【鉄拳調理師アンジー】フォビアと強化型ドラグナー退治



<オープニング>


●フラウウインド大陸
 フラウウインド大陸の住居遺跡に、強化型ドラグナーが確認された。
 住居遺跡は木造の建造物。
 柱や屋根は漆か何かで塗装されている。
 強化型ドラグナーは、その住居遺跡の地下部分深くに潜んでおり、住居遺跡の地下直ぐの辺りにはフォビアいう脅威まで存在している。
 フラウウインド大陸での今後の活動の為にも、これらの脅威を打ち払うことは重要な作業の一つとなりえるだろう。
 侵入者に襲いかかるフォビアを制し、地下奥深くに辿り着くこと。
 更に到達した地点で強化型ドラグナーを殲滅する為に、ドラゴンウォリアーの力を持って当たって欲しい。
 フォビアの数は不明だが、現状の同盟の冒険者であれば備えを疎かにしない限りには、連携によって討ち果たし、最奥部へと突入することも出来るだろう。
 邪悪を討ち果たす為に、是非挑んで欲しい。


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参加者
漢・アナボリック(a00210)
ローズ・マリー(a20057)
黒焔の執行者・レグルス(a20725)
灰色の岩山・ワング(a48598)
野牛・コジロー(a49459)
裏山の百鬼夜行・タクミ(a52755)
蒼鱗の雷光・ヴォルス(a65536)
月下黎明の・アオイ(a68811)
風たる風の少年・カイ(a74705)

NPC:鉄拳調理師・アンジー(a90073)



<リプレイ>

●……イキオクレるより面倒くさい
「……イキオクレるより面倒くさい」
 目前に迫るフォビア、フォビア、フォビア、フォビア、フォビア。
 それに向けて咆吼する……咆吼された台詞は取り敢えず棚の上に置くとして、狂戦士の『紅蓮の雄叫び』でおよそ半数のフォビアが動きを止める。
 だが、まだ動くフォビアの数は遺跡に突入した冒険者達の、その手足の指の数を合計したよりも遙かに多い。
 まるで、フォビアの大安売りである。
「世の中そう言う事もある」
 漢・アナボリック(a00210)は灯りに照らし出された脳みそに嘴と細い軟体系の足を何本も取り付けた様な姿のフォビアの無数の群れを見て、簡単な感想を述べるだけ。
 突進する勢いは全く緩めずに前衛に立ち、放った『紅蓮の雄叫び』を突破して来た正面のフォビアにランスに乗せた全体重と勢いを贈呈する。
「強化ドラグナーとフォビア……まあ、何らかの陰謀の匂いが感じられそうどすけど、憶測の域を出まへんしな。それに……」
 過去には一体に数十人の冒険者で挑んだものであったが……。
「今では一介のモンスター、そしてドラゴンの成りぞこない…それ程脅威ではないとはいえ、油断は禁物どすな」
 言ってのけるクイーン・マリー(a20057)に、黒焔の執行者・レグルス(a20725)は苦笑に乗せて吐き出す様な台詞を一言。
「はは、フォビア祭りってか?」
 大昔、痛い目に遭わされた記憶をたぐり寄せたレグルスだが、今はどうってことねぇと強気の発言だ。
 だが……。
「って思ったが……数多すぎだろこりゃ。今回はフォビアじゃなくてドラグナーを倒す為だし、ま程々頑張るかね」
 いきなり、気合いが下がるのが目に見えるのだが、レグルスは左後方からの声に目を丸くすることになる。
「アンジー! 今だ! ぶちかませ!」
「よっしゃ!」
 灰色の岩山・ワング(a48598)の合図と共に、冒険者一行の周辺からフォビアの半数に近い数が吹き飛ばされる。
「ちぇすとおおおお!」
 野牛・コジロー(a49459)の覇気満ちる一声と同時に、薙ぎ払われた刃が接近していたフォビアの一党を一撃で切り捨てる。
「マウサツの剣、ここに健在なり! カイ殿!?」
「あっちもこっちもフォビアだなぁ……なんかの前触れなのかしら?」
 右隣で意識を集中させていた風たる風の少年・カイ(a74705)の言葉を待つコジローと視線を同じくして、裏山の百鬼夜行・タクミ(a52755)もその背に護るカイの様子を気配で探る。
 仲間達の、比較的広い範囲の敵を一斉に迎撃する攻撃をも超えてきたフォビアも、タクミの『粘り蜘蛛糸』に絡め取られて身動きが取れなくなっていく。
「……大丈夫。他の場所でクリスタルインセクトがフォビアの群れの中心で居るみたいだったけど、攻撃されて闘ってる。……フォビアはそっちに気を取られてるみたいだね」
「慌てなはんな。後でゆっくり料理したるさかいにな」
 カイの言葉を聞いて、蒼鱗の雷光・ヴォルス(a65536)がフォビアを一瞥して告げる。
 アビリティの使用も最小限に抑えて、ドラグナーを目指すマリーも麻痺したフォビアの間を斬りつけながら、すり抜ける様にして走る。
「やはり数が多いな……だが、俺達はここを通らなければいけない」
 右翼の一陣を任されるヴォルスは忍の一字でアビリティはここまで一切用いていない。
 一度振るえば確実に敵フォビアを滅することも可能な力を有していても、その力をぶつけるべき、真の敵の為に温存しなくてはいけないと厳しく自分を律しているからだ。
「ドラグナーを倒した後……それまでの命と思え」
 敵を目の前にして、仲間達が居るからと言っても技を振るわずに温存しなければならない。怒りとも、悔しさともつかぬ想いが轟龍牙を掴む己の指先に込められて、固く手の平に突き刺さる様になっているのが判る。
「ヴォルスさん、駄目ですよ」
 戦場には似合わない、涼しい笑みで月下黎明の・アオイ(a68811)がリザードマンの武人の手の平を指して告げる。
「真面目なのは良いですけど……そこまで自分を虐めちゃ駄目ですよ。私だけじゃない、みんなも温存しながらドラグナーを目指さなくちゃ行けないんですから……」
 一瞬、アオイの身体が輝いたと思うと、全ての冒険者達の身体は癒しの輝きを受けてフォビア突破の際に受けた傷が瞬く間に消えていく。
「無難な仕事をこなすだけでは、大切なことを忘れてまいそうどすからな……それでも、珠のお肌に傷が残ったら嫌どすから、おおきに」
 左腕に握られた杖で肩を叩く様にしていたアオイを労うマリー。
「本命はまだ先、お前らに構ってられないんだ!」
「お前らの相手は後だ。失せろ!」
 はじき飛ばし、絡め取り、麻痺させて先を急ぐ中でも追いすがるフォビアは存在する。そんな存在にカイの放った『エンブレムシャワー』とワングの『流水撃』が迫るフォビアを薙ぎ払う。
「一発だけで済ませられそうだね……」
「減ってきた……か」
 冒険者達の中で、一番フォビアの展開を読めているだろうカイの呟きに、ワングも自らフォビアに振るう剣を納められる時が近いと確信する。
「……ん」
 先頭を行くアナボリックの頭が縦に動く。
 戦闘の中でワングやカイの言葉などが聞こえる筈もないのだが、確かにアオイ、タクミは戦士が頷いたのを見た気がした。
「抜けたようどすな……」
 それなら助かるなと、力を温存していたレグルスが走り抜ける後方に意識を一旦向けて、確認する。
「らしいな。フォビアが追ってこない……野生の勘って奴か? 強化型ドラグナーに、奴らも近付きたくないって言うんじゃないだろうな……」
 レグルスの疑問は、やがて遺跡を更に下った位置で確信へと変わる。
 低く、鈍い呼気の音。
 ただの呼吸の筈なのに、大地を揺るがす巨大な音。
 霊査によって視られたという、強化型ドラグナーに違いなかった。
「……呼吸が変わったか?」
 ワングが『鎧聖降臨』を施そうとしていた矢先だった。
「やばいね。変身した方が良くない?」
 疑似ドラゴン界を張り、その中でドラゴンウォリアーの力を解放する。
 冒険者達が自らに課した、ドラゴンに対抗する時だけに用いるとされた力……。
「外道……滅す前に名を聞いておきましょか」
 銀の髪をなびかせ、現臨したドラゴンウォリアーの一人……マリーは腕輪の形の得物を悠然と構えながら告げる。

『……』

 応えられる言葉はなく、ただ鎌首をもたげる様にして緩慢な動作で冒険者達に怒気をぶつける巨大な竜のなり損ない……。

『ハッ!!』

 ――咆吼。
 と、同時に冒険者達はドラゴンウォリアーに備わった力でドラグナーの攻撃を凌ぐ。
「出来損ないって割に……痛いな」
 カイが毒づく様に言うのに、アオイは仲間達を見て『ヒーリングウェーブ』でドラグナーより受けた傷を癒す。
「油断のならない相手ですから、みなさんしっかり!」
「応よ!」
 鉄拳調理師・アンジー(a90073)、カイと順番に『鎧聖降臨』を施したワングが吼える。

●疑似ドラゴン界
 疑似ドラゴン界に響き渡る咆吼。
 ドラグナーは冒険者達の完全な排除しか頭に無いのか、初めの攻撃から全力でその膂力に任せた攻撃を仕掛けて来る。
「抜かるなよアオイ、アナボリック!」
 自身の前後に展開する狂戦士と医術士に続き、最後に自身に『鎧聖降臨』を施す為に回避を続けていたレグルスが告げる。
 自身も何度か三途の川を渡りかけたのだが、アオイの回復アビリティとアナボリック、コジローの『ガッツソング』で生死の境を何とか倒れずに済んでいる。
「虚空を掴む虚無の手よ、穿て!」
 カイの声が疑似ドラゴン界に響く。
 虚無の手が強化型ドラグナーに届くかどうかという瞬間に、真正面から突撃するアナボリックの攻撃が唸りを上げる。
「……っ」
 固い手応え。
 『デストロイブレード』を使用した一撃をも、強化型ドラグナーは怒りの咆吼を上げて迎撃を繰り出してくる。
「甘いどすえ」
 『スピードラッシュ』の的中率が芳しくないのを感じて、マリーは『ミラージュアタック』に攻撃を切り替える。
 強化型ドラグナーの前身はアナボリックに任せて、左右、上下と攻撃の緩急までもを変じて挑むマリーの腕が閃く度に、軽い鎖の鳴る様な音が響く。

 ちゃり……

 ちゃり……

 死の国からの迎えの音にも似た……。
 神さえ殺す、全てを滅する必殺の静かなる音を想像させる音色が戦場に響く。
「ちぇすとぉぉっつ!」
 変幻した『鬼斬丸』を大上段に構え、『鎧砕き』で敵の鱗を砕かんと挑むコジローの斬檄が唸る。
『フゥゥ……』
「ぬ?」
 コジローの攻撃を見透かしたかの如くに、受ける構えを見せた敵にコジローの眉が跳ねる。
『フッフフフフ……ぬ?』
「……」
 必殺の一撃を止められた筈であるのに、口元には笑みさえ浮かべたコジローに強化型ドラグナーの動きが鈍る。
「我が言の葉は降魔の剣と化し……」
 朗々と、レグルスの詠唱が己の精神を研ぎ澄ませていくのが判る。
「骨の髄まで、砕きて屠れ!」
 詠唱の結実と同時に、レグルスの存在に気が付き反転した強化型ドラグナー目掛けて突き出された邪竜導士の腕より虚無の塊が出現し、掴みかかるようにして襲いかかる。
「これは俺達冒険者の使命だ」
 轟龍牙を構え、相対した敵を鋭く睨んでいたヴォルスの瞳がカッと見開かれる。
「消えてもらう……!」
 轟雷一閃、レグルスの攻撃にうめき声を上げる敵が出鱈目に巨大な尾を振るう。
 だがその一撃より早くに、ヴォルスの放つ雷の一撃が敵脳天から尾の先まで、跳ね返り、往復し、体内から焼き尽くす如くに走り抜ける。
「! 危険だ!」
 『ホーリースマッシュ』で召喚した天使を肩に、ワングが冒険者達の前に出る。
「!」
 アナボリック、ヴォルスの前に立ち塞がるワングの頭上で、天使が弾けて消し飛んだ。
「ん? あれ?」
「アンジー! 俺が守ってやる! ガンガン行け!」
 ワングの声に目を丸くして、その意図を解した武道家は振り抜かれた尾の先を掴みかかる。
「ん!」
 『ガッツソング』が高らかに謳われて、敵の一閃に傷付き、倒れていた冒険者達も身体の痛みを堪えて立ち上がる。
「助かりました……まさか、あの位置まで攻撃が届くとは……」
 アオイも続けて回復し切れていない者達の為に癒しの輝きをその身に灯し、冒険者達に刻まれた敵の攻撃の跡が瞬く間に消えていく。
「これはお返し。取っておいてくれていいよ!」
 返事を待たず、タクミが斬りつけていくのは長く伸びた首の付け根。邪悪なる言の葉を吐き、禍々しい息を吐き出す口腔より、絶叫が響くのは怒りと痛みの為なのか、見当も付けずにタクミが居た場所を引き裂く爪の軌跡を見て忍びの少年は冷や汗に似た薄ら寒さを全身に感じた。
「デカイだけに、当たると痛いぞ。気をつけろタクミ」
「うん。判ってるよ」
 ヴォルスに言われて、自分よりも近付いているじゃないかという言葉は飲み込むタクミ。
 強化型ドラグナーに対して肉薄する者達と、近距離からの攻撃を繰り出すタクミとでは、実際の所反撃のリスクは変わらなかったのだが、接近するとなると攻撃の回避には差違は無いのだが、二の足を踏んでしまう。
「それでも、さ!」
「おらよ!」
 レグルスの繰り出す『ヴォイドスクラッチ』が敵の体力を削っていく。
 徐々に余裕の消えた敵の横をすり抜けて、コジロー、アナボリックの囮となる攻撃に気を取られている隙に、タクミも首の付け根ががら空きの位置を取る。
「もらったよ!」
 攻撃に隙が出来ない様に、放つ『飛燕連撃』の効果を確かめることなくその場から離れるタクミを、追い切れない強化型ドラグナーの背に、深々と突き刺さるランスと剣。
「……」
「喰らえ!」
 突き刺さった部位で弾ける爆発と雷光。
 絶叫と同時に振り下ろされる牙が、マリーの腕の一閃で地面と思われる位置に落下していく。
「ゆっくりおやすみなさい。冬眠から目覚めずそのまま屍となるヒキガエルのように」
 崩れ落ちる様に長い首が倒れ込んでいくのを、マリーは敵を引き裂いた得物が乾いた音を手首で奏でるのを聞きながら見下ろしていた。
「マリー殿。ヒキガエルに失礼では御座らぬかな?」
 真剣な表情で刀を納めながら言うコジロー。
 マリーに対して含むものは一切無く、何やら本気で考え込んでいる武人の表情は真面目なそれで、マリーもつい自分の言葉を思い返してみて……。
「……」
 コジローの一言に、ポンと手を打って。
「失念しておりました」
 改めて敵への言葉を考えるマリー共々、コジローは苦笑しながら地上へと降りる。
「何でまたフラウウインドには強化型ドラグナーがいるんだろうな? 強化型って言うより搾取される前のドラグナーなのは判るんだが……」
 物言わぬ屍となった敵を見下ろしながら、ワングはヴォルスの顔を見る。
「さぁな……」
 フラウウインド大陸に関しての思い入れも強いヴォルスだが、真実は遙かに遠い場所に存在している様に見られることはない。
「強化ドラグナーとフォビア……未だにこの関係は謎が多いですが、倒さないと何ともなりませんね。余裕があればドラグナーにフォビアについて聞き出してみたかった所ですが……」
 アオイも問答無用で彼らを排除に掛かった敵を思い出して溜息を吐く。
「もう一仕事、残っているんですよね」
「そうだね。帰り道も居るんだよねアレ……」
 アオイと共に肩を竦めてみせるカイ。
 強化型ドラグナーの無差別の攻撃は、彼も何とか耐えたものの、帰還の際に闘うのは非常に困難に思えていたのだ。
「霊査士が『今後の活動の為にも、これらの脅威を打ち払うことは重要な作業の一つ』と言うからには、俺達はフォビアを掃討する。それだけだ」
 ヴォルスはアナボリックとコジローに帰路の陣形について再度調整を取りながら重傷者を配置交換して先を急ぐことにする。
「残ってる蜘蛛糸とナパームで蹴散らせるけど、帰りはどうする?」
 タクミが『粘り蜘蛛糸』に捕らえた敵の処分についてと付け加えると、ワングがレグルスと顔を見合わせて勿論と続ける。
「退路を確保した後、余裕があればフォビアの掃討コースだよな」
「そういうこと。周囲を警戒し、奇襲を受けぬように気を付けて、な。ここでやられたら元も子もないからな」
「うむ。まったく……」
「面倒くさいぜ」
「面倒くさい〜」
「面倒やな」
「面倒どす」
「面倒くさいな」
「面倒です」
「面倒だな」
「面倒だぜ」
「面倒でござる」
「……」
 自分の言葉を取られて頬を掻くアナボリックに、一同から笑いが起きる。
 フォビアの群れを突破し、強化型ドラグナーを討伐するという難関に挑み、無事の帰還を果たした代償として、数名が怪我を負ったのだが……破格のものだったのかも知れなかった。


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