腐り姫



<オープニング>


●腐り姫
 エルヴォークの辺境地域で、『腐り姫』と呼ばれるアンデッドが確認された。
 腐り姫はアンデッドとは思えないほど美しく、相手を魅了して幸せな気持ちにした上で命を奪っていく。
 そのため、腐り姫に襲われた死体は恍惚として表情を浮かべているが、だからと言って放っておくわけにはいかない。
 現在、腐り姫は辺境地域のある村を目指しており、村人達が不安な気持ちに駆られている。
 ちなみに腐り姫の身体には、無数の刃物が隠されているため、近づくモノを一瞬にして切り刻む。
 その事を踏まえても村人達にとっては脅威なので、彼らを説得して避難させておくといいだろう。


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参加者
月にうさぎ月夜に黒猫・タンゴ(a36142)
不浄の巫女姫・マイ(a39067)
蒼き撲殺居眠り絵師・マーモ(a68303)
プーカの忍び・アグロス(a70988)
向日葵の唄・ソロネ(a74227)
白い怪物・メルチェ(a75551)


<リプレイ>

●地獄
「この時期……、地獄の依頼は倦厭されているような気がしますが……。まあ、仕事ですから、やるべき事をやりましょうか」
 エルヴォークの辺境地域で確認されたアンデッド(腐り姫)を倒すため、陽気な惨劇立会人・メルチェ(a75551)が仲間達を連れて村に向かう。
 村では腐り姫の話題で持ちきりになっており、どこかで尾ひれがついているらしく、アンデッドであるという事が抜けていた。
 そのため、絶世の美女が村にやってくるのだと勘違いしており、野次馬根性丸出しで広場に集まっている。
「男をたぶらかしてボロボロにするそんな女性はいくらでもいますけど、文字通りボロボロにされてしまうなんて……、思いもしないわよね」
 生暖かい視線を送りながら、不浄の巫女姫・マイ(a39067)が溜息を洩らす。
 村人達は興奮した様子で村の外を眺めており、腐り姫の到着をジッと待ち続けているようだ。
「まだ、鎖……じゃなかった腐り姫が村に近寄ってきていないから気楽でいるようだけど、この状況は深刻よね。早く村人達の目を覚まさせてあげないと……」
 警戒した様子で茂みに隠れ、プーカの忍び・アグロス(a70988)が鎧進化を発動させる。
 次の瞬間、旅人の服がドレスに変化し、アグロスが金髪のカツラとヴェールを身につけた。
「死んでしまった美女よりも、生きている美女の方が魅力的じゃありません? 貴方達も、殺されるよりは癒されたいでしょう?」
 広場に集まった村人達に声をかけ、マイがアグロスに合図を送る。
 それに合わせてアグロスが茂みから飛び出し、村人達に対して愛嬌を振り撒いた。
「みなさぁん、お待たせしました。アグちゃんでぇ〜す。みなさぁん、一緒に村のお外へでまして、いい事をしましょうね」
 村人達に対して色気を振り撒きながら、アグロスが半ばヤケになって投げキッスを飛ばす。
 しかし、村人達の興味は腐り姫に向けられているらしく、アグロスに興味を持ったのはほんの一握りであった。

●絶世の美女
「地獄のきれいなお姫様……かあ。地獄ってどれだけ美しく見えるものでも、危険で恐ろしいものばかりで好きになれませんの」
 遠眼鏡を覗き込みながら、向日葵の唄・ソロネ(a74227)が口を開く。
 腐り姫はその美貌を武器にして村々を回っており、多くの犠牲者を出しているのだが、相手を魅了する力があるためか、まったくと言っていいほど悪い噂が流れていない。
 そのため、村中が歓迎ムードに包まれており、腐り姫がアンデッドである事さえ、決して認めようとはしなかった。
「でも、どれほどの美女か、気になるところにゃね……。ボクも一応『女の子』だし……。とは言え、どれだけ美しくても、もう死んだ身……。村人達の為にも静かに眠ってもらうにゃ」
 見晴らしのいい高台まで移動し、月にうさぎ月夜に黒猫・タンゴ(a36142)が遠眼鏡を覗き込む。
 それと同時に村人達の歓声が上がり、遠くの方で腐り姫がニコリと笑う。
 腐り姫は露出度の高い格好をしており、腐った部分を隠すようにして布を覆っている。
 そのせいで冒険者達がいくら警告しても、村人達は腐り姫がアンデッドである事を認めようとはしなかった。
「とにかく腐り姫を何と化した方がいいんじゃないか? このままだと村人達が危ないぞ」
 警告混じりに呟きながら、殺戮居眠り絵師・マーモ(a68303)が腐り姫を睨む。
 腐り姫は妖艶な笑みを浮かべており、ゆっくりと村に近づいている。
 そのたび、村人達のテンションが上がり、冒険者達の言葉すら届かなくなった。

●村人達
「……どうして分かってくれないの。近づけば切り刻まれるだけなのに……」
 信じられない様子で村人達を見つめ、マイがガックリと肩を落とす。
 村人達の瞳には腐り姫しか映っておらず、冒険者達がいる事すら忘れかけている。
 それでも冒険者達は諦める事なく説得を続けたが、村人達の気持ちが変わる事はなかった。
「既に魅了されているのかも知れませんね」
 金髪のカツラを脱ぎ捨て、アグロスが深い溜息を洩らす。
 そうしている間に腐り姫が村の傍まで来たため、仲間達が我慢しきれず飛び出していく。
 その事によって村人達から非難の声が上がっており、まるで冒険者達の方が悪者のようである。
 だからと言ってここで攻撃の手を止めれば、腐り姫の刃が村人達に向けられる可能性があるため、覚悟を決めた様子で攻撃を仕掛けていった。
「皆さん、落ち着いてください。腐り姫はアンデッドです。彼女のせいでいくつもの村が被害に遭っているのですよ?」
 真剣な表情を浮かべながら、メルチェが村人達に語りかけていく。
 だが、村人達はまったく冒険者達の事を信じておらず、腐り姫を独占するために嘘をついていると思い込んでいる。
 もちろん、メルチェ達はそんな事など考えていなかったため、何とか誤解を解こうとしたのだが、余計に怪しまれてしまったので半ば泥沼状態になっていた。
「……信じてください。あの女性はアンデッドです。早くここから避難しないと、あなた達の命もありませんよ?」
 鎧進化でドレスを甲冑に変化させ、アグロスが村の入り口に陣取った。
 しかし、村人達の興奮がピークに達しているため、いまにもアグロスを押し倒しそうな勢いである。
「どうかそんな無体な事をおっしゃらずに……。それとも、私のような小娘の言う事は信用に値しませんか……?」
 瞳をウルウルとさせながら、メルチェが上目遣いで訴えかけた。
 そのため、村人達の一部が胸をキュンとさせたが、『だ、騙されないぞ』と叫んでメルチェ達を批難する。
「……やっぱり実力行使しかないようね」
 村人達に対して視線を送り、マイが疲れた様子で溜息をつく。
 それだけ腐り姫が魅力的なのかも知れないが、だからといって村人達を見捨てるわけにはいかなかった。

●腐り姫
「ボクが男の子だったら魅了されたかも知しれないけど、残念にゃね」
 シャドウロックで守りを固め、タンゴが一気に間合いを詰めていく。
 だが、鎖姫は素早い身のこなしで飛び上がり、タンゴ達を見つめてクスクスと笑う。
 そのたび甘い香のような匂いが鼻につき、頭の中がぼーっとし始めた。
 そのせいで何も考える事が出来ず、身体から力が抜けていく。
「こ、これが魅了の力……」
 唇をグッと噛みしめながら、ソロネが気高き銀狼を放つ。
 その一撃を喰らって鎖姫がバランスを崩し、胸元を隠していた布切れが宙を舞う。
 次の瞬間、村人達の間から悲鳴が上がり、蜘蛛の子を散らすようにして逃げていく。
 どうやら腐り姫の胸元からあばら骨が見えていたため、ようやく彼女がアンデッドである事に気づき、魅了の呪縛から解放されたようである。
 とは言え、未だに魅了されている村人達がいるのも事実なので、油断する事が出来ない状況である事には変わりない。
「は、早く腐り姫を遠ざけろ!」
 村人達の声に反応して腐り姫が興奮し始めたため、マーモがナパームアローを放って足止めをする。
 しかし、腐り姫は身につけていた布切れを抜き捨て身軽になり、全身に刃物を纏って体当たりを仕掛けてきた。
「き、切り刻まれるのはゴメンにゃ」
 大粒の涙を浮かべながら、タンゴが粘り蜘蛛糸を放つ。
 それでも腐り姫を足止めする事は出来ず、ボンヤリと恋人の姿が脳裏に浮かぶ。
「誰ひとりとして、傷つける事は許しません」
 すぐさまタンゴに飛びつき、ソロネが腐り姫の攻撃を避ける。
 そのため、腐り姫がチィッと舌打ちし、冒険者達に対して殺意を剥き出しにするのであった。

●避難活動
「もう、あまり時間がありません、命が惜しいと思うのなら、私達の指示に従ってください」
 村人達の行く手を阻みながら、アグロスが静謐の祈りを発動させる。
 だが、村人達は冷静な判断をする事が出来ず、半ばパニックに陥っているようだ。
 そのため、すぐさま粘り蜘蛛糸を放ち、村人の動きを封じ込めていく。
「このような事を私ごときが言うのは罪死に値しますが、それでも忌憚無く申し上げますと……、いい加減にしろ」
 村人達を叱りつけながら、メルチェが粘り蜘蛛糸を放つ。
 その一撃を喰らって村人が尻餅をつき、冒険者達に対して罵声を浴びせていく。
 それでも村人達の怒りが収まらなかったため、そのまま近くの納屋に押し込めた。
「本当にどうしようもない人達ね」
 生暖かい視線を村人達に送り、マイが眠りの歌を歌い出す。
 彼女の歌声によって村人達が眠りにつき、スヤスヤと寝息を立て始める。
 その間にマイが納屋の扉にシャドウロックを仕掛け、村人達が外に出ないように対策を施した。
「美女、美女と浮かれていると、こういうオチが迎えに来るのです」
 村人達を叱りつけながら、アグロスが腐り姫に視線を送る。
 腐り姫は冒険者達との戦闘で我を失っており、殺人マシーンと化していた。
 そのため、村人達を喰らう事よりも、冒険者達を仕留める事に力を入れている。
「今の貴女……、とても醜いわよ。まぁ、私達の言葉になんて聞こえていないと思うけど……」
 腐り姫に対して冷たい視線を送り、マイが吐き捨てるようにして呟いた。
 もちろん、その言葉が腐り姫に届いている事はないが、彼女の素直な気持ちであった事は間違いない。
「それじゃ、私達がやるべき事を、やっておきましょうか」
 仲間達に合図を送りながら、メルチェが納屋のまわりを囲む。
 そして、冒険者達は腐り姫が倒されるまで、村人達が避難した納屋を守り続けるのであった。

●腐った死体
「綺麗……、なのか?」
 いまいち納得する事が出来ず、マーモが不思議そうに首を傾げる。
 腐り姫の身体から甘い香の匂いがしなくなったため、魅力のカケラすら感じていない。
 そのため、村人達がどうして夢中になっているのか、最後まで理解する事が出来なかった。
「いつまで見とれてま〜す〜の〜!」
 マーモにツッコミを入れながら、ソロネが腰に手を当てる。
 しかし、マーモは魅了されていたわけではないので、『いや、何でもない』と答えて腐り姫を睨む。
 次の瞬間、唸り姫が唸り声をあげ、冒険者達に刃物を飛ばす。
「例え美しくても死人にゃ。生より美しいものはないにゃよ」
 グランスティードに飛び乗り、タンゴが腐り姫の飛ばした刃物を避けていく。
 それに合わせてマーモが腐り姫の背後に回り、シャドウスラッシュを叩き込む。
「お休みにゃ」
 一気に間合いを詰めながら、タンゴが腐り姫の身体を鋼糸で切り裂いた。
 それと同時に腐り姫が断末魔をあげ、恨めしそうな表情を浮かべて崩れ落ちていく。
「やっぱり……、やらなきゃ駄目ですよね? もう二度と動かないようにバラバラに……ううっ」
 グロテスクな映像が脳裏に過り、ソロネが乾いた笑いを響かせる。
 そして、仲間達は小さくコクンと頷き、鎖姫の身体をバラバラに切り刻むのであった。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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