<リプレイ>
●辺境の村 「あ、あの、ブルースープって……、おいしいのでしょうか……?」 不思議そうに首を傾げながら、ドリアッドの医術士・ミリーナ(a75993)が口を開く。 ミリーナ達は定期的に畑を荒らしに来ているグドンの群れを倒すため、チキンレッグ領の辺境地域にある村を訪れていた。 この村ではブルースープと呼ばれる飲み物が流行っており、健康のため村人達がみんなで飲んでいるようである。 ちなみにブルースープは別名『青汁』と呼ばれているが、本家のそれとは明らかに製法が異なるため、一部で問題視されているらしい。 それでも村人達が飲んでいるのは、体に良いという『思い込み』。 村人達の中にも『これって何だかヤバくね?』と思う者もいたようだが、『気合が足らない』と一喝されてしまったため、例え身体の調子が悪くなったとしても、ブルースープのせいにはならないようである。 「良薬は口に苦しと言うから、ブルースープもその一例なのだろう。結果的に健康になっているわけだから、あながち効果がないとも言い切れないしな。まあ、いずれにせよ、我らのやる事は変わらん」 険しい表情を浮かべながら、力を求める者・グロウスグロウ(a74145)がキッパリと言い放つ。 ここでブルースープの事を話題にすれば、間違いなく村人達が勧めてくるので、迂闊な事を口には出来ない。 それよりも今は村人達から被害状況を聞き出し、グドンを殲滅する事を優先しなければならなかった。 村人達の話ではグドンの群れが来るのは、決まって夜明け。 鶏の鳴き声と共に畑を荒らして家畜を襲い、唖然とした村人達に見せつけるようにして、我が物顔で森へと帰っていくらしい。 いつも通りのペースなら、グドンの群れが襲撃に来るのは明日。 いまからなら準備をしても十分に時間があるので、グドンの群れを待ち伏せする事が出来そうである。 「とにかくグドンの群れを倒すまで、村人達には家屋に避難して貰わねばな」 クールな表情を浮かべながら、銀炎の黒獅子・アルセリアス(a61944)が村人達の説得にむかう。 しかし、村人達は度重なる襲撃でストレスが溜まっているため、『自分達も戦わせてくれ』と頭を下げてきた。 だからと言って村人達と一緒に戦えば、間違いなく犠牲者が出てしまうので、『必ずグドンを倒す』と約束し、ひとりずつ家まで送っていく。 「……やっぱり、戦わなければ生き残れないルールなのかな」 少し寂しそうな表情を浮かべながら、愛と情熱の獅子妃・メルティナ(a08360)が溜息を洩らす。 例え生態的地位でのライバルであるグドンであっても、積極的に命を奪う事は個人的な感情としては好ましくないと思っているのだが、放っておけば後々で厄介な事になるので『仕方のない事だ』と自分自身に言い聞かせる。 「村人達にとってグドンは脅威にしかならないからな。一匹残らず倒してくれ、と言う事じゃ」 改めてグドンの被害が深刻である事を実感し、言いくるめのペ天使・ヨウリ(a45541)が答えを返す。 最初の印象ではグドンのおかげで冒険者達が集まり、村が商業的に潤っているように思っていたが、実際にはそう言う事はなく早く平穏な暮らしを取り戻したいようである。
●ブルースープの沼 「もうすぐブルースープの沼ね……。うっ、酷い臭い」 ピルグリムグドンを倒すため、エンジェルの邪竜導士・ナギ(a76282)が森に入っていく。 ブルースープの沼は森の奥にあり、辺りには異様な臭いが漂っていた。 この時点でブルースープに耐性がない者は気分が悪くなってしまうのだが、ピルグリムグドンを倒すためには我慢するしかなさそうである。 「初めて嗅ぐ臭いだけど……、臭いね、コレ。こんなものを飲んでいたなんて……、村人達の味覚はどうなっていたんだろ?」 青ざめた表情を浮かべながら、宵の剣閃・カレル(a69454)がダラリと汗を流す。 既に体が拒絶反応を起こしているため、本音を言えば帰りたくて仕方がないのだが、仲間達も同じ気持ちになっているので、自分だけ帰るというわけにはいかないだろう。 だからと言ってみんなで村に帰れば何を言われるのか分からないため、『ピルグリムグドンを倒すまで我慢』とお互いを励まし合った。 「……身体には良さそうですが、押し付けは駄目ですよね」 魂の抜けた表情を浮かべながら、やわらかな陽光・アリステア(a41392)が口元を押さえる。 時間が経つにつれてだんだん臭いに慣れてきたのだが、それでも意識が飛びそうなくらい臭かった。 「……本当に効果があるのかな? 一応、飲んでも大丈夫らしいけど……、ニオイが……」 グッタリとした表情を浮かべながら、疾風の翔剣士・ポポル(a51163)がその場にペタンと座る。 ブルースープの沼に行くためには、もう少し歩かなければならないのだが、そのためには臭いを我慢しなければならないので心が折れかけているようだ。 それでも先に進まなければブルースープの沼に行く事が出来ないので、お互いを励まし合うようにして地面を踏み締めていく。 「村人達から『奇跡の泉』と呼ばれているほどですから、きっと効果がある……はずです」 コッソリと眉にツバをつけながら、涓滴岩穿・ローカル(a07080)が乾いた笑いを響かせた。 ブルースープに関しては色々と思う事はあるのだが、それよりも今はピルグリムグドンを倒す事が先決である。
●グドンの群れ 「ふわぁ〜……、グドンの襲撃に合わせるとは言え、何もこんな早く起きなくてもいいと思うんですが……」 眠そうに眼を擦りながら、アルセリアスが大きなアクビをする。 アルセリアス達はグドンの襲撃に備えて茂みに隠れているのだが、夜が明ける前から待機しているので猛烈な睡魔が襲っていた。 だが、ここで眠ってしまえばグドンの襲撃を許してしまう事になるため、恐る恐るブルースープを口に含んで気合を入れる。 その途端に例えようのない吐き気が襲い、胃袋の中が燃えるように熱くなっていく。 次の瞬間、森の中からケモノの悲鳴が聞こえ、沢山の鳥が飛び立った。 「おっ、わしの仕掛けた罠に引っ掛かったようじゃな」 含みのある笑みを浮かべ、ヨウリが遠眼鏡を覗き込む。 グドンの群れはヨウリが土塊の下僕を使って事前に仕掛けた罠に引っ掛かり、半数近くが戦意を喪失しているようである。 それでも考えが変わっていないらしく、仲間達を励まし合って村までやってきた。 「それじゃ、皆さん。グドンの退治が終わるまで、家の中に避難してくださいね……」 必死で睡魔と戦いながら、ミリーナが村人達を避難させる。 それに合わせてアルセリアスが血の覚醒を発動させ、茂みから飛び出してグドンの群れに攻撃を仕掛けていった。 そのため、グドン達の間に動揺が走り、蜘蛛の子を散らすようにして逃げていく。 「ここでグドンの群れを逃がしたら、困るのは村の人達だものね。……頑張らなきゃ」 グドンの行く手を阻むようにして陣取り、メルティナが剛鬼投げを炸裂させる。 その一撃を喰らってグドンの身体が宙を舞い、落下と同時にまるで風船が割れるようにして臓物が飛び散った。 「……情けは無用だ。そんな事をしても、こいつらが村を襲う事を止めるわけじゃないからな」 警告混じりに呟きながら、グロウスグロウがニードルスピアを放つ。 そして、グドンの群れは次第に数を減らしていき、辺りに死体の山が築かるのであった。
●ピルグリムグドン 「地の利があちらにあるのは明白です。できれば、沼から引きずり出して、平地での戦いに持ち込みたいですね。さて、と……。それじゃ、準備はいいですか?」 仲間達に確認を取りながら、ローカルが鎧聖降臨をカレルに付与する。 その合図に従って仲間達がブルースープの沼を囲み、ピルグリムグドンの攻撃に備えた。 それと同時にブルースープの沼から触手が飛び出し、あっという間に冒険者達の動きを封じ込めていく。 予想外の早さに冒険者達も動揺の色が隠せなかったが、濃厚なブルースープの臭いが辺りに充満したため、ハッとした表情を浮かべて口元を押さえる。 しかし、その程度ではブルースープの臭いは防げず、三途の川の向こうで手招きするご先祖様の姿が見えた。 「僕の修練の日々は、ピルグリムグドンを倒すため……、それだけだっ!」 自分自身に言い聞かせるようにしながら、カレルがピルグリムグドンの触手を掴む。 この時点で意識が朦朧としているため、ピルグリムグドンの触手か、ブルースープのどちらかが、毒なんじゃないかと思ったが、ここで手を離せばすべてが台無しになってしまうので、むりやり自分の気持ちを奮い立たせて気合を入れた。 「うっ……、ちょっと飲んじゃったかも……。気持ちが悪い」 青ざめた表情を浮かべながら、ポポルがスーパースポットライトを放つ。 その光に導かれるようにしてピルグリムグドンが顔を出し、冒険者達めがけてブルースープを吐きかけた。 「あなたのせいでみんなブルースープまみれじゃない!」 不機嫌な表情を浮かべながら、ナギがピルグリムグドンに暗黒縛鎖を放つ。 次の瞬間、ピルグリムグドンの動きが封じられ、触手の力が徐々に弱まっていく。 「ペケレポー!」 ブルースープの飲み過ぎで頭のネジがぽぉんと外れ、アリステアがプルースープの沼に飛び込んだ。 そのため、ブルースープが勢いよく飛び散り、濃緑の雨となって辺りに降り注ぐのであった。
●村人達 「終わった……、か」 死体の山と化したグドンを眺めながら、アルセリアスがホッとした様子で溜息を洩らす。 グドンと冒険者では明らかに戦力差があるため、全滅させる事もそれほど困難ではない それでも村人達にとっては脅威だったので、グドンが倒された事を知ると、その喜びを抑えきれず冒険者達に駆け寄ってきた。 「……悲しいルールに巻き込んでゴメンね」 申し訳なさそうな表情を浮かべ、メルティナがグドンの死体に頭を下げる。 冒険者としてグドンを倒すのは悪い事ではないのだが、罪悪感が胸の中で渦巻いていたため、茂みにコッソリと石を積んで供養した。 「これで村人達も安心できるといいのですが……」 メルティナの気持ちを察し、ミリーナがグドンの死体を片づけに行く。 グドンの死体は纏めて焼却される予定だが、このまま放っておいても、村人達に八つ当たりされるだけである。 そのため、グドンの死体を荷車に積み込み、村人達が手を出せないように行く手を阻む。 「まぁ、何とかなるじゃろ。この村にブルースープがある限り……」 色々な意味で不安な気持ちになりながら、ヨウリがジリジリと後ろに下がっていく。 どうやら村人達がお礼をしたいようなのだが、どの料理もブルースープがふんだんに使われており、人間の食べるものとは思う事が出来なかった。 「……すまん。用事を思い出した。みんな、ゆっくりな」 グドンの死体が積まれた荷車をガシィッと掴み、グロウスグロウが仲間達に対して別れを告げる。 そして、グロウスグロウは仲間達の返事を聞く事なく、荷車を引いて森の中へと姿を消した。
●ブルーな気持ち 「はぁはぁ……、随分としぶといですね。いい加減に諦めてください。……破っ!」 疲れた様子で荒く息を吐きながら、ローカルがピルグリムグドンに蛇毒刃を放つ。 その一撃を喰らってピルグリムグドンが断末魔をあげ、悔しそうに歯軋りをしてブルースープの沼に沈んでいく。 「悪い事をするとお仕置きなのよ? さようなら……ね」 ピルグリムグドンに別れを告げ、ナギがニコリと微笑んだ。 しかし、ピルグリムグドンは納得していないらしく、彼女の言葉に答えるようにして大きな泡がブクッと弾けた。 「……あれ? 何だか臭わない? これって、まさか。……うっ!」 ハッとした表情を浮かべながら、カレルが慌てた様子で口元を押さえる。 その途端にブルースープの臭いが鼻につき、腰から崩れ落ちるようにしてペタンと尻餅をつく。 ……全身に力が入らない。 それがブルースープの影響なのか分からないが、三途の川の向こう岸でグドン達まで手招きしている光景が脳裏に過る。 「やっぱり臭いって、強力すぎると辛いですね。これ、落ちるのかしら……」 使えなくなったベレー帽とマントを脱ぎ捨て、アリステアが乾いた笑いを響かせた。 だからと言ってこのままの格好で帰るわけにもいかないので、何か着替えを持ってくればよかったと心の底から後悔をする。 もちろん、いまさら落ち込んでも仕方がない事なので、村人達に頼み込んでお風呂を借りるしかなさそうだ。 「う〜……、出来ればどこかの川か池で汚れを落としたいけど、この沼を見る限り期待は出来ないよねぇ……」 魂の抜けた表情を浮かべながら、ポポルがガックリと肩を落とす。 そして、冒険者達は異様な匂いを漂わせ、トボトボと村に帰っていった。

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参加者:10人
作成日:2008/09/30
得票数:ほのぼの1
コメディ23
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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