■■レグルス攻略〜内部調査隊〜■■



<オープニング>


●城塞都市レグルス
 列強種族であるリザードマン達が、同盟の西部地域に侵攻を開始してから数日が経過した。
 既に多くの冒険者達が、レグルスを中心としたリザードマンの略奪や襲撃を阻止すべく出発しており、進行速度を鈍らせる遅滞行動は一定の成果が期待されている。

 だが……。
 冒険者達の力をもってしてもリザードマン達の侵攻を完全に食い止める事は不可能であった。
 レグルスを陥落させ、更には重要拠点の攻略を行っている高位のリザードマン達。彼らの行動を阻止するには、今の同盟には力が足りなかったのだ。

「充分な準備が無く、強大な敵と戦う事は勇気では無く、無謀でしかないのです」
 ユリシアの声は暗い。
 救援を求められた依頼の幾つかは、冒険者達に告知される事は無かった。
 勝利する可能性が1%も無い状態では、冒険者を派遣する事は出来ない。それが、同盟の現実であったのだ。
 この為、抵抗らしい抵抗を出来ずに、レグルス周辺の小国が既に8つリザードマンの手中に落ちている。

「この状況を打開する為には、充分な準備が必要なのです。……レグルスへの潜入作戦。とても危険な任務ですが、引き受けて頂けますか?」
 ユリシアの言葉に、酒場に集った冒険者達は……。

●レグルス調査隊
「質問。何組かに分かれて情報を集めた方が良いと思う。分かれすぎても困るけれど……」
 そう提案したのは誰だったか。
 何組かの部隊に分かれる中で、城塞都市レグルスの情報を集める為に、編成された冒険者達が綿密な打ち合わせを行っていた。
 彼等の使命は、現状の城塞都市の情報を持ち帰る事。
 リザードマン達によって制圧される前の情報はあっても、その後の情報が一切出てこない。
 彼等との戦闘で出来た傷もあるはずだが、そこまで詳しく知り得た者が居ない為に、内部での情報収集が大変な作業になるだろう事は想像出来る。
 闘って勝つ為に、敵地となった城塞を知る為に動かなければならない。
 他の部隊の者達と違い、より広範囲に、一カ所に於いても攻略可能な時間帯を探る為に時系列で、そして点ではなく面としての……周囲との連鎖的な情報の統合が必要になる部隊になった。
 時間の惜しい今、例え仲間が死んだとしても、その屍を乗り超え、万難を避けて情報を持ち帰るだけの機転と慎重さが必要になる。
 油断、無駄な行動、過ぎた功名心………時には愛や友情さえも不要な物となるだろう。
「人が作った物……例えリザードマン達が改修を行っているとしても、必ず何処かに抜け穴が……隙をつける場所があるはず……」
 慎重になりすぎては時間が足りず、大胆に動いては敵に隙を見せかねない。
「中への侵入は、比較的簡単だと思います……」
 ユリシアによれば、リザードマンによる周囲の人狩りが行われているそうだ。それに捕まれば、もれなくレグルスへと招待される事になる。
 勿論、捕まる時の姿は誰もが想像できる物だろうが、武装は全て奪われてしまうだろう。
 徐々に増えている人狩りの人数から考えて、レグルス内部では人手が不足していると想像される。
 何の為に連行されているのか……そして、どのような事態が待ちかまえているかまでは、まだ誰も真実を見いだせないでいる。
 ただ、人狩りと同時に屍がレグルスの外に出されている。様子を探った者達によれば、死体の処理をしているのは同じ人狩りにあった者達らしい。
 埋葬作業を邪魔したり、死者への鞭打つような真似はしないのだが、連絡を取り合えるだけの時間をリザードマン達は与えてくれない。
 闇夜を縫って掘り出した死体の手足は、重労働によって出来た傷や疲労があったというのが最新の情報だ。
「合図があるまでに、出来る限りの情報を揃えておいて下さい。迎えを寄越す事は出来ないかも知れませんが、隙を作る事は出来るでしょう」
「どうやって?」
 死をも覚悟の挑戦であるというのに、レグルス内部から脱出できるだけの隙を作ると言い切ったユリシア。
 どうしても気になって尋ねた冒険者に、エルフの霊査士は悲しげな微笑みで返すだけだった。

マスターからのコメントを見る

参加者
凱風の・アゼル(a00468)
黒真珠・クレア(a01342)
蜂蜜騎士・エグザス(a01545)
ニュー・ダグラス(a02103)
電波系ろりぃたアイドル・ファル(a02233)
見知らぬ旅人・ラファエル(a02286)
ヒトの紋章術士・アルフレッド(a02636)
真夜中の静寂・サガ(a02732)


<リプレイ>

●城塞都市レグルス
 リザードマン達によって占領された城塞都市。その内部には、混沌と死が満ちていると思われたのだが‥‥それは冒険者達の過剰な思いこみだった。
 確かに、占領された敗者の地と言う事で内部での生活は苦しいものになっている。
 それは間違いない。
 だが、先入観として冒険者達の間にあったりザードマンが凶暴な野蛮人という者は少なからず払拭されていた。

「何とか、貸して貰いましたけれど‥‥戦場と考えたら、仕方ないでしょうか‥‥」
 強制労働の為に人狩りを行っているリザードマンによって、宿舎の掃除や炊事洗濯などの雑用をあてがわれたエルフの紋章術士・アゼル(a00468)は、自分から言い出そうとしていた仕事に就いた為に比較的容易に情報収集に付く事が出来た。
 外から連れてこられる者達は、城塞内部での単純労働、つまり人数が必要とされる作業に次々と当てられている様子だった。
「私は‥‥駄目でしたけれど‥‥」
「仕方ないわよ。アゼルクンは良いですよ‥‥私達は相手にもしてくれませんでしたから‥‥」
「はい?」
 ヒトの医術士・クレア(a01342)にストライダーの忍び・サガ(a02732)が続ける。
 サガの疲れた言葉に、アゼルがいつものノンビリした表情で小首を傾げていると、どうにも彼等が強制労働に就かされているという実感が湧いてこないのだが‥‥。
 彼女達はリザードマンの治療に従事したいというクレアの願い出と共に、彼女の補佐をすると言う形でサガが談判に赴いたのだが、リザードマン達は自らの治療に彼女達の助力は必要ないと端的に断ってきた。
 ならばと、作業に従事する者達の治療を申し出たのだが、それも非常に簡単に却下されてしまった。
「結局、リザードマン全体の人数は少ないのかも知れない。その分、相手の救護兵‥‥こちらのナースウィッチに相当する者の数は少ないといっても充分な人員は用意されているのだろう‥‥少数精鋭の部隊か‥‥」
 呟いているサガはと言えば、クレアが懸命に頼み込んでいる間にリザードマン達の隙を見て小型の武器を頂戴していた。占領されたレグルスで調達した物だろう、流石に名刀という訳にはいかなかったが、丸腰の数倍マシだと言えた。
 持ち歩くのは流石に不可能なので、瓦礫の中に隠してきたのだが、それもクレアが相手から奇妙な目で見られていた時間が確かにあったからに違いない。
 敵も味方も関係なく、治療に付くという思想は、当たり前とは行っても戦場では受け入れにくいものなのだ。
 結局、強制労働に就いている者への積極的な治療も許されなかった。リザードマンにしてみれば、死んだ分は補充でなんとかするという方針なのかも知れない。
 確かに、短時間での作業効率を考えれば、取り替えの効く部分はそうしていた方が作業は早く進む。後の反動を一切考えなければの話だ。
「で、それは?」
 サガがメモを取っているのを目ざとく見つけたヒトの紋章術士・アルフレッド(a02636)が首を傾げる。
「これはクレアに借りてる」
「へぇ?」
 どうやってと、尋ねようとしたアルフレッドの視線がクレアに泳いだ瞬間に、アルフレッドの唇が、表情が固まった。
「‥‥‥」
 にこやかなクレアの笑顔。
 だが、その笑顔の奥深くでそれ以上聞いてはいけないと、無言の圧力が隠されているのをアルフレッドは感じ取った。
「あ、あはは。まぁ、別件で」
 ヒトの紋章術士・ファル(a02233)と白銀纏う紅の剣姫・フユカ(a00297)は二人で城塞内を動いていたのだが、ファルは流石に気が咎めて、頭に浮かんだ策を行えずにいた。
「ホントは、リザードマン達を中から突き崩してやりたかったのデスが‥‥」
「ううん。ファルさんの考えが当然です。グリモアとの誓い‥‥そんな大げさに言うと照れちゃいますけど、私達は卑怯な真似をしちゃいけないんです‥‥力を持つ者の、それが掟だと思いますから」
 いつもは明るいファルが項垂れているのを、フユカがそっと胸に抱きしめる様に彼女の頭を抱きしめた。
 冒険者として、グリモアと結ばれた彼等だからこそ判るのだが、相手のリザードマンも彼等に対して卑怯な手段は用いてきていない。
 ただ、勝敗のある戦いであるが故に、味方同士で在れば行われて当然の部分が欠如している為に一見すれば『卑怯』な様子に見えるのだ。
「まぁ、可愛い女の子を相手にリザードマン達も手を休めてくれた方が俺は捜査が楽なんだけれどね」
 気を取り直して、アルフレッドは余裕の表情で会話に戻った。彼は巧く表情の変化や作業態度でリザードマンから与えられた作業の手を抜いていた。いざというときに力がでなければと、労働時間にも体を休める仕事のやり方を会得している様だった。
「正攻法か‥‥それも確かに良いけど、ネ?」
 ストライダーの武人・ラファエル(a02286)も、アルフレッドに倣ってはいないのだが作業中に体力低下を極力避けていた。
 初日は小回りを効かせて作業に従事して見せたのだが、その日で大半の流れを見た彼女はリザードマン達も気が付いていない様な作業監視の「間」を縫って移動、調査を行う事が出来た。
「多少は手を抜かないと、決行日まで保たないわよ?」
「それはそうだけど‥‥まぁいいわ、連絡はしておくわね」
 ヒトの吟遊詩人・クロウ(a00586)が静かに影の間に入ってゆく。他の仲間達との情報の行き来を買って出ていた彼女が、定められていた家屋を出た時に、丁度帰ってきたヒトの重騎士・エグザス(a01545)とぶつかりそうになった。
「おっと!!」
「おや? 何処に行かれていたんです?」
 あやうくクロウにぶつかりそうだった為に、エグザスは待機していた仲間達全員の視線を集めていた。
「いや、労働時以外ある程度自由に動けるならと、町中を動ける範囲で見て来たんだ」
 他の者も、時間の空きがあれば周辺へ赴いているのだが際だって目立つ情報は得られていない。
 三白眼を更に細めて、エグザスが唸る様にしているのも、他の者達と同じ情報が確実に得られてはいても、図抜けて貴重なもの‥‥例えば敵の弱点が分かる訳ではないと言う点だった。
 結局、明日には約束の日が来てしまう。
 霊査士のユリシアが約束した、彼等の脱出の時が‥‥。

「丁度、毎日のその時間って‥‥死体破棄の時間に重なるんだぜ‥‥」
 ぶっきらぼうに告げるエルフの紋章術士・ダグラス(a02103)。何人かには打ち明けていたのだが、死体処理の時に紛れて外に脱出する案をダグラスは考えていたのだ。
 だが、丁度約束の時がその時刻に近いと知って、彼は他の冒険者達との行動に合わせる事にしたのだ。
「死んでしまったら元も子もない‥‥と、言っても情報無しでも難しいか?」
 サガから杖も手に入ったと聞いている為に、ダグラスの表情は昨日よりは比較的穏やかだ。
 冒険者達が夕飯の後に相談をしていた所に、一緒に人狩りにあってここに来た村人が一人、静かにする様に言ってきた。
「君達の事、リザードマンが聞きに来たよ。何を考えてるのか知らないけど、俺達まで巻き添えにしないでくれよ、頼むから‥‥」
「エドさん、ありがとう」
「いや、俺は‥‥」
 クレアが頭を下げる。
 リザードマンから注意を受けていると、それをわざわざ言いに来るにはかなりの勇気が必要だったろう。
「兎に角、整理してみよう」
 エドが帰ってから、小声で集まるようにと呼びかけたアルフレッドの元に冒険者達は頭を寄せ合った。
 そして小声で今まで得られた情報を伝え合う。
 誰かが死んでも、一人さえ生き延びれば情報は無事に届けられるのだから。

●混乱〜死中に活を〜
 その混乱は、さざ波の様に静かに始まり、やがて巌も砕く大波となってレグルスを震撼させた。
「何だ?」「急げ!」
 冒険者達に言葉は要らなかった。
 互いに姿を確認する間もなく、城塞内部であがった反乱の狼煙が消される前に下水口から脱出する。
 あらかじめ整えられた手はずに乗っ取って、冒険者達は前を塞ぐリザードマンだけを倒して先に進む。
「え?」
「エドさん?」
 下水道に飛び込む直前に、彼等の目の前に信じられない光景があった。
 優しい、彼等に警告を出してくれた青年が、リザードマンの鉾に胸を貫かれて絶命していたのだ。その直ぐ側には、傷付いたリザードマンが再び立ち上がって彼等から逃げようとしていた。
「行かせるか!」
 彼等が脱出する事を、少しでも長く知られてはいけない。
 立ち塞がり、傷付いたリザードマンに襲いかかった彼等の目に、涙が流れていた。
「敵に良いように扱われて抵抗もしないなんて、まぁ大層な依頼だこと‥‥」
 呆れた口調のサガ。だが、その表情は決して巫山戯て等いなかった。
 死者を弔う間もなく、彼等は下水を駆け、長い夜を潜り抜けて無事に帰還した時には睡魔と疲労が彼等に襲いかかってきた。

●得られた物とその代価
 彼等の苦労の報酬は、レグスル内部の情報として同盟各国にもたらされた。
 人狩りの理由、その使役の状況。
 城壁や建物の修復、武器や防具の修理、運び込まれた食料の搬送や労働に従事する者達の食事、雑用など人的資材として使われている事が判った。
 また、彼等にって保存食の作成。薪の作成、矢の作成、投石用の石の準備。などが行われて、戦いの準備も充分に行われているとも。
 食事という点では、アゼルから食料などの資材は潤沢で、一ヶ月以上の篭城にも充分に耐えられそうだと、直接の作業に就いた者だけにしか判らない様な情報も出された。
 これは補給拠点とする為に集めているのでは無いかというのだが、その意味ではまだまだ足りないのではないかと予想されている。
 更に、敵となるリザードマンも彼等と同じく選抜された存在‥‥冒険者だろうと言う事。それは負傷者の手当を断られた事と、作業に従事している間に感じられた彼等の立ち振る舞いからだが、それは同時にこの戦いが冒険者以外には到底解決できない事態に陥っている事を容易に推測させた。

 そして、これらの情報を持ち帰った冒険者達の為に、決死の覚悟で闘った者達の全員の死亡‥‥エドという名の青年に、村で待っている婚約者が居たのだという話は、冒険者達には伝えられずに消えていった、戦いの中の悲しい物語の一つに過ぎなかった。
 レグルスを奪還する事、それが悲しみの連鎖を止める手段である事は、冒険者達の誰もが判る事だった。

【END】


マスター:IGO 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:8人
作成日:2003/09/27
得票数:冒険活劇6  ダーク22  ほのぼの1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。