<リプレイ>
●喪失した姿 アンデッド達の蔓延る地、地獄。 そこに巨大なアンデッド達が現れるという話を聞いた8人の冒険者達は、この陰湿なる地、地獄を訪れていた。 周囲には陰気なる気が漂い、どこか……余り居たくないような空気を感じる事が出来る。 「……地獄での依頼は始めてですが、頑張らないと行けませんね……」 藤色の遍歴・アルカス(a74407)がぐっと拳を握りしめながらぽつり呟くと、その言葉にうんうんと頷くのは黒き咆哮・ルージ(a46739)と紫穹の医術士・パナム(a58767)。 「少しでも元気を取り戻せるように、ボク達が頑張るなぁ〜ん!」 「そうだな。戦い終れば地獄の人達との接する時間もある。アンデッドは兎も角として、楽しい一日になりそうだ」 笑みを浮かべるパナム。 今回の依頼の目的は二つ。 一つは勿論、巨大なアンデッド4体を倒す事であるが……もう一つは村人達と交流して来る事。 「やっぱり、地獄の依頼は交流が多くて、凄く楽しみですよね。同時にアンデッドも多いのはとても嫌な事ですが……」 と、朱に秘めた悲しき覇者・アシュレイ(a76719)が微笑んだ……その瞬間。 「……うぉおっ!?」 そんな時、突然声が響いてくる。 その声の主は……天弓・カガミ(a76837)。 「ん、どうしたのじゃ?」 言いくるめのペ天使・ヨウリ(a45541)が其の声に尋ねると、カガミは……目を見開きながら。 「……ルラル、こいつが芸術ってやつか!? そう……なのか?」 その手にはルラルお手製の博物図鑑。 盗み見たカガミであったが……どうやらルラルのとっても良くも悪くも素晴らしい絵風にびっくり仰天したらしい。 なぁ、なぁと見せてくるカガミ……そんなカガミに、瑠璃溝隠・ヘキ(a66086)もその絵を見て……一瞬。 「……まぁ、これも個性……って事でいいんじゃないの?」 「個性でいいのか……これ……」 更に驚くカガミ。その手の本を……肩をたたきながら受け取ると。 「まぁ、子供達がどのような反応をするかは解らないけど……折角のルラルの依頼だしね」 (「そう、だからこそ……ルラルの本、無事に届けないと……」) そんなヘキの言葉に、ん、まぁ……と一応頷くカガミ。 「あ、見えてきましたですわ」 月下蒼花・ケイカ(a35769)が指さした先には、生活の跡残る村の影。 どうやら村自体は特に問題は無いようで……少しは安心出来る。 「それでは、行くかのぅ。どこにアンデッドがいるかも解らぬし」 ヨウリの言葉に皆頷き、一端皆で村を訪れる。 そして……アンデッド達の居場所や、配置状況、その他必要な情報を村人達から聞き出す。 勿論……聞き出す間も。 「必ずわしらがアンデッドを倒して見せましょうぞ。だから大船に乗った気持ちでいるのじゃ」 と、それぞれヨウリの言葉にほぼ似た言葉で村人の人達を安心させるのであった。
そして村人から話を聞いた冒険者達は、その情報を元にして村を出る。 アンデッドの影の探索……敵に気付かれないように周囲を特に警戒しながらも、その影を探す。 ……村を出て数刻。遠くに見えるのは……巨大な姿。 「いたなぁ〜ん!」 ルージの言葉に遠眼鏡を使い、その姿を改めて確認する仲間達。 「……1、2……3、4……確かに四体いるな。しかもそれぞれが距離離れてらぁ」 改めてカガミが数を確認。そしてアシュレイとヘキも。 「ルラルの伝聞は正しかった訳、と……まぁ、ともかく村の皆が落ち着いて暮らせるように、それが終りましたら是非とも子供達と楽しく遊びましょうか♪」 「そうね。4体居るのは厄介だけど、同時に攻撃を受ける心配が無い分マシね……個々の戦いでは勝てない敵もあるのだと、教えてあげましょう? ……まぁ、それを知る頃には、既に消える時でしょうけど」 「違いない……ともかく可愛い子供達と遊ぶのは楽しみですね。何をやってあげたら喜ぶのでしょうか」 二人がそう会話している間にも、ドシン、ドシンと音を立てて近づき始めるその影形。 遠眼鏡を使わずともその姿を視認出来る距離まで近づくと……その異様な姿にケイカがぽつり。 「……悲しい姿をしていますね……」 そう言うケイカの心の中には、村人を助ける一方、アンデッド達への弔いの気持ちも生まれ始めていた。 元々は冒険者であったのかもしれない。地獄における、変わりゆくなれの果ての姿がこの形。 「……死んだら必ずアンデッドになるというのも悲しい話ですね……」 「でも、もうこうなったら仕方ないなぁ〜ん! 皆、行くなぁ〜んよ!」 アルカスの言葉にルージがそう告げ、一気に冒険者達はアンデッドの下へと走り始めた。
●腐りし後に 「……まずは、私が相手になるわよ」 並んだ四体のアンデッド達。その一番最前線へと立つアンデッドに対峙するのはヘキ。 『……』 大きく腕を振るうアンデッド。しかしその攻撃をライクアフェザーを使って回避すると共に、前へと降り立つ。 ……更に後には三体のアンデッド達が、次々と歩いてきている。 「俺達がしっかりと足止めしているから、三人宜しく頼むぜ」 パナムの言葉に頷くケイカ、アシュレイ、ルージ。 「……良し、行くよ」 狙い澄まし、一番前のアンデッドにスキュラフレイムを放つ。 更に後のカガミもライトニングアローを放ち、アンデッドに手出しをさえない程の攻撃を繰り広げる。 「それでは行きますよ」 アシュレイの言葉に続き、更に後に住まうアンデッド達へと次々と正対していく仲間達。 それぞれの対応を行うアンデッドの所へと展開が済んだ事を確認するが後……後衛に控える者達は。 「それでは……まずは全力で1匹目を倒すぞ」 「そうね。さぁ……この一撃、その身に刻め……!」 ヘキの至近距離からのソニックウェーブ。 更に先ほどのアルカスとカガミの攻撃に続き、パナムも。 「これなら効く……はず」 と、慈悲の聖槍を加えて放つ。 対してのアンデッドは……その巨体を大きく振るわせながら、その手に持ったまた巨大な武器を振り落とす。 砂埃が一気に戦場に舞い踊り、視界が奪われる。 「くっ……」 すかさず武器を目線の高さまで上げるヘキ……そして砂埃の中から巨大な手が現れ……襲い掛かってくる。 武器と共にその攻撃を受け止めるが……そのしびれが腕に残る。 「中々……厄介な敵のようですね。ならば、出来得る限り早急に潰すのが良さそうですか」 「そうだな……息も突かせぬ攻撃で一気に仕掛けるか……残る3人がこのまま堪えきれるかも不安だしな」 短くアルカスとカガミが呟き合う。 ……奥には更なるアンデッドがいる。 ケイカ、アシュレイ、そしてルージの三人がまだアンデッドと闘っている。 決して自分を突破されないように……突破されれば、それは作戦失敗を意味するのだから。 「何であろうと、絶対に通さないなぁ〜ん。抑えている間に、早くそっちをお願いなぁ〜ん!」 「……私の後は絶対に通しませんよ? それをしたければ倒す事です」 ルージとアシュレイの決意の言葉が戦場に響き渡る。至る所からは地面を殴りつける音や、砂煙が上がり続ける。 全てが距離を離しているからこそ……相手にとっての有利な点は、冒険者達の方にとっても有利な点。 決して敵の範囲攻撃は冒険者達にとって大きな被害を及ぼすことはない訳で……確実に一体ずつを倒す事に傾注する事が出来る。 着実に敵の体力を削り行く冒険者達。 一体目のアンデッドを倒すまでは、かなりの時間が経過してしまうと、勿論……他のアンデッドと闘う仲間達にもその分の疲弊が生じてきていた。 「中々苦戦してしまったな……回復に回るから、攻撃を頼む」 パナムはそう言いながら、アシュレイとルージの下へと接近し回復を行う。 残る仲間達が、再び一体のアンデッドの前に立ち塞がり……攻撃。 最前線で攻撃する物が一人増え、二体目のアンデッドを倒すと共に、続けて……三体目、四体目へと続いていく。 一人ずつ増えていく前衛の攻撃が、アンデッドの体力を削り取るスピードを加速度的に上げていく。 そして……最後のアンデッド。対するは、前衛の四人。 前後左右……四方を取り囲むと共に、逃亡の隙をも与えない。 「さて……残りは一人、行くなぁ〜ん!」 全力を込めたルージのデストロイブレードが、アンデッドの身体を一気に両断する。 そして……全てのアンデッドを倒すと共に、その残骸を細かく潰すのであった。
●一時の癒し 無事にアンデッド達を倒した冒険者達は、そのまま村へと戻っていく。 小さい子供達が、わーっとなって集まってくると共に……ケイカが。 「無事にアンデッドさん達は倒しました。もうこれで……皆様の驚異に成る事は無いと思います」 その言葉に沸き立つ村人達。 もう一つの依頼……地獄に住む子供達との交流がまだ残っている訳で。 冒険者達の周囲に集まった子供達の頭を一人一人撫でながら。 「……なぁ〜ん。子供達、一緒に本読まないかなぁ〜ん?」 と、ルージはルラルの本を皆に見せながらが提案。 更にカガミが。 「それじゃ俺はカレーを作るとするか。ケイカ、一緒に作ろうぜ!」 「ええ。子供達の為に一杯作りましょうか♪」 と大人子供関係なく食べられるカレーを提案。 更に……アシュレイは、どこから持って来たのか……多数の楽器をその場に下ろすと。 「折角皆さんと会えるという事でしたので、楽器を沢山持って来ました……もしよければ、皆さんと一緒に演奏などどうでしょうか……?」 と……それぞれ思い思いの方法を子供達に提案する。 『ボク、カレー食べたい〜』 『えー、楽器っていうのも面白そうじゃん〜。楽器にしようぜ楽器〜』 『えと……私は本がいいな……地上の本……余り見ないし……』 100人100通りの考え方があるように……あれもしたい、これもしたいという思いが口に出てくる。 「まあまあ、カレーは料理に時間が掛りますし、絵本と楽器で暫し楽しんでて下さいですわ」 見上げてくる子供達の頭を撫でながらケイカが言うと、カガミもうんうんと頷いて。 「そうだぜ。だから良い子にしてて、ルージ達と遊んできな!」 『はぁ〜い!』 本当に素直で良い子供達。そして……料理で二人がその場を外れると、ルージ、ヘキ、アルカスの三人が絵本を読み聞かせる役に、そしてアシュレイが楽器体験の役へと付く。 ……ルラルの描いた絵本。それを膝の上に載せながら。 「こう見えても、ぼくにも絵心があるから、ルラルさんの描いた絵本には興味あるなぁ〜ん」 「私も……興味あるわね。さて……どんな絵が描かれているのやら……」 興味津々……大変な期待が掛る。 一枚目……表紙を開く。 『ルラルのはくぶつひゃっか』 可愛い字体で描かれているのは、子供受けを狙ってのことか、それとも天然なのか……。 「期待出来そうですね……」 続けて二枚目……初めに描かれていたのはうーちゃん。 「……これ、動物じゃ無いような気が……」 ヘキが額に汗を浮かべる……。しかし、更に三枚目、四枚目……鳥や植物、昆虫の姿が次々と一枚ごとに描かれている。 ……その絵風はちょっと独特で、好き嫌いがはっきりしそうな絵柄である。 「……特徴は良く掴めているとは思うけど……何と言うか、独特な絵ですね」 苦笑を浮かべるアルカスに、ふふ、と微笑みながらヘキが。 「そうね……でも、上手だと思うわ。皆はどう思う?」 皆の顔を見渡しながら尋ねるヘキ。 その質問に……忌憚なく答える子供達。 勿論子供達に取っては、全てが見知らぬ動物植物達な訳で……。 『これってこういう動物なんだねー。足が羽根のうえに生えてるよ〜?』 『ランドアースって、こういう動物がいるんだ〜。楽しそうだね〜』 ……曲解している気がしないでもないが、ランドアースについて知りたいと思う気持ち。 それを大事にしたくて……道を誤りすぎないように歩かすが適宜修正を入れながら、絵本を読み聞かせていった。 その一方アシュレイは子供達一人一人に楽器を配り、音の出し方を教える。 「ふふっ。中々難しいかもしれないですよね? でも諦めないで見てください」 そう励ましつつ、一人一人の音に耳を傾け、吹き方のコツを伝授する。そして……一つ綺麗な音が。 「綺麗な音が出ましたね? 上手ですよ」 と頭を撫でて褒める。 そして……数刻。段々と音が出始めたのを見て。 「苦手な子もいれば得意げに披露する子。いろんな子がいますよね。それに楽しそうな、幸せそうな子供達の笑顔……勇気づけられますね。これからも……頑張らないといけませんね」 ……と、微笑みながら暫しの時間過ごすのであった。
そして……それから暫し。 「はい、もうすぐ出来ますからね〜♪」 甘すぎず、辛すぎずの味に調整された、ケイカとカガミのカレーライスが並べられると、子供達もそのカレーの前へ。 「勿論、大盛りも大丈夫ですから、お腹いっぱい食べて下さいね〜?」 まるで食堂のお姉ちゃんみたいに笑顔でテキパキと配膳していくケイカ。 「それじゃ食べるか……皆、ちゃんと手を合わせてな」 食事の挨拶をすると共に、皆一斉に食べ始める子供達。 カレーの中にはケイカ特製の人参の花飾り切りも沢山入っていて……見た目にも美しかった。
食後。 「食べて寝る……それは身体に良く無い。だから皆で遊ぼうか」 パナムはそう言いながら子供達を集めると、鬼ごっこやらかけっこやら……子供達の身体を動かす運動を提案。 更に……その輪に加わらない子供達は、ヨウリが一人一人に声を掛けながら。 「……ある人の言葉にこんな言葉がある。夢+努力=現実、とな。よいか、現実を嘆いて、夢を棄てては現実は変わらんし、それに向かって努力する事が一番じゃぞ。他人は変わってくれぬ。変われるのはおのれだけじゃぞ」 と、ヨウリはヨウリなりの言葉で……そんな子供達を励まし元気にさせる。 そんな中、一番遊ぶ……いや、遊ばれていたのはカガミ。 プロレスごっこをすると……ソルレオンの立派な鬣に。 「あだだだ! 俺の自慢の鬣を引っ張るんじゃねぇ!」 『えー? 引っ張る物じゃないのー?』 「ちっがーーう! いい子だから、な、引っ張るなよ、な?」 宥めるカガミ。でも……離さない。 「仕方ないなぁ〜んね……」 それを見ていたルージは、影に隠れてノソリン変身。 「なぁ〜ん?」 ノソリン姿になり現れると共に、子供達の心をぐっと引きつけるルージ。 勿論……鬣を引っ張っていた子供も離れて。 「ふぅ……良かった。サンキュー、ルージ」 「なぁ〜ん♪」 頷きつつ、子供達との交流を楽しみ、時間は……矢の如く過ぎていく。 そして……お別れの日。 「……皆、楽しかったのじゃ」 子供達の頭を撫でるヨウリに、にこにこ微笑む子供達。 地獄と言えども、不幸を幸せに変える事は出来る。 強く生きようとする子供達……幸せを祈りながら、冒険者達は帰路へと着いた。

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参加者:8人
作成日:2008/11/28
得票数:ほのぼの9
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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