骨の山で死人を断つ! 〜笑う毛玉〜



<オープニング>


 骨の山……当然そこは骨が大部分を占めているわけだが、中には例外も存在する。
 その例外が目の前にいた。
「なんだかレグリアさんが喜びそうな気もしますわ」
 その骨の山に似つかわしいのんびりとした様子で呟いた夢見がちな撲殺魔法少女・アリステル(a90380)の目の前に現れたそれは毛の塊。毛皮などが集まって形成されたそれは大きめの果物くらいの……例えるならマスクメロンくらいのサイズで山の上のほうからごろごろと転がってきていた。
 無数の毛玉には割れ目が入っており、それが笑っているかのように見える。
「なんだかぁ、笑っているようにもぉ、見えるのですぅ」
 同行する吟遊詩人・アカネ(a43373)にもそう見えたらしい。
 転がってくる毛玉達はその割れ目から覗く骨の牙をむき出しにしていた。
 村や森からは遠く離れた、一般人は訪れることの無い荒野に存在する骨の山。
 周辺にアンデッドが下りてくる危険を排除する。その為には可能な限り多くのアンデッドを退治する必要がある。
「とにかく退治ですわ」
 迎え撃つアリステル達と転がってくる無数の毛玉の戦いの幕が上がった。


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参加者
いつも心に太陽を・クリューガー(a11251)
沈勇なる龍神の魂宿りし者・リュウ(a31467)
蒼海の水面・キュール(a36040)
小さな探究者・シルス(a38751)
吟遊詩人・アカネ(a43373)
ぶどう科・リルル(a52901)
闇を裂く氷狼・ルキシュ(a67448)
南の星・エラセド(a74579)
NPC:夢見がちな撲殺召喚魔法少女・アリステル(a90380)



<リプレイ>

●毛玉がゴロゴロ
「わぁ、まんまる毛玉さんだぁ」
 姫百合・リルル(a52901)は骨の山に不似合いな明るい声でそれを見ていた。
 白い骨の山をころころと転がる毛玉は、ふわふわと漂っていそうな外見でありながら、予想以上に勢いよく転がり落ちてくる。
「ぅーん、もふもふは好きだケド、襲ってくるのはやーだなぁー。それにクーはどっちかってーとまふまふのが好きだしっ」
「もふもふ具合なら俺の方が上かもなー?」
 一般人には違いが分からないであろう意味深な表現で語る深緑が見守る夜光石・クリューガー(a11251)は毛玉に対して優越感に浸る南の星・エラセド(a74579)をまふまふと堪能しながらしっかりと迎撃準備を整える。
「アンデッドですから何でもありなんでしょうけど。こんなのもありなんですね」
 転がってくる毛玉を小さな探究者・シルス(a38751)は興味深そうに観察していた。
「アンデッドのほうは噛みつきとかで可愛げなさそうだ」
 成すがままにもふられながら、エラセドは威風堂々と毛玉と向き合う。
「ふわもこですからぁ、レグリアさんにぃ、戦果をぉ、伝えておくのですぅ」
「流石に牙を剥いて襲ってくるふわもこは許容範囲外だと思いますの」
 吟遊詩人・アカネ(a43373)の言葉に夢見がちな撲殺魔法少女・アリステル(a90380)は極普通の突込みを入れたが、噛まれながら笑顔で気絶しているレグリアが頭に浮かんだりしていた。
「触ってみたくても、あれは敵だから、気を引き締めて戦わないとね」
「動物だったら好きなんだけど、人を襲う毛玉じゃね〜。他の人はどうだか分からないけど、私は騙されないわよ」
 リルルの忠告に蒼海の水面・キュール(a36040)は苦笑気味に応じる。その隣で沈勇なる龍神の魂宿りし者・リュウ(a31467)の動きが一瞬だけ止まったのは……多分気のせいだろう。
「足場が悪いから、足元にも気をつけてなの」
「助かりますの」
 リルルに手を差し伸べられながらアリステルも配置につく。
「相手の数は多い……転がってくるのならば止まっていても向こうから来る……」
 リュウの言う通り、敵は向こうから近づいてきていた。
「久しぶりの骨の山か……今回は数が多いから油断せずに確り討ち取りたいものだな」
 闇を裂く氷狼・ルキシュ(a67448)は『Absolute zero』を抜き、構える。その凍れる刃と同じくらいに冷たい輝きがその瞳に宿っていた。
「エルヴォーグ守ってるフーリちゃんたちのためにも、頑張るぞー、おー!」
 クリューガーは元気よく拳を突き出し、笑みを浮かべる。
「ここに来るのは2度目でしょうか? 今回も頑張ってアンデッド退治しますね」
 そう言ったシルスの目の前で、転がり落ちてきた毛玉は不気味な口を開き、その異形の牙で襲い掛かってきた。

●羽玉ぷかぷか
「全てを焼き尽くす炎よ!」
 シルスのエンブレムノヴァが転がってきた羽玉の大きく開いた口の中で炸裂する。
「とまるのですぅぅ」
 静止を命じるアカネの紅蓮の雄叫びが毛玉の動きを止め……きれなかった。何匹かは静止し、途中で引っかかって動きを止めたが、半数以上がその勢いのまま骨の山を下ってくる。
「響け……叫鳴縛!」
 ルキシュの雄叫びが毛玉達……その全ての動きを止める。
 転がり落ちる毛玉の動きは止まりはしないが、先ほどまでと違いその半数以上が冒険者達とは無関係な方向へと散っている。少なくとも毛玉の相手を纏めてしなくても済みそうだ。
「ねばねばしちゃえーっ」
 クリューガーは粘り蜘蛛糸を放ち、転がり落ちてきた毛玉達の中から羽玉と明らかにこちらに向かってきている玉の動きを止める。
 同時にリルルのデンジャラスタイフーンが拘束された羽玉を暴風で引き裂いていく。
 吹き荒れる竜巻の中、無数の羽がふわふわと舞い上がり、引き裂かれていく。
「小さい相手だからな……集中して行かないと」
 リュウがそう呟いた時、『龍子神刀』につけられた武器飾りが目に付き、自分の幸せを願ってくれた小さな相手を思い出した。浮かんだ雑念を振り払い、その相手のためにも無事に戻るべく集中力を高めていく。そして、舞い上がった羽玉に向かい螺旋を描き突撃した。散り散りになった羽は刻まれ、暴風が去った後も再び球体をとることはない。
 再度集まりそうな羽玉はキュールのスピードラッシュによって粉砕され、アリステルの紋章の光に焼かれる。
 最後の羽玉はエラセドの偉大なる衝撃の奏でるファンファーレと共に撃沈した。

●鱗玉ぽむぽむ
「上だ! 気を付けろ!」
 リュウの警告の直後、冒険者達の中心に鱗玉が勢いよく落下する。
 同時に再び動き出し、骨の山を登ってきた毛玉達が周囲から襲い掛かり、冒険者達の鮮血でその牙を染めていく。
「大丈夫ですか?」
 シルスはエンブレムノヴァで鱗玉を焼き払い、前後左右に散った仲間達に声をかける。
「こっち回復ちょーだいっ」
「屍は崩れ、土となり、種子の寝床となる」
 クリューガーのおねだりを聞くと同時に、アカネの高らかな凱歌が冒険者達の傷を癒し、出血を止めていく。
「飛んでけなの!」
 リルルの破鎧掌が近くに飛んできた鱗玉を吹き飛ばし、ボーリングの玉よろしく骨の山を蹴散らしながら転がっていく。
「疾れ……群狼牙!」
 ルキシュの限界まで高められた闘気が竜巻となって毛玉達を吹き飛ばす。
 それを鱗玉は上空高く飛ぶことで回避していたが……。
「残念だったな……跳んで降りてくる時は軌道修正出来ないから当てやすい……」
 それを読み切っていたリュウのブラッディエッジによって切り裂かれた。
 キュールは軽やかな足捌きで毛玉達の猛攻を受け流しながら、鱗玉の動きを制限している。
「落ち着いていきましょう」
 シルスに声を掛けられ、キュールは少し照れたような笑みを浮かべた。
「さあ、来なさい……私の可愛い子供達」
 アリステルの呼び出したクリスタルインセクトが赤い光を放ち……毛玉に包囲されて即座に粉砕された。
「ああ?! クリスッ?!」
 嘆くアリステルの前で毛玉達が冒険者達に牙を剥く。
「アブないっ」
 その牙が毒を流し込み、クリューガーの身体に出血を伴う深い傷を刻んでいく。
 振りほどかれ、ケタケタと笑う毛玉を睨みつけるが、毒と出血による痛みは思っていた以上の速度で体力を奪っていく。
 だが、突然吹いた優しい風が毒を消し去り、出血を止めていく。
「気をつけるんだぜ」
 振り返るとそこには鬣を風に靡かせ、凛々しく微笑むエラセドの姿があった。風に靡くその体毛は、毛玉のそれとは比べ物にならないほどのもふもふ感を醸し出している。
「皆さん、大丈夫ですか?」
 シルスのヒーリングウェーブの光が皆の傷を癒し、キュールの心を激しく高ぶらせる。
 そんな二人の姿を見て、アリステルの目がきら〜んと光ったのは……戦闘とはまったく関係がない。
「わかいのはいいなぁ」
「同感ですの」
 アカネの紅蓮の雄叫びにアリステルは思わず同意していた。人生という長い年月を感じさせるそんな二人の纏う空気が同じような気がしたのは多分気のせいだろう。
 リルルのデンジャラスタイフーンとルキシュのレイジングサイクロンが近づく鱗玉達を吹き飛ばし、その鱗を引き裂いていた。
「連撃はね、クーだってできるんだよ?」
 クリューガーとリュウの飛燕連撃が引き裂かれ蠢く鱗を確実に貫き、その動きを完全に止めていた。

●毛玉もふもふ
 キュールはイリュージョンステップで毛玉の攻撃を捌き、そのほとんどを華麗にかわしきっていた。
 毛玉に負わされた傷はエラセドの静謐の祈りによって出血を食い止め、シルスのヒーリングウェーブやアカネの高らかな凱歌によって癒されていく。
 毛玉達はリルルとルキシュによって球体を散らされ、クリューガーやリュウ、キュールによって確実に止めを刺されていた。
 時折連続で噛み付かれ、癒しきれない傷を負うこともあったが、ルキシュやリルルがガッツソングを歌うことで十二分に補うことが出来る。毛玉達は徐々にその数を減じていた。
「もふもふか……」
 毛玉を前にして動きを止めたリュウの頬をキュールの手の平が襲う。
「しっかりしてね。まだ敵は襲ってきてるわよ」
「ちょっと、やってみたかったな……」
 心配そうなキュールの言葉に、リュウはまだ少し迷いながらも葛藤を振りほどき、再び毛玉に斬りつけた。
 裂かれ、空中を舞う毛皮がリュウの心を惑わせる……が、それを土色の腕が奪い取ると足元に投げつけ、踏みにじる。
 ふと周囲を見るといつの間にか土塊の下僕が群れを成して毛玉の残骸を踏みつけ、再起不能にしようと頑張っていた。
 どうやら毛玉達の殲滅に成功したらしい。
 まともに跳ね回っていた最後の一球をシルスのエンブレムノヴァが焼き尽くし、残骸は土塊の下僕達が健気に踏み歩いていた。

●残骸ふみふみ
「にー、地獄で戦うのは久々だったなぁ」
 クリューガー
「骨の山……ここに骨が集まる理由って何なのでしょう?」
 シルスは思案するが、明確な答えは出てこない。様々な推測は立てられるが、そのうちの何がこの骨の山を生み出したのかはわからない。
 思い描いた推測の全てが原因であるのかもしれないが……その答えを出すには情報が少なく、調べるにはここは危険すぎた。
「傷は体に、心に経験を刻み……更なる高みを目指そう」
 ルキシュは無数の遺骸に祈りを奉げ、グランスティード『アーミッシュ』の背を撫でながら、共に競い合うライバルのことを思い描く。
「毛玉さんたち、このまま放置したら、また復活したりするんだよね?」
「ええ、だから勿論、皆にも手伝ってもらうわよ」
 リルルの問いにキュールは笑顔で答え、笑顔のままで眼下の骨を粉砕した。
「俺自身と比べてどっちがもふもふで上ですか?」
 毛皮や羽を引き裂きながら、気になったことをアリステルに尋ねるエラセドは何故か低姿勢だった。
「興味ないからわかりませんの」
 一刀両断。
 こういう時のアリステルの辞書に情けや容赦などという文字はない。
 情け容赦ないその言葉に膝をつくエラセドをクリューガーはもふもふしまくっていた。


マスター:草根胡丹 紹介ページ
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作成日:2008/09/15
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