≪壱の剣探索隊≫壱の剣の守護者・アラハースマインド〜突入班〜



<オープニング>


●壱の剣の守護者・アラハースマインド
 壱の剣を守護するように立ちはだかるアラハースマインド。
 アラハースの如きもの。
 アラハースとは非なるもの。
 ギアでありながら、通常のギアを超えるマインド級のギア。
 遥かなる昔、ドラゴンとの戦争における生き残り。
 身体の上部に備えた二門、身体の側部に備えた二門の、合計四門の初期型轟雷砲。
 その体躯は巨大で、その一撃は必殺に値する。
 冒険者30人程度では、普通に立ち向かえば蹴散らされる程の戦力差がある。
 ……ならば、普通に立ち向かわなければいい。
 それが、ミッドナーと探索隊員達の出した結論だった。

●突入
「皆さんの役目は、アラハースマインドの内部に突入する事です」
 ミッドナーはそう言うと、緊張した表情を見せる。
 先行隊員達の報告により、分かった事が幾つかある。
 まず、上部二門の初期型轟雷砲は、空を飛ぶかドラゴンでも無い限り当たらない。
 ドラゴンを相手にして初めて役に立つ角度の為、地を駆ける人間には照準を合わせられないのだ。
 そして、側部二門の初期型轟雷砲。
 これに関しては、地上の人間に対しても撃つ事は不可能では無い……が、命中率は非常に低い。
 最も、まともに直撃すれば死体すらも残らないだろうし……直撃は免れても重傷に至る可能性がある。
 そして、アラハースマインドの胴体を支える多脚ユニットだ。
 常に動きまわるアラハースマインドを抑え込むには、人数が圧倒的に足りない。
 だが……アラハースマインドの武器は、初期型轟雷砲だ。
 つまり、それを撃つ時だけは、その動きが止まる事になる。
 その隙に、内部へと突入班を突入させるのがベターだ。
 外側が頑強なアラハースマインドとはいえ、内部から壊せば動きは止まる。
 丁度、胴体の一部に空いている巨大な穴も発見されている。
 足止め班が多脚ユニットの動きを命がけで止めている間ならば、比較的安全に内部に潜入する事も可能だ。
 最も、簡単にいくとも思えない。
 何らかの防衛機能が保険として用意されている可能性もある。
 それも撃滅し、出来るだけ早くアラハースマインドの内部の機械を破壊し……その機能を停止させる。
 それが足止め班が為すべき役目。
 作戦の成否を握る、重要作戦。
 自分達が成功しなければ、全ては無駄となる。
 その想いを胸に、突入班の面々は武器を取る。
「信じてますから……最良の、結末を」
 そんなミッドナーの言葉を、背に受けて。


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参加者
朽葉・エリファレット(a06546)
白楽天・ヤマ(a07630)
饗宴の思索者・アレクサンドラ(a08403)
紅虎・アキラ(a08684)
月無き夜の白光・スルク(a11408)
ディッツィローズ・ヒギンズ(a33003)
探索士・エルヴィン(a36202)
小さな薔薇の笑顔・ニンフ(a50266)
猟狂狼・ズィヴェン(a59254)
春夏冬娘・ミヤコ(a70348)
赤を継ぐ者・コトリ(a70928)



<リプレイ>

「竜の屍の中に鎮座する巨大剣と機械仕掛けの女王蜘蛛か。実に良い眺めだ……壊すのが惜しい」
「私、マインドって見るの初めてなんだよね〜。コレがそうか……。神様達も偉いもん残してくれたもんだわ〜。まぁ〜勝手にココに踏み込んだ、私等の自業自得なんだけどさ」
 遠い弔鐘・エリファレット(a06546)は、木陰の中からそう呟いた。
 それに答えるように赤を継ぐ者・コトリ(a70928)も、木陰からアラハースマインドを見上げる。
 此処は、アラハースマインドから離れた木陰の中。
 彼等突入班の面々は、突入のタイミングを伺っていた。
「また随分と壊し甲斐がありそうな奴が出てきやがったな。心配無ェ、ぶっ壊すのは大得意だ」
 紅虎・アキラ(a08684)が、実に狂戦士らしい言葉を口にする。
 そう、彼等が目指すのは、アラハースマインドの内部からの機能停止だ。
 その為には、叩き壊すのが一番手っとり早い。
「旧型とはいえ、稼動しているマインド級か……ドラゴンとの戦いが続くであろう今後を考えると勿体無いが、やむを得ないか」
「こいつを壊さないと前に進めないみたいなぁ〜ん……なら、ぶっ壊していいなぁ〜ん!」
 探索士・エルヴィン(a36202)に、小さな薔薇の笑顔・ニンフ(a50266)がそう言って笑う。
「中に小さな蜘蛛さんがわらわらいたりは……しませんわよね」
「行ってみれバ分かるサ……」
 猟狂狼・ズィヴェン(a59254)と春夏冬娘・ミヤコ(a70348)はそう言って笑い、すぐにアラハースマインドに視線を戻す。
 今、アラハースマインドの脚部ユニットの動きが止まった。
「よし、走るぞ!」
 月無き夜の白光・スルク(a11408)は、仲間達を先導するようにアラハースマインドの正面を避け、逆方向に回り込むように走る。
 こうしている間にも、囮班の面々は危険に晒されている。
 少しでも速く、自分達の役目を果たさなければならない。
 響く轟雷砲の音を耳に、饗宴の思索者・アレクサンドラ(a08403)は辿り着いたアラハースマインドの下から上の穴を眺める。
 粘り蜘蛛糸を放ち、胴体部分の穴へのロープ代わりにする。
「よし、速く行くわよ!」
 ディッツィローズ・ヒギンズ(a33003)にエルヴィンにスルク、ミヤコにコトリ、エリファレットも粘り蜘蛛糸を使い登っていく。
「……行ってきます」
 対する白楽天・ヤマ(a07630)はチェインシュートを撃ちこむ事で登っていき、アキラやズィヴェンも先に登っていく仲間達に便乗するように登っていく。
 登って行く途中で正面を見ると、囮班の仲間達が初期型轟雷砲を必死で避け続ける姿が見える。
 此処からでも……いや、此処にいるからこそ感じる、轟雷砲の威力。
 彼等の負担を減らす為、ヒギンズは手に力をこめ、少しでも早く登ろうとした。
「……よし、全員登れたね」
「そのようだな」
 ヤマの言葉に応え、エルヴィンはウェポン・オーバードライブで自分の武器を呼び戻す。
 同時にズィヴェンが、タスクリーダーで突入成功を仲間達に伝える。
 これで確実に外の囮班達に突入成功が伝わるはずだ。
「よし、行こう」
 エリファレットに促され、探索隊員達は奥へと進んでいく。
 アラハースマインドの内部には明かりなど無かったが、エネルギーの流れが充分すぎる程に内部を照らしていた。
「これならホーリーライトもいらないなぁ〜ん」
 ニンフはそう言うと、辺りを見回す。
 アラハースマインドの内部は狭く、歩きづらい。
 元から人間が乗りこむように作られていない事が良く分かる設計だった。
「この流れを追えば、重要部分が分かるだろうか……」
「やってみる価値はあるのう」
 アレクサンドラにスルクも頷き、壁のエネルギーの流れに沿って突入班の面々は進んでいく。
「ん……ここ、なんか塞がれてるね」
「うし、任せろ。ぶっ壊す」
 コトリに応え、アキラが目の前の壁にクリムゾンディザスターを振るう。
 外側程硬くは無いのだろう。壁はあっさり壊れ、その先の道が現れる。
「エネルギーの流れは……その先ですわね」
 ミヤコがエネルギーの流れを見て、仲間達も頷く。
 アラハースマインド内の探索は、実に順調だった。
 エネルギーの流れは単調で、全ての流れが1つの方向へと向かい流れていた。
 恐らくは轟雷砲にエネルギーを供給する必要があるせいだろう。
 あるいは、1つの集中する制御装置があるせいかもしれない。
 どちらにせよ、道の分かっている迷宮程攻略しやすいものはない。
 エネルギーの流れという道案内に従い、ニンフ達は先へと進んでいく。
「……ん?」
 それからしばらく進んだ時。アレクサンドラは、奇妙な流れを目にした。
 そのエネルギーの流れは、まるで支流のように上に向かって進んでいく。
 それも尋常ではない数だ。これ程のエネルギーの流れが必要なものといえば……。
「上部轟雷砲……だろうか?」
 壊すべきだとアレクサンドラは考えた。
 側面の轟雷砲の流れが見つかれば一番いいが、外の囮班の苦労は少しでも減らしておきたい。
「うん、壊そう」
「……だね」
 ヤマもヒギンズも……仲間達は、アレクサンドラの提案をすぐに受け入れた。
 ヤマのサンダークラッシュが壁のエネルギーラインを破壊すると、その部分が暗くなる。
 と同時に何処かの機関が止まったような音がする。
「じゃあ反対側も……ダナ」
 ズィヴェンの攻撃が反対側のエネルギーラインを壊し、やはり何処かの機関が停止するような音がする。
「これで上へと向かうエネルギーラインは停止したようだな」
 エリファレットがそれを確認すると、仲間達も頷く。
 これで轟雷砲が本当に止まったなら、それでいい。
 そうでなくとも、外の囮班の生存率が上がるような機関が壊れていればいいと思った。
「よし、先行くぜ」
 アキラがそう言った時、アラハースマインドの中で激しいサイレンのような音が数秒間鳴り響いた。
 壊した事で防衛機能が働いたのだろうか?
 思わず身構えるが、何も起こらない。
「……なんだったんだ」
 エルヴィンが呟くが、誰も答えを持ってはいない。
 ……だが、その答えは更に進んだ時に見つかった。
「なんだこりゃ……ギア……か?」
 壁の数か所に空いた穴のような場所に、ギアと思しき像が安置されていた。
「ヴァルキュリア・ガーディアン……かな?」
 アトリが、それを眺めてそう呟く。
 そう、そこにあったのは間違いなくヴァルキュリア・ガーディアンだ。
 だが、それらは全て壊れているのか、全く動かない。
「……長い年月の間に、壊れてしまったのかもしれないな」
「ラッキーですなぁ〜ん」
 エルヴィンの分析に、ニンフが胸をなでおろす。
 ひょっとしたら、先程のサイレンはヴァルキュリア・ガーディアンを発進させる為のものだったのかもしれない。
 だが、それが壊れていたのはニンフの言う通り、実にラッキーだ。
 こんな所で余計な時間など、使いたくはない。
 そしてこの事実は、ある希望的な観測を彼等にもたらす。
 防衛機能のほとんどは役立たずになっているのでは……?
 そう思わざるを得ない。
 このヴァルキュリア・ガーディアンの姿が何よりの証拠だ。
 ここまでの順調すぎる道程も、そう考えれば実に納得がいく。
「ここにはもう、ドラゴンもかみさまもいないよ……だから、おやすみ」
 スルクが機能を停止したヴァルキュリア・ガーディアン達にそう呟く。
 そう、此処でアラハースマインドが倒したドラゴン達は化石となり。
 此処での戦いを命じた神々も、このフラウウインド大陸にはもう居ない。
 彼等ギアが此処で戦う意味は、もう無いのだ。
「よし、じゃあ先いこっか」
「だな」
 コトリに頷き、アキラを先頭に再び奥へと進んでいく。
 やはりその道程は順調で、問題と言えば進みにくさくらいだった。
「……ん? あれは……先程と同じものだろうか」
 エリファレットが、道の先にあるものに気がつく。
 そこはどうやら、今までの中では一番広い空間のようだった。
 そして、その奥の部屋……のようなものの入り口の前に、何か石像のようなものがある。
「間違いないわね。ヴァルキュリア・ガーディアンよ」
 ヒギンズが、そう答える。
 普通のヴァルキュリア・ガーディアンと比べると少し大きいようだ。
 役割を考えれば、アラハース・ガーディアンといった所だろうか?
「……動かないみたいだな」
 しばらく観察して、エルヴィンがそう呟く。
 此方が見えているならば何かの反応を見せても良さそうだが、アラハース・ガーディアンは何も反応を見せない。
 前に見たものと同じように壊れているのだろうか?
「……どちらにせよ、もっと壊さんと先には進めんのう」
 スルクが前に進み出て、スパイラルジェイドを放つ。
 それはアラハース・ガーディアンに突き刺さり……澄んだ駆動音と共に、アラハース・ガーディアンが両手剣を構えて振り下ろす。
「ぬうっ……!?」
 避けきれずに一撃を受けるスルク。その一撃は重く、素早く。確実に体力を削る。
「あの奥が中枢という事で間違いなさそうだ……!」
「何とか足止めしといて、その隙に中枢を叩き壊そう!」
 アレクサンドラはクリムゾン・クラウンをはめ直し、ヤマが戯戮天・真打を構える。
「じゃあ、まずはあそこからどいて貰わないとね!」
 ヒギンズもThe Empressを構え、エリファレットとミヤコ、ニンフの身体が黒炎に包まれ覚醒の時を迎える。
「よし……やるか」
「ああ。今回は長居する必要も無ェ、ならとっとと纏めてぶっ壊して出ちまうとしようぜ」
 エルヴィンに応え、アキラもクリムゾンディザスターを構えて突進する。
 アラハース・ガーディアンもそれに応えるかのように両手剣を振るう。
 だが、如何にヴァルキュリア・ガーディアンの強化型とはいえ、場所が悪かった。
 狭い場所で内部を守るべく注意して戦うアラハース・ガーディアンと、壊れるのも構わない……むしろ壊そうと戦う突入班の面々。
 どちらに分があるかは明らかであった。
 やがてアラハース・ガーディアンを完膚無きまでに叩き壊した突入班の面々は奥の部屋のような場所へと入る。
「ここガ中枢部、カ……」
 ズィヴェンは辺りを見回す。
 確かに今までの場所とは違い、様々な場所で様々なものが音を立てて動いている。
「特に操縦席みたいなものはねえな……やっぱり、人が乗る仕様じゃねえってことか」
 アキラは言いながらも、中心にあった小さな塔のようなものにデストロイブレードを振り下ろす。
 エネルギーの流れは、此処に集まってきていた。
 ならば、この塔のようなものがコアのはずだと考えたのだが……どうやら正解だったようだ。
 周りの壁が明滅を繰り返し、サイレンのようなものが何度も鳴り響く。
「神々が遺せし美しき蜘蛛よ、任は解かれた! 眠りの揺籠に戻るのだ!」
「ていうかさ……爆発するんじゃない? これ」
 アレクサンドラの宣言のようなものを聞き流しながら、コトリはボソリと呟く。
 だが、この周りの状況を見る限り……冗談とも思えない。
「俺達が爆発に巻き込まれちゃタマンネェシナ」
「よし、逃げるぞ!」
 ズィヴェンとエルヴィンが、素早く身を翻す。
 転がるように逃げ出す突入班の面々だが、やがてエネルギーの供給が完全に止まり真っ暗になると、もつれるように全員が転んでしまう。
「いってぇ……」
「はやく外の空気を吸いたいですわ……」
「私の上にいるの誰? どいてー」
 やがてニンフのホーリーライトにより、明るくはなったが……エネルギーラインの流れを逆算して戻る事は出来ない。
「心配いらないですなぁ〜ん。口紅で目印つけてきてますなぁ〜ん」
 しかし、これもまたニンフの機転で難なくクリアして来た道を戻っていく。
「……」
 ヒギンズが、ふと考える。外の囮班はどうなっているだろうか……と。
 だが、きっと問題は無い。完全勝利だろう。
 そして、此処を出た自分達も合流して……最高に美味しい勝利の美酒を味わう。
 それはきっと、高望みではなく。そんな未来が、そんな結末が。
 彼女には……突入班の仲間達には見える。
 外へと繋がる穴から聞こえてくる仲間達の楽しそうな声が、その想像を確かなものにしていく。
 掴んだのは、最良の結末。
 これから掴むのは、最良の結末の……更に先……最良の明日。
 突入班の面々は、やり遂げた充足感を胸に囮班の面々と合流するのだった。


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