【ミュントス乙女組】グランドフィナーレ〜お嬢様、歌劇と参りましょう



<オープニング>


 甘い香水の芳とともに、ストライダーの霊査士・レピアがやってくる。
 レピアはゆったりと冒険者の前に腰かけた。少し元気がないように見えるのは気のせいだろうか。
「これまで私は、ギャロがもってきたミュントス観光のおはなし……とくに、可愛いおんなのこ向けのものを紹介してきたわよね? でも、それも今回でおしまい」
 長い髪を指先でもてあびつつ、レピアは静かに告げた。寂しく思うかもしれない。しかし出会いがあれば、別れもあるのが人生、ならば最後も楽しく迎えたいものではないか。
「たっぷり楽しんできてね。最後は、歌と踊りのお芝居を作るという依頼よ。オペレッタやミュージカルといってもいいけれど、私はもっとシンプルに『歌劇』という呼び方が好き」
 ミュントスには不思議な村がある。これはすでに知られていることだろう。執事喫茶村に華道村、温泉施設村にヨガ教室村……と、多種多様なプロフェッショナルが集まる村が存在するのだ。そして今回は歌劇村ということになるわけだ。大きな劇場があり、そこでは連日、歌と踊りに彩られし物語が紡がれているという。
「以前、岩盤浴の施設で会ったかも知れないわね。村にジェーンさんという女優さんがいてね、だけど彼女、今度は演じる側ではなく、はじめての舞台監督をつとめるそうよ。そして新作について、シナリオと歌曲、舞台や出演者を求めているの。よければみんなで行って、台本のアイデアを出したり歌詞を書いたり、出演者として舞台に参加してもらえないかしら? きっと楽しいわよ」
 公開が予定されているのは悲恋の物語。仮のタイトルを『恋人たちの港町』といい、戦争に行くため船出を控えた青年兵士たちと、その恋人の女性たちを描く群像劇だという。とある酒場を舞台に、ストーリーは兵士たちの出征前夜、夜明けまでの数時間を描く。
「いくつか決めないといけないことがありそうね。まず配役、基本的には、愛する男性を兵士として送り出す女性を演じてもらうことになるかしら。お相手の男性は、何度かお世話になった執事の皆さんや、カムリ先生がつとめてくれるわ。ご指名したい恋人役がいるなら、事前に教えておいてね。もちろん、酒場の歌い手や店員、歌い手、といった役割でもストーリーにからむことはできそうね。店員であり、かつ、恋人が出征する、という設定でも大丈夫」
 俳優にならないという選択もありえる。たとえば、歌のシーンになるたびに演奏を行う音楽担当(バックはヨガ村管弦楽団がつとめる)もあろうし、裏方に回って衣装や道具を作成してもいい。もちろんそうした役割は、希望者がなければ歌劇村の住民がきっちりこなしてくれるだろう。
「決まり事はふたつ。ひとつは、俳優として舞台に上がる場合、かならず一曲、『持ち歌』を披露しなければならないということ。ダンスをまじえたものでも、彼とのデュエットでも、しっとりとした独唱でもかまわないわ。オリジナルの歌詞を考えて教えてくれれば、作曲家たちがメロディをつくってくれるそうよ」
 そしてもう一つは、本編終了後のアンコール、グランドフィナーレに合唱する歌である。
「大きな階段を下りながら、それは豪華に締めくくるそうよ。最初の歌詞だけ決まっているの。『あなたの吐息をきかせてください』というものね。ここから一人ずつ、二十文字以内で歌い継いで曲にしてほしいの。裏方であっても、ここには参加してほしいわ。どんな歌になるか楽しみね」
 舞台のストーリーがどうなるか、どのようなエンディングを迎えるかも話し合って決めてほしい。ぶっつけ本番でカオティックになるのもコメディとして楽しめるかもしれないし、シリアスな結末も涙を誘うだろう。いずれにせよゴージャスに、そして楽しく締めくくりたいものであろう。

 歌劇村の住民は、歌劇を見ることも無情の喜びであるため、前代未聞の冒険者歌劇は満場の熱気をもって迎えられるだろう。これまで磨いた容姿とマナーを活かしつつ、楽しく、気高く、美しき乙女組の真髄を見せようではないか!


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参加者
雲穿銀華・チハヤ(a19827)
月に寄り添う一等星・カーラ(a26268)
黒猫の花嫁・ユリーシャ(a26814)
紫月姫・シュビレ(a31087)
エルフの武道家・チアキ(a49279)
森林の彷徨者・デルヴィーン(a68935)
白銀の歌唄い・コレット(a72235)
歌姫修行中・マナヤ(a72408)
ワイルドファーマー・ビュネル(a73520)
名も無い平和・ジナ(a73897)


<リプレイ>

●前夜
「一針縫うは親のため〜
 二針縫うは明日のため〜
 三針縫うは俺のため〜♪」
 なぁ〜ん、と歌うはワイルドファーマー・ビュネル(a73520)。仕上げを確認する。これは明日、舞台で乙女組の皆が着るドレスだ。
「ウエストを絞ったり胸回りを直したり大変なぁ〜ん」
 聞けば本日、舞台に上がる「女優」たちは、ヨガや岩盤浴で美しいプロポーションを身につけてきたのだという。その成果を飾る衣装だ。おろそかにはできない。
 舞台から稽古の声が聞こえる。舞台監督ジェーンによる、厳しくも溌剌とした演技指導が飛んでいるようだ。そして
「すいません、今のパート、もう一度やってもらっていい?」
 という名も無い平和・ジナ(a73897)の声も聞こえる。
 ジナは弦を取り直した。彼女は女優ではなく、ヴァイオリンの首席奏者(コンマス)としてヨガ村管弦楽団に参加している。舞台で使われる楽曲は複雑で繊細、すなわちとても困難なものだが、歌い手としての絶対音感と、強い音楽への愛で彼女はこれをほぼ習得していた。ジナと並び弦をふるう執事のシオンは、彼女が輝いているように感じるのだった。

●ミュントス乙女組公演〜恋人たちの港町
 割れんばかりの拍手。ホーリーライトが舞台を照らす。
 焦らすかのように幕は沈黙を守るが、やがて粛々と上がりはじめた。
 会場は広大な演劇ホール、数え切れないほど座席がある。しかもそれが、ぎっしりと満員なのだ。それだけの注目が集まるのも無理はない。この夜ついに、ホール初の冒険者主演歌劇が幕を開けるのだから。
 ライト係はビュネル、おもむろに光を消した。
 さあ、ここからはあなたも、観客の一人になった気持ちで観てほしい。

 ――暗いステージに、若い女性が浮きあがる。
 雲穿銀華・チハヤ(a19827)だ。レトロな様式の白いブラウス、青いベストとスカートの組み合わせ。チハヤは、初老の男性の手を引いている。
「父さん、こっちよ」
 腕を引かれ舞台に現れしは、カーキ色の軍服に身を包んだ執事シュルツであった。
「私はこれでも大尉だよ。父娘水入らずの食事だ。お前が喜ぶような、もっと良い店に連れていってやるつもりだったのに」
 といいながらもシュルツは口調に、楽しげな様子をにじませていた。
「むしろここが嬉しいの。私のお気に入りの店なんだから」
 舞台全体に光が灯り、黒一色の背景が途端、古めかしくも眩く、雑然なれど豪奢、色とりどり、魅惑的な大酒場へと一変した! 葉巻の煙やバーボンの香、うっすら汗かく熱気まで伝わってきそうである。
 店の名はアマリリス。見ればチハヤの頭にも、アマリリスを模した清楚な髪飾りがあった。
 舞台脇にはヨガ村管弦楽団、指揮者はやはりセバスチャン、軽快なメロディがあふれ出す。
 黄金の髪なびかせエプロン姿で舞うは、月に寄り添う一等星・カーラ(a26268)である。
「ようこそ不夜城『アマリリス』へ! 憂き世を忘れたいあなたにも」
 鈴の音のような声でカーラは歌う。その隣に、踊り子の衣装ひるがえし森林の彷徨者・デルヴィーン(a68935)が並んでいた。デルヴィーンの歌が舞台を彩る。
「記憶を求めたい恋人たちにも」
 そしてその二人の間から、音もなく進み出る歌姫は無垢なる茉莉花・ユリーシャ(a26814)。
「『アマリリス』はすべて、与えてくれるわ」
「だってここは」
 カーラが再び歌う。デルヴィーンが続けて
「夜に華咲く夢世界」
 兵士役の執事たち、あるいは現地劇団員のエキストラが中央に集まり、さらにゴージャスに、楽しげな合唱を行った。
 三度目のコーラス、その締め括りを、
「夜に華咲く夢世界」
 ユリーシャが流し目し、しっとりと歌い上げた。
 音楽がやみ、舞台中央、両開きの扉に光が灯った。
 歌姫修行中・マナヤ(a72408)と、その恋人役の青年兵士(執事村のクレイン)が入ってくる。マナヤの衣装は、やはりレトロな質感の町娘風。
「いつも通り『アマリリス』だけど構わないよね?」
「ああ、出征だからって湿っぽいのは嫌だからな」
 二人は気の置けない関係のようだ。しばし駆け引きめいたやりとりをしてテーブルに着いた。
 つづいて扉をくぐるは、白銀の歌唄い・コレット(a72235)、暗い表情の演技で歩む。軍医の腕章をつけたマシュウに手を引かれ独白した。
「本当にあなたは行ってしまうの……」
 気が立っているがそれは哀しみを隠すため、という感情の機微を、最低限の動作と台詞でコレットは表現していた。
 明るい声は、エルフの武道家・チアキ(a49279)。少年兵(執事ロウ)の手を引っ張って、華をふりまきながら入場する。
「ぼ、僕こういう大人っぽいところは……」
「なに言ってるの。兵隊になるんでしょ? もう立派な大人だよっ」
 少年と、その近所に住む姉のような存在、という組み合わせらしい軽快な会話だった。ロウは緊張からか多少口調が硬いが、それをチアキが巧く拾って、彼は世間慣れしてないのだ、という方向付けをしている。
 そして最後に、暗転していた隅のテーブルに光が当たった。紫月姫・シュビレ(a31087)が、相手役のクレオ(クレインの弟)とさしむかいに食事をとっている。二人は幼馴染みという設定だ。相手のことをよく知っているはずなのに、今日はどこか、ぎこちない。
「あの……私……いえ、なんでもありません」
 短いやりとりながらシュビレとクレオは、伝えたくても伝えられない胸の内があることを匂わせていた。

 音楽が一変した。タンゴのリズムだ。テーブルを組んだ台に上がり、デルヴィーンが舞踏を披露する。
「相変わらず可愛いねえ」
「どうよ一杯、下りてきて俺と付き合わねえか?」
 からかい半分の声が酔客からあがるが、デルヴィーンはこれを余裕で流している。ただ一瞬、ふっと上体を曲げ、ある客に顔を寄せた。意味深な視線――その客は、豊かな黒い髪の青年兵士であった(華道とヨガのカムリ先生が演じている)。
 カーラはこの店の給仕だ。ジョッキを机に並べ汗を拭った。
「来たの?」
 といって振り返る。口調は冷たい。
 脚光が当たるとそこには、初老の兵士ゼーバッハの姿があった。
「私はお前の婚約者だから」
 それを嗤うように、カーラは伸ばされた手をかわす。
「親同士が決めた結婚だけどね。戦功はあれど貧しい出自のあなた、没落貴族の私……あなたの戦功と私の家名、利害が一致しただけの関係だわ。私はあなたにとって、人形のようなものでしょう?」
「私は……」
 ゼーバッハの声を遮るように、ジナが弦を立て効果音をあげた。
 脚光はチハヤの席に灯る。
「出征の船は明日の朝!? 父さん! そんなに早いのならもっと事前に……」
「……予定が早まった。戦況が悪化しているんだ」
 グラスがテーブルに落ちる。同時にジナのヴァイオリンが弦を滑り、発生した衝撃の大きさを表した。ビュネルも光を暗い色に変えた。
 この一言はまたたくまに酒場を巡った。
 それまで子猫のようにじゃれあっていたマナヤとクレインに、沈黙が訪れるのがわかった。
 シュビレとクレオは知っていたのだろう。口を閉じ、うつむき、悲しみをたたえ……それでも、互いの存在を確かめあうように手を握り合った。
 チアキがロウに詰め寄る。
「本当なの!」
「うん……」
 落ち込むロウの肩を、チアキは無言で抱きしめた。
 コレットが突然立ち上がった。
「嘘よ! そんなの嘘だわ!」
 椅子を蹴って駆け出す。客席からは見えないはずだが、コレットの両眼からは、涙の雫がこぼれるのがはっきりと感じられた。待って、と叫んでマシュウが彼女を追う。
 再びマナヤに脚光が当たる。マナヤは微笑んでいた。弱々しく恋人の手を握った。
 チアキが立ち上がり歌いだす。
「恋人達よ語り明かしなさい、ただ自分の心に素直に
 恋人達よ確かめ合いなさい、互いを結ぶ絆の強さを
 言葉だけで足りないなら、抱きしめ口付けなさい。強く、強く」
 暗転、そしてマナヤ一人に光がさした。マナヤは美しい声で歌う。
「本当は行かないで欲しい。だけど貴方を困らせたくないから 笑って見送るよ。
 でも、一人の時には泣いてもいいよね」
 はじめアカペラではじまった歌に、やわらかな弦楽が乗った。心を打つ歌唱であった。
「これを私だと思って肌身離さずにいてね。ずっと貴方のそばにいたいから」
 マナヤは手作りのお守りを彼に渡した。演劇とはいえ、感極まり本当に瞳がうるんでいた。
 悲しみを隠し、明るく振る舞う。その辛さはチアキも同じ。ロウの手を取りワルツを踊る。光源は色を変え、音楽は優雅に流るる……チアキの歌がこれを彩った。
「いつも自信がなさそうな、そんな君も可愛かった。
 でも頑張った君なら もう大丈夫」
 上背を思い切り背後に倒す。ロウに支えられ、綺麗にポーズが決まった。
「ほら、自信を持って 君ならできる」
 ここでチアキは悪戯っぽく、彼の額にキスをした。
「早く戻ってきてくれないとお嫁にいっちゃうかもよ?」
 これを抱きしめる少年兵ロウ、その横顔が少し、凛々しく見えたのは光の加減のせいだけではあるまい。

 場面が暗転する。
 再び光が降りると、そこは酒場の裏手だった。舞台が一回転したようだ。
「どうしたんです? こんなところに連れ出して」
 デルヴィーンである。つづいて、カムリにも光が当たった。
「それはその……なんというか……」
 そのとき酒場の窓が明るく灯った。シルエット姿でユリーシャが現れる。
「心が繋がっているといっても、言葉でなければ伝わらないことがあるわ」
 それは歌、聴く者をうっとりさせるような呼びかけであった。
「格好つけずに、今、ここで伝えなさい。でないと、きっと後悔するわよ」
 すっとユリーシャの姿は消えた。酒場の中に歌いかけているという設定だが、この歌が酒場裏手の、二人の背を押したのも事実。
「素直になれれば 一番良いのに」
 カムリが歌いだす。さすが先生、よく通る声である。
「どこかでそれを 拒むのは何故」
 デルヴィーンが継いだ。
「いつでもそばに いてくれたひと」
「けれどもそれは 永遠にではない」
 交互に歌い、そして二人、寄り添って声を合わせる。
「だから伝えよう 今こそ、想いを」
 見つめあう。頬を染め、やがて並んで夜の闇に消えた。
 視点はコレットとマシュウに移る。
「お願いだから戻ってきて……気休めでも良いから首を縦に振って私を安心させてよ……!」
 コレットは慟哭するように歌いはじめた。
「夜など明けなければいい 朝など来なければいい
 あなたを思い不安に震える日々が始まるのだとすれば この夜のなんと優しいことか……」
 マシュウは何も言わなかった。ただ静かに、コレットの身を抱いた。
 暗転。

「私は星になる」
 カーラの歌とともに、再度舞台が酒場に戻る。 
「あなたの傍にいられるよう あなたに気づいてもらえる星になる」
 そう、本当はカーラもゼーバッハに心を通わせていたのだ。
 ゼーバッハは視線を彷徨わせた。その真意は、観る者により異なるだろう。カーラの意を受け入れているようにも、迷っているようにも見えたからだ。
 舞台に漣のように旋律が伝わってくる。シュビレとクレオは同時にハッとなり、慌てて手を放した。
 シュビレのみに光があたる。それは彼女の心情の吐露、
「幼馴染との最後の時間、許されないことではあってもそばにずっといてほしい……愛しているからこそ……」
 そっとメロディが被さった。シュビレは歌う。
「でもそんなことは決して言えない 彼を苦しめるだけだから」
 首を振る仕草。客席から多くの溜息が聞こえた。
 チハヤはその事情を知っている。
「じれったいわね……そうだ!」
 ユリーシャに駈け寄って耳打ちした。ユリーシャは微笑してチハヤに頷き、再度あのメロディを歌う。
「心が繋がっているといっても、言葉でなければ伝わらないことがあるわ」
 まるで妖精、つややかな歌唱を空気に溶かす。ユリーシャの歌がクレオの心を開いた。
「僕と」
 と指輪を取り出す。ここぞとばかりにビュネルが光の勢いを強め、それが二人にとって大切な意味をもつものであることを示した。
「結婚してほしい」
 光が、温かい色彩を帯びた。
「嬉しい……。あなたのこと待っています……」
 クレオはシュビレを胸に抱くのだった。
 ユリーシャが囁くように告げる。
「きっちり帰って、彼女を幸せにしなさいね。戦争で勝つよりも女一人幸せにする方が難しいのよ」
 光の加減により、夜が白みはじめた演出となった。すべての登場人物が舞台にあり、うっすらと白光に照らし出されている。
 クレオとシュビレは折り重なり、唇を重ねた。
「いってらっしゃい……」
 そして幕が下りてくる。
 盛大な拍手が鳴り響いた。

●グランドフィナーレ
 止まぬ拍手に急かされるように、アンコールの幕が開く。
 広い階段が出現していた。裏方の二人も含めた冒険者十人、揃いの衣装で、横並びに段上に立つ。これぞグランドフィナーレ!
 紙吹雪が舞い、楽団は顔を真っ赤にするくらい懸命に音楽を奏で始めた。
 十人は、シルクハットに白いスーツ、ステッキを手に降りてくる。
 まず歌いはじめたのはシュビレだ。
「あなたの吐息をきかせてください。あなたの声を、私に刻み込むように……」
 そしてチハヤ、顔を輝かせ歌う。チハヤはこれまでの思いを歌に込めるのだ。
「遠く離れても、見えない絆が二人を結ぶ様に」
 つぎにスポットライトが灯るはマナヤ、夢にまで見た大舞台、喜びに震える。
「二人紡いだ思い出が、私の涙を拭ってくれる」
 チアキが満足げにつづける。ミュントスで過ごした一連の想い出をかみしめながら。
「涙の代わりに、わたしの笑顔を……」
 光り輝くはカーラ、お嬢様として一弾と成長した晴れ姿をご覧あれ。
「あなたへの想いを私の代わりに傍において……」
 コンマスとして管弦楽団をひっぱったジナも、正装にてご挨拶。
「また二人で思い出を紡ぎたい……。約束よ」
 天まで届くよなデルヴィーンの歌唱、カムリ先生も見守っている。
「私はここに。祈りとともに。再びまみえる時を願って」
 コレットは感激で胸が詰まりそう。だけど懸命に唱うのだ。
「夢が覚めてもあなたにそばに居て欲しい」
 衣装係、照明係とビュネルは大変に活躍した。その喜びを歌に託す。
「たとえ今日逢えなくても明日はきっと逢える」
 そして最後に、天まで届けとユリーシャは歌い上げた。
「そう信じて、今日も貴方を待っているわ」
 十人は一斉に帽子を投げ捨てた!
 舞台袖からすべての登場人物が現れ、壮大な合唱となった。万雷、もはやそう云うしかない程の熱い厚い拍手。観客は総立ちだった。共に歌い、涙を拭う者さえいる。

 心と容姿を磨いてきたミュントス乙女組、その成果を披露する最初にして最後の公演はかく終わったのである。
 ありがとう、そして、さようなら。
 またいつか、貴女と逢える日が来ることを祈っている。

(完)


マスター:桂木京介 紹介ページ
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作成日:2008/08/31
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