大王イカ



<オープニング>


●チキンレッグ領
 バーレル港の近海で、巨大なイカのモンスターが確認された。
 幸いドゥーリルの灯台がきちんと機能しているため、交易船がモンスターのいる海域を通っていく事はないが、だからと言って放っておくわけにはいかない。
 ただし、モンスターは豊富な餌を求めて陸に上がってくる可能性もあるので、最悪の場合は漁村などが襲われてしまう事になる。
 モンスターはとても警戒心が強いので、例え発見する事が出来たとしても、身の危険を感じると墨を吐いて逃げてしまう。
 その代わり、船を襲っている間は身動きが取れなくなるため、攻撃を仕掛けるならこのタイミングしか考えられない。
 一応、今回の依頼には囮用の廃船と、カーネリア号を使用する事が出来るから、それを使ってモンスターを倒してくれ。
 ちなみに囮用の船にはラルフが乗る事になっているから、お前達はカーネリア号に乗るといい。
 囮用の船はただでさえオンボロだから、1人以上が乗るとそれだけ沈みやすくなっているからな。
 それが分かっていながら、お前達を危険な目に合わせるわけにはいかないだろ?


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参加者
彷徨猟兵・ザルフィン(a12274)
罠と手品の笑顔の匠・スノゥ(a32808)
眩き銀の月の巫女・マリス(a46003)
ノソ・リン(a50852)
鍋奉行・バルザック(a74779)
紅霧の鋼爪使い・フカ(a75000)
純白輝鱗・リィアン(a76785)

NPC:特定医療食・ラルフ(a90213)



<リプレイ>

●カーネリア号
 冒険者達は大王イカを倒すため、カーネリア号に乗って海に出た。
 大王イカの出た海域で交易船が襲われたという報告はないものの、このまま放っておけば間違いなく被害が出てしまう事だろう。
「ボクという冒険者の処女航海が、カーネリア号に乗って、だなんて爽快だね!」
 能天気な笑みを浮かべながら、純白輝鱗・リィアン(a76785)が甲板に顔を出す。
 ここに来るまで魅了の歌でカモメ達に大王イカについて何か知らないか聞いてみたのだが、手当たり次第に食べられているのか何も知らないようである。
「嵐の前の静けさ、といったところね……」
 険しい表情を浮かべながら、笑顔を操る馨しき女王薔薇・スノゥ(a32808)が遠眼鏡を覗き込む。
 その視線の先には特定医療食・ラルフ(a90213)が乗った船があり、今にも沈みそうな雰囲気が漂っている。
「……ラルフよ。お前、ホンマに薄幸な鳥やなぁ……」
 気の毒そうな視線を送り、銀花小花・リン(a50852)が溜息をもらす。
 囮用の船にはラルフしか乗っていないため、何か遭ったとしても被害を被るのは彼だけである。
 それが分かっていながら、ラルフも船に乗っているので、ある程度は覚悟しているのだろう。
「ラルフに怪我を負わせなくてはならないのが心苦しいけれど、民間人に被害が及ぶよりはマシね。少なくともラルフは冒険者だから……」
 ラルフが乗った船と一定の距離を保ち、スノゥが寂しそうに答えを返す。
 もちろん、ラルフに何か作戦があるのなら、安心して任せる事が出来るのだが、『どうせ囮にされるのなら、自分から立候補しておくか』という考えから囮用の船に乗っているようなので、まったくと言っていいほどアテにならない。
「まぁ……、過去に散々酷い目に遭ったから、そうゆう性質になってしまったのかしら……哀れよね。しかも……、マジでボロいわね、あの船……。いくら使い捨てにするとは言え、もっとマシなもの用意できなかったのかしら……。正直、アイツが可哀想だわ……。まぁ……、大丈夫だわよね。サンダース号の船長をやっていたんだし、そんくらい扱える操船技術は持っているはずだから……」
 同情した様子で囮用の船には視線を送り、紅霧の鋼爪使い・フカ(a75000)が口を開く。
 ラルフの場合は色々と不安な要素が凝縮されているため、とても信用する事が出来ないのだが、それなりの実績があるので、大丈夫……なはずだ。
「だからと言ってラルフを喰わせるわけにもいかん。バーレルの縁もあるしな。ラルフを喰わせるわけにもいかん。大王イカと戦ってやるぜ!」
 遠眼鏡を覗き込みながら、鍋奉行・バルザック(a74779)が大王イカの気配を探る。
 いまのところ、それらしき物体を確認する事は出来ないが、時間が経つにつれて少しずつ雲行きが怪しくなってきた。
 このままだと土砂降りの雨になりそうだが、ここで引き下がるわけにはいかないので、身体にロープを巻いて固定する。
「ああ……、そうだな。例えラルフの乗った船が壊れたとしても、溺死する前に助ければいいだけだ」
 甲板の上を歩いて足場を確認しながら、死皇巫女・マリス(a46003)が踏ん張りやすい場所を探す。
 しかし、どこも同じような感じがするため、場所を限定する事が出来なかった。
 その代わり、船が揺れる事もなさそうなので、船酔いになる事はなさそうである。
「あ、あれは巨大イカっ! 巨大イカが現れたよっ!」
 ハッとした表情を浮かべながら、リィアンが囮用の船を指差した。
 大王イカは囮用の船に身体を絡ませ、全体重をかけて海の底へと沈めている。
「さぁて、モンスター相手ならこっちの本業だ。適当にやって、ついでに酒のつまみでも獲って帰るとするか」
 仲間達に声をかけながら、彷徨猟兵・ザルフィン(a12274)が大王イカを睨む。
 次の瞬間、囮用の船がミシミシと音を立て、ラルフの悲鳴が響くのだった。

●ラルフ
「……来たわね、スルメ野郎! ……って、ラルフの船が沈みかけているじゃない! マジで!? アイツ、気は確かなの? そんなにイカの餌になりたいのかしら。……自己犠牲も此処まで来ると尊敬に値するわね……」
 信じられない様子でラルフを眺め、フカが唖然とした表情を浮かべて口を開く。
 その間もラルフは助けを求めているのだが、カーネリア号から距離が離れているせいか、何を言っているのか分からない。
 だが、人によっては『オレに構わず、早くコイツを倒すんだ!』と聞こえているらしく、皆がラルフの行動に(色々な意味で)涙した。
「このままじゃ、救出は難しいな。まぁ、あの様子ならしばらく持ち堪えてくれそうだが……」
 険しい表情を浮かべながら、バルザックが遠眼鏡を覗き込む。
 このまま迂闊に近づけば自分達の船まで大王イカに襲われてしまうため、警戒した様子で少しずつ距離を縮めていく。
「うむ、確かに……。カーネリア号まで襲われたら、まともに帰る事さえ出来なくなるからな」
 納得した様子で頷きながら、ザルフィンが少し離れた場所から、勢いよく浮き輪を放り投げた。
 しかし、ラルフがパニックに陥っているせいで、上手くキャッチする事が出来ずに空を切る。
「諦めるな唐揚げ! これに掴まれ〜!!」
 必死にラルフを励ましながら、リンが新しい浮き輪を投げる。
 それでもラルフは浮き輪をキャッチする事が出来ず、空気ばかりを掴んでいる。
「予想はしていたけど……、仕方がないなぁ」
 ギリギリのところまでカーネリア号を近づけ、マリスがラルフめがけて粘り蜘蛛糸を放つ。
 それと同時に大王イカが咆哮を上げ、巨大な脚でラルフの身体をパチンと弾く。
 その一撃を喰らってラルフが華麗に宙を舞い、頭からカーネリア号の甲板に突っ込んだ。
「……おかえりなさい。とりあえず生きているようね」
 苦笑いを浮かべながら、スノゥが生暖かい視線を送る。
 一応、ラルフは生きているようだが、落下のショックで全身打撲は間違いないので、戦闘に参加する事は難しそうだ。
「ラルフさんも助かった事だし、これで怖いものなしだねっ!」
 チキンフォーメーションを展開し、リィアンが大王イカをジロリと睨む。
 大王イカは囮用の船を木っ端微塵に破壊し、物足りない様子で唸り声をあげている。
「それじゃ……、行くよっ!」
 自分自身に気合を入れながら、リンが大王イカにワイルドキャノンを叩き込む。
 そのため、大王イカの狂ったように咆哮を上げ、カーネリア号に攻撃を仕掛けてきた。

●大王イカ
「やれやれ、随分と威勢がいいな。そんなに俺達が憎いのか?」
 ウェポン・オーバードライブを発動させ、ザルフィンが大王イカに語りかける。
 既にザルフィンのブーメランは武人の極意で強化されており、いつでも放てるようになっていた。
 だが、途中でミスは許されないので、ジックリと狙いを定め、大王イカの眉間に放つ。
 その一撃を喰らって大王イカが悲鳴を上げ、痛みから逃れる様にしてスミを吐く。
「うっ……、綺麗なまま船を返そうと思っていたのに……」
 全身スミまみれになりながら、リンがブツブツと愚痴をこぼす。
 それでも船を沈められるよりはマシだと思ったが、予想以上にスミが臭いので沸々と怒りが湧き上がる。
「な、なんだ、この臭いは……」
 生ゴミが腐ったような臭いが鼻につき、マリスが慌てた様子でスミを拭う。
 しかし、スミをこすればこするほど臭いが強まり、我慢する事が出来なくなってきた。
 その間に大王イカがカーネリア号との距離を縮め、自らの怒りをぶつける様にして巨大な足を振り下ろす。
「あんまり調子に乗っていると、痛い目に遭うわよ」
 警告混じりに呟きながら、スノゥがニードルスピアを放つ。
 予想外の攻撃を喰らって大王イカがパニックに陥り、再びカーネリア号めがけてスミを吐く。
 そのせいでカーネリア号が漆黒の闇に覆われ、まるで黒船のようになっている。
「おっと、これは返しておくぜ」
 カーネリア号の甲板に乗った大王イカの足を狙い、バルザックが容赦なくサンダークラッシュを叩き込む。
 次の瞬間、大王イカの身体がビリリッと痺れ、まったく身動きが取れなくなった。
「ラルフ……、あんたの犠牲は無駄にはしないわ」
 青空に浮かぶラルフに対して誓いを立て、フカが疾風斬鉄脚を叩き込む。
 その一撃を喰らって大王イカがバランスを崩し、カーネリア号もろとも沈み始める。
「……って、このままじゃ、ボク達まで海の藻屑になっちゃうよ! ひょっとしてラルフさんは不幸を呼ぶの!?」
 嫌な予感が脳裏を過ぎり、リィアンがマストにしがみつく。
 それに合わせて大王イカが足を伸ばし、勢いをつけて甲板に這い上がってこようとする。
「文句を言うのは後回しよっ! 今は大王イカを倒す事だけ考えて!」
 仲間達を叱りつけながら、フカがワイルドキャノンを放つ。
 それと同時に仲間達が一斉に攻撃を仕掛け、大王イカにトドメをさした。
「ふぅ……、危ないところだったな。危うくイカに命を奪われちまうところだったぜ」
 ホッとした表情を浮かべながら、バルザックがその場に崩れ落ちる。
 何とか大王イカを倒す事には成功したが、カーネリア号のダメージが大きいため、しばらくの間は業務にも支障が出てしまう可能性が高い。
「イカに命を奪われるなんてごめんだわ。ひょっとして、いままで食べられていた恨みを晴らしたかったのかしら? だとしたら、とても皮肉よね」
 疲れた様子で溜息をつきながら、スノゥが大王イカが沈んだ海を眺める。
 イカ大王がどうしてこの場所を縄張りにしていたのか分からないが、交易船が被害に遭わなかった事は幸いであった。
「でも、どうして最近になって海獣が暴れ始めたんだろう? ……バランの大渦近辺か。それとも東のフラウウインド大陸で、何か有ったのかな……」
 妙な胸騒ぎを感じながら、リンが表情を表情を強張らせる。
 だが、その問いに答えられる者は……、誰もいなかった。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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