【我楽多草紙】輪を以て貴しと為す



<オープニング>


 何処より来たのか何処へ往くのか、奇妙奇天烈摩訶不思議、鬼面人を威すの類のものが、あるいは鉄、あるいは石、血肉もたぬ身に邪気宿し、暴威ふるうも儘なる当節、これを許さぬ慷慨の士を、求める声は地に満つる。
 何処より来たのか何処へ往くのか、これぞ我楽多の乱痴気噺、この度冒険者、陣に臨むは六度目。此度も勝利の栄光を手に入れるのか、それとも一敗地にまみれるのか!?

●秋到来、セイレーンの重騎士・ユウキ
 夕暮れ早まり風は冷え、稲穂みのりゆく秋の足音、日、一日と近づいてくる心持ち。
 冒険者の酒場、片隅のテーブルに一人、セイレーンの重騎士・ユウキ(a90384)がついている。思索に耽るような表情で、カップを両手に抱いている。湯気と香気が鼻をくすぐる。てのひらはじわりと温かい。
「ユウキ、そこにいたのか」
 顔をあげるとそこには、葵桂の霊査士・アイ(a90289)の姿があった。我楽多モンスター退治の依頼を持ってきたのだという。
 人が集まるまで待つことにして、アイは少年の前に座った。
「いよいよ本格的に秋だな。もう全身鎧も暑くなかろう」
「そうですね」
 ユウキは軽くまばたきをする。
「鎧の季節というやつかな」
「そう言われればそうかもしれません」
 以前ほどガチガチではないとはいえ、ただ言われたことを繰り返すだけで、あいかわらず会話を弾ませるのが下手なユウキなのだ。アイは話題に困って、
「ところでそのカップ……飲まないのか? ふと物思いに沈んでしまい、口にするのを忘れているとか?」
 すると少女のように長い睫毛を伏せ、ユウキは音もなく首を振った。
「……サイダーを頼んだらホットで出てきたので、困っているだけです」
「ぎゃふん」
「ぎゃふん、て」

●輪を以て貴しと為す
「よし……5番、行くぞ!」
 真剣な表情のアイ、これを見守る冒険者たちも固唾をのむ。
 アイが手にしているのは藁を編んだ輪だ。視線の先は、木製の柱を九本も立てた台。柱はしっかりと固定されており、台は浅く傾斜してこちらに向けられている。それぞれの柱の根元には、左上から順に「1」から「9」の数字が書かれていた。アイが宣言した「5」は中央のものだ。
「ていっ!」
 投げる!
 飛ぶ!
 輪は、柱の一つにかすったがそれだけ。外れて床に落ちた。
「上手くいかんなあ」
 アイは苦笑いした。どうやら今回は、輪投げに関連する我楽多モンスターが出現したようである。
「怪物はこの輪投げをモチーフにした姿なのだ。といっても輪のほうではなく、あの柱つき台に似ているぞ」
 九つの柱を立て、その柱ごと斜めに傾斜した台、つまり輪投げの標的ないし得点台型のモンスターということだ。乾いた大地に出現する。
「サイズは大きい。これまでの我楽多モンスターで最大だろう。すべてが硬く重量感があり、巨体を引きずるようにして移動するのだ。しかしその分、動作は緩慢かと思われる」
 このドデカ輪投げ台の攻撃方法も輪投げである。
「台でいうところの『2』『4』『6』『8』の柱は、すべて柱に見せかけた腕だ。柔軟性があり伸縮にも富んでいる。腕を空中で回転させると、その回転の軌跡にあわせて輝く輪が生まれるという。これを投げつけて攻撃してくるのだ。
 エネルギー体だが輪は金属のように硬く、ぶつけられれば少なくないダメージを受けよう。しかしそれ以上に恐ろしいのは輪をはめられてしまうことで、そうなると青い電撃が流れより大きな被害を受けるばかりか麻痺してしまうのだ。輪は三十秒ほど地面にとどまると消えるが、麻痺状態はそのまま続くらしいので、バッドステータス対策は怠らないでおきたい」
 ただし腕は四本同時に動かすことができない。攻撃したい場所のものだけが動いて攻撃してくる。つまり一回の攻撃で襲えるのは一人だけであり、四人が同時に狙われたりすることはないわけだ。
「怪物は輪を投げる寸前、『もあー!』とよく分からない声で鳴く。『もあー!』が来たら要注意ということだな」
「もわー、ですか?」
 ユウキが問うと、
「いや、もあー! だ」
 アイがすかさず返す。その指摘は厳しい。
「敵本体は防御に優れ、抵抗力も高いだろう。そう簡単には拘束できない相手だ。しかし、落とした輪を奪って投げ返し、『2』『4』『6』『8』以外の柱にはめれば、大ダメージを与えられそうだな。『2』『4』『6』『8』にはめた場合はその腕が落ちるかもしれない」
 まさしく輪投げ合戦になりそうなのだ。そこでユウキも練習すべく藁の輪を手にする。
「じゃあ、11番行きます!」
「そんな番号はないわー!」
 プルエールのあほがうつったんではなかろうな……と、アイは少し不安になった。

 かくて始まる六回目の「我楽多草紙」、輪投げ台が輪を投げてくるとはこれ如何に? 
 さあこの敵、「和」ならぬ「輪」を以て貴しとなす我楽多怪物、討伐して世に幸せの輪をもたらさん。


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参加者
剣刀士・ガイゼ(a19379)
闇騎士・アドミニ(a27994)
蒼銀の癒手・ジョゼフィーナ(a35028)
浮世に遊ぶ麗しの・ミギワ(a36350)
煌めきを追う者・ネーヴェ(a40386)
閃花一竟・サガ(a41503)
危険な恋のカリスマ・ソニア(a60222)
水琴の波紋・アルーン(a66163)
合金紳士・アロイ(a68853)
魔星猟医・ティルフィア(a69190)
NPC:セイレーンの重騎士・ユウキ(a90384)



<リプレイ>

●もあー! 
 聞きしに勝るその叫び声! 朗々響く「もあー!」につづけ、ずんと輪っかが落ちてくる。
 轟金紳士・アロイ(a68853)は盾で弾いた。勢いは強く、全身甲冑の身とて傾いでしまう。
「今回もまたいよいよ面妖、巨大な敵! まさにイメージは動く要塞と言ったところか」
 されど敵、巨きければ燃えあがるのが冒険者、アロイは闘志とともに土台へ突撃する。全身鋼色の召喚獣が、白銀の光反射させ従った。
 輪投げ台の登場である。重い身を引きずり土埃立て、地響きとともにやってきた。天つく高さの九本柱のうち、ひゅんひゅんうねる四本は腕、この怪物が「もあー!」なんて叫び攻めてくるのだからたまらない!
 魔星猟医・ティルフィア(a69190)は目を丸くした。
「一体どういった経緯でここまで巨大になるのか気になります……」
 それほどに巨大なのである。これまで登場したすべての我楽多モンスターの合計より重厚かもしれない。
 水琴の波紋・アルーン(a66163)は、対我楽多戦初参戦、いざ決戦のその前に、セイレーンの重騎士・ユウキ(a90384)に会釈した。
「よろしゅう頼むのぅ」
 完爾と微笑むのもなぜかユウキは、寝入りばなを起こされたネコのごとく「びくっ」という擬音の似合う反応を見せ、
「は、はい……」
 そそくさと答えるや、全身甲冑のヘルムを被り先行してしまった。
 そんなやりとりを見つつアドミニは思う。
(「女性が苦手な所、あまり改善していないようですね……でも、アルーンさんって……」)
 そう、アルーンは睫毛長く容貌美麗にして華奢――とはいえ男性だったりする。アルーンは嚆矢がわりに影縫いの矢を放つも、期待した効果は見られなかった。
 本チームにおける元祖女性風男性、こと、浮世に遊ぶ麗しの・ミギワ(a36350)も戦に臨む。
「祭りで遊ぶ輪投げなれば、輪をはめたら景品が貰えるのが定石。さてこの決戦、何をいただけるんでありんしょうねぇ?」
 剣刀士・ガイゼ(a19379)が呼応する。
「景品は『勝利』というのは? 今回もとっとと獲って帰れたらいいんだが」
 ミギワはころころと笑って、
「うまいことを仰る」
「なに、戯れに過ぎんさ」
 だがひとたび太刀、すらり鞘より抜きはなてば、敵に戯れは無い二人だ。
「さてユウキ、ガイゼ、小さい数字から輪をはめていってくんなんし」
「任せろ。……よし」
 ガイゼは輪を招くように敵を攻撃する。ユウキも負けじと鎧の防護力を高めた。
 煌めきを追う者・ネーヴェ(a40386)は彼らよりさらに前に出て直接攻撃に出ている。
「相変わらず重騎士が多いな……まぁ私もその一人なんだが」
 アロイにネーヴェ自身、それに後方を守る未成熟な盾・アドミニ(a27994)、さらにユウキもおり、確かにヘヴィーメタリックなラインナップではある。そこで彼女は本日、装甲を軽くし髪も括ってポニーテールとし、軽戦士風の格好に身を置いてみた。若干心許ないではあるが、その分ステップが取りやすい。
 閃花一竟・サガ(a41503)は側面から攻撃している。ウェポン・オーバードライブの状態から、デュエルアタックで攻めると面白いように斬撃が入った。
「効いているのかいないのか……手応えはあるので、それを信じるしかなさそうですね」
 サガの白い上着が風にはためく。少々風が出てきたのだ。火照った肌に心地よい。
 そんな前衛メンバーを支えるのは蒼銀の癒手・ジョゼフィーナ(a35028)である。敵は強大、かくなれば回復役の重要性はいや増す。
(「杖のカスタマイズもしましたし、今回も頑張って参ることに致しましょうか」)
 銀の杖握りしめ誓いを新たにするジョゼフィーナだ。ひやりとした杖の握りは、力込めるたびに意志の力を高めるように思えた。彼女は護りの天使達を召喚する。
 ジョゼフィーナを守るべく、後衛に控えるはアドミニだ。敵が大きいだけあって、ここにも余裕で攻撃は届くだろう。彼女と自分に鎧聖降臨をかけて備える。本日、チームの護りの要となるのはアドミニと断言できた。
 戦場のただ中を、風の旅人・ソニア(a60222)は栗鼠のように縫っていた。
「夜店の輪投げって土台まで輪の中に入らないとNGなんだよねー……ひょっとして何か足場があれば回避可能かも?」
 とはいえその厳密なルール(?)が適用されるという保証はないし、失敗しては元も子もない。やはりその策はとらないでおく。
(「そのかわり……別の奇策があるもんね」)
 ソニアは含み笑いする。そのチャンス、訪れるときを待つとしよう!
 
●もあー! 輪投げ合戦
「見事当ててみるが良ござんす。もっともイリュージョン中クロークつき翔剣士をナメてもらっては困るでありんすが」
 という挑発が効いたのか偶然か、輪の一つが怒濤の勢いでミギワの頭上を掠めた。輪は地面に落ちバウンドする。落ちた輪めがけてユウキが走った。
「えいっ!」
 剣盾捨てて輪を持ち上げて、気合い込め投げるユウキだが、なんというノーコン、輪は敵を遥かに超え反対側に落ちたのだ。
「……ユキ、味方に誤射しなかっただけましか……」
 ネーヴェは頭を掻いた。
 つづくチャンスは間もなく訪れた。
「もあー!」
 と投擲された輪が、アロイの身をしたたかに打ち、跳ねてサガの足元に落ちたのである。サガはこれを取ると2番に狙いを付けた。
「サガさんっ……」
 期待の眼差しでユウキが見ている。
(「そんな目で見られると……外しにくいですね」)
 軽いプレッシャーではあるが、明鏡止水の心境でサガは標的に集中した。
 片手で外回り、遠心力をつけるように投ず。
 輪は回転しながら飛び、見事2番に落ちた!
「さすがです!」
 いまやユウキは、きらきらした憧憬の眼差しだ。いささか照れくさいサガであった。
「やるな」
 ガイゼも称賛を送った。なるほど確かに、怪物は激しく痙攣してガタガタ揺れたのち、2番にあたる支柱をだらりと下げたのである。かの敵が初めて見せた動揺だった。
 だが見せたダメージもそこまで、すぐさま輪投げ台は前進を開始し、食いとめるべく挑んだネーヴェを押し下げた。冒険者前衛陣の攻撃も意に介せず、またもや
「もあー!」
 6番の腕から輪を飛ばす。狙うは……飛燕連撃で攻めていたソニア! とっさに避けようとするも間に合わず、輪にはめられてしまう。
「あいたたた! イタイ、痛いって!」
 ソニアの喉はそこまでで塞がる。青白い電光に包まれ麻痺してしまったのだ。
「いけません……っ!」
 ティルフィアが駆けつけ剥がそうとするが、そんなティルフィア自身にも雷光が伝播する。
 アロイは激昂し、ハルバードを台座に突き入れる!
「騎士道にもとる敵! 勝負なら我ら重騎士隊とするがいい!」
 ダメージこそ負ったがまだまだこれからのアロイだ。刃は台座を大きく削った。
 アルーンは水晶の弓をとり引き絞る。
「その攻撃、止めてみせようぞ」
 切れ長の瞳が宝石のような光を零す。アルーンの視線はぴたりと柱の一本に止まった。
「別に本体に当てなくても効果はあるのじゃろうが……5番を狙いたくなるのは人のサガかのぅ?」
「え?」
 と問いかけるような声が、すぐそばのサガから聞こえた。
「あ、お主のことではないからの?」
 軽く補足してアルーン、呼吸を止めて指を放した。
 それは雷光の矢、ふつと5番を射貫く。
 これと同時、ソニアの意識が飛びそうになる寸前、輪からの電撃はすっと消えたのである。
「5番にも意味があったようじゃのう。攻撃の中枢神経、ということかの」
 女人以上に嫣然と、アルーンは唇の端に微笑みをのぞかせた。
「すぐに癒します。お気を確かに……!」
 麻痺状態のソニアには、癒しの聖女をジョゼフィーナが喚ぶ。立ち直ったティルフィアもヒーリングウェーブを発動した。
「よし!」
 次に輪を得たはネーヴェだ。体全体で止めるようにしたので、打ち身も激しいが闘志は落ちない。
「縛られる趣味はないが……」
 ネーヴェは全身をばねのようにして、「もあー!」の柱目がけ投じた。ターゲットは4番!
「縛る趣味なら……いやいや」
 輪は4番にストンと収まり、この腕を使用不可能としたのだ!

●もあー! 決着!
 だが怪物、怯むどころか前進の勢いを強めたのである。
「もあー!」
 大滝の瀑布みたく爆音たて、しかも輪を放り投げてくる。
「痛ったーー!」
 側頭部を打たれミギワは、つい「素」(=男!)の声色で叫んでしまう。だが根性! 意地で輪を手に掴んだのである。花魁の色気かなぐり捨てて、ミギワは裾がめくれるに構わず、ぐわらと片足を大きく上げ状態を傾けた。
「お、おい……」
 隣のガイゼも思わず目を逸らしてしまう! 同性なのに……同性だけど……。
「お返しにお見舞いしてあげるよ!」
 行けよと叫んでミギワはシュート!
 輪は6番柱に噛みつくようにはまり、ぐるぐる回って土台を打った。これで使用不可の腕は三本になったというわけだ!
「あきらかに弱体化しましたね!」
 ティルフィアが指摘したように、腕が残り一本になった輪投げ台は、無性に頼りなげに見えた。攻撃も一カ所からしかできぬゆえ予想しやすい。 
「これが効いたらおめでとうですわね」
 と放ったティルフィアのヴォイドスクラッチ、ごっ、という音を立てて土台にはまっていた枠を落としてしまった。
「効きましておめでとうございます、といったところでしょうか」
 ジョゼフィーナの表情も明るい。味方の回復もあらかた済ませている。脆くなった土台にサガが、サンダークラッシュを炸裂させていた。
 そして、
「観念のしどころだな!」
 7番の柱をアロイが直接攻撃し、これを叩き折ってしまう。
 怪物はもう、鳴き声も情けない雰囲気だ。
「も……あ−!」
「あの掛け声は何とかならぬのかえ? 聞くと背中が緩んで狙いが甘くなりそうじゃ」
 アルーンは苦笑している。
 よれよれと飛んできた輪はガイゼが拾った。
「8番は戦略上残すとして、9番でも行くとするか」
 ようく狙って優しく投げて、ガイゼは宣言を達成した。
 つぎの輪はジョゼフィーナを狙ったようだが、アドミニが易々と叩き落としている。
「送り物は返さなくてはな!」
 と彼が投げた輪は3番に落ちる。輪投げの土台がどうと崩れ右に傾いた。9番3番とつづけざまにダメージを受け、向かって右側の移動能力が消滅したらしい。
 もはや「も……」くらいしか叫べなくなっている怪物は、それでも輪をぺたっと落とした。
「よしっ!」
 ソニアが回収する。中枢と思われる5番に決めたいところだが、身長のこともありやや不安だ。でも大丈夫、彼女には例の「奇策」がある……!
(「イカサマ上等、それが強敵との戦い方だって団長が前に言ってたんだよ!」)
 きらめく笑顔でソニアは呼びかけた。
「ユウキくん、そこで待機しててー!」
「はい?」
 と足を止めたユウキめがけ全力疾走!
「そしてゴメンねー!」
 いうが早いかユウキの胸を蹴り肩をぐいと踏んでソニア――空に舞う!
 はるか足元に仲間を見おろし、8番の柱すら越えて5番に粘り蜘蛛糸を放ち接触すると、
「ダンク、シュートッ!!」
 がっちりとそこに輪をかけたのである。
 すると怪物は青白い雷光を四方八方に放射し、土色になってガラガラと瓦解したのであった。

●もあー! 雲のかなたに
 今回も全力、あまつところなくふるったアロイである。甲冑の内側に熱がこもるが、全身アーマーを極めし彼は、ヘルメットを取ろうともしない。この程度の暑さ平気だ。アドミニも同様らしい。しかし修行の足りない(?)ユウキは「ぷはー」と兜を脱ぎ、涼風に顔をさらしていた。青い髪が風になびいている。これを見てアロイは思うのである。
(「そういえば今回はセイレーンが四人か……うぅむ、種族特徴というか……やはり、皆一様に美しい。きっとユウキ君も将来は……」)
 と思いつつ将来のユウキに、ミギワやアルーンの姿を重ねてみたりする。ユウキには彼ら(「彼女ら」ではなく)のような方向性もありかもしれない。
「さっきは踏んじゃったけど許してねー」
 ぴょん、と跳ねるようにソニアがユウキのところにやってきた。
「別に気にしてないですよ……ちょっと驚きましたが……」
 女性に目線を合わせられないユウキはあらぬかたを見るが、その方向にソニアは回って、くすくす笑いながら告げた。
「わかったよ、ユウキくん。責任とってお嫁さんにしてあげる!」
「な、なぜー!」
 と叫ぶやユウキは、逃げた。
「なんというか、……青春、かな」
 そんなユウキにガイゼは苦笑している。それはそうとして、戻ったら、ホットのサイダーでも注文してみたい彼だった。できればジョッキで。
「回を重ねるごとに我楽多モンスターのサイズが巨大になってきているような気がします」
 とティルフィアはいう。次回はさらに巨大だったりすると怖い。
 さて逃げていたユウキは、アルーンにそっと受けとめられた。
「あわわ!」
 これはこれで焦るユウキだ。アルーンは少し、拗ねたような口調で、
「ユウキ殿は妾がお嫌いかえ? 話しかけると妙に焦っているように見受けるのじゃが?」
「いや、そ、そういうわけでは……」
 うまく理由を言えないユウキ、そして、きょとんとするばかりのアルーンであった。性別のことをいえば一発で誤解はなくなるのだが……その鍵に、お互い気づいていないのであるよ。

 私の勝手な憶測ですが、と前置きしてアドミニは言う。
「これまでの我楽多モンスター、彼らはその共通性からして、同じ旅団に所属するメンバーだったのかもしれませんね。旅団で、これらの玩具で楽しく遊んでいたのかもしれない。だから彼らは、こんな姿になってからも遊び相手を探しているのでは……、と、思ったりします」
 鉄仮面の下のアドミニの表情は見えないが、倒したモンスターを悼むような声である。
 ジョゼフィーナも同様の考えを示す。
「確かに……あり得る話です。副業で玩具職人をしていた旅団だったのかもしれません」
 なるほど、とサガが応じた。
「それが事実かどうかは、今となっては誰にもわかりませんね。ですが、そう仮定すると理解できることがあるように思えます。独特の叫び声も、彼らの呼び名だったのかもしれませんし」
 束ねた髪をネーヴェは解いていた。汗に濡れた髪が陽光にきらめく。
「だとすれば我々は、遊ぶという意味で、彼らに思いを遂げさせているということか……」
 いささかロマンチックすぎるかな、とネーヴェは言うものの、ミギワはその発想が気に入った。
「もしそうなら、気持ちようござんすなあ……対我楽多モンスター戦、あちきにも戦う意味や価値がわかった気がしてくるでありんすよ……」
 まばゆい夕刻の陽を見つめながら、ミギワはうっすらと目を細めた。

 何処より来たのか何処へ往くのか、我楽多の乱痴気噺、六度目の幕はかく下りたのだ。
 次回、我楽多との対決は、いよいよ大詰めとなるやもしれぬ。

(続く)


マスター:桂木京介 紹介ページ
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冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2008/10/14
得票数:冒険活劇3  戦闘1  ほのぼの8 
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