草原のパレット 〜ふにふに虹色スタンプ〜



<オープニング>


●草原のパレット
 瑞々しい夏草が何処までも広がるその地は、ワイルドサイクル平原のとあるところにあった。
 命の輝きに満ちた鮮緑色の草が大地を覆い、流れる風にそよぐ草の海を渡る光の波が、遥かなる地平の果てまでも続いていく――綺麗で雄大な、夏草の草原。
 鮮やかな蒼穹を翔ける鳥の背に乗り草原を見下ろすことが出来たなら、不思議な色を湛えた丸い形の池が七つ並んでいるのが見えるはず。どんな自然の悪戯なのか、等間隔を取り四つと三つの綺麗な二段に並んだ池には、それぞれひとつずつ、虹の七色が湛えられていた。
 赤・橙・黄・緑・青・藍・紫。
 綺麗な草原の真ん中に、そんな鮮やかな色を湛えた池が並んでいる様は。
「何だか、誰かが草原に作ったパレットみたいだよね」
 好奇心にきらきら輝く瞳を瞬かせ、ワイルドファイアの霊査士・キャロット(a90211)は楽しげに笑ってそう言った。

●ふにふに虹色スタンプ
「けどその池の色、正確には水の色じゃないそうなんです。池に群生してる苔の色なんだそうですよ」
 優しい甘味と酸味が爽やかなカシスミルクを勧めつつ、ハニーハンター・ボギー(a90182)は居合わせた冒険者達にリス尻尾を揺らして語る。
 勿論その苔のお陰で池の水も鮮やかな色に染まっているのだが、兎に角、その色の素は苔であると言いたいらしい。要するに、この苔には触れた物を同じ色に染める性質があると言うわけだ。ちなみに苔の色に染まった水も同じ性質を持つ。
「……と言っても、染まった色は数日で取れちゃうみたいなんですけどね。ですが、この草原に生えている草の汁を混ぜた水で染めた場合、その色はすっごくすっごく長持ちするんだそうなのですよ〜」
 ある時とても綺麗な色に染められた服を着ている原住民を見つけたキャロットが、その色の秘密を訊ねて草原の話を聞いてきたらしい。その原住民達は苔を利用して布や毛皮を染め、鮮やかで美しい色彩を楽しんでいるのだという。
「かなりバリエーションも豊かだって聞いたのです。星の形をした木の葉をぺたぺたスタンプして模様を作ったり、木を彫って作った細かな模様のスタンプで結構精密な模様が作れたりもするそうなのですよ〜♪」
 青の池の水と紫の池の水を混ぜ、桔梗色を作るといったことも可能だ。
 ちなみに、赤をピンクに、青を空色に、と色を淡く優しく染める場合は草の根の汁をたくさん混ぜて、緑を深緑に、藍を濃藍に、と色を濃くしっかり染める場合は草の葉の汁をたくさん混ぜるらしい。
 これで恐らくは殆どの色が再現できるはずだ。
 真っ青な空のもと、光に満ちた草原の真ん中で、鮮やかな色彩達と戯れる。
 何だかすごく爽やかで楽しそうな気がするんですよね〜とぱたぱた尾を振って、ボギーは麻で作られた生成色のブックカバーを取り出して見せた。
「ボギー、草原に行ってこのブックカバーを染めて来ようと思うのですよ。皆さんもどうですか?」
 皆で一緒にわいわい作業すれば、きっともっと楽しいはず。
 飽きてしまった衣装を好きなように染め直したり、ハンカチみたいな小物を可愛らしい模様で彩ってみたり。部屋のカーテンを思い切って染め直し、模様替えの計画を練ってみるのも楽しいだろう。
「ちなみにボギーの狙いは子猫の肉球スタンプなのです! この時期草原には猫怪獣の子供がたくさん遊びに来ているそうなので、その子猫の肉球でぷにっと模様付けて貰うつもりなのですよ〜♪」
 猫怪獣だからそれなりの大きさだが、子猫は子猫。
 つぶらな瞳をくりくりさせて、愛らしい声でみゃあみゃあ鳴く様を思えば心がときめく。
 子猫達にもみくちゃにされつつ草原を転がるのもきっと幸せだろう。
「疲れたら草原にぽつぽつ生えてる木の陰で昼寝も気持ちいいでしょうし、池は苔でいっぱいだから泳いだりとかはできないんですけど、苔の上で転がるのも冷たくて気持ちいいと思うのですよ〜」
 そんな感じで、一緒に遊びに行きませんか?
 ひときわ大きく尾を揺らし、ボギーはそう言って冒険者達を見回した。


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参加者
NPC:ハニーハンター・ボギー(a90182)



<リプレイ>

●草原のパレット
 真夏の輝きを抱きしめて、何よりも鮮やかな青空は遠く世界の果てまでも広がっていく。
 遥か地平の彼方まで続く草原を見渡せば、瑞々しい夏草の合間に鮮やかな色を湛えた池の水面が瞳に映った。草原に並ぶ七つの池に湛えられているのは、空にかかる虹を成すための七つの色。
 こんな壮大なパレット誰が作ったんだ――なんて、ほんの少しの悔しさとそれを包んで余りある感嘆を胸中に紡ぎ、今日は相棒さんを手伝おうかとラジシャンは瞳をめぐらせる。目指せ肉球スタンプ、と魅了の歌で子猫(ウサギサイズ)の心を鷲掴みにしていた相棒さんことフィードは、
「……って、じゃれなくていいからー!」
 頭によじ登られ尻尾に戦いを挑まれ子猫まみれになっていた。
 このままでは『肉球スタンプ付きクッションカバーで息子の幸せ笑顔を堪能してやる計画』が失敗に終わってしまう。大きめの子なら落ち着いてるかもと子猫(ノソリンサイズ)に歌いかけてみれば、
『みゃー?』
「いや撫でなくていい! 俺はか弱いからああぁぁあ!!」
 顔くらいありそうなベビーピンクの肉球に一撫でされて、鮮やかな赤の池に転げ落ちた。
 明るいルビーみたいな水飛沫がきらきらと空に散り、フィードの全身が真っ赤に染まる。
「…………似合うか?」
「ああ、似合うさ。たまには悪くないさ」
 何処か遠い目になった相棒を助け出し、ラジシャンは何気なさを装いながら答えを返した。
 ああ、やっぱり、ワイルドファイアは想像を超える。
 まさか赤を纏った相棒さんを見ることができるなんて。
「あんないらん事言うボギーさんには、こうです!」
「あ、僕も追加〜♪」
「ぎゃー! ボギーの尻尾がー!?」
 雉色と茶トラの子猫(ウサギサイズ)をハニーハンター・ボギー(a90182)の尻尾に乗せてやれば、尻尾が取れちゃうのですよーと慌てて彼は何処かに走っていった。子猫たちをくっつけたまま。
 あれはあれで可愛いよねぇとくすくす笑い合いながら、ファリアスとイーグルは夏草の中に並んで寝転がる。傍で丸くなっていた灰色子猫(中型犬サイズ)を抱き寄せもふっとイーグルのお腹に乗せてやれば、お返しとばかりに白茶のぶちと黒い子猫(中型犬サイズ)がファリアスのお腹に乗せられた。
「……重い……」
「……重すぎる……」
 当たり前だ。
 腹やら胸やらの上で丸くなろうとする大きな子猫たちを降ろしてやって、今度は木陰でびろーんと伸びたまま眠っている子猫(ノソリンサイズ)のお腹に二人でそっと抱きついてみる。
 ふんわり頬を包んでくれる柔らかな毛は陽だまりの匂い。
 幸せだねと微笑みあって、至福の眠りの海へと漂いだした。
 子猫たちを尻尾にくっつけたまま駆けていくボギーに「頑張ってくださいね」と心の中でエールを送りながら、イルディスは淡い色に染め上げた絹をふわりと広げてみる。
 紗をかけた翡翠みたいな、華やかで優しい花緑青の色。
 夏草と水の香を孕んだ風に晒せばすぐに絹は乾いたから、初春に咲く花の色に作った水で花模様のスタンプをぺたりと捺す。淡い翡翠の艶を帯びた絹の隅に、薄紅の花が咲いた。
「ボギー、おいで」
「うわーんオリエさーん!」
 尻尾にしがみつく子猫たちに悪戦苦闘しているボギーを手招きし、オリエはひょいと茶トラの一匹を抱き上げてやる。助かりましたのです〜と一息つくボギーに目を瞑らせて、向日葵みたいな黄色に染めた子猫の肉球を頬にぷにっとスタンプしてやった。
 可愛い可愛いと頭を撫でてやれば、お返しなのですよ〜とやはり頬に肉球がぷにっと捺される。水の冷たさと柔らかな肉球の感触が楽しくて、日記カバーにもスタンプしようねとくすくす笑いあった。
「じゃあおいらはこの子を借りるぜぃ!」
 ボギーの尻尾にくっついたままの雉色子猫を抱き上げて、ライはうきうきとスカーフを広げてみた。ふわふわと風に揺れる前髪にじゃれようとする子猫の動きがくすぐったくて、けらけら笑いながら何とかスカーフにぺたぺたと子猫の足跡をつけて貰う。本人におめでとうって言って贈れば喜ばれますよ〜とのボギーの言葉には「なるほどなっ」と頷いた。
 葉の先まで瑞々しい草原の夏草は、風にそよぐたびにきらきらと光を散らす。
 眩い光を抱いた夏草の合間に見えるのは大きな大きな子猫たち。でっかい子猫と遊べるなんて夢のようです、と己の頬をむぎゅっとしているソアの傍らから、きゃーと声を上げたルルナが飛び出した。
「突撃です!」
「って、ルルナさん抜け駆けはずるいのですー!」
 好奇心いっぱいの瞳をくりくりさせた三毛の子猫(ノソリンサイズ)に二人一緒に飛びつけば、みゃあと楽しげな声を上げた子猫がころんと転がった。お腹の毛はもふもふふわふわ、ぺちぺちと顔を叩いてくる前肢の肉球はふにふにだ。そしてたっぷり仲良くなって乗せて貰った背中から見る風景は。
 鮮やかに煌く草原の中に並べられた、虹の色。

●夏風のパレット
 草原を渡る風は夏草と水の香を孕み、眩い光の粒子を抱いている。
 夏の陽射しの匂いまでもが感じられるような気がして、アスティアは眩しげに瞳を細めてタオルを広げた。くるくる巻かれたタオルが解ければ、七色に染められた綺麗な虹の布地が夏風の中に翻る。
 淡く陽射しを透かす鮮麗なこの色すべてが苔の色。
 何だか不思議で、けれど大自然の恵みを分けて貰えているのだと思えば嬉しくて、思わず口元が綻んだ。そっと池に手を伸ばしてみれば、冷たく柔らかな苔が指先に触れる。
 鋼に色を乗せれば硬質な艶を帯び、七色に染めれば虹の輝きが刃紋の上を渡る。
 太刀を虹色に染めあげ満足気に頷いたアリスは、ふと視界を過ぎった人影に瞳を輝かせた。
「ボギー君の本体も虹色に染めてあげるね!」
「ぎゃー! ダメですよー!!」
 通りすがりのボギーからクマを奪い去り、まずは赤からと問答無用で染めてみる――が。
「ボギーの落としたのは赤のクマ君、それとも蒼のクマ君、それともこのレインボークマ君ずかな?」
 何処からともなく現れた肉球スタンプマントの正義の味方が赤いクマをさくっと奪取して、いそいそと懐から色とりどりのクマを取り出して見せた。全部で七色、クマ七体。うひゃあと目を瞠ったボギーは真剣な顔つきで七色のクマを見比べる。が。
「あれ? 全部違うですよ!?」
「正解もじゃー!」
 正義の味方ことシュウがばさりとマントを翻せば、その陰に隠れていたアデイラが「今日のもじゃの子めちゃめちゃかっこええんよ〜」とくすくす笑いながら本物のクマを取り出した。ピンクのしましま。
 不穏な気配を察したシュウが事前にこっそりレプリカとすり替えておいた――ということらしい。
 目論見が崩れたアリスは「ブリザックさんの血で太刀を紅に染めようっと」なんて物騒な呟きを洩らし、彼女を警戒していたヴァルランドの返り討ちに遭って草原に沈む。
 夏草の草原を、爽やかな風が吹き渡っていった。
 白銀に輝く白の鱗の上を、透きとおるように美しい水色の流水紋が彩っていく。
 対する艶やかな漆黒の鱗の上には、夏夜の篝火を思わす鮮やかな紅の炎が踊った。
 鱗の上を筆が滑っていくのがくすぐったくて、ブリザックとヴァルランドはくつくつと笑みを零しながら互いの身体にペイントを施していく。水の色も炎の色も、夏の陽射しに鮮やかに映えた。
 次はノソぬいやマフラーを染めようかと語り合いながら、互いの鱗を彩る自信作に満足気な笑みを浮かべる。なかなか洒落てるなと互いに肩を叩きあい、二人は新たな色を作るべく腰を上げた。
 空と大地の狭間は光に満ちて、鮮やかな色を湛えた水面には澄んだ煌きが渡る。
 草原に落とされた不思議な色はどれも鮮麗だったけれど、やはり目が行くのは紫の色。
「あの時以来ですか……懐かしいですね」
「ふふ、とっても」
 紫に染まった二年前の記憶は、ファルクの心にもリラの心にも今も鮮やかに残っている。
 密林の奥と草原の真ん中と場所こそ違うけれど、眩いほど際やかな紫の色は同じだ。
 好みの色に染めた手巾に桜模様を散らしましょうか、と穏やかに二人が微笑みあった瞬間、背後から忍び寄った何者かがていっと二人の背を突き飛ばす。
「らぶらぶなお二人は赤に染まってきて下さーいっ!」
「しまった!?」
「きゃああぁあっ!?」
 鮮やかなルビー色の水飛沫が上がり、遊ばなきゃ損ですよっと突き飛ばし犯リーナが明るく笑う。
 途端「じゃ、あんたもね♪」と楽しげな声が横合いから響き、リーナの身体も宙に舞った。
「染まっちゃえー!」
「っひゃああぁぁあっ!?」
 何時かの落とし穴のお返しよっ、とそっくり返るマーガレットの眼前で黄水晶を思わす水飛沫がきらきらと風に踊る。うわあ綺麗と瞳を細めた彼女は、斜め後方から迫る影に気づかなかった。
「と言う訳で俺も行くぜ! たーっくる!!」
「って、ぎゃー! クリスっ!!」
 思い切り勢いをつけたクリスのタックルを喰らい、マーガレットの身体が吹っ飛んだ。勢いあまって自分も飛んだクリスと二人落ちて行くのは青の池。サファイアめいた水飛沫が盛大に跳ねる様に苦笑しつつ、しょうがないねとセトが皆を引き上げてやった。
 何時かの時は皆で紫に染まったけれど、今日は赤・黄・青と三色並んで派手なことこの上ない。
「二、三日目に厳しい生活になりそうね……」
 鮮やかな色に全身を染めた面々は、彼女の呟きに互いを見回し弾けるような声で笑い合った。
 軽やかな葉ずれの歌を奏でる風が、楽しげな笑い声をつれてくる。
 釣られるように小さく笑んで覗き込んだ青の水面は、真夏の蒼穹の輝きを凝らせを深く鮮やかに透きとおらせたような色。水の香りを吸い込めば心も体も内側から青に染まりそうな気がして、クールは幸せな心地で笑みを深めた。
 お気に入りのバンダナに空と海を宿して、絵本みたいな世界をスケッチして。
 空と水と草の匂いの風の中で眠れれば――とても素敵。

●青空のパレット
 鮮やかな色を湛えた水面に映る青空は、何処か不思議だけれどとても綺麗だ。
 顔ほどもある木の実の殻に水を掬って、スゥベルは少しずつ少しずつ草の汁を垂らしていく。息をするのも忘れるほど真剣に。淡い真珠にも似た草の根の雫を一粒落とせば、殻の中の水がまるで眩い光を孕んだかのように鮮麗な色に染まった。
 純白の羽根を七本、それぞれを虹の七色で染めて纏めれば、虹色の飾り羽根の出来上がり。
 誰かが何かを染めるたびに跳ねる飛沫は虹の色。
 涯てなく続く青空と草原の狭間に虹の水滴が散る様は、まるで空と大地からの贈り物みたいだ。
 夏の陽射しと光の匂いを全身に感じながら、ファオは麻地のランプシェードを紅葉模様で染めていく。深緋から橙に移ろう紅葉は出掛けに窓辺から覗いた鮮やかな秋の記念。深い秋と冬が訪れようとするランドアースで、暖かな光の色が部屋に温もりを齎してくれるよう。
 部屋で留守番しているわんこの姿を思い出し、彼の肉球をスタンプする場所を隅に空けた。
 水のほとり、夏草の上に防水マントを広げ、花柄の日傘で陰を作れば心地好い作業場の完成だ。
 頑張って染めるですと意気込むチィラの様子に尾を揺らし、一度やってみたかったんだとリトが声を弾ませる。小振袖の袖が淡い菜の花みたいな色から鮮やかな深緋に染まれば彼の尻尾が更に楽しげに揺れたから、チィラはこの尻尾ピンクに染めたらどうなるかなぁと小さく笑みを零した。実際に試してみたりはしないけど。
 小さなハンカチが艶やかな赤の飴色に変われば、綺麗に染まったねとリトが褒めてくれたから、何だか胸のなかがくすぐったいような心地になってチィラは満面の笑みで頷いた。
 夏の光をいっぱいに抱きしめた風に晒せば、今染めた物もあっと言う間に乾いていく。
 可愛い桜色が見えた気がして瞳を瞬かせれば、春の花の色をしたリボンをそっと髪に飾られた。
「これ、今日誘ってくれたお礼。楽しかったよ。ありがとう、チィラ」
 皆が鮮やかに染めた色とりどりの布がはたはたと風に揺れる。
 夏草の上に転がりながら仰ぐその光景は、何だか青空にも真新しい絵具を置いたよう。
 心が弾んでいくのを感じながら、ユウノは遊んでくれているぶち縞の子猫(大型犬サイズ)と草原を転がって、一緒になって綺麗なオレンジ色の池に落ちた。きゃあとかみゃあとか声を上げながら、ふかふかした苔の上で更にごろごろ転がってみる。極上の羽根布団をたっぷり重ねたみたいな苔の柔らかさも、清涼な冷たさで身体を濡らす水の感触も――とてもとても、心地好かった。
 楽しげに転がる一人と一匹を眺めつつ、うちもにゃんこと仲良しになるんよとカガリが拳を握る。
 今日染める物は大判サイズの風呂敷だ。緑に唐草模様だと旦那様の夜逃げセットになりかねないから、ここは何としても子猫の肉球模様で可愛く染めたいところ。
 草原を見渡せばあどけない顔をした茶色の子猫(ノソリンサイズ)と目が合って、素敵な香りの鰹節と魅了の歌で交渉の上、風呂敷の真ん中にばーんとピンクの肉球スタンプを捺して貰った。
 ありがとさんなと抱きつけば、ふんわり暖かなお日様の匂い。
 このままゆるゆる微睡に沈めば、きっと――幸せ。
 やっぱりお昼寝ですよね〜と微笑んで、可愛らしく仕上げた浴衣を小脇に抱えたテルミエールはのんびり草原を見渡した。一番心地好い場所を知ってるのは猫さんのはず、と、ひときわ大きな樹の木陰で眠る淡い飴色のしましま子猫(ノソリンサイズ)に目を留める。
 静かに足を踏み入れた木陰は涼やかな風がよく通り、ほんのりと花の香りが漂っていた。
 温かな子猫に身を寄せ梢を仰げば、この大陸では珍しいほど小さく可憐な花が咲いている。いっそここに住んじゃうのもありかなぁ何て呟いているうちに、夢の世界へ引き込まれていった。

 鮮やかな光を孕んだ蒼穹は、眩い青をぎゅっと色濃く抱きしめて、けれど清冽に透きとおっている。
 梢の天蓋から覗く青空に輝くように真白な雲が流れていく様が少し不思議で、ふんわり揺蕩うような心地の中、ウィーは久々に望む青空に微かに口元を綻ばせた。
 どんなことを感じて、どんな世界を瞳に映してきたのとレインに訊ねられ、色々楽しかったよと緩やかな歌を紡ぐように囁きを返す。心はまだ戦場にいるようで、何処かまだ現実味がない。
 そんな彼にそっと手を伸ばし、右手と首筋に触れぬよう気遣いながら、優しい囁きを落としたレインは柔らかな抱擁で彼の身体を包み込む。
「……お疲れ様。本当に、本当にお帰りなさい」
 再びこうして会えることが嬉しくて、暖かな光が胸に満ちていく。
 どうか無事でいて欲しいと、いつでも願ってるから。
「……ありがとう」
 されるがまま、ウィーは彼女に感謝と微笑みを返す。

 伝わるのは――青空から梢を透かして降る木漏れ日みたいな、優しくてあたたかな気持ち。


マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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参加者:30人
作成日:2008/09/24
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冒険結果:成功!
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死亡者:なし
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