<リプレイ>
● 「急げ急げ急げー……!」 狂華水月・マコト(a70808)は急いでいた。ふわもこ属性の高いマコトにとって、ふわもこなわんこ達の危機は決して見過ごせる物ではない。 どこというのは憚られるまな板な部位を上下させ、眼前に広がる景色を瞬時に背後に追いやりながら駆け抜けていく。そのまな板には見た目に等しいくらいの微かな不安と絶対に助け出そうという確固たる信念が篭っていた。 「犬は好きだし、やはり犬は助けてあげたいな」 恋路十六夜・ヤチヨ(a41187)も胸の内から湧き出る不安を振り切るかのように走る。 その胸中では自身の飼っている犬とグドンに浚われたわんこが重なっていた。 「洞窟に向かってしまったわんこは、絶対保護したいです」 隣を走る囀り風見烏・サガン(a18767)もわんこを助けたい気持ちは同じだった。 「できれば連れ去られた片割れも助けたいところだけど……まだ生きているかどうか……でも、どうか……無事でいてくれ」 「みすみす見殺しにはできませんからね。かわいいわんこなら尚更」 そんなヤチヨの不安を吹き飛ばすようにサガンは優しく微笑みかける。考え方が後ろ向きになりがちなヤチヨにとって、自由奔放な根無し草のサガンはこういうとき不安を吹き飛ばしてくれる大切な存在だった。 「双子の犬さん、無事に安全な場所へ連れ帰ってあげたいです」 凍魂誓護・レンフェール(a71055)は動物知識と追跡の趣味を生かしてわんこが移動した痕跡を探しながら洞窟へと急いでいた。グランスティードで先行することも考えていたが、早駆けをしても森の中、それも獣道に等しい道では速度が出そうにないこと。痕跡を見逃す可能性や孤立してしまう危険性があることから断念していた。 「わんこ……と食料、無事に取り戻すぞ!」 そう意気込みながらマコトはグドン達の痕跡を追って道なき道を進む。 倉庫から持ち出した荷物があるため、グドン達は分かりやすい痕跡をいくつか残していた。 周囲の木々を傷つけていたり、時には途中で腹が減ったためか、食料を食べ散らかしていたりもする。 「それにしてもグドンの群れ……皆様の備蓄を持って行くなど言語道断です……」 散らかった食料の中にわんこが含まれていないことに安堵しながらも、レンフェールは食料を奪ったグドンに対する静かな怒りを込めて呟いた。 「グドンも倒して村の人達の食料も取り戻すわ!」 ぐぐっと拳を握って天真爛漫な牙狩人・アーリン(a76581)は真っ直ぐに洞窟のある……と思われる方向を見据えた。 「犬は保護、グドンとピルグリムグドンは容赦なく倒しましょうね」 笑顔でそう言ったレンフェールの目は笑っていなかった。
● 「いい加減、ピルグリムグドンどもの問題も始末をつけたいもんだ」 途中で見かけた動物達から魅了の歌で情報収集をしていた邪風の黒騎士・ツキト(a02530)は溜息混じりに呟いた。 グドンの群れについて尋ねると、どうやら動物達も被害にあっているらしく、知っていることをすぐに教えてくれた。 今は充分な食料を確保したグドン達は比較的大人しいようだが、だからといって周囲をうろつかれて落ち着かないのは動物達も同じらしい。グドンの被害はヒトだけというわけではない。特に最近は人里離れた場所に逃げ出したグドンが現れるため、動物達も困っているようだ。 小さな子犬を見かけなかったかと聞けば、小鳥達が少し前に見かけたという話が聞き出せた。どうやら臭いをかぎながらゆっくり進んでいるらしく、洞窟に辿り着くにはまだ時間がかかりそうだった。 今のところわんこの周辺にグドンはいないとのことで、速やかな救助が必要なわけでもなさそうだった。だが、だからといって居場所の分かったわんこを放置するわけにもいかない。グドンが近くにいないといってもわんこはグドンの棲家の洞窟に向かっているし、グドン達も洞窟の周辺の警戒くらいは行っている。放っておけばグドンと出くわすのも時間の問題だろう。 ツキトはグランスティードの背に笑顔を操る馨しき女王薔薇・スノゥ(a32808)を乗せ、わんこを見かけたという方向へと駆け出した。 「わんこちゃん、必ず助けてあげるからね」 双子のわんこの片割れの救助に向かった二人を見送り、アーリンはまだ見ぬわんこに語りかけると、洞窟へと急いだ。
● 動物達から聞きだした場所に着いたツキトが再度動物達から聞きだした情報によれば、すぐ近くにわんこがいるはずなのだが……それらしい姿は見えない。 ツキトは『希望のとまり木特製くっきー』や『鍛練のベーコン』でわんこを誘い出そうと試みるが、森の動物や薄汚れた黒い子犬くらいしか集まっては来なかった。 「小さな犬の子供を見なかったか?」 魅了の歌で薄汚れた黒い子犬に問いかけるが、他の子犬はこの辺りには来ていないという。 「双子が引き裂かれるのは非常につらい話。普通の兄弟以上の絆を、無意識のうちに持ち合わせているものよ……私と実家のお姉ちゃんがそうであるように」 誰に言うわけでもなく、スノゥは呟いた。早く助けてあげなければ、どちらか一方だけではなく両方が不幸なことになりかねない。そんな焦りが少しだけ表情にも出ていた。 「お姉ちゃん達も双子なの?」 薄汚れた黒い子犬が少し驚いたように言った言葉に、ツキトとスノゥの方が驚いた。 黒くて毛並みも身体に張り付くようにぺったりとしているこのわんこの姿は事前に聞いていた白くてふわふわというイメージとは程遠い。 ぽふぽふと黒いわんこの身体をはたくと毛に絡み着いた汚れが少し落ち、その毛並みも、ちょっぴりふわふわとし始めた。 どうやら山の中をあちこち走り回っているうちに泥を浴びたりして汚れてしまっていたようだ。 「片割れも、すぐに助けるから大人しくしていろ」 ツキトは容赦なく『ロープ』をわんこの胴体に撒きつけ、綱の代わりにしてからスノゥに手渡す。 「私は帰る家が分からないから姉に会うことはできない。でも、あなたは直に会えるわよ」 スノゥはわんこを受け取り、優しく微笑んだ。
● 「気をつけたまえ。我が夜に舞う羽は、敵にのみ厳しいぞ」 月飲み・グランスルグ(a26865)がその両腕を広げ、粘り蜘蛛糸を放つ。その糸が向かってこようとしていたグドン達の動きを止め、纏め上げた。 動きが止まったグドン達をレンフェールは長剣『Helligkeit eines Sternes』で次々と斬りつけていく。 グドン達は必死にもがき、そのうちの三匹ほどが束縛を逃れ、お返しとばかりにグランスルグに向かったが……。 「全員、動くなー!」 その攻撃が届く直前、周囲に響いたマコトの紅蓮の雄叫びによってグドン達の足が再び止まる。 「急いでいるのでな、容赦はせんぞ」 「今日の天気は、晴れ時々矢ね☆」 さらにヤチヨのエンブレムシャワーとアーリンのジャスティスレインがグドンに降り注ぎ、しぶとく生き残ったグドンはグランスルグや黒炎覚醒したサガンが確実に仕留めた。 ツキトやスノゥと分かれた後、出くわしたグドン達だが、冒険者達の猛攻の前に成す術もなく殲滅されていた。 双子のわんこの片割れを見つけることが出来た冒険者達に行軍速度を落とす必要は最早ない。 一行は猛スピードで洞窟に向かい、入口付近を警戒するグドン達を発見する。 グランスルグはわんこが先に来ていないか周囲を調べたが、特にそのような痕跡は見つからない。ツキトやスノゥが無事保護できたのか、単純にまだ近くに来ていないだけなのかはわからないが、とりあえずはグドン達に見つかっていないということだろう。 先ほど同様にグランスルグとマコトがグドン達の足を止め、レンフェールやヤチヨの攻撃でグドン達をまとめて仕留めていく。逃げ出そうとしたグドンはアーリンの影縫いの矢に射抜かれ、サガンの炎に焼かれた。 外で騒ぎがあったというのにピルグリムグドンは出てくる様子はない。そんなに戦利品の物色に熱中しているのだろうか。 「隠れてないで出て来い、臆病者っ」 洞窟に向けて投げかけたマコトの挑発に触発されたのか、それとも重たい腰をようやく上げただけなのか、洞窟の奥からピルグリムグドンが姿を現した。 「グオオオォォォッ!!」 仲間達の惨状を目の当たりにした怒りか、挑発された怒りか……ピルグリムグドンの雄叫びが山に響く渡る。 そのまま一番近くにいたマコトにピルグリムグドンは向かい……その背に受けた一撃に混乱する。 いつの間にか気配を隠し、背後を取っていたグランスルグのシャドウスラッシュはその力を容赦なく発揮していた。 困惑するピルグリムグドンにレンフェールの兜割りが容赦なく叩き込まれる。 アーリンの影縫いの矢がピルグリムグドンの動きを止め、サガンのブラックフレイムとヤチヨの緑の業火がピルグリムグドンを包みこむ。 そんな一方的な戦いの中、背後から残っていたグドン達が押し寄せてきた。 「この場で一網打尽にし、討伐を完了させます!」 そんなグドンの行動もサガンにとっては予想の範疇。冒険者達は慌てることなく増援のグドンにも向き合う。 挟撃を受ける形になったが、所詮はグドンの群れ。多少の攻撃こそ受けたが、そのほとんどはレンフェールの鎧聖降臨の力に阻まれ、サガンのヒーリングウェーブで即座に治癒される。 さらにわんこを救助したツキト達が加わり、グドン達は逃げることも出来ずに全滅した。
● 「確か箱の中で寝てたんだよな……わんこ、生きてる……?」 いくらか破壊された箱の残骸の向こうに見える適当に積まれた箱を見て、マコトは少し不安になりながらも近づいた。 「リア〜、ロン〜」 「わんっ」 予め村人から聞き出していたわんこの名前を呼ぶと、背後から元気な声が聞こえた。 スノゥ達が保護したわんこの方が返事をしたのだ。ちなみにこっちがロンらしい。 「近くにいるといいんだけど……」 アーリンはそう言いながら箱の山を崩さないように慎重に動かしていく。奥のほうの箱にいた場合は運が悪ければ崩れた箱の下敷きになってしまう危険すらある。 「エルフの夜目が使えないじゃろうか?」 ふと思いついたヤチヨの一言で明かりが消され、ヤチヨとアーリンの二人の目に別の感覚が宿る。 二人の目にはスノゥの抱えているわんことよく似た大きさの姿が捉えられた。 その距離は思っていたほど遠くはない。 「無事でよかった!」 それを聞いたマコトは瞳を輝かせて心底喜んだ。 「よぉし、頑張るぞっ」 アーリンは気合を入れなおし、慎重にその周囲の箱を動かしていく。 詳細な場所がわかるのはアーリンとヤチヨだけなので二人で周囲の箱を取り除き、残った面々はその箱を外に運び出していく。 「可愛いのう……でも連れて帰るわけにはいかんからな」 ようやく見つけ出したわんこ『リア』は箱の中ですやすやと寝息を立てていた。ヤチヨは思わずお持ち帰りしたい衝動に駆られたが、帰りを待っている飼い犬の『チヨ』のこともあるのでそれは出来ない。……いなかったら持ち帰ってしまったかもしれないが。 「ふわふわの毛並み、さわりたかったんだ〜♪」 寝息を立てて眠る『リア』にマコトが触れると綿毛のような柔らかい毛並みがふわっとその手を包んだ。それはこれ以上触ると壊れてしまうのではないかと思ってしまうくらい柔らかく、暖かかった。 「あとはこれと犬を安全な場所まで送り届ければ終わりですね」 レンフェールは無意味なまでに大量な箱を見て言った。グドン三十匹が運んだそれらを今度は冒険者達八人で運ばなければいけないことを思うと少し現実逃避したくもなる。 「きちんと村の人達に返してあげないとね」 そして、アーリン達はちょっぴり落ち込みそうになる気持ちを振り切って村までわんこ達と戯れながら荷物を運ぶのだった。

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参加者:8人
作成日:2008/11/18
得票数:ダーク1
ほのぼの11
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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