月無き夜に蛍は煌く



   


<オープニング>


 静かな夜。
 月の消えた新月の夜。
 その日になると、蛍の鑑賞が出来る池があるという。
 騒がず、散らかさず、静かに……ただ、静かに。
 蛍の演じる光の舞を、ただ眺める夜。
 その池があるのは、大きな人里からは離れた、名も無き村の近く。
 然程有名というわけではないけれども、蛍の噂を聞きつけた旅人がふらりと立ち寄る……そんな場所。
 だが、村人曰く。それでいいのだという。
 蛍は騒がしきを嫌い、静寂を好む。
 蛍の生み出す幻想的な空間は、無粋な音によってすぐ壊れてしまう儚いものなのだと。
「と、いうわけでして。その蛍を見に行こうかな……と思っているのですが」
 夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)はそう言うと、目の前に置かれたグラスを指でなぞる。
「いつもの酒会と違って、どんちゃん騒ぎは禁止ですが……たまには、そんな夜もいいでしょう?」


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参加者
NPC:夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)



<リプレイ>

 静かな夜に、フクロウが啼く。
 月の無い今宵は、明かりを灯すのは無粋。
「新月の夜に、より一層映える蛍、か……蛍は初めて見るけどよ……綺麗、だな」
 白銀の蜃気楼・クレイル(a65067)は呟いて、夜の道を歩き出す。
 そこかしこに散った者達は、静かに夜を楽しんでいた。
 漢・アナボリック(a00210)はしかし、それを探すような事はしなかった。
 こんな時にそんな事をするのは、無粋。
 それを分かっていたからこそ、静かに酒を飲んでいた。
 同様に、真夜中の月・レセナ(a74500)も月が無い故の星空を楽しむ。
 これもまた、今宵の夜の楽しみであった。
「この時期に螢とは余程涼しいのですかねぇ……きっと夏も短いのでしょう」
「そう、ですね……きゃっ」
 静かな声で話していた2人は、凪・タケル(a06416)と晴天陽光・メリーナ(a10320)。
 どうやら、小枝を踏んでしまったらしいが……。
 そろそろ、蛍の池は近い。音を立てないように、静かに2人は歩いていく。
「す、すまない、お、重かったのではないかっ?」
 転んでしまった婀娜華・マルガレーテ(a70142)を抱きとめた太陽の牙・エル(a72117)は、そのままマルガレーテを抱きしめる。
 元々、蛍よりもマルガレーテの方が気になっていたのだが……それが爆発してしまったようである。
 2人はそのまま、しばらくの間静かに抱きしめあっていた。
「……」
 蛍の池で、冬鐙・ポーラリス(a11761)は静かに飛び交う蛍を眺めていた。
 暖かな蛍の光達を見て、ふと昨年の事を、今は居ない仲間達を思い出す。
 物寂しさは、未だ消えずに残っているけれども。
 ポーラリスはただ、自らの道を選び歩んだ戦友や弟の様な存在の、冥福を願う。
 池の畔に腰掛けていた白狼の傭兵騎士・シーナ(a02280)は、紫天黒狗・ゼロ(a50949)に、静かに酒を注ぐ。
 それを受けたゼロは少し口に含むと、空を見上げる。
「……桜と蛍ってのも乙だな」
 桜、というのは杯の桜の紋様の事だろう。
 答える者は無く、無音の空間が支配する。
「あー、お酒飲んでてずるいなぁ〜ん!」
 その静寂の空間は、合流しためざせ鉄壁ノソリン・ニノン(a64531)達、誓約の剣のメンバー達によって1度破られるが、すぐに気づいてパッと口を閉じる。
「蛍って恋の歌によく読まれますよね。鳴かぬ蛍が身を焦がす…なんて大人な恋愛に憧れます」
 飛び交う蛍を眺めて、天唄・ソウェル(a73093)がそんな事を口にする。
「恋の歌……、ソウェルって物知りなぁ〜ん。そう、いつか身を焦がすような恋をしてみたいなぁ〜ん」
 そう言って、ほう、と溜息をつく。
 そんな姿を見て、草花双調・エミロット(a59580)はクスリと笑うと。
「すみません、可愛らしいなと思って……。私自身は……恋愛も友愛も親愛も思慕も……全て綯い交ぜな感じで、好きを区別するのは苦手。それより、私は皆さんの想いを応援したいです。ね、ソウェルさん……♪」
「え?」
 話を振られたソウェルはチラリとシーナの方を見ると、少し頬を染める。
 ……最も、この暗さの中では他の人には見えなかったかもしれないが。
「蛍達の光は、死んでいった者達の魂が天に還る姿という言い伝えがある」
 ふと、そんな事をシーナが呟いて。
「……死んだ者の魂の光、か。歩みを止めることなく、あの光になれる日が来るといいが……」
 少し自嘲気味なゼロの声も、何もかもが夜の闇に吸い込まれて。
 無音の静寂の中を、蛍は静かに飛び交う。
 のらりくらり・ブラッド(a26313)は、灰暗の徒・セドナ(a30181)と2人で歩いていた。
「たまにはこうやって2人でのんびりするのもいいもんですねぇ」
「蛍、風流ですねぇ。今年は星凛祭もありませんでしたし、ここでじっと蛍の光を満喫したいですね」
 そう、今年は星凛祭は無かった。その事で、ひどく沈んでいる者達もいる。
「ザウス神と和解しても、楓華の鎖国状態が解けないなんてな……」
 故郷を思い出したのだろうか。想紅・ヤチヨ(a41187)は、ふとそんな事を呟く。
 星凛祭。毎年開催されていた祭は、鎖国により今年は行う事が出来ず。
「……これから、チャンスはありますよ。きっとなんとか出来ます」
 囀り風見烏・サガン(a18767)は、そんなヤチヨの辛さを悟り、励ましの言葉をかける。
「また、一緒に星凛祭に行きましょうね」
「うん……」
 思えば、蛍もまた、彼女にとって故郷を思い出させるものであったろうか。
 この蛍は、故郷のものとは違うけれども。
 2人は、蛍の中に今は遠い楓華を視ていた。
 それとは、別の場所にて。
 月臥残光・トウヤ(a21971)は、静かに空を見上げていた。
 今宵は新月。月など見えるはずも無いが……見えぬ月を見上げ、見えぬ己を想っていた。
 其処に確かに存在するモノ。それを、トウヤは見上げていたのだ。
 蛍の光を見て、想う。きっと微かな己でも、輝く誰かが、迷い見失った時の支えとなれることを信じようと。
 それはまるで、月の無い夜の蛍の光のように……。
「へぇ、なかなかいいねぇ♪」
 クリムゾンデビル・ヒルド(a23556)は、飛び交う蛍に思わずそんな感想を漏らす。
「だなー。ヒルド、誘ってくれてさんきゅーな♪」
 蛍にあわせて踊ろうとする灼熱・スプモーニ(a75155)を慌てて止めると、ヒトの医術士・ジニー(a75210)は蛍の光に目を輝かせる。
「わぁ、綺麗だべ……」
 思わず口調が田舎者口調になったジニーを見て、スプモーニはクスリと笑う。
「ま、そこがかわいいんだけどな! オレ的に!」
 その言葉は聞こえていなかったらしく、ジニーは蛍達の光に、ただ目を輝かせ。誘ってくれた、大好きな2人の事を想い、幸せを感じる。
「また季節になったら皆で行くとするか♪」
「だな」
 そんなヒルドとスプモーニの言葉に、ジニーは笑顔で答える。
「はい……。今日は素敵な時間をありがとうございました。これからもよろしくお願いします」
 無垢なる茉莉花・ユリーシャ(a26814)と踊る黒い猫・レイオール(a52500)は、レイオールの持ってきた防水マントを敷物代わりにして座っていた。
 梅酒を一口含むと、ユリーシャはレイオールにおずおずと話しかける。
「着付けに慣れていないのですが、おかしな所はないでしょうか?」
「ん、よく似合ってるな」
 本心からそう口にすると、レイオールもまた梅酒を口にする。
「昨夏から今夏のこの一年、いろんなことがあったな……」
「……本当にこの一年は、いろいろなことがありました」
 少しずつ、こう言う時間を積み重ねていきたいですわね、と。
 そう言って、ユリーシャはレイオールにお酌をした。
「えぇと、……手を繋いでも、良いですか……?」
 夜鳴鳥・カルロ(a61747)は、躊躇いながらあったか戦法にこにこの術・コトナ(a28487)に話しかける。
 コトナの髪には自分の贈った蝶の髪飾りがあり、それがカルロにはたまらなく嬉しかった。
「……カルロ殿の手、おっきいのぅ」
 そっとコトナから握り返された手は、小さくて。
 繋がれた手は、互いに緊張していたけれど……不思議な安心感があった。
「カルロ殿、これからもどうぞよろしくじゃよぅ……」
 強く握り返した手は、その答えか。
 蛍の光は、ただ静かに。2人の恋人達を見つめる。
「多くの者が訪れているはずなのに、この場には私と蛍しかいないような気分になる。だが、それもまた良いのかもしれんな……」
 守護者・ガルスタ(a32308)は、強い酒を一口飲む。
 蛍と、酌み交わすような、そんな気分で更に一口。
 この蛍と静寂の作り出す独特の空間を、ガルスタは静かに楽しんでいた。
「恋人達も多いね……まぁ好きな人と一緒に見たい風景だよね」
「かもしれませんね」
 黎明を待つ夢・ユーセシル(a38825)は、蛍を見ながら夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)に語りかける。
「……来年もその次の年もずっと見られるように頑張りたい、頑張らなきゃね」
 大切な人や守りたいものを再確認できたような感じだ。
 そう思うと、ユーセシルはジュースを飲む。
 ミッドナーはユーセシルを横目で見ると、静かに呟く。
「……そうですね。信じてますから」
 ユーセシルが聞き返した時には、すでにミッドナーは酒をちびちびと飲み始めていて。
「……ロマンティックってなんとなく響きがエロいよね」
 ふとした一言で、思い切り白い目で見られたそうである。
「しかし数ヶ月前までを考えると、こうのんびり出来るとは思ってなかったのぅ。フラウ探索に出ておったし、コルドロードとも戦ったしの」
「だな」
 光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)の横で白銀の騎士・ユウヤ(a65340)は頷き答える。
「俺は……こんな光景をプラチナと一緒にずっと見ていきたいよ」
 ユウヤの言葉にプラチナは微笑むと、傍に静かに寄り添う。
「……来年も、その次も、ずっと一緒に居てくりゃれ?」
 静かな約束が交わされて。蛍だけが、2人の約束を見守っていた。
 蒼空に舞う心月の歌・リクリス(a48424)と闇の檻で蒼月を仰ぐは艶紫蝶・アーウィン(a50036)は、他の人達とは離れた場所に居た。
 この静寂の空間の中でも、更なる静寂を求めたのだ。
「その……姫に、手を……握っていて、貰いたい……な」
 そう願うアーウィンに、リクリスは静かに答える。
「アーウィンが望むのなら、胸でも膝でもお貸ししましょう」
 薄い紅紫色のヴェールをかけると、アーウィンは落ち着いたように目を閉じる。
「私は、貴方の月に……光に、なれるのでしょうか?」
 自問するリクリスに答える者は無く。
 蛍の光はただ、2人を優しく包んでいた。
 普通を愛するエルフの医術士・ハウマ(a54840)は、目の前の小皿を君恋歌・マリオン(a62262)と眺めていた。
 入っているのは砂糖水。蛍が集まるかどうか試してみようとしたのだが、どうにも失敗したようだ。
「来ないわね……やっぱり星みたいに、簡単には近寄れないものなのかしら」
「そうかもしれないね」
 ハウマは残念そうに息を吐くと、マリオンを見つめる。
「恋の灯を灯りにして愛を語るなんて、ちょっとしゃれてると思うんだ」
 そう言って、ハウマはマリオンに耳打ちをして。
 マリオンもまた、ハウマに耳打ちで答える。
 その内容は……2人と、蛍だけが知っている。
「……何をされてるんですか?」
「ワイルドファイアだと、これでムシさんが集まってくるんですなぁ〜ん」
 砂糖水を入れた器を置いているガラクタを集める者・トリン(a55783)に、ミッドナーが尋ねると、トリンはそう答えた。
「……それで、集まりましたか?」
「全然ですなぁ〜ん」
「そうですか」
 中々上手くはいかないものらしい。トリトンがそのまま観察を続けているのを見ると、ミッドナーは邪魔をしないように歩み去った。
「一緒に出かけるのも久しぶりになりますね」
「はい……新年の福袋以来ですね」
 清吟霽月・ギルバート(a64966)は、悲愴想曲・シエラ(a59476)に見惚れながら答えた。
「……綺麗ですね……」
 思わず、そう呟いて。ギルバートは、さりげなくシエラを抱き寄せる。
「……いつもありがとうございます、ギンさん」
 シエラも、微笑みながら答え。2人は、静かに蛍を見つめていた。
「ふわぁ〜、とってもきれいだね〜」
 菫色の浴衣を着た仮面舞踏会・アリス(a62586)が、感動したように呟く。
「……綺麗だよねぇ」
 覇竜・セツナ(a64248)はアリスの手を握り、そう答える。
「アリスと一緒に蛍見るのって、今回が初めてなんだよなぁ……ずっとこうしてられたらいいのに」
 思わず呟いた言葉に、アリスはセツナの手を強く握り返す。
 ほんの少しでも長く、一緒に。そんな願いに、答えるように。
 仁吼義狭・シリュウ(a62751)と落花流水・ソウジュ(a62831)の2人は、互いに身を寄せ合って蛍を見ていた。
 シリュウは、大切な人の為に生きる事を。
 ソウジュは、大切な人を守る事を。
 シリュウはソウジュの肩を優しく抱いて。
 ソウジュは、シリュウに寄り添って。
 2人は、静かに互いの想いを感じていた。
 守護拳士・クゥ(a62976)と螺旋の刻竜・ペオース(a71347)は、静かに蛍を見ていた。
「浴衣で蛍を眺めるのも風流ですね」
「これがホタルなの?」
 蛍を見るのはこれが初めてなのだろうか、驚いているぺオースを、クゥは愛しく思った。
「ねえ……もっと傍によっていい?」
 蛍達の光の中で、2人は軽いキスをする。
 それは互いを愛しいと思うが故の、恋人の……儀式。
「デスト様初めまして。オルテンシアと申しますわ。これから仲良くしてくださいましね」
「……デストだ。アクシオンの弟子……ということだったか? 此方こそ、宜しく頼む」
 セイレーンの吟遊詩人・オルテンシア(a71388)と放浪剣士・デスト(a90337)が挨拶をしていると、先程からデストと酒を飲んでいた寡黙な守護者・アクシオン(a68250)が軽く手を振る。
 どうやら飲み比べになってきているらしいが、見る限りアクシオンに分があるようだった。
 私は此処に・イル(a74785)は、紅蓮の月・エフェメラ(a63888)の言葉を静かに聴いていたが……何か話せ、という言葉に従い、ぽつりと呟く。
「蛍は清らかな水辺にしか生きられません。だから、こんなに綺麗なのかも知れませんね……あの人のように……」
 未だ忘れえぬ人の事を、イルは想い。
「……水が清らかなのは、留まる事無く常に流れて居るからだ。蛍が美しいのはひと夏の命ゆえに、だ」
 エフェメラは静かに、そう一言だけ呟いた。
「これから生涯を賭して、我はブルームの剣となる事を誓う」
 信念を貫きし剣・アーク(a74173)の誓いに、優しき桃の護花・ブルーム(a74314)は微笑んで。
「暗いので少しだけ寄り添っても大丈夫ですよね?」
 蛍の乱舞する池の傍で交わされた幾つもの約束たち。
「わぁ……すごいです……」
「……綺麗、だな……」
 蛍が恐らく、一番綺麗に見える場所に……月ノ雫に誓い・ゼクティ(a66587)と沈黙の武道家・ジン(a67049)は居た。
「……愛してる」
「私も……ジンさんのこと……愛しています。今までも、これからも……」
 それは、少しの間離れてしまう恋人達の約束と誓いの儀式。
 強く優しく抱きしめ、抱きしめられ。
 交わし、交わされる口付け。
 それはまるで、交差する蛍達のように美しく。
 2人はただ……互いの愛を、確かめ合う。
 静寂の中、蛍の光の中で。恋人達が、友人達が……互いに約束を交わし、友情を確かめ合う。
 そう、今宵は蛍の光のように幻想的な夜。
 しかし、そこで交わされたものは、きっと……永遠に、失われる事は無い。


マスター:じぇい 紹介ページ
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