≪壱の剣探索隊≫襲来! 密林に君臨する森の王!



<オープニング>


「あの霊査結果、どういうことなんだろう?」
「巨大蜂の群れと戦うものか……あるいは、遭遇する危険性を示しているのかもしれんな」
 白楽天・ヤマ(a07630)の言葉に悪を断つ竜巻・ルシール(a00044)が答える。
 その何者かに遭遇する危険性を考え、先行探索班の面々は目立ちにくい格好をして進んでいた。
「とにかく、気をつけて進みましょうなぁ〜ん」
「ああ、念の為シノビーの巣は迂回すっか」
 会葬者・フラワ(a32086)に冒魂・ハンソー(a22844)も答え、慎重に進んでいく。
 余計な戦闘は、無いに越した事はない。
 剣の天使人形・マサト(a47419)が遠眼鏡を覗くが、特にあやしいものも見当たらず。
 その、目的のシノビーの巣までは、まだ少し距離がある。
 何事もないように祈りながら、5人は進んでいく。
「……難儀な所だな、ったく」
「さぁ来ナ獲物共……」
 なんだか対照的な様子で警戒をするのは、朽澄楔・ティキ(a02763)と猟狂狼・ズィヴェン(a59254)の2人だ。
 残りの蜂の襲撃の危険性が残っている以上、どちらの対応も正しいといえば正しい。
「……何もないといいのですが……」
「……そうね」
 希望への導き手・フィリア(a11714)に、ディッツィローズ・ヒギンズ(a33003)が頷く。
「近場にはシノビーの巣……気になるねぇ」
 流鎖の射手・レイティス(a42194)に月葬華・デク(a17997) は頷くと、何やら看板を出す。
「鬱蒼と生い茂るジャングルを抜けたら、そこに何かあったりなかったり……ですか。この先は何があるか分からないのは確かですね」
 星舞い落ちる夜・マイヤ(a28554)の言葉に、大地を歩みゆく者・ラング(a50721)も考え込むようにして呟く。
「激しい戦闘の様子、ですか……一体何が待っているのだろう?」
 それは、考えても分からない。夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)に聞こうにも、槍を持って進む者・ベディヴィア(a63439)のグランスティードの上で、実に気持ち良さそうに寝息を立てている。
「あと少し、か……結構歩いてきたねぇ」
「随分近づいたが、そう簡単には辿りつけないってか」
 酔いどれ人魚・フレイ(a49912)と紅虎・アキラ(a08684)は、そう言って壱の剣を見上げる。
 未踏の地には、安全なルート……などというものはない。
 彼等は今、後に続く者達の為に道を作っているのだから。
「……先行班が何か見つけて、戻ってきます」
 突如、そんな声が響く。
「何か……ですなぁ〜ん?」
 声の主……紋章打の使い手・エリス(a00091)に聞いたのは、小さな薔薇の笑顔・ニンフ(a50266)だ。
 その何か……とは何か。帰ってきた先行探索班からの報告を聞いた面々は、驚きの表情を浮かべる。
「シノビーの巣が……壊れていた……?」
 饗宴の思索者・アレクサンドラ(a08403)に、ヤマは頷く。
 まず、彼等が遠眼鏡で見たものは……無残に破壊された巣と、シノビー達の死骸。
 女王蜂のような個体は無かったというから、あるいはそれは逃げ延びて何処かでまた巣を作るのかもしれないが……何にせよ、問題はそこではない。
「その先で……俺達は、奴を見た」
 ルシールが語ったのは、巨大な熊と思わしきものの姿。
 黄金の毛並みをもつ巨大な熊は何が気に入らないのか、辺りの木をなぎ倒していたのだという。
「問題は……奴が使った力だな」
 ルシールに続け、ハンソーが語ったのは。黄金の熊が、足元から「手の形をした禍々しい影」を伸ばしたという事実。
「まさか……ヴォイドスクラッチ……?」
 春夏冬娘・ミヤコ(a70348) が、すぐにその正体に気付く。
「敵を探している風だったから……慌てて戻ってきたんだ」
 マサトの言葉に、探索隊員達の間を無言が支配する。
 つまり、この先に進むのであれば……その巨大熊を、倒さなければならないという事か。
 それも先行探索班の報告を聞くに、ホーンロードか……あるいは、それ以上の難敵。
 探索隊員達は頷き合うと、慎重に戦闘班を編成するのだった。


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参加者
斬鬼・ルシール(a00044)
饗宴の思索者・アレクサンドラ(a08403)
月無き夜の白光・スルク(a11408)
希望への導き手・フィリア(a11714)
星空のエピタフ・ヒィオ(a18338)
火の・ハンソー(a22844)
落陽を纏う朱剣・レイラン(a34780)
氷鏡に映らぬ銀影・レン(a42516)
剣の天使人形・マサト(a47419)
大地を歩みゆく者・ラング(a50721)
赤を継ぐ者・コトリ(a70928)



<リプレイ>

「これはまた、強敵ばかり続々と……それだけ、フラウウインドのモンスターは難敵揃いということでしょうか。それとも、やはりあの壱の剣を目指すから……?」
「毎回思うが、通して欲しいだけなんじゃがなあ……問答無用というなら、それ相応でいくしかあるまい」
「……いずれ気は抜けませんね。参りましょう」
 落陽を纏う朱剣・レイラン(a34780)と月無き夜の白光・スルク(a11408)が、そう言って頷き合う。
 この先から響くのは、破壊音。例の黄金の巨大熊が暴れているのだろうか?
「奴は本当に敵を、戦う相手を探しているのか?」
 氷鏡に映らぬ銀影・レン(a42516)は、ふとそう呟く。
 聞こえてくる音は、何やら……とにかく近くのものを破壊しているだけ、という風にもとれる。
 普段からそのような生態であるならば、これ程の音……今までも聞こえていたはずだ。
 何か、そうさせるような何かがあったのだろうか。
 近づくごとに大きくなっていく破壊音は、レンに色々な想像をさせる。
「皆さん、熊肉を待ち望んでいますし……負けられませんよね」
 そんな希望への導き手・フィリア(a11714)の言葉に誰かがクスリと笑い、レンも思考を切り替える。
 そう、考えたとて分からない事ではある。
「……何が原因で暴れているのかは分からんが、無力化はせねばなるまい。手加減の効きそうな相手でもない。全力でいくぞ!」
「そんなクマに釣られてやろうじゃねーの。どの道、先に進むにゃデカ過ぎる障害だ」
 悪を断つ竜巻・ルシール(a00044)と冒魂・ハンソー(a22844)の言葉に全員が頷き、黄金熊の前に躍り出て……絶句する。
 黄金熊の放つ殺気の濃さは……並々ならぬものであった。
 目の前にあるもの全てを叩き壊さんばかりの、憤怒に満ちた姿。
 右翼と左翼に分かれた冒険者達を、黄金熊は殺気に満ちた目で見渡す。
「話せば解る……とはいきそうにないですね。全力で挑みましょう」
「ホーンロードより大物がいたとはな……まあ、誰が相手でも歩みを止めるつもりはない!」
 大地を歩みゆく者・ラング(a50721)と剣の天使人形・マサト(a47419)が武器を構え、黄金熊を見据える。
「……皆で笑顔で帰るためにも、もう躊躇いません。気合、入れていきますの……!」
「怒ってんのか、お腹へってんのか知らないけど、お望みなら体でコミュニケーションと行きますか」
 ヘヴンリースター・ヒィオ(a18338)と赤を継ぐ者・コトリ(a70928)の言葉と共に、戦いは始まった。
 放たれたスルクのバッドラックシュートが突き刺さるのと同時、黄金熊の体を黒い炎が包む。目の前の敵が只者ではないと気づき、攻撃力を上げたのだろう。
 右からはルシールが斬漢刀を振りかざし、左からはヒィオがホーリースマッシュを繰り出す。
「……王者よ、あまり痛くないかね? 役者は後から来るものなのだ」
 続く饗宴の思索者・アレクサンドラ(a08403)がエンブレムフィールドを展開し、ハンソーとマサトが鎧砕きを叩き込む。
 更にはレイランのサンダークラッシュとラングの気高き銀狼が撃ち込まれ、気高き銀狼レンの粘り蜘蛛糸が放たれる。
 その全ては黄金熊にクリーンヒットするが、黄金熊はそれをアッサリと耐えきる。
 ……確かに。これで倒れるような相手であれば、シノビーの巣を壊すことなど不可能だろう。
 そして、黄金熊の体から針のようなものが四方八方へと飛び出してくる。
「ぐっ……!」
 それを正面から受けたルシールは、この動作が見極めようとしている動作ではない……と頭に刻む。
 とっておきを使うタイミングは、ここではない。
 ここではないが……理解したこともある。
 この黄金熊の持つ攻撃手段は、明らかに心系だ。
 それも系統としては邪竜……。となれば、ある程度の予測も立てられる。
「くらうがよい!」
 アレクサンドラの放つ呪痕撃は呪痕を刻むまでには至らないものの、ダメージを確実に与えていく。
 フィリアのヒーリングウェーブが仲間達を傷を回復していくが……フィリアは、黄金熊の動きが何処か精彩を欠いているのを感じていた。
 シノビーとの戦いで疲れているのだろうか……だとすれば、これは非常に好機だ。
 ホーンロードをすら上回るかもしれない相手ではあるが……実力を出し切れないのならば、此方に勝機がある。
「そもそも錬度の足りん俺には、手加減する余裕なんざねんだ。乾坤一擲っつってな、テメェの拳に賭けるしかねーのよ」
 ハンソーの打ちこんだ拳に合わせ、ルシールが逆方向から攻撃を加える。
「熊が心攻撃、とは意外ですね……」
 ラングは気高き銀狼を放ち、そう呟く。
 だが、黄金熊を見るに、その黄金の毛皮は如何にも儀礼的に見える。
 そういう視点で見れば、確かに目の前の黄金熊が心攻撃タイプであるのは、納得いくような気がするのだった。
「そぉ……れっと!」
 コトリの偉大なる衝撃が炸裂し、ファンファーレが鳴り響く。
 星舞い落ちる夜・マイヤ(a28554)のヒーリングウェーブが傷を回復していき、春夏冬娘・ミヤコ(a70348)の静謐の祈りは、途切れる事無く続く……全ては、作戦通りに進んでいる。
 そう、フィリア達のとった挟撃作戦……ホーンロードとの戦いの時にも使った作戦は、功を奏していた。
 恐らくは、黄金熊が実力を出し切れていない事と、冷静さを欠いている事も手伝ったのだろう。
 別方向から攻撃を加えるコトリ達に、終始翻弄されていた。
 だが、有利というわけでもない。実際、ラングのクリスタルインセクト達は想定していた結果を出す前に倒されてしまっている。
 つまるところ、これだけ有利な条件がそろって尚互角。
 ハンソー達の目の前に立ち塞がる黄金熊は、まさに森の王とも言うべき実力を備えた生物だったのだ。
 幾度の攻防の末に、互いに攻めあぐねた状態となる。
 ……だが、ここで転機が訪れる。
 ルシールは、黄金熊がそれまでとは違う動きを取り始めた事に気がついた。
 ダラリと手を下ろした、一見無防備にも見える体勢。
 だが、黄金熊が全身から放つ不気味なオーラは、それが無防備などではない……と全身から警告を発させる。
 それは明らかに、何かの攻撃の前触れであると感じていた。
 そしてそれは、他の仲間達も同様であった。
「あれはもしや……」
「ええ、恐らくは……!」
 スルクとレイランの言葉でルシールは自らの考えが正しいであろうと確信する。
 斬漢刀を構え、黄金熊の最正面に豪快な構えで躍り出る。
 それは、殲術の構え。
 目の前に挑発するかのように現れたルシールに、黄金熊は自分の足元から禍々しい影を伸ばす。
 だが、それこそがルシールの狙い。ルシールは殲術の構えで影を見事に受けきる。
「……効かん!」
 そして放たれた反撃の衝撃波は、その凶悪なまでのダメージを黄金熊へと叩き返す。
 必殺となるはずだった自らの技のダメージを返された黄金熊は、大きくよろめく。
「当然の結果だ……」
 アレクサンドラが、そう呟く。知っている技と同様のものであるならば、幾らでも対処のしようはある……術士であるアレクサンドラは、それを良く理解していたのだろう。
 ここで、自分が圧倒的不利である事を黄金熊は悟っていただろうが……その眼からは、闘う意思は決して消えてはいない。
 地響きのような足踏みをすると、黄金熊は咆哮する。
 それは、振り絞るような命の咆哮。
 自分の全てを燃やし尽くす、魂の咆哮だった。
「……説得は無理……かな」
 その姿を見て、コトリは呟く。
 あの黄金熊は、決して説得など出来はしない。
 きっと、敗北を認められない生き物なのだ。
 それは恐らく、持ちたる王の風格故に。
 止まる時は、命が止まる時と同じなのだろう。
「もう少しです……皆さん頑張って下さい!」
 フィリアは気圧された自分を奮い立たせるように、そう叫ぶ。
「そうですね……トドメです」
 レイランがアイリィ・ディクリード+を握り……他の仲間達も、武器を構えなおす。
「その首……落とさせてもらう」
「所謂まねっこという奴だ!」
 レンが疾走し……マサトのサンダークラッシュが、ヒィオのホーリースマッシュが……アレクサンドラのヴォイドスクラッチが、次々に叩き込まれていく。
 すでに満身創痍であった黄金熊はその攻撃に耐えられるはずもなく。地面に、その身を投げ出すように倒れ……その命の終わりを迎えた。
「理由もなく暴れるとはどうしても思えんのだがな……」
 ルシールはそう言って、倒れた黄金熊の身体を調べる。
 戦いの傷の中に、何やら火傷のような傷が混ざっているのが見えて……思い返す。
 確か、火傷がつくような技は使ってはいない。何処かで縄張り争いでもした時についたのだろうか……?
 他の傷と混ざって上手く判別はできなかったが、あるいはそれが原因だったのかもしれない。
「ふむ……これでいい、かの」
「何か他に脅威があってのことなら厄介ですし……ね」
 スルクとレイランはそう言って、黄金熊……話し合いの結果でカラミティベアと決まったが……の爪を少し削り取る。
 持って帰れば、霊査で何か新しい事が分かるかもしれないと思ったのだ。
「ん……それは?」
「あ? ……蜂蜜が欲しいなら分けてやっぞ?」
「ちゃんと蜂蜜の味だというのは幸せだな……」
 レンの言葉に、ハンソーとアレクサンドラがホクホク顔で壷を見せる。
 どうやら、壊れたシノビーの巣にあったようだ。
「この先に……まだ何かあるのかな」
 そう言って、コトリはカラミティベアの破壊した先の森を見る。
 もし、森がそのまま続いていたなら分からなかったかもしれないが……この先は、今までの森とは、何か異質な感じがしたのだ。
 それがカラミティベアが木をなぎ倒した事により、その異質さが顕著に現れていた。
 まるで、何か深く暗いものを秘めたような……怖気のする異質さ。
 その異質さに、このまますぐに先へ進む事は躊躇われた。
「……戻りましょう」
 思わず、ラングはそう口にする。まずは、本隊と合流するべきだ。
 ラングが先に口にしたというだけで、誰もが同じ事を言おうとしていた。
「まだ……終わりじゃない」
 そんなマサトの言葉が……暗く、重たく圧し掛かる。
 これまで退けてきた苦難。数々の労苦。
 たった今味わったばかりの危機。
 その全てを合わせても尚届かぬ程の、何かが……この先にあるような。
 そんな気が、していたのだ。


マスター:じぇい 紹介ページ
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作成日:2008/09/11
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