強敵と戦うのも良いが、やっぱこう言う冒険してこその冒険者だしな。にしてもすっげー目に見えて楽しそうだな、アルカナの奴」
「そうだね。でも狭くて暗くて長い遺跡が好きだなんてアルカナも物好きだね」
 紅虎・アキラ(a08684)に黎明を待つ夢・ユーセシル(a38825)がそんな同意をすると、耳ざとく聞きつけたアルカナが走ってきて、強烈なドロップキックを放つ。
「ボクは物好きじゃなくて、トレジャーハンターなんだよ?」
 笑顔だが、目が笑っていない。ユーセシルは何とかフォローしようとして。
「あ、いや。しかし未踏の穴があれば潜ってみたい、分からないでもないかな」
「よーし。じゃあ今すぐ穴を掘るんだよ。上から土をかけてあげるから」
 どうやら火に油を注いでしまったらしい。アキラが後ろから羽交い絞めにすると、ジタバタした後大人しくなる。それは、光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)の一言が原因であった。
「迷宮探索に宝物、冒険者の醍醐味というヤツかの?」
「そう、その通りなんだよ! ユーセシル、君も見習うといいんだよ?」
 どうやら、怒りはすっかり何処かへ消えて失せたらしい。酷く単純だ。
「相変わらず、変わった趣味だ」
 真っ赤なお伽話・デスペラード(a27803)が、そんな事を言ったのにすら気づかない。
 気づいていたらどんな行動に出たかは、この時点で永遠の謎となったのである。
 そんなプラチナとデスぺラードの事を、何だか終末存在・デス(a29919)が暖かく見守る目で見ているが、何を考えているのかは不明だ……が、どうも妙な事を考えていそうな目をしている。
 こうして、開始前から色々な謎を含みつつ冒険者達は扉の前に立つ。
「この扉は……多少無理矢理開けても大丈夫そうかな?」
 深緑の枝を撫でるそよ風・ミユリ(a74301)が、扉の周辺を触って仲間達に伝える。
「うし、じゃあ開けるか。リュウ、そっち引っ張ってくれ」
「了解」
 アキラに言われて、笑顔のヒーロー・リュウ(a36407)は扉の取っ手の片方を掴む。
 大分古い扉ではあったが、造りはかなりしっかりしており、取っ手が壊れるという事は無さそうだった。
「せー……のっ!」
 思い切り引かれた扉は、酷く鈍い音を立てて開いていく。
 それは低く、鈍く。化け物の怨嗟のような音を立てて。
 暗い迷宮の中で、ユーセシルはホーリーライトの光を灯す。
「うーん……全体的に崩れやすい岩みたい。元から崩れやすいように設計されてたのかな」
 入り口で調べていたミユリが、そう呟いた。荒々しい侵入者から宝を守るためなのかどうか。どうやら、元から崩れやすい迷宮として在ったようだ。
 とはいえ、冒険者の視点でいえば……ではあるのだが。あるいは、それ程の力を持つ相手だった場合に崩れるようになっていたのかもしれない。
「迷宮探索で宝探しは久しぶりです。お宝探しての迷宮探索。この独特の緊張感は久しぶりですね」
「そうだね。それに……危険な敵がいつ解き放たれるか分からないから……こちらから倒しに行かないと」
 そう、この扉を開けてしまった以上。いつ中のモンスターが外に出てきてもおかしくはないのだ。
「まずは迷宮と敵の探索……宝箱は後でゆっくりと探せば良い」
 デスペラードの言葉に時空を彷徨う・ルシファ(a59028)は頷くと、自分のカンテラに火を灯す。
「蟻の巣に近いのなら底に行くほど重要な物が隠されている気がしますけど……ね」
 それはまだ分からない。探索はまだ、始まったばかりなのだから。
「あ、扉だ」
「早速か」
 ミユリの背中に体を預けていたアルカナの言葉に、アキラがため息をつく。
「良く分からないけど、たぶん扉なんだよ」
 エルフの夜目で、しかもインセクトを通しての目だ。自信はなさげだが、たぶん扉で間違いないのだろう
「他に進めそうですか?」
「うーん、探してみるんだよ」
 アルカナがクリスタルインセクトに再度集中し始めたのを見ると、ユーセシルはMAPのその位置に扉を書き込む。
 クリスタルインセクトの視界を通した伝聞形なので正確とは言えないが、今は貴重な情報である。
「こっちかな……あっ」
「どうした?」
「壊されたんだよ」
 壊れた、ではなく壊された。その意味する所は1つしかない。
「……どの敵かは分かる?」
「一瞬だったから分からないんだよ」
 自然と昼寝愛好家・ファンバス(a01913)の言葉に、アルカナはそう言って首を横に振る。
 それはつまり、敵がクリスタルインセクトを一撃で破壊するような実力の持ち主という事を示している。
「……行ってみましょう」
 エンフェアの提案に、全員が頷く。
 もし、そこに敵がまだいるのなら。クリスタルインセクトを向かわせるだけ無駄ということだ。
 何より、現在の方針では其処を通る以外に道は無い。
「確か……この辺りなんだよ」
 アルカナの案内とユーセシルの地図を元にたどり着いた場所には、しかし。何も居なかった。
 奥に続く通路は無音。近くには扉があるだけだった。
 ユーセシルがその扉をマップに書き込むが、そこではたと気づく。
「まさか、この扉通っていったんじゃないよね」
「……つい最近に開けたような跡があるよ」
「劣化もしてないみてえだな」
 ミユリとアキラの言葉は、ある1つの事実を指し示している。
 つまり、劣化した扉で無ければ、自由に開ける可能性がある……という事だ。
「入り口の扉、閉めてきて正解だったかもしれないね」
「……そうですね」
 リュウに、ルシファが頷く。扉を無理矢理破壊しないだけマシかもしれないが、扉を開けられるという現実は、通り過ぎた側からモンスターが扉を開けて襲い掛かってくるかもしれないという事実を現している。
「……先に進みましょう」
 デスの言葉に答え、冒険者達は先へと進む。扉のある迷宮という場所の、恐ろしさの一片を噛み締めながら。
「あ、ちょっと広そうな場所なんだ……よ?」
「……敵か?」
「たぶん。何かいるんだよ。ちょっと離れてるけど……あ」
 恐らくは倒されたのだろう。アルカナがハッと気づいたように顔をあげる。
「離れていても敵を倒せる……という事は弓手か……あるいは……」
「術士、だな」
 幻の桃色ガイア・エンフェア(a26732)とデスペラードは、そう言って頷きあう。
「ということは……チャンスじゃな」
 プラチナの言葉に、ファンバスも頷き返す。
 術士と弓手は、出来れば早めに倒したい相手だった。
 もしそれが単体でいるのなら、これ程のチャンスは他に無い。
「よし、行くぜ」
 アキラがクリムゾンディザスターを構えると、全員がそれぞれの武器を構える。
 やがて、進んだその先に……広い空間があった。
「……此処か」
 戦闘に居たデスペラードが、急速に膨らむ殺気を感じ弾かれたように顔を上げる。
 高速で飛来する矢はかわそうとしたデスペラードを微かに薙ぎ、床を砕く。
「弓手……ですか」
 幸いにも、ここは望んでいた少し広めの空間だ。
 急いで陣形を整えようとするアキラ達だが、その横を何かが疾走する。
「うわあっ!?」
 響くアルカナの声に振り向くと、髑髏の剣士が錆付いた剣でアルカナに目にも留まらぬ連撃を繰り出した所だった。
 恐ろしく素早い。翔剣士なのだろうか?
 髑髏の剣士は羽根のような軽いステップで後ろに下がり、盾を構える。
「大丈夫?」
「う、うーん……大丈夫なんだよ」
 ユーセシルのヒーリングウェーブが発動し、辺りを包む。
 どうやら、敵は髑髏の剣士と弓士の2体のようだ。
「さっきの扉の事を考えると……油断はできないね」
「ええ、後ろから来るかもしれません」
 ミユリにデスは答え、自分達が来た後方を伺う。
 一瞬たりとて油断はできない。とはいえ、迷宮が崩れないように気をつけないといけない。
「よし……いくよ!」
 ファンバスの体を黒い炎が包み、エンフェアが血の覚醒を発動する。
 軽いステップを踏む骸骨剣士は、剣をファンバス達に向けて戦闘体制に入っている。
 だが、その時。
「おいおい……やっぱりかよ……」
 後方を警戒していたアキラが呟く。
 冒険者達がやってきた方向の暗闇から現れたのは。
 その暗闇の中でも、尚眩しく輝く鎧に身を包んだ髑髏の両手剣士。
 そして、その後ろに付き従う髑髏の術士。
「では……踊ろうか、ご同輩諸君」
 レクイエムを構えるデスペラードに合わせ、冒険者達は自分の武器を構える。
 それにあわせるかのように、髑髏の両手剣士も自分の剣をゆらりと構える。
 そのまま、進化していく鎧は、更に強固に、より凶悪な見た目になっていく。
「打ち砕け! ダークソウル!」
 リュウがDarkSoul-Smashを構えて突進するが、狭い通路。簡単には両手剣士が通さない。
 一撃が両手剣士に炸裂するが、同時に髑髏術士が何かの回復を唱える。
 それは、ただの回復ではなく。両手剣士の武器が変化していくのが分かる。
 ディバインヒールのような技なのだろう……変化する姿が、禍々しい姿という違いはあるが。
「それ以上は……させません!」
 ルシファのコンヒューズアローが放たれ、髑髏術士に命中する。
「もう1つ、いくよ!」
 ミユリの粘り蜘蛛糸が両手剣士と髑髏術士を拘束し、その動きを絡めとる。
「その面が……気に喰わん!」
 突撃したデスペラードのレクイエムが両手剣士の鎧を薙ぐ。
 続けてデスのレイジングサイクロンが放たれるが、まだトドメには遠い。
 通路の方には、これ以上は入れない。
 そう判断したエンフェアはレイジングサイクロンを弓士と剣士に向かって放つ。
「一意専心! 乾坤一擲ッ!!」
「いくぜっ!」
 続けてアキラの一撃が放たれ、プラチナの兜割りが炸裂する。
 弓手の矢が2人の動きを止めるべく放たれるが、それは明らかな間違いだ。
 動きを止めたければ、ルシファのようにコンヒューズアローを放つべきだったのだから。
 この状況において、1度の間違いは全てに影響していく。
「ヴォイドスクラッチ!」
 ダメージの蓄積した髑髏剣士を、ファンバスのヴォイドスクラッチが完膚無きまでに撃ち砕く。
「よーし、ボクだって!」
 続けて放たれたアルカナの気高き銀狼は、あっさりとかわされてしまうが。
「これで……残り3体」
 いや、弓手はもう油断しなければ脅威とは成り得ない。
 問題は、両手剣士と術士だ。このままでは、戦力を避けずに向こうが有利となる。
 ならば、取る手立ては1つ。
「……誘いこむか」
 それはある種、危険な賭けだ。両手剣士を誘い込めば、弓手が其方に合流して厄介な事になるかもしれない。
 だが、此方も全力を割ける。
「……やりましょう」
 デスの言葉に応え、冒険者達は部屋の中へと引く。
 かくして、両手剣士と術士は部屋の中へとやってくる。
 これで全力が出せる。そう言わんばかりに、両手剣士はその剣を大きく振るう。
 だが、それは此方とて同じこと。
「さあ、決着だ……!」
 剣戟を交わし、しばらくの後。立っていたのは冒険者達であった。
「ふぅ、何とかなったか。みんな大丈夫?」
「何とかな」
 アキラが答え、ユーセシルが、仲間達が答える。
 これで懸案は何とかなった。後は探索を残すのみ……である。
「……んー、この扉ウンともスンとも言わないですね……」
「どれどれ……」
 エンフェアの言葉に、ファンバスは扉に耳をつけて叩いてみる。
「……ダミーの扉みたいだね。この先、壁だよ」
「ねえ、こっちの扉も開かないよー?」
「待て、今蝶番ぶっ壊す……あれ、蝶番がねえな」
「……引き戸のようだが」
 このような会話を繰り返し、冒険者達は進んでいく。
 罠らしい罠は落とし穴と扉くらいしかなかったが、その程度で命の危険になりはしない。
「アルカナがまた落ちたぞー!」
「アキラさんが挟まれた! 誰か手を貸して!」
 多少の……そう、多少のトラブルはあったが、冒険者達は無事に探索を進めていく。
「宝箱……ほとんど空だったね」
「グリードキングじゃなかっただけマシってところかな」
 ユーセシルの言葉に、ファンバスが笑ってそう答える。
「残るは……これ1つなんだよ」
「あったらあったで儲けだが、そう上手く行くとは限らないのが世の常って奴だ。気楽に開けようぜ」
「なにか良いものがあるに越したことは無いですけどねー」
「私は特に欲しい物はないけど、記念になる物はあるといいね」
「片手剣か盾とか出てくると嬉しいのぅ、英雄や伝説とか曰く付っぽいと尚良いのじゃが」
「私はチャクラムだと……」
「あ、アルカナさん、トラップには気をつけてね!」
「ヴァー」
「あ、アルカナさんが熱暴走しちゃった」
 結局の所。最後の宝箱には、それなりの宝物がそれなりに入っていて。
「ま、こんなもんだよね」
 そんなリュウの言葉に、全員が笑い出す。

 トレジャーハンティング。それは最古の冒険の1つ。
 時には迷宮に挑み、時には迷宮自身に思いを馳せ。
 仲間と泣き、仲間と笑い、仲間と挑み。
 もう1度、笑顔で地上に還る事を誓い挑む冒険譚。
 そこには数々のドラマが生まれ、あるいは生まれる前に散っていく。
 だが、人は迷宮に挑む事を止めない。
 何故かと問われれば、トレジャーハンター達はこう答えるのだ。
 未知の困難に挑み、正面から叩き潰す。それがトレジャーハンターの生き様だからさ! これ以上の楽しみが、一体世界の何処にあるっていうんだい?
 そう、あらゆる困難を叩いて砕く。それもまた、トレジャーハントという冒険の真髄なのだ。


マスター:じぇい 紹介ページ
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作成日:2008/07/27
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