【お姉さま天獄】葡萄のお姉さまたち



<オープニング>


 変わる事なき、冒険者の酒場である。
 残暑はまだあるとはいえ、日、一日と風景は秋の色を帯びはじめている。
 アンニュイな目をして、はじまりは・プルミエール(a90091)が外を眺めていた。
「また夏が終わりましたね……気分はコバルトムーンです……」
「それ、意味かんがえないで言ってるだろ」
 その背後から、葵桂の霊査士・アイ(a90289)が静かにつっこむ。ところがプルミーは振り向きもせず、不思議なくらい色っぽい目をして、
「ふふ……私にも、ブルースな気分になるときがあるのですよ」
 とウィスパーボイスでつぶやくのだった。
「そうか」
 アイはいたって平然としていた。片眉をあげると、わざとらしい口調で
「そんな気分であれば食欲もなかろう。葡萄を山盛りもらってきたが、私が一人で食べてしまうとするか」
 と、両手にバスケットをさげたままくるりと振り向いた。
「おひょぉぉぉ! ブルースは吹き飛んだですー! ブドウ! 好きです−!」
「わっ! よさんか! しがみつくでない!」
 心なしかカエルに似た跳躍で、ぴょんこらとプルミーはアイの背に飛びつくのであった。
「首筋にチューしてあげるからブドウをよこすのです〜!」
「などと言いながら妙なところを触るでない! 触るなというに! あっ……」

●だぶるのあじわい、ふたごのおねえさまたち
「すっかりおなじみとなった。女性型モンスター、いわゆる『お姉さま』との戦いだな。今度の舞台は、葡萄の群生地となるぞ」
 しかしお姉さまは一体ではない。
「今度の敵は二体だ。顔がそっくりゆえ双子なのだろう。ただし似ているのは顔だけで、一人は紫の髪、もう一人はエメラルド色の髪に染め分けており、衣装も同系色でまとめている。服の型だけは同じで、ネクタイにスカートのブレザー姿のようだな」
 葡萄がモチーフなのだとすれば、紫は巨峰、エメラルドはマスカットのお姉さまということになるだろうか。ちなみに紫モンスターはおっとりした感じのロングヘア、エメラルドモンスターは活発な雰囲気のショートカット、このキャラクター性の違いは、決して髪型にとどまらない。
「見た目こそ似れど、二体の性質は相当に異なるぞ。主に前線に立ち、両手持ちの長い蛮刀を手に、蹴りや投げ技すら交えた多彩な攻撃をしかけてくるのが、(おそらく妹の)マスカット色モンスターだ。蛮刀はリーチが長く、投げてブーメラン的な攻撃をしてくることもあるようだ」
 葡萄だけに武道の達人――という洒落になっているわけではないだろうが、どんな攻撃がきても対処できるようにしておきたい。これに対し、巨峰(便宜上、姉とする)のモンスターは後衛をつとめる。
「このモンスターは始終もじもじしており、木など障害物の背後に隠れる傾向がある。ときどき姿を見せては、大きな葡萄の球を投げてくるだろう。球は、破裂して細かな針を振りまいたり、有毒性のガスを発生させたりする。妹モンスターがダメージを受けたりバッドステータス状態に陥ったりすれば、すかさず回復効果のある球を妹に投げるだろう」
 二体とも、攻撃力や技量は、かつて現れたお姉さま連中の平均をやや下回るだろう。しかしそれを補ってあまりあるほどに連携が巧みだ。姉のバックアップがある限り妹は縦横無尽に暴れるであろうし、ひとたびいずれかが窮地に陥れば、一致団結してこれを切り抜けようとする。チームワークだけならば、かつてのレモン&ライムのお姉さまを上回ると予想された。
「というわけでこちらも負けずに団結してこれを倒してほしい。なお、例によってスカートは短いので、妹の前蹴りには注意! 以上だ」
 ちなみにプルミーは、食べるのに一生懸命で話を聞いていないのであった。
 そんなわけで秋の味覚、葡萄狩りといこうではないか。


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参加者
碧風の翼・レン(a25007)
嵐を呼ぶ蒼き雨・レイニー(a35909)
月の姫を抱く者・ミレイラル(a43722)
戦争屋・ヒレン(a47525)
黒百合の魔女・リリム(a50830)
手のひらの鼓動・アールコート(a57343)
火炎六花・ルーシェン(a61735)
銀之刀匠・クオン(a65674)
全力狂想曲・ティム(a71002)
月華士侯・アルチェミシャ(a75676)


<リプレイ>

●なるほど、お二人は姉妹なのですね?
 道中、千紫万紅・ミレイラル(a43722)はいささか思うところがあるようだ。
(「今回は双子ですかー。巨峰とマスカット……その姉は髪と服装が紫……? 私と似て……ぁ、でも性格とか違いますか」)
 ちらりと視線を滑らせる。黒百合の魔女・リリム(a50830)を見てしまう。
(「性格ならリリムさんっぽいですよねぇ」)
 このとき、うつむき加減で歩くリリムは、ミレイラルと同様のことを考えていた。
(「始終もじもじしており、木など障害物の背後に隠れる『お姉さま』だなんて……。も、もしかして……わ、わたしと……」)
 碧風の翼・レン(a25007)はふと、背後から声が聞こえたような気がした。
(「なんだろう……『被ってます』って、聞こえたような?」)
 何気なくレンが振り向くと、視線に気づいたリリムは慌てて銀之刀匠・クオン(a65674)の背に隠れた。
「どうかされましたか?」
 と問うクオンの本日の装束は鮮やかなりし黒、おなじみ、蜜柑のお姉様のゴスロリ服である。
「ぃ、いぇ……」
「そろそろ出ると思われますが、畏れる必要はないのですよ」
 クオンはそう言って、ゴスロリ装であろうと肌身離さぬ太刀の鍔に手をかけた。いまのクオンは彼女の太刀――銀皇久遠に似ている。黒い鞘に包まれた白い身は、美しけれど冴えた切れ味をもつ。
 手のひらの鼓動・アールコート(a57343)はそんな仲間たちを前方に見ながら、憧れの気持ちを抱いていた。
(「お姉さまたちを見ていると、なんだか、もっと強い個性が必要なのかなって思います☆」)
 彼女が思う「お姉さま」とはもちろん敵のことだけではない。ミレイラルといい、リリムといい、クオンといい、大剣さげてのしのしとゆく嵐を呼ぶ蒼き雨・レイニー(a35909)といい、どの女性たちも見事なくらいに『キャラ立ち』している。かくいうアールコートも最近では、チームの良心的存在として育ちつつあるわけだが、本人はそんな自覚はないようであった。
「今日はじめて参加されたお二人もお綺麗なお姉さまです……」
 つい唇からこぼれたものらしい。アールコートが呟くのを耳にして、火炎六花・ルーシェン(a61735)は目を丸くした。
「あの私……男性ですよ。ほら、一年ほど前にグドン地域完全制圧戦でご一緒しましたよね?」
「す、すいません! ルーシェンさんのことはもちろん覚えてます☆ あのときはあまりお話できなかったせいもあって誤解していたみたいで……」
「恐縮です。これからはできれば『お兄さま』で」
 ルーシェンは苦笑する。綺麗といわれるのは悪い気がしないでもないが、いささか複雑な気持ちでもあった。
 一方、もう一人の初参加メンバーこと月華士侯・アルチェミシャ(a75676)は、アールコートの発言には気づいていなかったが、前方にただならぬ気配を察知していた。
 人影がひとつ。ネクタイにスカートのブレザー姿、エメラルドの髪は短く切りそろえられている――マスカットのお姉さまに違いない。だがもう一人は? よく見ればその背後、巨木に隠れる姿があった。葡萄色の頭頂がわずかに見えるだけだが、あれが巨峰のお姉さまなのだろう。
 穏やかな笑みを浮かべアルチェミシャはつぶやいた。
「なるほど、お二人は姉妹なのですね? 仲睦まじい姉妹というのは微笑ましくて素敵だと思いますよ。家族とは本当に善いもの……」
 しかし、穏当なのはここまで。
 突如ピシリと音がすると口調は一転、底冷えするような鉛色の声でアルチェミシャは述べたのである。目は半月に据わっている。
「家族……私には居ないのに……赦せない……赦さない……」
 身をかがめ金色の髪ふりみだすとアルチェミシャは疾風のように駆けた。両手の脇差し大地を削り、砂礫衝をブチ撒ける!
 戦争屋・ヒレン(a47525)がこれを追う。
「アルチェミシャ、と云ったな。あの独白、よほど呑気なのか何ぞ心的外傷でもあるのか」
 いずれにせよ、とヒレン、煙草を捨てると剣を逆手に、ブラッディエッジの構えで突っ込む!
「普通じゃねえようだな、俺もそうだけどよ!」
 閃光が空気を裂いた。

●僕の時代
 パァァァァ〜♪ あふれる光、それは心象風景。
 全力狂想曲・ティム(a71002)はいま、気分極楽に滞在中。
「ついに僕の時代が来たよ!」
 背に翼が生え、羽ばたいて飛んでいきそう。目の前にいるのが、聞いていた以上の『お姉さま』たちだったから! ティムはこれまでを追想していた。
「枇杷のおねーさまのときは手下に邪魔されて!
 青梅のおねーさまのときは天気に邪魔されて!
 羽衣のおねーさまはめくる前からちらちらで!
 枕元を濡らした悔し涙の報われる日がついに来たよ!」
 涙、滂沱とこぼれ落つ。
 本日は手下なし! 天気も良し! 恥ずかしがりやな巨峰のおねーさま、文句なーし! もはやティムを遮るものはなにもないのだ!
「春生まれプーカの面目にかけて、今度こそ布チラ奥義を炸裂させてみせるよ!」
 しかし黄金色のティムの視界に、なにやら黒い影が映りこんだ。

●た、他人のような気がしません
「ティムーっ!」
 レンがいち早く気づき呼んだが間に合わなかった。
 マスカットお姉さまの初撃は、蛮刀の全力投擲であった。哀れこれを顔面で受けティムは、
「布チラぷりーずー!」
 鼻血の尾と魂のシャウト残しながら吹っ飛んでいったのだ。
 武道家お姉さまは、刀を追うようにして飛び込んでくる。迅い。砂礫衝のタイミングをかわし、ヒレンのブラッディエッジも眼前で切り抜けた!
 しかしその眼前にレンが立ち塞がる。
「足止めさせてもらうよ!」
 レンも腕には覚えあり、額に巻いた西瓜お姉さまの鉢巻を翻し突破を防ぐ。
「葡萄姉妹め、いくら二人がかりでも……」
 レイニーとそのグランスティードだ。騎手を下げて全力疾走、
「水着コンテストで同盟中を魅了した妾の美に及ばぬとまだわからぬか!」
 といいながら見事な手綱さばきで、レイニーはモンスター姉妹の中間地点にたどりついた。
 クオンも同じ位置につける。風が舞い起こりスカートが翻った。同乗のミレイラルに告げる。
「ミレイラルさん。この位置から両方を牽制し、合流を阻害しましょう」
「了解、だけどスカートに注意してくださいね」
「スカート?」
 クオンには自覚がないらしい。騎乗で走るたび裾がまくれ大変だということに!
 アールコートが護りの天使達を召喚する。
「それじゃ天使様、今日も頑張ってくださいっ♪」
 天使達は渦を巻き、それぞれ庇護する相手へと散っていった。葡萄園に咲くヒメイチゲのように。
 リリムも姉モンスターに対峙した。といっても別の木陰に隠れるようにして。もちろん敵も木陰に隠れている。つまり、ちらちらとお互いを観察するような格好。
「……や、やっぱり、似てる」
 もじもじ、ちらちら、そんなリリムとモンスターであるがやることはやっている。リリムは遠慮気味に黒炎を発動し、お姉さまは控え目に葡萄型の巨弾を取り出したのである。
 戦況はなかなか冒険者の思う通りにならない。ルーシェンは怜悧な頭脳で状況を読み取っていた。
「こちらから見れば分断ですが、敵から見ればこちらを挟撃するような体勢ですね……」
 しかし、とルーシェンはつけ加えるのを忘れなかった。
「一度敵の連携を断つことができれば、一気にたたみかけられるかもしれません」
 仲間の護りを信じ、ルーシェンは暗黒縛鎖を飛ばし拘束を狙った。しかし叶わない。
 残念ながらまだ敵の連携はつづいているようだ。
「ぉ、お願い、銀狼さん!」
 とリリムが懸命に姉の拘束を狙うも成功せず、その姉はジャイアント葡萄弾を連発し、味方のリズムを乱し続ける。破裂する葡萄弾の中身は凶暴な針、冒険者のみを確実に狙ってくる。その一方妹は、トリッキーな足運びで冒険者の攻撃を嘲笑う。
「自信満々って顔か。散らすには上等じゃねぇか」
 触れなば切れんの闘気込めヒレン、薔薇の剣戟を間断なく刻む。だが一刀、また一刀と防御されてしまう。その都度、力よりもその技量でマスカット娘は反撃する。ネクタイが踊りスカートの裾が舞った。
「これくらいでないとつまらねぇからな!」
 いつしかヒレンの額は傷つき、赤い筋が唇まで垂れ落ちてくる。されどその失血は、ますますヒレンを奮わすのである。
 アルチェミシャも機を見ては攻むが、まだ敵の動きに追いつくのが精一杯だ。マスカットのお姉さまの肩口をかすること二度、袖をかすめること一度、決定打はない。
「見せてもらっていますね。お姉さまたちの姉妹の絆とやらを」
 針が数本刺さっており、二の腕に痺れるような痛みがある。しかしこの程度の傷で怯むアルチェミシャではない。彼女は醒めた目で隙を探した。突破口はあるはず……。
 レイニーもその隙を探していた。どうもさっきから、お姉さま姉妹にあしらわれているように思えてならない!
「ころは良し、味わうがよいっ!」
 くわわっ、両眼を見開くと、レイニーは奥の手を発動したのである。
「注目を浴びて淫靡な空気を醸し出す……まさしく妾のためにあるアビリティなのじゃ」
 それは放蕩の香り、葡萄の園に妖しい香が流れ出す。
「目立つのは妾じゃー!」
 叫んだレイニーの胴に、マスカットのお姉さまの蹴りが叩き込まれた!
「ぐっ」
 目立った(=アビリティが効いた)という喜びと息が詰まるような痛み、その両方を味わうレイニーである。どっちかといえば、喜びのほうが大きいあたりさすがといえよう(?)。
 その機を逃さぬレンだ。
「自分と戦い方が被ってる! って言いたいけど、わざと被らせただけなんだよね」
 両手の小太刀を投擲す、一刀目の柄頭を二刀目の切っ先で付き押し飛ばすように! 剣は狙いを外れ灌木に突き刺さったに見えたが、
「これも計算のうち!」
 小太刀に巻きつくアビリティの鎖……そう、チェインシュートだったのだ。鎖に引かれレンは飛び、マスカットお姉さまの懐に飛び込む。
 ミレイラルは土塊の下僕の仕込みを終えていた。
「さあさお楽しみ、今週のびっくりどっきりラス〜♪」
 もちろん今回欠場中のラス本人ではなく、それはミレイラルが召喚した下僕のことである。その背には、ミレイラルが布きれでつくった二枚の翼があり、ゆわえつけられし名札には『Wラス0かすたむ』としたためてあった。
「氷の大地に行った悪友の為にも、頑張ってくるですよ?」
 偽ラス下僕は歩む。向かうは、不安げに木陰からこれを見ているお姉さま……だが!
「よーしっ!」
 生きていたぜティム! アールコートに治療を受け不屈の魂で復活。目指すお姉さまは下僕に注目中、ならば!
「チャンス到来、布チラの術だよー!」
 風が吹いた。
 ぴらり。
 めくれた……土塊の下僕にくくってあった翼(布製)が。
 興奮しすぎていたティムは、目指す相手を誤ったのである。そして、
 ズウンッ!
 巨大葡萄弾を頭部に落とされ、土塊の下僕は哀れ圧死してしまったのだ!
 だがこれはもっけの幸い、
「ありがとう、敵に隙ができました」
 ルーシェンが飛びだし、敵目がけ暗黒縛鎖を放射したのである。このタイミングなら逃さない!
 紫の髪のブレザー少女は、もがきながら地に転がった。
「時間稼ぎくらいできないと笑われてしまいますからね……」
 フィードバックで麻痺しつつ、ルーシェンは会心の笑みを見せていた。『お姉さま』にも負けぬ、麗しき『お兄さま』の笑みを。
 とん、ルーシェンの肩を支える姿があった。アールコートだ。
「やっぱり、これが私の役割ですから☆」
 静謐の祈りを彼に捧げる。

●されど――此れも戦なれば
 これで一気に形勢は傾いた。かくなれば、あえて敵に挟撃させる陣形が効いてくる。ティムも回復にまわり、アールコートと共に味方を盛りたてた。
 姉へ向かおうとした妹怪物を、ヒレンは決して逃さない。
「クソッタレ……っ! 下らねぇ事しくさってんじゃねぇぞ!!」
 すかさず粘り蜘蛛糸を投げ、ブレザー姿を縛りあげてしまう。
 縛られたお姉さまにレンからの贈り物、疾風斬鉄脚!
「アルチェミシャ、行ける!?」
「ええ」
 アルチェミシャは剣をふりかざした。
「姉妹の連携など、ひとたび破れれば儚いものですね……」
 水平に剣をかざすと、目にも止まらぬ突き、斬り、裂き!
「♪……チャオ・ソレッラ――エ・アリヴェデルチ……♪」
 スピードラッシュ! どっ、とマスカットのお姉さまは崩れ落ちた。
 これを見下ろし剣を拭い、ヒレンは冷然と言い放つ。
「つまんねぇよ……及第点が欲しけりゃ先に地獄で精進でもしとけ」
 ブレザーを残し本体は蒸気となる。

 巨峰のお姉さまはガス弾、針弾、おりまぜて攻撃してくるが分が悪いのは明白だ。ガス弾を剣の背ではじき返すとレイニーは突進した。
「美味なる葡萄、あとでたっぷりと食べてやるのじゃー!」
 クオンもまた、危険なスカートをものともせず襲いかかる。
「本来なれば、堂々と正面から斬り結ぶが礼儀。されど――此れも戦なれば」
 達人の一撃、音もなく深々と突き刺した。
「……恨みは、甘んじて受けましょう……」
 さらにミレイラル、巨峰姉に蜘蛛糸を投ず!
「えぇい、お淑やかに振舞えばお姉さまだとでもいうのですかっ!」
 その糸、ミレイラルの意思を反映するかのように、敵を木ごとぐるぐる巻きにするのだ。
「大人しくないお姉さまがいてもいいじゃないですかっ!」
 ぴしゃりとミレイラルはいいのけた。
 このとき、焦り宙を泳ぐ葡萄のお姉さまの視線と、リリムの視線がぴったりと合致したのである。
 怯える兎のような瞳……。
(「で、でも、モジモジでも、姉力でも、ま、負ける訳には行きません……」)
 姉力全開! リリムは振りかぶり黒い炎を投じた。火炎はお姉さまを包み、やがてブレザーを残しその姿を消し去ったのである。

 戦いは終了した。ヒレンが葡萄を無造作に摘んでいるその背後では、レイニーが葡萄を食べさせろと駄々をこね、それをなだめつつレンが、葡萄酒とジュースを配っている。
「仲良くお眠りなさい」
 合掌するとルーシェンは、紫色したブレザーの上下を拾いあげた。つとアールコートを見るも、
「こういう際どいのは、ちょっと私には早そうですね♪」
 アールコートは笑って、それをリリムに渡す。
「一番似合っているのはあなただと思います☆」
 困るかと思いきや、リリムは恭しくそれを受けたのだ。
「な、なんだか、た、他人のような気がしないんです」
 もう一着、マスカット色のほうは、クオンが手にして眺めている。
「此れは……礼服でしょうか? ……少し、着てみたい気も致します」
 鮮やかな色のネクタイ、巻けばさぞ似合うことだろう。
 そんな彼女に、エビス顔してティムが呼びかける。
「ぜひ着てみてよ、そして僕にめくらせて!」
「……めくる? ネクタイを……ですか?」
「いや、そうじゃなくて」

 今回は、これまで。


マスター:桂木京介 紹介ページ
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