【プルミーといっしょ】ミュントスで作ろっ! オリジナルぬいぐるみ♪



<オープニング>


 長い黒髪の麗人は、手にしたカップを音もなくテーブルに置いた。黒目がちの瞳は潤んでいるようで、ふと睫毛を伏せるだけで、男女問わず胸かき乱すような色気が漂う――彼女はストライダーの霊査士・レピア。
「……ふぅ……あなた、元気ね。とても」
「うっほほーい!」
 茶色の編み髪、丸顔娘は「しゃっきーん!」という効果音が似合うほど元気に片手を上げる。まんまるお目々はキラキラしてて、レピアの顔が鏡みたく映っているのだ――彼女は、ヒトの武人・プルミエール。
「ミュントス観光ばなし、ギャロから聞いてきたのだけど……」
 ここまで述べて言葉を切る。かぶりつくようにしてテーブルに顎を載せているプルミーを、レピアはしげしげと見つめて、
「あの……つづけていいかしら?」
「いいですわよ♪」
 レピアは人差し指と親指で眉間を揉む仕草をした。どうも調子が狂うらしい。
「ご存じかしら? ミュントスには、不思議なプロフェッショナルが集まる村がたくさんあるの。バニーガールばかりがあつまる村や、見目麗しい執事たちがそろった執事喫茶の村、いつも歌劇を上演している村もあれば、ドジッ子ナースばかりの病院村なんていうのもあるわ……」
 そういった「ちょっと変わったプロ」がつどう村に、これまで何度も冒険者を案内してきたレピアなのである。その大半は幻奏猟兵・ギャロがもってきたものらしい。そして今日もまた、ギャロからそうした依頼がもたらされたというのだ。
 ちら、レピアはプルミーを見た。やっぱりテーブルにかぶりついている。
「……あの……いいかしら?」
「どんどんいっちゃってください。ゴーゴーです♪」
 レピアは再び眉間を揉む仕草をした。集まった冒険者たちを見渡すようにしていう。
「ぬいぐるみ職人があつまった村があるの。それはそれは、かわいらしい村なのよ。ぬいぐるみハウスやぬいぐるみ公園があって、ベッドなどの家具も、できるかぎりぬいぐるみにしているというこだわり。それも、ぽよぽよでかわいらしいデザインなの」
 上の発言『ぽよぽよ』のあたりで、レピアは少し頬を上気させた。
「おほー、ぽよぽよですか☆」
 プルミーも興味津々だ。
「そんな村であなたたちに、ぬいぐるみの作り方指導をしてくれるそうなの。観光がてら行ってきて、というのが今日の依頼。もちろん、霊査して危険がないことは調査済みよ。戦闘になる心配はまずないわ」
 縫いぐるみといっても様々だ。小さなマスコット状のものでもいいし、よりコンパクトにストラップ風の武器飾りを作ってもいい。タオル製の枕ぬいぐるみなら寝具として使えるだろう、そして、自分より大きいくらいの抱きぐるみや抱き枕もその一種といえる。いっそのこと自分自身が中に入れる「着ぐるみ」なんてのもありとする。
 縫いぐるみ作りというのは難しい。材料集めも一苦労だし、型紙におこすのには技術が必要だ。もちろん裁縫の腕も高度なものを求められる。未経験の人にはなかなか敷居が高いのである。
 しかしこの機会では、きちんとした講師が付いてくれるという。
「カムリさんという男の先生が一から教えてくれるということなの。とてもお綺麗な男の方で、華道の先生でもあるのでいつも着物をお召しになっているそうね。とても上品でお優しい先生だというから、頼ってしまってもいいと思うわ」
 ただこの先生、とても体が弱いらしく、生徒がショッキングな真似をしたり悪ふざけがすぎたりエッチだったり(?)すると、喀血して昏倒するということだ。ただし昏倒してもすぐに復活するらしいから、本当は逞しいのかもしれない……。
「少々難しくたってチャレンジよ。つくりたいぬいぐるみのイメージを、しっかり先生にお伝えしてね。仲良しさん同士協力してつくってもいいわ。その村で、素敵なぬいぐるみを作って頂戴……」 
 なるほど、と立ち上がったプルミーは、すっかりやる気に満ちあふれている。
「私もぬいぐるみ大好きなのですよ。おっきなネコちゃんでも作ろうかしらん?」
 完成したぬいぐるみはもちろんプレゼントされる。プルミーと一緒に楽しく、世界で一つだけのオリジナルぬいぐるみを作ろう!


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参加者
界廻る選定の志・エルス(a01321)
ストライダーの牙狩人・ジースリー(a03415)
リリカル武闘少女・ミオ(a36452)
希望を胸に天を舞う白翼の天使・サクラ(a46456)
黒曜の魔女・セフィア(a58721)
プーカの武道家・シャルロッテ(a59846)
えきぞちっくますこっと・トミィ(a64965)
森林の彷徨者・デルヴィーン(a68935)
天狐の巫女・レイヤ(a71186)
琥珀と鈍色の調べ・イアナ(a73966)
NPC:はじまりは・プルミエール(a90091)



<リプレイ>

●ウェルカム・トゥ・ミュントス
 希望を胸に天を舞う白翼の天使・サクラ(a46456)は、
「地獄って初めて……」
 と最初、いささか緊張気味だったものの、村が見えるや駆けだしてしまう。
「わぁ〜い、ぬいぐるみさん♪ すごいよぅ〜」
「ほんとです〜♪」
 はじまりは・プルミエール(a90091)も元気全開、両腕広げサクラについてゆく。
 だってそこは、奇妙奇天烈ファンシーランド! ぬいぐるみだらけの村なのだから!
 建物がぬいぐるみだ。公園の遊具もぬいぐるみだ。ゾウ、キリン、パンダ……たくさんのぬいぐるみ動物が実物大で待っている。大きなぬいぐるみの野菜、鍋など家庭用具、その他さまざま、ころころとそろっている。
「あんまりはしゃいで転ぶなよ」
 苦笑しつつ、不殺の天魔・エルス(a01321)も物珍しそうに見回す。
「これがミュントスかぁ」
 ドラゴンズゲート以外でここに来るのはエルスも初めてでなのある。物騒なイメージに反して、なかなかメルヘンな地ではないか。
 そういえば彼はどう感じているだろう? と、エルスはストライダーの牙狩人・ジースリー(a03415)を探した。
「……」
 無口な男ジースリーは、押し黙ったままぬいぐるみを手にしている。機嫌が悪いわけではない。むしろ和んでいるようにも見えた。もしかして可愛いもの好きなのか?
 天狐の巫女・レイヤ(a71186)は目を丸くした。
「ほんとにぬいぐるみで出来た家があるんだ」
 事前に聞いてはいたが、百聞は一見にしかずとはまさにこのこと。紅い瞳に好奇心の火を灯すと、レイヤはぬいぐるみの見学に向かう。
 琥珀と鈍色の調べ・イアナ(a73966)は、公園のベンチを眺める。にょろりと胴の長い猫が、寝そべっているようなベンチだ。
「座ってみても大丈夫でしょうか?」
 イアナがおそるおそる腰を下ろすと、むぎゅっ、とクッションに沈みこむ気持ちがした。座り心地はなかなかいい。
「………ぽよぽよ……」
 イアナと並んで腰下ろし、黒曜の魔女・セフィア(a58721)は幸福感に包まれていた。なんというぽよぽよ、心安らぐふにふに。足元にあった子グマのぬいぐるみを拾いあげると、
「……抱きしめても、いいのかな……?」
 ぎゅっ、とするといい香がした。
 プーカの武道家・シャルロッテ(a59846)もぬいぐるみたちを見物中。
「あんまり興味ないけど……ま、そういうお仕事だからな」
 言葉こそ素っ気ないが、口調はなんだか嬉しそう。好きなものは好きだけど、それをオープンにするのは気恥ずかしい、そんな年頃のシャルロッテなのである。
「うっさぎ〜♪」
 ふわふわうさぎさんの着ぐるみが駆けてくる。サクラたちと追いかけっこしている。その正体は、えきぞちっくますこっと・トミィ(a64965)だ。
「にゃっほーい、こっちだなぁ〜ん☆」
 リリカル武闘少女・ミオ(a36452)も楽しく参加していた。ぬいぐるみ生地でできた小高い丘へ皆で登り、ぴょんぴょん跳ねながらチェイスをくりひろげる。
「うっさぎ〜♪」
 うさぎ言葉(?)とともに、うさぎさんトミィが手を伸ばした。
「はうっ、そこはミオの尻尾だなぁ〜ん」
 ミオはくすぐったくて声を上げてしまうのだ。
 一人の青年が姿を見せた。織絣の着物姿、黒髪を長く伸ばしている。女性と見紛う端麗な顔つき、肌だって驚くほど白い。
「ようこそいらっしゃいました」
 私がカムリです、と青年は述べた。
 カムリはふと、森林の彷徨者・デルヴィーン(a68935)に目を止めて微笑んだ。
「お久しぶりですデルヴィーンさん」
 高鳴る胸を抑えつつ、デルヴィーンも礼を返す。
「先日は大変お世話になりました。今回も、宜しくご教授下さい」
 以前、ヨガや華道の指導も受けたことがあるデルヴィーンだ。歌劇でも相手役をつとめた経験があり、カムリとはすっかり馴染みなのである。(※シリーズ【ミュントス乙女組】参照)
「こんにちはー!」
 やや遅れてプルミーが丘から飛び降りてきた。
「危ない! プルミー!」
 シャルロッテが気づいて声をかけたがちと遅い。
 バッと捲れるプルミースカート! しかも先生の真ん前である!
 たしかに危ない! 特にカムリには!
「えっちなのはいけないと思います! アフゥ!」
 血を吐いた!
 先の気品もどこへやら、たちまちカムリ先生、喀血し倒れてしまった。

●型紙作成
 昏倒したカムリ先生だが速攻で復活、血を絹のハンカチーフで拭うと、一同を「ぬいぐるみ道場」に案内した。外装はぬいぐるみ中身は木造、畳敷きの部屋もあるという不思議な建物だ。
 ちなみに危険物(?)プルミーには、シャルロッテがマントを羽織らせている。
「先生はえっちなのがいけないそうだからな」
「いやあ、別にえっちなつもりでは……」
 タハハとプルミーは笑う。
 案内された一室には、テーブルと椅子、裁縫道具などが揃えられていた。それにたくさんのぬいぐるみ。まさしく工房といっていい。
「皆さん、簡単なものでいいですからイメージを伝えて下さいね。型紙の製作に入ります」
 というカムリに、さっそく挙手したのはサクラであった。
「先生〜、こういうものは作れるかな?」
 たたた、と向かうサクラには、温めてきたアイデアがあるようだ。

 イメージ図を描きながら、レイヤがプルミーに話しかける。
「プルミエールさんは、どんなぬいぐるみを作るんですか?」
「私は、おっきなネコちゃんの抱き枕です♪ 外にあったネコさんベンチみたいなイメージで〜」
 一生懸命プルミーも絵を描いているが、あまり上手くできていないようだ。レイヤさんは? と問われて彼女は微笑した。
「私は……」
 レイヤは唇をプルミーの耳に寄せた。頬が少し染まっている。
 そんなプルミーの様子を観察しつつ、イメージ図を仕上げるのはイアナだ。
「何を描いているんですかなぁ〜ん?」
 とイアナの手元をのぞいたミオは、それを見てにっこりした。プルミーの絵だ。
「プルミエールさんを模したぬいぐるみを作ってみましょうか、と思いまして。ミオさんは?」
「ミオはねぇ、飼い虎の『みいたん』の着ぐるみを作りたいんですなぁーん!」
 誇らしげにミオが見せてくれたのは、その「みいたん」をかたどったマスコットだ。同じく恥ずかしそうに見せてくれたスケッチは、虎というよりトラネコ、あるいはブタのようでもある(ちなみに真相は「トラネコ」)。可愛いものができればいいですね、とイアナは目を細めた。
「む〜……何作ろうなぁ……」
 と悩んでいたのは一時、すでにエルスは型紙の製作に入っている。
「……もしかして、それ……」
 隣の席にいたセフィアはいち早く気づいたようだ。エルスは小さく親指を立てて、
「そう、最近いろいろやってくれた連中、ドラゴンロードのSDぬいぐるみセットだぜ。大きさ考えてたら面倒くさくなったんで、カラスくらいのサイズで統一することにした!」
 エルスはからからと笑うのである。
「ところでセフィアは?」
「……もう少し……待って。命を吹き込んだら……紹介する……」
 セフィアは真剣な表情で、カムリ先生にアドバイスを求めに行く。
 型紙製作は難しい。実際、これこそがぬいぐるみ製作の「核」ともいえる作業なのだ。立体を想定して平面に展開しなければならない。初心者にはとても困難であるのだが、そこは「ぬいぐるみ村」、参考資料にできるぬいぐるみの型ならたくさんある。前例がないようでも、紙粘土でモデルをつくって、ここから型紙に起こす方法もあった。要は根気さえあればなんとかなるということだ。
 それに加え、カムリは懇切丁寧に各人に指導をしてくれた。
「絶対作りたいんだもん!」
 サクラは真剣そのものだ。どうしても不器用で、過去クマのぬいぐるみを作っても「犬?」と言われたりしていたサクラだが、今日はそんな自分を変えるべく努力している。
「……」
 ジースリーも一心不乱に描き、先生の意見を求めている。
「おや、これはとても可愛いネコさんのようですね」
「……」
 コクコクとうなずくジースリー。
「あなたの小動物への愛を感じますね」
「……」
 ちょっと照れるジースリー。

「トミィさんはどんな調子ですか?」
 デルヴィーンが振り返る。この部屋に来てから、うさぐるみトミィは一言も発していないのだ。
「おや……?」
 デルヴィーンは首をかしげた。うさぐるみは、型紙に向かったまま静止している。
「あの、カムリ先生」
「どうしました?」
「うさぐるみのトミィさんが固まってしまっているんですけれど……」
「はて?」
 ここでコホン、とシャルロッテが空咳をする。
 何気なく振り返ったカムリとデルヴィーンは、シャルロッテの隣にトミィの姿を見た。玉の肌を晒し、着衣はわずかフワリンパンツ一枚のみ! 愛らしくも妖艶な姿でトミィ、鼻歌まじりに型紙を仕上げているではないか!
「中に人なんていませんよ」
「いつの間に!?」
 変わり身の術!? とデルヴィーンは目を丸くし。
「えっちなのはいけないんですっ! オフゥ!」
 パンツのみの美少年に、カムリ先生は血を吐いた!
 ――驚くポイントの異なる二人であった。

●ちくちく縫って、さあできあがり
 いくばくかの時間が流れた。
 エルスは型紙製作を終え、カムリのアドバイスで生地を選択する。針と糸、飾り付けのボタン、さっと用意して深呼吸。
「方針も決まったところで……」
 カッ、と目を見開いた。ここからがエルスの本気モードだ!
「目標! 一体10分!」
 怒濤の勢いで縫う! 縫う! ソーイング!
 ジースリーは対称的に、落ち着いた針運びを行っている。
「……」
 糸を通し、括る。先生の指導を受けながら、繊細な作業にいそしむ。落ち着いた性格のジースリーには、こういう作業が向いているのかも知れない。
 針に難渋しているのはミオ、
「いたっ!……ぶにーなぁ〜ん……」
 カムリに半分以上手伝ってもらって型紙を終えたものの、縫う段になってまたさっそく指を針で刺してしまった。指先には神経が詰まっているだけに痛い。
「だけどミオには森羅点穴という回復技があるもんなぁ〜ん! えいっ☆なぁ〜ん」
 と自分を突いてみると、
「ひゃあっ、なぁ〜ん」
 ……ますます指先が痛んだ。(まあ、すぐ治療されるのだが)
 サクラの作業も縫い物に入っている。ヒト? いや、その頭部は獅子。そう、彼女はソルレオンのぬいぐるみを作ろうとしているのだ。作業は順調、目的まであと少し!

「もう完成じゃないですか♪」
 プルミーが目を輝かせたので、シャルロッテは「ふふふ」と微笑した。手先が器用な彼女だ。ちょっと集中すればお手のものである。大きめサイズのムシャリンができていた。きりりとした表情にしたつもりが、むしろキュートだったりする。
「あいた!」
 見とれていたせいかプルミーは、自分の指先を針で突いてしまった。牡丹のような血がともる。
「見せてごらん?」
 といってシャルロッテは、プルミーの指先を口に含んでくれた。
「シャルロッテさん……あの……ありがとう」
 顔を赤くするプルミーなのである。

 レイヤの縫い物も形になってきている。
(「大好きなセロお兄ちゃんのぬいぐるみを作るです」)
 レイヤの手元には、三頭身ディフォルメで似せたセロの絵がある。口元が、はにかんだように笑っているのが可愛らしい。完成したら抱いて眠ろうか?
 レイヤと同じく、イアナも人に似せた縫いぐるみを進めている。服装も似せたし、あとは難しい縫合を済ませるだけ。ここのところをカムリがやって見せてくれる。
「あらまあ……先生って本当にお上手なんですね。その指捌きに、つい見惚れてしまいます」
「いえ、それほどでは」
 照れて思わず目を逸らしたカムリの視線が、あるぬいぐるみの前で止まった。
「どうしました?」
 と言うイアナに、
「あのぬいぐるみ、見本のものですが、動いたような……?」
 子どもの身長ほどのぬいぐるみだ。最初から部屋にあるものである。気のせいだろうか……と思ったその瞬間!
「ハーイ!」
 見本の人形がジャンプしたのだ! そして
「お元気〜?」
 と身をくねらせ謎のポーズ! 驚いた先生はやっぱり、
「モフゥ!」
「血を吐いた!」
 思わずデルヴィーンが叫んでしまった。デルヴィーンも慣れたもの、さっと先生を支え床に倒れないようにする。
「大往生間違いない」
 などと祈りの姿勢を取る例のぬいぐるみの中身は、いつの間に入ったかトミィであった。ぬいぐるみからモソモソ出てきたトミィはエプロンドレスを着用、作りかけのぬいぐるみ(小さな鳥)の作業に戻る。本日は何とも大活躍(?)なトミィである。
 完成した縫いぐるみを、セフィアがエルスに見せてくれた。 
「………彼の名前は、アンドリュー。……ちょっと短気だけれど、気のいい性格」
「お、黒ネコだな」
 尻尾に鈴が付いていて目が大きい。ぽよぽよなのだ。
 すると突然、黒猫はプルミーに向かって喋った。
「おうおうプルミー、そんなに鼻息荒くして何を作ってやがるんだ?」
「わ!」
「……ふふ……」
 もちろんセフィアの腹話術であるが、縫いぐるみをパクパクと動かし、生き生きと表現している。セフィアはさっ、とこれをカムリ(まだデルヴィーンに抱きかかえられている)に見せて、
「ふははは、俺様は呪いの人形! お前の命をよこせー!」
 と再び腹話術!
「エフゥ!」
「またまた血を吐いた! じゃなくて、先生〜!」
 デルヴィーンはそんな先生を起こすべく揺さぶる。だけどそんなカムリのカムリらしさも、実はちょっと気に入っているデルヴィーンなのだ。頼りないけど頼れる先生――もうじき完成するテディベアの名前は、彼からもらおうと思う。
「よっしゃ、完成! さあ手伝うぜ」
 急ぎすぎて逆に手間取ったが、エルスも自分のぬいぐるみを完成させていた。
「プルミ……」
 と、呼びかけようとしたが、彼女はいまジースリーと話している。正確に言うと彼は口をきかないがのだが、それでも「会話」が成立していた。
「この前フラウウインドで見た『ぽけにゃん』ですね〜」
 ジースリーの手元には二つのぬいぐるみがある。胴がちょっと長い小さなネコである。
「ひとつくれるんですか? キャー♪」
 プルミーは大喜びでぬいぐるみを抱きしめた。白いリボンの飾りを巻いたネコで、どことなくプルミーに似た配色であった。
 そのときミオの嬉しそうな声、
「デカみいたん完成! 試着だなぁ〜ん!」
 手の空いたメンバーも手伝ってくれて、ついにトラネコ……じゃなくてミオいわく『虎』の着ぐるみができたのである。着て歩くその姿が誇らしげだ。
 サクラは両手で、完成したぬいぐるみを抱きあげる。
「やった☆ わたしもできたよぅ!」
 ぬいぐるみのソルレオン、ちょっと不格好なところもあるけど、想いのこもった立派な造形。運命が変わって仲間になった種族を称えるものに仕上がったと思う。
 サクラは少し、胸が詰まった。

(おわり)


マスター:桂木京介 紹介ページ
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作成日:2008/10/20
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