歪んだ愛の果てに



<オープニング>


 ――また出たんですって……。
 ――本当? 怖いわぁ……。
 ――ウチにも小さい子が居るから気を付けないと……。

●歪んだ愛の果てに
 近頃、とある商業都市では奇妙な暴行事件が頻発していた。
 被害者は、6歳から16歳までの顔立ちの整った少年達。いずれの場合も、夕暮れ時に1人で居るところを襲われ、鈍器のような物で殴られている。
 その手口だが、犯人はまず少年が1人で居るところを見計らって近づき、玩具や食べ物、或いは、楽しげな話や遊びで少年の興味を惹く。そうしたのち、言葉巧みに人通りのない場所に連れ込んで、鈍器のような物で後頭部を一撃、という事らしい。
 その一撃で気を失った少年らは、その後、両手両足を縛り上げられ、目隠しをされ放置されている所を付近の住民に発見されている。
 物的被害が出ていない事から少なくとも物盗りの類ではなく、暴行と言えるのも、最初の一撃の他は拘束される事くらいであり、今のところ死者、重傷者は出ていない。
 目撃情報などから、犯人は女性である可能性が高いと言われている。しかし、大きな帽子や長く垂らした前髪などで、上手く顔の特徴を隠しており、未だ犯人の特定は出来ていない。
 肝心の少年らは、犯人について『何故か』口をつぐんでいる。自警団が少年の家族に事情を聞こうとしても、その家族達もが「何も知らない」の一点張りだという。
 その為この都市では、解決の糸口が見つからないまま事件だけが繰り返し起こるという、酷く気味の悪い事態が発生している。住民の不安は日々増大の一途を辿り、居住区からは1人で出歩く子供の姿が消え、事件は、最早一般市民の手ではどうしようもない所まで来ていた。
 
●やって来た餌
「んー、今日もいい天気っ、最高のいたずら日和だねっ♪」
 その日、プーカの忍び・ポルック(a90353)が冒険者の酒場に現れると、中では既に緑柱石の霊査士・モーディ(a90370)を中心にした一団が、神妙な面持ちでテーブルを囲んでいた。
「なになに? 依頼? ボクも混ぜてよ」
 いつもなら煙たがられる事も多いのだが、
「丁度良かった。君、ちょっとここに座り給え」
 今日に限って、霊査士はすんなりと着席を促す。一体どうしたというのだろうか。
「では、あらためて説明を始めよう。今回の仕事であるキマイラ討伐について」
「え゛、キマイラって、『あの』キマイラ? 倒すとモンスターになるっていう?」
 焦るポルックに、霊査士はしれっとした様子で「その通り」とだけ返す。
 普段、この手の依頼に呼ばれる事などほとんど無いのにと不審に思うも、何故か他の冒険者達からもポルックの同席に異論が出ない。本当に、今日は一体どうなっているのか。

●釣り針を垂らそう
「……と、まぁ、事件の概要はこんなところだ」
 霊査士が語る事件のあらましに、冒険者達も皆考え込むような仕草を見せている。
「すまないが、霊視でも犯人の特定には至らなかった。だが、一連の事件は全て同一人物による犯行であり、ごく近い未来、その者にキマイラ化現象が起こる事は間違いない。一旦キマイラ化が起きてしまえば、怪我人だけで済むような甘い事態でなくなるのは知っての通りだ。君達には、そうなる前に犯人の確保を頼みたい」
 ここで咳払いを一つ。
「やり方は君達に任せるが、事件の性質上おのずと有効な作戦は限られてくると思う」
 ポルックの方に目をやると、長話に飽きたのか、眠そうにしていた。
「そういえば、もう一つ視えた事があったな。犯人は、気絶している少年の傍らでスケッチブックのような物を広げて何かしていたようだ。よく分からないが、犯行動機に関わる事かもしれない」
 続いて言及されたのは、犯人がキマイラ化した時の情報だ。
「キマイラの周囲に、不思議な光球が幾つも浮かぶのが視えた。光球には麻痺や混乱の力が備わっているようで、射程距離はおそらくここから……あそこ迄くらいか」
 霊査士の指は目の前のテーブルから入り口までを指している。その距離、およそ10メートル。
「このキマイラの戦闘能力はそれほど大したものではない。たとえば、君一人でも良い勝負が出来るし、勝てる見込みだって十分ある」
 霊査士の視線の先に居るのはポルック。それで勝てるなら、確かに大した事は無いと言える。
「それと、モンスター化してもあまり強力な個体にはならないようだ。無論、キマイラ状態と比べれば身体能力は格段に上がるし、一度に撃ち出せる光球の数も増えるといった、気を付けるべき点はある。だが、余程の事が無い限り、君達が負ける事は無いだろう」
 居並ぶ冒険者達の顔には、はっきりと希望の色が見て取れた。それもその筈、犯人確保が迅速に行われれば、1人の死者も出さずに事件を解決する事が可能なのだ。それが出来れば大成功、しかし霊査士からは、最低でもキマイラ化した犯人をその場から取り逃がさないようにと釘が刺される。
 万が一の場合、再びその姿を捉えられる迄にどれ程の命が失われるか。
 その言葉に、冒険者達の顔が一斉に引き締まったのが感じられた。


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参加者
想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)
月無き夜の白光・スルク(a11408)
幻灯騎・ハイネス(a38935)
綾なす火炎の小獅子・スゥベル(a64211)
銀翅灯・リゼッテ(a65202)
約束の場所・レイザス(a66308)
穿つ光陰・イルガ(a74315)
銀騎士・フォルカ(a75072)
NPC:トリックオア・ポルック(a90353)



<リプレイ>


 約束の場所・レイザス(a66308)がやって来たのは、都市の中でも比較的裕福な人々が集まっているという居住区。綺麗に舗装された道や、建ち並ぶ大きな屋敷など、此処に来るまでに通った一般の居住区とは、やはり様々な面で一線を画している。
「ふむ……、なかなかの街並みだな」
 セイレーンの貴族と比較しても遜色無い屋敷も散見され、思わず感心顔のレイザス。その姿が目に止まったのか、道沿いに広がる美しい庭園から、その家の令嬢と思しき少女が声を掛けてきた。
「貴方、この辺りの子じゃないわよね。迷ったの?」
 中身はどうあれ、レイザスの外見は7歳の男の子だ。しかも、武器や召喚獣はおろか、種族特徴である髪の毛まで隠して一般人を装う徹底ぶり。それは端から見ればまさに理想の被害者像であり、まだ明るいとはいえ、そんな子供が一人で歩いているのはやはり人目を引いてしまうのだろう。
 夕方にはこの地区で囮役を努めねばならない手前、今目立つのは得策ではない。レイザスは適当な受け答えをして、そそくさとその場を立ち去っていった。
 そこから数ブロック先。やはり下見に精を出しているのは、想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)。楽器を抱えたその姿はまさに旅芸人といった風情。しかし問題点が一つ。背後に従えたペインヴァイパーに、すれ違う人々の視線がぐさぐさと突き刺さっていた。
 慌てて召喚獣に待機を命じた彼女は、一息つきがてら思案を巡らせる。
(「被害者の少年と家族が口をつぐむ、ですか……」)
 気絶した少年を裸にしてその姿を絵に描くような痴女。それが彼女の思い描く犯人像だが、
(「絵に描くだけで満足するでしょうか? ×××を××して×××していたりするのでは……」)
 多少妄想の域に踏み込んでいるものの、この事件には、実際そういった事実が無いとも言いきれない節がある。少しでも当事者の話を聞いておきたい所だが、残念な事に被害者の個人情報を入手する具体策が無い。仕方なく、ラジスラヴァは次なる場所へと移動していった。

 所変わって、普通の家が普通に建ち並ぶ一般居住区。雪焔・リゼッテ(a65202)は、プーカの忍び・ポルック(a90353)と共に、囮を仕掛けて犯人を釣り上げるポイントを探していた。
「人気の少ない路地で、最低でも大人3人が隠れられる場所……」
 手元の地図と周りを交互に見比べながら歩くリゼッテの真剣な顔。
「それプラス、裕福な人達が住んでる地区に近いこと、だったっけ」
 大きめの帽子をしっかりとかぶり込み、伝声管や額の宝石を隠すポルックの顔からも、多少真剣味が感じられる。冒険者だという事を周囲に気取られないよう、工夫を凝らしている2人だが、中でも特筆すべきはリゼッテのリュックだろう。なんとエンジェルの翼を隠す専用のものらしい。
「あそこなんてどうでしょう?」
 首尾良く狙い通りの場所を見つけた2人は、一旦仲間と合流すべく、来た道を戻っていった。


「なる前なら、間に合わせねばなあ……」
 月無き夜の白光・スルク(a11408)の呟き。この都市の中心部である此処――商業区では、豊富な品揃えを競い合うかのように、実に多くの店が軒先を並べている。
 スルクは一般の観光客を装い、それらをいかにも物珍しそうに眺めて回った。自分が外部の人間である事は如何ともし難いが、それならそれで、目立たない方法は幾らでもあるという訳だ。
 行き交う人々との世間話の中で、事件の事やそれ以外に最近変わった事が無かったかなど、探りを入れるスルクだったが、
「どれもこれもハズレじゃな」
「そうですね……、酒場で聞いた以上の情報は無いという感じでした」
 共に行動していた綾なす火炎の小獅子・スゥベル(a64211)も残念そうに尻尾を垂らす。
 話を聞いた感触では、事件に対して、人々はみな大なり小なり不安を感じているようだった。しかし、いくら事件が続こうとも、ここが職場であり、ここが家であり、何よりここが自分達の都市なのだという思いが、彼らに変わらぬ営みを続けさせている。
 その中には、見るからに16歳以下と思われる少年の姿もあった。
 裕福な家の生まれでもない限り、若い働き手の存在は決して珍しくなく、少し大きな街ならば田舎から丁稚奉公に来ている者も少なくない。
「お使い? 一人だと危ないから気を付けてね」
 穿つ光陰・イルガ(a74315)は、見かけた少年達に、なるべく誰かと一緒に居るよう呼びかける。彼らも勿論事件の事は知っているが、日々多くの仕事に従事する彼らが、常に二人以上で居られるとは限らない。
 そんな彼らの姿を見て、スゥベルは静かな怒りに身を焦がしていた。彼女にしてみれば、キマイラだの、少年を狙う理由だのは大した問題では無いのだ。
(「子供に手を出し、心に傷を付けるような奴は絶対に許さない。それだけだよ」)

 スルク達の居た地点から路地に入り、奥へ奥へと進んでいくと、スラム街の一角に出る。
 そこでは、およそこの場所に似つかわしくない格好で現れた2人――銀騎士・フォルカ(a75072)と幻灯騎・ハイネス(a38935)に、物陰からの探るような視線が送られていた。
 基本的に、スラム街の住人は危機に対して鼻の利く者が多い。彼らは『普段と違う何か』に非常に敏感であり、そういった事態に出くわした時も、考え無しにほいほい首を突っ込んだりはしない。
 立派なナリをしたソルレオンの騎士、しかも身長2mの大男、更に言えば、従者共々落ち着き払って『何かをしに来た』という雰囲気だ。どこぞの金持ちが非合法な依頼を持ち込んできたのなら話を聞いても良いだろうが、今のところ騎士から接触してくる気配は無い。
 さしもの住人達も、遠巻きに様子を伺うのが精一杯であった。
「彼らのお話も伺ってみたかったのですが、これでは叶いそうにありませんね……」
 フォルカの、少し気を落としたような声。
 例のリュックで翼を隠すなど万全の体制を整えていたハイネスも、この状況には苦笑気味だ。
「まぁ、これはこれで問題が起きなくて良いのではないでしょうか?」
 2人は誰に呼び止められる事もなく、スラム街の入り組んだ道を進んでいく。
 少し離れた所では、すっかり周囲の雰囲気にとけ込んだイルガが少年達の話を聞いていた。驚いた事に、彼らも犯人を捕まえようと作戦を練っている最中だという。成功した場合、犯人の身元によって、狙いが都市からの報奨金になるか、家族からの身代金になるかというところ。
(「面倒な事になる前に、自警団に連絡しておこうかな……?」)
 少年達のタフさに感心半分、呆れ半分のイルガであった。


 夕暮れ時。都市を大きく分ける四つの地区のうち、まずは二つの居住区で囮作戦が展開された。
 富裕層向け居住区では、レイザスを囮として、スルク、スゥベル、イルガが周囲を固め、連絡用としてスルクがハイネスの仕込み刀を預かっている。もし一般居住区の方で異変があれば、ウェポン・オーバードライブが発動し、武器が消えるという手筈。
「流石にこの時間一人で出歩いておる子供はおらんようじゃな」
 配置についたスルクが周囲に目を配る。
「ん、ではあの辺りから始めようか」
 レイザスが仲間から離れ、より人気の無い方へと歩いていく。
 適当に考えた犬の名を呼び、どこかに逃げてしまったペットを探す少年を演じた。
 あてどなく彷徨う様に少しずつ場所を変え、また犬の名を呼ぶ。
「うーん、怪しい人影……無いねぇ」
 大きな屋敷を囲む塀の陰に隠れて目を光らせるイルガだったが、犯人らしき人物が近づいてくる様子は無い。
「待って下さい……、誰かレイザスさんに近づいていきます」
 スゥベルの抑えた声。冒険者達に緊張が走る。
「キミキミ、こんな時間に一人で何をしてるんだい? 危ないじゃないか」
 男。おそらくこの辺りの屋敷で働いている庭師か何かだろう。犯人ではなさそうだ。
「……子犬を探しているのだが、どうやらこの辺りには居ないようだ。心配をかけて済まない」
 見た目にそぐわぬ言葉遣いに、一瞬男の目がまんまるになった。
 その後、なるべく人気の無い場所を選んでいくものの、犯人との接触がないまま、そのうちに大人に見つかるという繰り返しが続く。おそらく、こうして大人達が目を光らせる事で、『居住区からは1人で出歩く子供の姿が消え』たのだろう。
 時間もある程度経った事で、4人はこの場所での作戦継続を断念。商業区へと移動していった。

 その頃、一般居住区の作戦進行は、富裕層向け居住区以上の困難に見舞われていた。
 大筋としては富裕層向け居住区と同様、ポルックを囮として、ラジスラヴァ、ハイネス、リゼッテ、フォルカが犯人を待ち受け、合図用にレイザスの手套がポルックに預けられている形だ。
 しかし、そのポルックが一人でその辺りをぶらつくと、数分もしないうちに誰かしら声を掛けてくる。何度か場所を変えても結果は同じ。
 この辺りはもう一方の居住区に比べて人口が多く、住宅密集度も圧倒的に高い。人々が事件への警戒を強める時間帯でもあり、子供の一人歩きが放置されるような状況ではなかった。仮に、子供が一人で子犬を探し回っているという噂が流れたなら、その噂が犯人に届く前に、付近の大人なり自警団なりが動く事だろう。
 近くで歌を披露していたラジスラヴァも、見知らぬ女が居るという事で、あっという間に自警団を呼ばれ、身元を明かすよう強く求められる始末。思っていた以上に住民の警戒が強い。
「やれやれ、これではどうしようもありませんね」
 物陰から顔を覗かせるフォルカが溜息を一つ。
「そうですね……、でもそれは犯人も同じでしょうし……」
 リゼッテがスラム街への移動を考え始めた時、ポルックの手に握られていた手套が、突然消えて無くなった。
「合図だよ! ハイネスさん!」
 ポルックの叫び声と同時に、ハイドインシャドウで隠れていたハイネスの姿が浮かび上がる。
 呼びだしたグランスティードにハイネスを乗せ、ポルックは早駆けで商業区へ。
「僕達も行きましょう!」
「ええ!」
 3人もその後を全速力で追う。突然の事に、周りの人々は呆気にとられるばかりであった。


 それは、スゥベル達が商業区に入って10分程経った頃のこと。
 2本先の路地から響き渡る甲高い悲鳴。急行――冒険者達が駆けつけた時、そこには幾つもの光球に囲まれ佇む少女と、地に伏してぴくりともしない少年の姿。
 剥き出しだったレイザスの手を、ウェポン・オーバードライブで呼び出された手套が瞬時に覆う。
 他の冒険者達も既に戦闘態勢に入っている。 
「うふふ……」
 狭い路地に木霊する少女の笑い声。整った顔立ちを、周囲に浮かぶ光球が照らし出す。
 レイザスが息を呑んだ。
「貴様は……」
 それは、事前調査の途中、あの美しい庭園から声を掛けてきた少女だった。
「あら、嬉しいわ。また会えたわね」
 少女が愛おしそうに瞳を潤ませる。
「冒険者様だったのね。私を捜していたの?」
 少女の手が宙を踊る。その動きに光球が反応――飛来した光球をレイザスがかわすと、少女は残念そうに微笑んだ。
「動いてはダメよ。大人しくしていて、ね?」
 一歩踏みだそうとしたその時、突然、少女とレイザスの間にスゥベルが割り込んで来た。
 不意を突かれ、少女は動けない。手を伸ばせば触れ合える程の距離。そこに燃え盛る巨大な火球が出現。一瞬の間。少女と目が合う。その瞳に映るのは、狂気。最早かけるべき言葉も無い。
 超至近距離から放たれたエンブレムノヴァが、少女を呑み込んでいった。
「きゃあああああああああああ!!!」
 先程手に入れたばかりの強靱な肉体が、かろうじて少女の命を繋ぎ止める。
 光球による反撃。あっさり避けられる。予想外の実力差。人外の力を手に入れた高揚感が瞬く間に消え去っていく。
 スルクの粘り蜘蛛糸。あっさり捕縛。攻撃が封じられる。全てのしがらみから自分を解き放ってくれる筈の力が、目の前の4人に全く通用しない。
「逃がさないよ!!」
 イルガのガトリングアローが、逃げだそうとした少女の出足を挫いた。
 バランスを崩して倒れる少女。その頭上に、スゥベルがもう一度炎の塊を錬り上げる。
「報いを受けな!」
「や、嫌――」
 少女の悲鳴も、華奢な体も、全て巨大な炎に押し潰され、焼き尽くされた。

「問題はここからじゃのう」
 スルクの眼前――全てが消し炭となった筈の空間に、音もなく現れた光球。少女が従えていたものより遙かに巨大なそれは、一際大きく輝いた直後、
「来るよっ!」
 人数分の小光球を撃ち出した。咄嗟に身を捩る冒険者達。一人、直撃を受けたイルガ。頭が混乱する。矢を番える。狙う。撃った。
「ちょっ」
 迫り来る矢を間一髪で避けたスゥベル。すかさず、レイザスが凱歌を歌い上げる。
「おっ待たせー! って、うわぁっ!」
 ハイネスと共にグランスティードに乗って現れたポルックは、乱れ飛ぶ光球を受けて、早速前後不覚に陥っていた。混乱したポルック諸共モンスターを縛り上げるスルクの蜘蛛糸を、ハイネスが投じたカードがじわりと援護する。
 どうにか拘束を破ったモンスターは、徐々に蓄積されていくダメージから逃れるように、めまぐるしく動き回る。段々と激しくなるモンスターの攻撃に、再び幾人かが混乱し、別の幾人かが麻痺を受ける。その時、
「はっ!!」
 迫るモンスターを、駆けつけたフォルカの砂礫衝が押し戻した。その後ろから吹く柔らかな風に、冒険者達の体の異常がかき消されていく。
「皆さん、大丈夫ですか?」
 散乱する障害物を跳び越えて来たのは、リゼッテ。
 淀みない歌声を路地に響かせながら、ラジスラヴァも姿を見せた。
(「既にモンスターに……」)
 犯人に聞いてみたい事があった。確かめたい事があった。それが叶わなかったのは残念だ。
 しかし、次の瞬間にはそれらを頭から追い出し、彼女は戦闘に集中する。
 ここで終わらせるのだ。これ以上、犠牲者を出さない為に。


 日が落ちて、都市に夜の帳が降りる。
 モンスターとの戦闘を無事に終えた冒険者達は、その勝利を以て事件に終止符を打った。
 件の庭園の所持者を訪ねた彼らを、都市でも指折りの実業家である、少女の父親が出迎える。娘の死を知った男はがっくりと肩を落とし、そして、ぽつりぽつりと、事件について語り始めた。

 犯人が自分の娘である事を、彼は早い段階で気付いていたという。何とかして娘の奇行を止めようとしたが、娘はそんな父の言葉には耳を貸さず、犯行を繰り返した。
 娘を溺愛していた男は、強硬手段に出る事も出来ず、ひたすら被害者とその家族を黙らせる事で、愛する娘を守っていたのだという。
 娘の持つ歪んだ愛。父の持つ歪んだ愛。その果てに、起こった事件であった――。


マスター:東川岳人 紹介ページ
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作成日:2008/08/22
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