<リプレイ>
夏、真っ盛り。 モンスターに占拠された浜辺を見下ろす人々の様子は、いつもと少し違った。 何故なら、漢・アナボリック(a00210)が砂浜で日を浴びていたからだ。 まだマチョライザーは気づいていないらしく近寄ってはこなかったが……。 いきなり現れてパンプアップやらポージングやらを始めていたアナボリックを、人々は好機の視線で見下ろしていた。 「暑いせいかしらかねえ……」 「でもあれ、冒険者様じゃないのかしら」 「ママー、もんすたーが増えたよー」 好き勝手な言い様だが、言われても仕方が無い。 何やら不安の増す人々の頭上から、更に不安感の増す高らかな声が響く。 「フッフッフ……フハハハハ! 皆様方、ご心配のようでござるなぁ〜ん!」 「ど、何処から声が!?」 「あそこだ、あそこに居るぞ!」 住民達の見上げた先には、一見気品の高く見える忍び装束に身を包んだ近距離パワー型・ラスキュー(a14869)の姿。額当てでキラリと輝く安全第一の文字とか、色々なものが気品を見事に相殺している。 「とぅっ!」 忍びっぽい見事なジャンプを見せたラスキューに感嘆の声が上がり……ラスキューは、砂浜に頭から突き刺さる。 無音。しばしの無音の後、ラスキューは無言で立ち上がって砂を払う。 すると何という事だろう。 ラスキューは鎧進化で、あっという間にふんどし姿へと変貌してしまう。 もはや、気品度という項目があればマイナスの数値すら突き破って急下降だ。 「ふんどし戦隊ラスキューファイブ参上でござるなぁ〜ん! 民間人の皆様方、このラスキューブラックが来たからにはもう安心なぁ〜ん」 何やら悪役めいた顔でキメポーズをとるラスキューだが、やはり無音。 「……チッ」 「今舌打ちが聞こえたでござるなぁ〜ん!?」 すでに何やら妙なムードが漂う海岸付近の空気を打ち砕くべく、震角・ルシュド(a28710)の声が響く。 「グリモア変身!」 地味に鎧聖降臨をかけて、変身していく仲間達。 人々の視線に晒されながら、ようやく「変身」を終えると、仲間達が次々に名乗りを上げていく。 「変身戦隊ボウケンシャー!」 「冒険者戦隊アバレルンジャー見参!」 「爽やか戦隊ネガティバー!」 「密かに開く紫の花。地味の戦士、ラスキューパープル兼、ボウケンシャーパープル兼、アバレルンジャー兼、ネガティバーパープル!」 思い思いのポーズと名乗りをあげたのはルシュド、武人型狐スト忍者・アリエーテ(a57608)、風たる風の少年・カイ(a74705)、守護と慈愛の拳闘淑女・クレア(a37112)の4人。 「……さっきはラスキューファイブって……」 「つーかどれだよ……」 5人は、5人とも色も違えばコスチュームも違う。 ラスキューは黒いフンドシマスク……ラスキューブラック。 ルシュドはピンク色の縁取り、ベルトの黒のツナギ、ピンクのバンダナのボウケンシャ・ピンク。 アリエーテは真っ赤にたなびくマフラーに忍び装束のアバレルンジャーレッド。 カイは緑色の、全身を覆うピッタリとしたスーツのネガティバーグリーン。 クレアは青い水着に革の防具つけて、赤いボクシンググローブ、その上にパープルのマフラーとアイマスクのラスキューパープル兼、ボウケンシャーパープル兼、アバレルンジャー兼、ネガティバーパープル。 色的にいえばレッドなアリエーテがリーダーだが、ここまでコンセプトの違うコスチュームが揃うと、何が何やら分からない。 「ゆけ! ……えーと。ごちゃ混ぜレンジャー!」 司令官っぽく気取ったアナボリックが適当な総称をつけて適当な命令を下すと、バラバラな決めポーズと取っていた全員が戦闘態勢に入る。 ちなみにこの間、見物客に混ざっていた公文書偽造疑惑・フォクサーヌ(a14767)がスケッチをしていたのだが、それは別の話だ。 「……え? あれ倒すの? ……せめてちょっとあいつと遊んでから……駄目?」 何やら息の荒いルシュドに向かい、保護者の方々から盛大なブーイングが飛ぶ。 きっと健康的な意味で遊びたいのだろうが、正義の使者としては色々と許されない行動故にブーイングが飛んでいるのだ。たぶん。 「サンダークラッシュ!」 アリエーテのサンダークラッシュが放たれるが、マチョライザーは攻撃をヒラリとかわす。中々にすばやい動きだ。 ラスキューが踊るような動きでその辺で拾ってきた忍者刀を振り回し、ルシュドが叩きつけるように宿禰を振り下ろす。 攻撃後にカッコつけていたラスキューをマチョライザーの拳が砂浜に沈めると、クレアが破鎧掌を繰り出す。 「……ペ、ペネトレイト、ナックルッ」 多少照れの入った攻撃が炸裂すると、マチョライザーが危険を感じてバックステップで距離を取る。 「夏の浜辺に陣取って人々に不快な思いをさせる悪い奴っ、正義の力で成敗してやる!」 カイの体を黒い炎が包み、マチョライザーとアリエーテ達は互いに間合いを計る。 「フ、お前らは下がってるなぁ〜ん。こんな奴は拙者1人でぶしゃあっ」 マチョライザーに殴られて、後方に捻りを入れた回転で盛大に吹っ飛ぶラスキュー。 何やら自分で飛んだように見えるのは気のせいではないだろうが。 あと、殴られた時にメゴリッ、とかいう鈍い音が響いたのも気のせいではないに違いない。 「いいぞー!」 「頑張れー!」 盛大なやられっぷりに盛り上がったのか、どちらを応援してるのかイマイチ分からない歓声が響く。 見る人が見れば明らかにパワーを抑えた戦い方なのだが、そんな事は分からない明らかに観衆は盛り上がっていく。 「うわ〜捕まった〜助けぼっ」 何やら抱きついて捕まった感を演出しようとしたルシュドが思い切り殴られて。 「あっ、あぶないっ!! きゃぁぁっ!?」 クレアが、マチョライザーの攻撃を受けてやはり派手に吹っ飛ぶ。 「癒しの光よ、皆を包む慈悲の風となれっ」 カイのヒーリングウェーブが辺りを包むと、アリエーテが膝をつく。 「なんと強い敵でござろーか! 拙者たちの力では……」 カッコいいポーズで倒れていたラスキューに蹴りを入れると、膝をついたアリエーテ達に近づいてくるマチョライザー。 だが、その時。新たな声が響き渡る。 「諦めるでない!」 太陽を背に立つのは、4つの影。砂礫衝で巻き上げられた砂が、4人の姿を更に見えにくくしている。 逆光で黒いシルエットとなっている4人はタイミングを合わせて飛ぶと、砂浜に着地する。 近寄ってきていたマチョライザーを力を求める者・グロウスグロウ(a74145)のニードルスピアが襲い、マチョライザーは再び距離をとる。 「この程度の敵に手こずるなど、らしくない」 ニヒルにグロウスグロウが笑い、着地の時に巻き上がった砂塵の中から霹靂斬風・アーケィ(a31414)、光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)、フォクサーヌが現れる。 「きぐるみせんたい・もこれんじゃー、きぐるみごーるど、さんじょー!」 「殲滅小隊バイオレット、グロウスグロウ。貴様に真の恐怖を教えに来た」 「命の母なる海の色……青を纏いし戦士、仲間を救うべくここに見参!」 「妾は最初からくらいまっくすじゃぜ」 更に戦隊名が2つ増えたが、最初よりは比較的揃っているように見える。 「みんな、たすけにきたのね。ひっさつ・ひーりんぐうぇーぶ!」 フォクサーヌのヒーリングウェーブが、実は全然ダメージの残っていない仲間達を包み、アーケィがビスタライト・タンジェリンを振るい、変幻自在の踊るような攻撃を繰り出す。 「今こそ天が我々に与えた瞬間、超筋戦士に天誅を!」 アーケィの呼びかけに答え、膝をついていた面々が次々に立ち上がり……ラスキューの粘り蜘蛛糸が、マチョライザーをしっかりと絡め取った。 「我が攻撃に砕けぬ物無く、我が盾に防げぬ物無し!」 「超必殺技……スーパーソニックエクストラライトニングブレード!!」 「……れ、レインボウ・コンビネーションっ」 プラチナの獣の理が、アリエーテの紅剣が、ルシュドの宿禰が、クレアのボクシンググローブが、アーケィのビスタライト・タンジェリンが次々と叩き込まれ。 「緑の力よ……我が呼びかけに応え彼の敵を戒める楔となれ!」 「とどめね! でぃばいん・ばすたー!!」 「虚無に裂かれて無間に落ちろ!」 カイの緑の縛撃、フォクサーヌの慈悲の聖槍、グロウスグロウのヴォイドスクラッチが。そして、その全てがコンビネーションとなりマチョライザーに叩き込まれていく。 「……これぞ合体技、グリモアエフェクト・レインボー」 ルシュドの声と共に、マチョライザーが爆発するように四散する。 お約束な散り方に、歓声と熱気は最高潮となり。 「冥府を抜けてもう一度来い。そうすればまた相手をしてやる」 「むぅ、おしいてきをなくしたのね」 「悪の栄えた例なしってね。でわ、皆さん素敵なバケーションを♪」 冒険者達が、次々と勝ち名乗りをあげる。 「あのモンスターが最後のマチョライザーとは限らない。第2第3のマチョ……」 見物を決め込んでいたアナボリックが司令官っぽく締めようとすると、ラスキューが待ってましたとばかりに仲間に粘り蜘蛛糸を放つ。 これで終わりだと油断していたアーケィ達は、あっさり絡め取られ。 ラスキューは鎧進化で、自分の姿を黒アーマーにマント、ゴキブリの頭部に似た覆面姿に変える。 本人曰く悪の幹部っぽい姿だが、誰かがぼそっと「ゴキブリキング」と呟いたのはしっかりと聞こえていたらしい。 「フゥーハハハ! 拙者の正体は悪の親玉ジ・ニンジャ! まんまと騙されたなぁ〜ん、ヒーロー諸君!」 マントをバサリと翻し、高笑いをするラスキュー。 そのまま高笑いを続けているうちに拘束から抜け出した仲間にボコられて、波打ち際に頭から埋められるのはお約束ではあるのだが。 「ビーチの平和は取り戻せたけど、我々の戦いは未だ終わらないよ……」 そんな意味深な言葉と共に、冒険者達……もといヒーロー達と観衆達が去った後。 「せめて……せめて……砂浜で追いかけっこさしてくれたって良かったじゃんかよおおおおお!」 夕日に向かって意味の分からない事を叫ぶルシュドと。 「死ぬかと思ったなぁ〜ん」 砂を振り払って、何事も無かったかのように帰り支度をしているラスキューだけが残されたそうである。

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参加者:10人
作成日:2008/08/05
得票数:コメディ23
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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