<リプレイ>
飛べない鳥を退治して欲しい。霊査士からの依頼を受けた冒険者は、一先ず村を訪れ、住民に事情を説明した上で避難を促した。 が、村長と思しきヒトノソリンは、きょとんとした顔で申し出た冒険者――想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)を見上げていた。 「避難なんてとんでもないなぁ〜ん。獲物が向かっているなぁ〜ん?」 「ですが……相手は肉食です。危険もあります」 「わしらも弱肉強食の流れに生きる身なぁ〜ん。冒険者さんたちが協力してくれるなぁ〜んならなおのこと、避難なんてしないで戦う準備でもしているなぁ〜ん」 おおらかな笑顔。それが、若い者には出来る限りの手伝いをさせると申し出る。 そこまでいうのなら、と肩をすくめたラジスラヴァに代わり、兄萌妹・フルル(a05046)が尋ねた。 「獲物って言うのが、飛べなくなった鳥なんだけど、誰か見たって言う人とか、いないかな?」 小首を傾げるフルルに、村長は同じような仕草を返し、うむ、と唸る。 その口が言うには、この近辺は元々鳥型の怪獣が多く、今回の獲物がどの種類の怪獣なのかは判らない、とのこと。 ただ、肉食と言うのなら美味しいものを沢山食べて、それなりにいい肉付きをしているのだろうと、顔を綻ばせた。 何だか、和む。 「さすがワイルドファイアって感じだねー」 「ここまでのんびりした感じもなかなか無いだろうけどねー」 「そうですね……とにかく村の方々に被害が及ばぬよう対処し、無事任務を完了させたいですわ」 探索用猫型・ミミック(a11975)が微笑ましげに告げるのに、苦笑気味に聞きながら頷くスマイリー・レン(a90276)。 だが、花信風・ルネシア(a71879)の言うように、どのような状況下であれ、自分たち冒険者の手で食い止めるべきであることに、変わりは無い。 「よしっ! ガッツで乗り越えたる!」 手にした遠眼鏡をぐぐっと握り締め、駆け廻るような雲水の奏者・デュアル(a64123)はさっそく、フルルと共に鳥の捜索に向かった。 どこから来るのだろう。どのような鳥なのだろう。 思いながら、脳裏をちらりと過ぎった昔の記憶を振り払うように頭を振る。 怪獣に襲われた一座の記憶がデュアルを突き動かす。同じ目にはあわせない、と。 そんな彼らを追いかけるように、天衣無縫なつむじ風・マイラ(a14685)は調達してきた囮用の肉を取り出した。 「肉食の動物なら、この匂いにつられてきてくれないかなぁ〜ん」 「なるほど〜。それにしても……すごい血の匂いですね〜」 感心したように呟いた海に浮かぶ小さな満月・シルキー(a75095)は、気持ち、距離を開ける。 匂いにつられてくれそうな気はとてもするが、それを運ぶマイラに匂いが移ったりしないだろうか。少し、心配になった。 「マイラに向かってくるなぁ〜んなら、逆に都合いいなぁ〜ん。頑張って拘束に専念するなぁ〜ん」 「それでは、後は我々でカバーしましょうか」 にこり。微笑んだ清吟霽月・ギルバート(a64966)の、耳に。仲間たちから、敵発見の声が届いた。 距離はまだ遠い。だが、戦闘場所にと想定していたような開けた場所は、奴の通り道近辺には無い。 その事実にかすかに眉の根を寄せながらも、ギルバートは先んじて仕掛けられるようにと、駆け出した。 続くマイラ、シルキーを、見送る形で。ラジスラヴァは極力、村に近い位置に残った。 それを、きょとんとした目で振り返り。レンは、ぐい、と彼女の手を引いた。 「いかないの?」 「万一突破された時、ここが手薄ではいけないでしょう?」 もっともな言い分ではあるけれど。レンは肩をすくめて、笑んだ。 「皆が突破されちゃうなら、一人きりでいても意味はないよ。だからさ、もうちょっとみんなの近く、行こうよ」 それも、やっぱり最もな言葉で。ラジスラヴァは一度村を振り返り、それから、前を向いた。 「……それも、そうですね」 立ち位置は支援アビリティの届く範囲での最後衛。それで、万一の時は真っ先に踵を返せるようにすればいい。 それ以上に、『万に一つ』が起こらないように。皆で、全力を尽くすべきなのだ――。
張り上げられた声。駆けつければ、確かに、少しばかりの距離を置いて、陸上を駆ける鳥の姿が視認できた。 それを確かめ、ギルバートは初手を決めるべく、地を蹴った。 全速力で駆け合う二つの体が、やがて幾らも立たぬうちに対峙して。すらり、掲げられる、剣。 「先制攻撃、と行きましょうか」 そのまま剣は降りぬかれ、鳥はその足を強制的に止められる――はずだった。 一つ誤算だったのは、それよりも早く、鳥が前方に立ちはだかる障害へ向けて、耳を劈くような声を張り上げたこと。 それにより、冒険者側の第一手にこそ、制止がかけられたのだ。 「ッ――!?」 いかな敵であれ油断は禁物。理解していたし、勿論、手を抜いたつもりは毛頭ない。 だが、その理解と認識は、依頼の表面的な難しさに起因し、無意識下で薄れていたのかもしれない。 いずれにせよ。ミミックが紡ぐ歌に癒されるのを感じながら、ギルバートは歯噛みした。 その横を抜ける形で、即座に鳥に肉薄し。シルキーは鳥へ向けて呪痕を打ち付けた。 「そんなに痛くはないですよ〜。これ自体は、ですけど〜」 含みを持たせた言葉と同時に離れたシルキーと入れ替わるように。ルネシアが放つ銀狼が鳥に鋭い爪を突きたて、マイラによる木の葉が、追い討ちをかけるように拘束とダメージを与えていった。 「大丈夫か?」 「ええ、攻撃は受けてませんからね」 傍らより声をかけてきたデュアルに苦笑を返し、再び剣を構えなおすと。 下からにこりと覗き込んできたミミックと、視線が合った。 「サポートは任せな。その分、前衛は任せるから」 「純前衛少ないから、ボクも目一杯頑張るよ!」 小さな体に些か不釣合いの巨大な武器を勢いよく掲げ、フルルは仲間による足止めが成されている隙にと、強大な一撃を叩き込む。 「おっしゃあ! 次は俺がいくぜ!」 「俺もびーんじょう♪」 後に続けと電刃衝を繰り出すデュアルを追いかけるように、一足遅れて場に着いたレンもまた攻撃を仕掛ける。 「美味しく食べてあげるから、安心するなぁ〜ん!」 「それが弱肉強食の世の定めですわ……大人しく…して下さいませ!」 拘束を解くまいと、マイラ、ルネシアが中心となって奮起するのを。後方から、ラジスラヴァによる眠りの歌が響いてくるのを。確かめるように、一度ずつ見やり。 シルキーは自らが与えた呪痕の力で鳥がじわじわと体力を削られているのを見止めて、一度瞳を眇める。 「そうそう長引かせるわけにもいきませんからね……止めと、いきましょうか〜」 「ええ……借りは、きっちり返させていただきましょうか」 応じ頷いたギルバートと共に。深々とその体躯に突き立てた一撃は、抗い続けていた鳥の、最後の命を断ち切った。
その後に。村の住民らによって、そして一部冒険者の手によって、仕留められた鳥は素晴らしい料理へと姿を変えた。 「美味しいなぁ〜ん。でもわしらまでご馳走になってよかったのなぁ〜ん?」 「勿論ですわ。沢山お召し上がりになって、ぜひとも沢山のお話をお聞かせください」 並んだ料理の数々に舌鼓を打ちながら、ルネシアは村人たちの暮らしぶりなど、様々な話題に耳を傾けている。 その横では、やはり沢山の村人に囲まれ、賑やかな会話を弾ませながら、デュアルも笑顔で料理を口にしていた。 「皆で狩って、料理して、仲良く食べるって、やっぱり楽しいね〜。いっただきま〜す♪」 形ある成果に満面の笑みを浮かべて、うんうんと呟き頷いていたフルルもまた、目の前の料理へと手を伸ばす。 同じように料理に手を伸ばしながらも、ミミックは少しそわそわと辺りを見渡している。 鳥を運んでいる時に、その体に見つけた傷。冒険者たちが与えたもの以外にあった鋭い爪跡は、ひょっとしたらシャドーウィングかもしれない! なんて。 思い至り、食後はちょっと近隣で住処を探してみようと考えていた。 「そういえばマイラ、ミートタルトのレシピも持っていたなぁ〜ん。ふふふふふふ……レンさんも食べるなぁ〜んか? 皆一緒に食べようなぁ〜んね」 「作るなら手伝うよー♪ って、シルキーなにしてんのー?」 余すことなく食べられる鳥肉に、思わず顔をほころばせながらレシピを眺める様子に挙手と申し出で応えたレンは、ひょこり、何やら工作事をしている手元を覗き込んだ。 そこにあったのは、槍に鳥肉とネギとを交互に挟んだ……所謂、ネギマ。 「できました〜。名づけて、ネギマ・ワイルドファイアエディション!」 「わ、すごーい。でもそれ、槍、洗うの大変じゃ……」 それ、禁句です。 「まま、それは気にせず〜。とにもかくにも、生存競争に敗れたものは食べられるのが運命。では、いただきますぅ〜」 がぶりっ。むしゃむしゃ。 口一杯に肉を含んだシルキーの満足げな表情が、その味を物語っている。 くすくすと、微笑ましげに見つめ、ギルバートは料理好きの知り合いのためにと、せっせとお持ち帰り用の肉塊を切り出していた。 賑やかで楽しい食事の場。 宴会のようなどんちゃん騒ぎの大盛り上がりではないけれど、美味しいものを食べる喜びは、その顔を自然と綻ばせる。 見止め、ほんの少しの助長にと。ラジスラヴァは穏やかな音色の歌を紡いだ。 明るくて、優しくて、温かい。そんな空気がひそりと震え、歌を遠く、遠く響かせていた――。

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参加者:8人
作成日:2008/09/21
得票数:ほのぼの8
コメディ3
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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