マンモスファイヤー〜成人の証を求めて



<オープニング>


 気の合う仲間たちと、木陰で茶を飲みながら、ヒトノソリンの青年はにこやかーに言った。
「俺の住んでた集落では男が成人した時は、親しい奴ら数人だけ引き連れて、獲物を狩ってきて集落の皆に振舞ったんだなぁ〜ん」
 語り出した当人、灼熱日天・ラハイナ(a42568)は八月の半ば頃に成人になったのである。それで、生まれ育った土地での記念行事を思い出していた。
 仲間たちは黙って聞いていた。
「今は集落はねーがいい仲間に恵まれてるし…俺も成人になったし、でかい獲物狙おうかな、となぁ〜ん。獲物はでかけりゃでかい程皆に喜ばれたし、褒められてたなぁ〜ん」
 怪獣どもに襲われて、その集落はすでにない。だからこそよけい、記憶にあるその儀式が懐かしい。
 さて、ワイルドファイアででかい獲物といえば、やはりマリン……いやいやいやいやっ、キングマンモーであろう。
 その場にいた、彼の仲間たちも、思い浮かんだのは、その名前。
「な? 成人祝い、一緒に付き合ってくれねーかなぁ〜ん?」
 仲間の成人祝い。もの珍しき獲物。
 なんの異論があろう?
 キングマンモーを捕まえて、それを肴におくらばせながらみんなで誕生祝いの宴をしようじゃないか!
 仲間たちは笑ってうなずき、一同はマン森へと向かう準備を始めた。


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参加者
夢纏・ヴィヴァーチェ(a00191)
白想雪・リッカ(a14073)
緋閃・クレス(a35740)
灼熱日天・ラハイナ(a42568)
邪薙牙斬・クレイ(a46491)
射通す白羽・ミスティ(a72785)
焔魂・リミュ(a73017)
聖皇剣神・ジン(a73068)


<リプレイ>

●成人の儀式〜狩りの部
 小川がさらさらと流れている。
 夏の匂いが存分に残る、きつい日差しが巨大な木々の枝葉をくぐって少し柔らかくなる。
 大鷹と見間違えるほど大きなチョウチョが頭上をひんらひんらと飛んでゆく。
 重たげな足音。生木が折れるみしみしという悲鳴と、それをかき消すような地響き。
 巨大な生き物が、それに負けない巨大な木立群からぬっと鼻先をあらわした。
 マンモー。それも、すばらしく巨大。名前にキングを冠するに十分な貫禄。
 ワイルドファイアに生息する、巨大生物群の中でも飛び抜けてでかい。
 鼻が小川に伸び、水を吸い上げている中。
 巨体の側を、その五分の一程度の大きさしかない存在が複数、静かに移動していた。鎧には布を噛まし、音が出ないようにしてある。どうしても出てしまうかすかな足音も小川のせせらぎがかき消してくれる。攻撃を仕掛けるまでは、けっしてキングマンモーに自分たち狩人の存在に感づかれてはならない。
 パーティー最年少の少女、射通す白羽・ミスティ(a72785)はタスクリーダーで心の声を仲間に伝えた。
(「今です」)
 その声と同時に仲間たちは一斉に攻撃を開始した。

●左の陣
 禍々しい風景の描かれた黒いカードが翔剣士、緋閃・クレス(a35740)の手から音もなく放たれる。対象がでかいだけに当てやすそうだが、カードはあまりにも小さい。キングマンモーの前膝やや下あたりを黒く染めた。
(「ダメージ薄い、か? バッドラックはかかってんのかな? それにしても、成人したら仲間と一緒に獲物を狩るってのが、ワイルドファイアらしくていいね」)
 動きを封じようと、稲妻をまとった大剣を後ろ脹ら脛あたりに叩き込んだのは、聖皇剣神・ジン(a73068)。
「どうだっ?」
 ジンはキングマンモーを麻痺させたことを期待したが、
「ばぁぁぁぁ〜おぉぉぉん!」
 と、キングマンモーはこのとき、右の陣からひどい苦痛と驚きを覚えていて、吸い上げていた水を周囲にまき散らしながら、恐ろしく野太い声を上げた。
 この分では、一向に麻痺していないようだ。
 白想雪・リッカ(a14073)は気の塊をマンモーの腹部に向けて放った。ヒットしたものの、手応えがいまいちだ。足の痛みの方が酷いらしく、無視されてしまう。
「皮が鎧みたいに硬いせいな〜ん? でも……絶対カレーにしてぐつぐつ煮込んでやるなぁ〜ん!」
 と、決意表明。リッカに限らず、仲間はみんなこのキングマンモーを『食う』またはこのあとに繰り広げる『宴』のことしか考えてないので、誰の目にもキングマンモーの攻撃や抵抗はほぼ『骨付き肉の無駄なあがき』としか見られていない現状。
 皮膚が硬すぎるので、再誕・ヴィヴァーチェ(a00191)はのろいの言葉をマンモーに対してぶつけた。腐食の呪い。これであの頑丈な皮にも、攻撃が通りやすくなる。
 リッカに向かって、右の側から「生でも試そう」という突っ込みが来たので。
「ここはやっぱり、ワイルドに火あぶりよ」
 ヴィヴァーチェは主張したあと、「ラハりん、大丈夫? 悲鳴が聞こえたわよ?」と問いかけた。確かに、これはみんなのラハりんの誕生日兼成人祝いなのだが、獲物を食うのが大目標なので、いろいろ後回し……。
 そしてなにやら、マンモーが不安定に揺らめいた。
「げっ」
 誰かがうめいた。

●右の陣
 時間は少し巻き戻る。
 今日のこの狩りの主役。成人したばかりの灼熱日天・ラハイナ(a42568)は右足に掌を当て、強い気を放った。頑丈な皮膚を突き抜ける攻撃。キングマンモーの脚が衝撃で浮き上がる。
「ばぁぁぁぁ〜おぉぉぉん!」
 マンモーは水を周囲にまき散らしながら、恐ろしく野太い声を上げた。
「うわっ! あぶな……なぁ〜ん」
 危うく巨大な脚に踏まれかけて、どきどきするラハイナ。尻尾があとちょっとで平たくプレスされ紙のようにひらひらにされるところであった。
 巨大な敵が単に足踏みするだけでも、下にいる冒険者たちには危険がいっぱいである。
 なにせ、彼らの五倍の高さ。重さはきっと二十倍では収まるまい。
 炎龍凶戦士・クレイ(a46491)が、炎を帯びた剣を打ち込んだ。クレイの刃は頑丈な皮膚を突き破り、肉まで達した。魔炎が肉を焦がす。成人の宴のための調理はすでに始まっていた。
 知勇兼備・リミュ(a73017)は黒い長剣を横薙ぎにした。ウェポン・オーバードライブを前もってかけておいたので、硬い皮膚を楽に切り裂いた。
「絶対カレーに〜」
 リッカのという決意表明が聞こえてきたので、
「全部は煮込むなよ? 生でも試そうぜ」
 と、クレイはつっこみを入れた。
 ちょうどそのとき、マンモーの右後ろ足は大いに痛めつけられ、巨体がよろめいた。
「げっ」

●マンモー
 マンモーは足の痛みのせいで、片膝をついてしまったものの、体勢を立て直し、倒れはしなかった。
 でも、足のそばで「げっ」っという、くぐもった悲鳴が聞こえた。足の真下ではなく、腹の下なのは幸いだった。
「おい、誰か潰されたみたいだぜ?」
 クレスの声が左右の陣に響く。
「誰がいないの?」
 でかぶつを挟んで二組に分かれているので、互いの無事がよく把握できない。
 誰がいないのか、確認しようとした矢先、マンモーは長い鼻を振り回して、自分にたかる冒険者たちをなぎ払おうとした。風を切る音、すさまじい音。それがリッカとジンにがつんとぶつかり、大木まで二人は吹っ飛ばされる。
「……っあ、痛いなぁ〜…ん」
 目が回るのをなんとか振り払おうと、頭を左右にゆるく振ってから、リッカは立ち上がる。
 背中を強打したジンはげほげほっと激しくむせた。
 リミュはマンモーのそばから回避しつつ、まわりを見回して言った。
「クレイさんが……見あたらないようです……」
 このとき、クレイはマンモーの腹の下からなんとか自力で出てきていた。
 リミュとラハイナが気がついて、その手を取って引っ張り出す。
 ミスティがヒーリングアローを放とうとしたが、クレイは先ほどフレイムブレードを使ったので、ヒーリングが効かない。
「俺はあとでいい。先に左陣の連中を。俺は、このまま、パワーブレードを……」
 クレイは言うやいなやマンモーに渾身の力を込めて黒い剣を叩き込んだ。
 マンモーが絶叫し、クレイは力尽きたようによろける。
「大丈夫ですか、クレイさん?」
 ミスティは心配顔をしながらも、言われたとおりジンに対して癒しのための矢を放った。
 先ほどのリッカのボディブローもじんわりと効いてきて、マンモーはもはや走って逃げることはできない様子だ。
 あとは鼻の攻撃や、時たま傾ぐ巨体に気をつけながら、しとめるだけ。
 と、なんと、マンモーはわざと右陣をめがけて横転してきたではないかっ!
 体重と体の大きさが最大の凶器になる。
 右陣一同から大きな悲鳴が響いた。

●儀式〜酒宴の部
 緊迫した時間は流れ、ついにこの狩りは終盤を迎えようとしていた。 
「足と違ってさすがにここなら痺れてくれるよね」
 マンモーの首筋に電刃居合い斬りを決めたリミュが最後のとどめを仲間に託した。
「後は頑張ってね、ラハりん」と。
 ラハイナは大きな感謝を込めてリミュにうなずき返した。
「負けるな、頑張れ! 成人の証を立てろー!」
「ラハイナ、頼んだぜ。一気にやっちまいな!」
 ヴィヴァーチェとクレスもとほぼ同時に叫んだ。
「みんな、ありがとうなあ〜ん。さあ、キングマンモー、これで終わりなぁんっ。大人しく、食われろなぁ〜ん!」
 ラハイナの放ったワイルドキャノンがマンモーの頭部に直撃し。
 巨大なるキングマンモーは、まるで塔が倒れたかのような地響きと共に倒れた。
 狩ったのだ。死闘の末、ついに狩りとったのだ。
 みんなは勝利に酔った。のは束の間だった。
 暴れて腹も減ったし。
「よっしゃ、食うのなぁ〜んっ」
「改めてお誕生日おめでとうございますなぁ〜ん」
「ラハりん、成人おめでとうっ」
「ラハイナ、二十歳の誕生日おめでと!」
 仲間たちはラハイナを取り囲み、口々に祝った。
 クレスは楽しげに、包丁セットと野外料理セットを広げた。
 他の者たちもあわてて、食材確保に乗り出した。
 刺身だ、焼くぞ、煮込むの、カレーだ、ソテー、しゃぶしゃぶに〜。
 あっという間に、キングマンモーは食材になった。残ったのは象牙と白い骨、足の先の爪のとこぐらい。
 あちこちで鍋に湯が煮立つ、綺麗な小川のそばなので水が豊富で野営しやすい。
 夕暮れが迫る頃には、あらゆるマンモー料理が並んでいた。
 ほかにはラハイナとリミュが周囲を探して取ってきた、でかいキノコのステーキ。人の背の半分ぐらいはありそうなリンゴの蒸し焼き。
「ふふふ〜……やっぱ成人にはコレが付き物よねっ。アルハラはしないけれど、まぁ一種の通過儀礼みたいなものでしょ、二十歳の飲酒。ラハりん、誕生日とそして成人、おめでとう! 願わくば、ひとつ歳を重ねたこの一年が、より幸せなものでありますように」
 ヴィヴァーチェが並べたのは酒。
 蓬焼酎「美優子(びゅうね)」。Transparent Energy。惑溺の宴。ワイルドワイン。一発笑天。彼女だけもすごい量。さらに。
「よしラハりん! 約束通り、俺も酒を持って来たぞ! 思う存分飲め!」
 ジンの持ってきた酒もまた大量。
 龍殺酒。ウィスキー『カントリーADULT』。柚子酒。銘酒【愚鈍殺し】。蒼の月。
 ラハイナも、太陽の果実という酒を持参。
 酒の多さにびっくりしたあと、ラハイナは照れくさそうに笑って、「ありがとうなーん」と、言った。
 クレスとクレイとミスティとリミュは未成年なので、普通の水やスープを飲みながら、大人たちは酒を浴びるように飲みながら、宴開始である。
 ヴィヴァーチェは酒を飲みながら、(「みんなとワイワイ飲み食い……この賑やかさが好き」)と、ご満悦だ。
「ラハりん、立派な成人になれたか?」
 クレイは切り取った象牙を細工したのをラハイナの首にかけながら聞いた。
「みんなのおかげなぁ〜ん」
 ラハイナは一緒にこうして過ごしてくれる仲間たちに改めて感謝した。
 酒と食べものの量が量だけに、この成人の宴は夕方から翌昼まで続いた。

 仲間たちは文字通り食い倒れ。酔いつぶれ。
「もう食べられませんの〜」
 という寝言が聞こえる。
 ラハイナは一人、そっと杯をもう一つ用意して、酒を満たしてた。
 成人したら飲み交わそうと約束した亡き父の分。
(「俺はまだまだ未熟だが、こうして支えてくれる仲間が居るのなぁ〜ん。これは成人として誇れる事なんじゃないかな〜ん…? 親父……」)
 こうして、無事に儀式は終わった。


マスター:無夜 紹介ページ
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作成日:2008/09/25
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幻桜花・リミュ(a73017)  2009年12月09日 23時  通報
皆さんの個性がよくでていて楽しい依頼でした♪
良い思い出になっています。