奴らの名は、トレンディー!?



<オープニング>


「暑いな……」
 茹だるような、暑さに閉口しながら、背負っていた荷物を担ぎなおす。山道を歩く旅人は、汗で張り付いた前髪をかきあげた。もう少し歩けば、休める場所にでる。それまでの我慢だと自分に言い聞かせ、一歩一歩砂利道を踏みしめて登っていた。
「はーっはっはっはっは!」
 精がでるな、若人よ! 突然現れたの人影が、男の行く手を阻む。
「……ぁ?」
 気だるげに顔をあげると、まるで壁のようにたくましい肉体が、ずらっと立ちふさがっていた。その数、実に14。
「お前を苦しめる、その暑さから」
「この俺達が救ってやろうっ」
 揃いも揃って、スキンヘッドに腰蓑一丁身につけた、漢たちがわらわらと集まり、旅人を捕まえる。
「髪があるから、暑いんだ」
「や、やめろ………」
 疲れた体では、抵抗するにも力が入らない。
「コレが俺たちのトレンディー!」
 頭をHAGEにして! 腰蓑さいこう!!
 着衣をはぎとられ腰蓑を無理やりはかされ。頭をきれいにそられた犠牲者は、後日泣きながら、近くの村に駆け込んだ。

 窓の外を見れば、白くまぶしい太陽の光が、突き刺すように降り注ぐ……黄昏の霊査士・ユノ(a90341)は、カウンターに頬杖をつき、考え込んでいた。
「御機嫌ようですわ〜☆」
 数人の知り合いと連れだって歌漢女・ラートリ(a90355)が、姿を見せたのはちょうどその時。
「お邪魔でしたかしら?」
「いや……ちょうどいい、お前らに仕事がある」
 顔をあげたユノは、肩をすくめると話し出した。
「ある峠道に、はた迷惑な盗賊……が、出没しているらしい」
 そいつらは、全員スキンヘッドに腰蓑だけを身につけて、通る男性に自分たちと同じ格好を強要しているようだ。
「迷惑極まりない、連中だから何とかしてほしい」
 鍛え抜かれた肉体をしているが、あくまでも一般人だからな。その点は注意してことにあたってくれ。
 そういうと、ユノは冒険者たちを酒場から送り出すのであった。


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参加者
砕喰兼備・オルド(a08197)
自由業・フォクサーヌ(a14767)
パタパタ中堅観察者・エリン(a18192)
全開・バリバリ(a33903)
武人型狐スト忍者・アリエーテ(a57608)
高らかに響く腹音・クルック(a58349)
蒼夜風・エリザベス(a62946)
チキンレッグの格闘家・ファーサイト(a75423)
NPC:歌漢女無双・ラートリ(a90355)



<リプレイ>

●ハゲの待つ、土地へ
 問題の迷惑盗賊団が出るのは、もう少し先。てくてくと歩く歩幅は夫々に、額の汗をぬぐいながら肩を並べて突き進む。
「髪を勝手に刈る何て……まぁ、確かに暑いけど」
「マッチョな迷惑集団とは、困ったものでござる」
 優しき暗闇・エリザベス(a62946)と武人型狐スト忍者・アリエーテ(a57608)。共にお年頃な少女二人が同じような事を思い胸をなで下ろす。
 今回襲われているのは、全部が全部男性であり、即ち……女性は奴らの眼中にないらしい。被害者が男だけなので一安心というか、そーゆー趣味の持ち主達なのか……何はともあれ、一安心。
「ちょっと、困ったちゃんですわね〜ん」
 腰蓑は素敵ですけど……。と、歌漢女・ラートリ(a90355)もちょっとだけあきれ顔。ラートリに同情されては御しまいの様な気もしなくもない。
 この暑さだから、腰蓑はまだ許容範囲内だけど……。
「ハゲはちょっとなぁ〜ん」
 髪の毛は一生のお友達。無くなったら、ちょっと嫌なぁ〜ん。同じ男として、切実な痛みを共感した高らかに響く腹音・クルック(a58349)が、耳元を手で押さえふるふると頭を振る。
「髪の毛無い方が、直射日光が皮膚にもろに当たって暑い筈なのだけれど……気付いてないのかしらねぇ……?」
 召喚獣にマテと命令していた砕喰兼備・オルド(a08197)が肩を竦めて見せた。
「……毛狩り隊、とでも呼ぶべきでしょうか」
 『彼らの面白……』と書きかけた文章を二本の棒線で書き消し『非道な行為を止めなければならないようだ』と、パタパタ中堅観察者・エリン(a18192)が改めて書きなおす。
「ねぇ、ばりー?」
 仲間達のやり取りを見守っていた公文書偽造疑惑・フォクサーヌ(a14767)が、全開・バリバリ(a33903)の袖を引いた。
「こんかいのやつらって、まえにでてきたあいつらだよね?」
 以前酒場を賑せたチームダンディや紅葉族と名乗っていた輩では無かろうか?
「俺はそうは思わないなぁ〜ん。あいつらとは芸風が違うし、襲ってるのもカップルじゃないなぁ〜ん」
 だから別物なぁ〜ん。赤褌でもないし、ラブ禁止でもない。細部が大分違うようだ……と、バリバリが首を振った。
「まずは彼らの出没する所に行ってみよう」
 今回の生贄(おとり)志願者。チキンレッグの格闘家・ファーサイト(a75423)が、なんやかんやと、議論をぶつけ合う仲間達を促した。
 決戦の場所へ一歩また一歩……確実に近づいていた。

●腰蓑付けた……無頼漢! 〜いきなりピンチなんですけどっ!?〜
「ふははははっ! よく来たな、新たな同志よ!!」
 えっちらおっちら、道を行く男性冒険者達の前に人影が壁となり立ちはだかった。
「漢なら、すっきりぴっかり丸刈りできまりだ!」
 ぐっと突き出す拳に、柳刃の剃刀がぎらりと光る。
「こういう連中見てると、まだまだランドアースも平和なんだなぁ……って思うのよね。ちょっと不謹慎だけれど……」
 被害にあった人たちには悪いが、なんだかあまりにも現実離れしたバカさ加減に、少しだけ心がなごむ気がした。
「この事件の裏には、ひょっとしたらある霊査士の陰謀が……あるかもしれません」
 狙ったように、この手の依頼ばかり持ち込むところが実に怪しい……。不確定要素ばかりの適当な推測をエリンが呟いてみる。
「だとしても、それはそれでおっけーなのね」
 即ち……面白ければ、全て良し。
「ラートリ殿はかよわき漢女ゆへ、拙者らと一緒に見守るでござるよ」
「もちろんですわ〜ん」
 同じチキンレッグのファーサイトの生贄っぷりを、倍以上見事な体躯のラートリは草場の陰から涙を飲んで見送る。
「ちぇー、ぜったいおなじだとおもったのにー」
 生憎、以前騒ぎを起こした顔ぶれとは違う顔ぶれに、ふぉっくすが頬を膨らます。でも、考えようによってはあの手の手合いが増えたのは、彼女にとって喜ぶべきことなのかもしれなかった。
「なんだ、お前ら!?」
 見るのと聞くのでは大違い。茶色の羽毛を逆立てて、ファーサイトがガウガウっと立ちはだかる盗賊たちを威嚇した。
「オマエらのムサい趣味押し付けんなよッ!」
 つるっパゲなんて……ごめんだぜ。自慢の蹴りの構えを取る。
「俺達も手伝うぜ! なぁ〜ん」
「ここは潔くいくなぁ〜ん!」
 シュッシュッ! と、空を蹴り、毛を剃られてたまるものかと、身構える格闘家の腕をクルックとバリバリがガシッと掴んだ。
「何!?」
 てっきり一緒に無頼漢達を掃討するのかと思えば……あっさり、寝返った仲間にファーサイトが目を向いた。バッとマントを脱ぎ棄てた2人の姿は、ハゲヅラに腰蓑一丁。パッと見には、3人を取り囲む盗賊たちとお揃いの格好であった。
 ハゲヅラを被る時に不自然にならないように……と、生え際を剃る過程で、エリンがちょっと剃り過ぎたりしたけれど……ちょっと剃り込みが深くなったくらいはご愛敬だ。
「お前らは一体…………」
「仲間なぁ〜ん」
 信じてくれなぁ〜ん。この純真な瞳をみるなぁ〜ん。漢なら、細かい事は気にするななぁ〜ん。
「そうか、真なる同士というわけだなっ」
 なぁ〜んな語尾とか、ノソ耳を隠す不自然な鉢巻とか、太い尻尾とか明らかに不自然なのだが……あっさり漢達は納得した。単純すぎる。それでいいのか……?
「少しくらい疑えよッ!?」
 掴みはOK。と、女性陣が見守っているであろう、草むらに小さく拳を握ってみせるヒトノソリン2人の様子に、両腕を取られたファーサイトが唾を飛ばして抗議する。
「腰蓑を愛する、者に嘘はないっ! さぁ、キミも捲るめく、腰蓑の世界へ!!」
 いざ行かん! 是がすめばキミも仲間だ!!
「ハゲだと直射日光が刺さって痛いんだよッ!」
 そんな世界はいやーッ! と、抵抗したいのだが……蹴り飛ばしたくとも、掴まれた腕はびくともしない。これが経験の差というものなのか……チキンレッグとしての勘が、『こいつはヤバいぜ』と、告げていた。

●腰蓑付けた……無頼漢! 〜灼熱のリンボーダンスっ!!〜
 草むらの陰ではいぜん、待機しているメンバーが生あたたく騒ぎを見守っていた。
「……ちきんがぬがされるのをみても、あんまりおもしろみがないのね」
 くんずほぐれず、巨漢達の肉体は見ごたえがあるが……羽毛に包まれたチキンレッグが服を脱がされたところで……これっぽちも、見るべき場所がない。ふぉっくすが面白くなさそうに、視線を外した。バリバリやクルック辺りが脱がされれば、まだ見どころ満載なのだが……。
「お頭! こいつ剃刀の刃が通りません」
「何、ダメならそのまま……むしり取れっ」
 チキンレッグの羽毛は通常の髪の毛を剃る要領では、行かずどうやら手づかみでむしりとる方向に路線を変更になったらしい。ブチブチと痛そうな音が響く。
「さ……てと……大丈夫でしょうか……」
「あらあら、そろそろ助けた方がいいかしらね」
「いえ、ここはもう少し……タイミングを待った方が」
 期を伺うことを、ランドアースでは芸人魂を尊重する、といいましたか……? 出て行こうとするエリザベスとオルドをエリンが引きとめた。
「このままだとモフモフな羽をむしられて美味しく食べられ……じゃなく可愛そうな目になってしまうでござるよ」
 抜かれた頭は、やっぱり鳥肌になっているのだろうか?
「いたたたた……っ。腰蓑はちょっと男らしいかもな……」
 痛い、痛いからッ。抜かれる羽毛に流石のファーサイトもちょっとだけ涙目だった。
「そろそろ、頃合いかなぁ〜ん」
 ちょっと遅かったかも? 鶏冠の傍に丸く抜かれた後が残ってしまったファーサイトの拘束をといてやる。
「あいや、またれいっ! そこなマッチョ族!!」
 アリエーテの放った光が、バリバリとクルックの体を照らし出す。
「お前達のトレンディは、すでに時代遅れなぁ〜ん!」
「何っ!?」
 ズンドコズンドコ。ラートリが手にした巨大なマラカスでリズムを刻む。マラカスって……そんな音するのか……?
「正義の鉄槌うけてみよ。その格好にふさわしき踊りを!!」
 突っ立っていた盗賊2人に棒を持たせて、その下を踊りながら腰を揺らす。ホッホッホッホっ! さあ、ご一緒に!! 激しくステップを踏みならし力強いリンボーダンスを披露する。一心不乱に踊る足並みにつられて、足踏みを踏み鳴らす。最初は恐る恐る、次第に音のうねりに合わせ漢達も踊り出す。
「「これが真のトレンディなぁ〜ん!」」
 気合一発棒の下を潜り抜けた。2人が腰蓑すら脱ぎ捨てるのと、2体のヒトノソリンが姿を現すの……どちらが先だったのだろうか……?
「おぉぉぉぉお!?」
 何だかよくわからないけど、強いパッションの様なものが漢達の心を打ちのめした。
「腰蓑なんて生温い、角にしなさい、角に!」
 股間に突き立つほにゃららケースの方がずっとカッコイイじゃない。貴方達の中途半端な所業に……。
「毛神さまはお怒りよ。どれくらいお怒りかというと……」
 それまで鱗に蔽われていたオルドの体がもっさり長い毛に包まれた。見た目にすっごく不気味だ。
「これくらいかしら?」
 もっさりな毛玉が漢達を追い立てる。
「ぎやー」
 よくわからないが不気味すぎて、恐れをなして逃げ惑った。
「フフフ、這い蹲ってのたうち回って豚のように惨めにお啼き……」
 フォクサーヌの手近にいた数人が光の槍で貫かれ絶叫を放った。絶命を許さぬ、無慈悲な光の槍の攻撃が次々放たれる。
「相手は変態とはいえ一般人………一般?」
 一般人の範疇にいれてしまっていいものか疑問はのこるが、穏便にお願いします。
「……っといけないいけない、またあやうく りせーをなくすとこだったのね」
 こういうのは生かさず殺さず。きっちりお説教をしなければいけないのだ。横では今まさに新たな必殺技が完成した。
「必殺! 毛玉ローリング!! なぁ〜ん」
「お返しだぜッ!」
 ハゲだと直射日光が刺さって痛いんだよッ!!
「なーーーーーーっ!?」
 茶色の毛玉と化したファーサイトの体をヒトノソリンに戻ったクルックが大きく転がした。なんの事はない鎧聖降臨で巨大な羽毛の塊とかした体を転がしただけなのだが……。その動きの軌跡は読みづらく予測し難い。ごろごろと転がる毛玉が数人を巻き込み、弾き飛ばしていった。

●そして終演へ……
 無理やり踊れされ息も絶え絶えな盗賊たちを、横に並べバリバリが切々と語りかける。後ろ手に縛り上げられ、正座をさせられた漢達に抵抗する力は残っていなかった。
「腰蓑はともかく髪を剃るのは容認できないなぁ〜ん。虚飾に頼るのは良くないけど、自己主張の一つくらいは必要なぁ〜ん」
 お前たちにとってハゲが自己主張かもしれないが……他人にまで押しつけるものは如何なものか? 人間としてやっていいことと悪い事があるのだ。
「今のトレンディは丸刈り腰ミノではありません。燃える男の最新モード、それは……フンドシモヒカンと呼ばれるものなのです」
「そうそう、俺だって褌締めるのは忘れても髪のセットは欠かさないなぁ〜……ん?」
「じー……」
 ささっと自慢のリーゼントを撫でつけたその膝の前にいる、腰をおろした人影に気づきバリバリが視線を下に落とす。
「……おぉ、本当に締めるの忘れてたなぁ〜ん」
 どおりでふぉっくすの視線が突き刺さっていたはずだ。ノソリンからヒトノソリンに戻った時にてっきり付けていたと思ったが……どうやら気のせいであったらしい。いそいそと木陰に飛び込み白い褌をしめなおした。まぁ、そういう時もある。
「オレは男なんだからッ! お、男なんだからッ!」
 ちょっとだけ、毟られた頭を気にしながら泣き叫びはしなかったがファーサイトの目には涙が滲んでいた。きっと、すぐに生えてくる……そう信じて、鏡に映る禿げた部分をそっと撫でた。
「暑苦しい依頼だったなぁ〜ん」
 季節以上の熱気と感じ汗を拭う。
「ドンマイです」
 いろいろあったがエリザベスは良い笑顔を浮かべる。
「ふっふっふ……これを再び使う日が来るとはねぇ……」
「拙者もやってみたいでござる〜!」
 携帯用の墨汁と筆をとりだしたオルドが、ぺたぺたとハゲ頭を黒く染めていく。真っ黒な頭に生まれ変わった漢達は後日、近くの町にそろって突き出されたという。
『これからは他人をダサくするようなことはしません』
 と、そろって血判状にサインをしたという。
 程無くして、道行く男性を襲う腰蓑集団の噂は消えていった……。


マスター:青輝龍 紹介ページ
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