山小屋に行こう



<オープニング>


「なんか、こう。ゆっくりしたいですね」
「してるじゃん」
 机に突っ伏してぼーっとしている夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)に、トレジャーハンター・アルカナ(a90042)はパンを齧りながら適当に答える。
「そういうんじゃないんです。なんかこう、リフレッシュできるような」
「寝たらリフレッシュできると思うんだよ?」
 取り合わないアルカナに、ミッドナーはジト目で視線を送る。
「もう冬ですね」
「そうだね」
「さぞかしシロクマが元気でしょうね」
 羊皮紙の束を捲り始めたミッドナーの手から、アルカナが素早く羊皮紙を奪い取る。
「おっけー、ボクに任せて。いい感じの場所見つけるから」
「いや、そういうのはもういいです。それよりですね」
「いいから。任せて。お願いだから」
 シロクマとは出来れば一生涯関わりたくないアルカナとしては、何としてもこの場を乗り切らないといけない。
 必死の攻防の末、山小屋でのリフレッシュ……ということで落ち着いたのだった。
「と、いうわけでして。一緒に行きませんか?」
 ミッドナーは集まった冒険者達の前で、そう切り出した。
 場所は、とある場所にある山小屋。
 辺り一面は雪が積もっていて、すっかり冬の装いなのだという。
 望むならば雪遊びも可能だが、食事は自分達で用意しなければならない。
 何より、最初に山小屋の掃除も忘れてはならない。
「一晩泊って、ゆっくりと英気を養う……たまには、そんなのもいいと思いません?」
 ミッドナーはそう言うと、酒瓶を指でなぞる様にして撫でるのだった。


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参加者
NPC:夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)



<リプレイ>

「雪ですの! 真っ白ですの〜!」
「綺麗ですね……」
 春夏冬娘・ミヤコ(a70348)と大地を歩みゆく者・ラング(a50721)が、山に積もった雪を踏みしめながら笑いあう。
 夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)率いる冒険者達が集まったのは、とある雪山。
 その山頂にある山小屋へと、ミッドナー達は到着していた。
「うわ〜! もう高地ではすっかり冬の装いなんですね!」
「うん、綺麗だね」
 不思議の卵・ロイナ(a71554)と深緑の枝を撫でるそよ風・ミユリ(a74301)も山の下の風景を眺めて伸びをする。
「さ、掃除を始めましょうか」
「雪の山小屋といえば殺人事件の定番だね。犯人はっ……っとそういえばデストは来てないんだね」
「ええ、最近見かけませんね」
 黎明を待つ夢・ユーセシル(a38825)に箒を渡しつつ答えるミッドナー。
「掃除の基本は上からというし……ね」
 そう言って、緑の風の魔女・フィルメイア(a67175)もはたきで埃を落とし始める。
 長い間使われていなかったのだろう。山小屋のあちこちに埃が降り積もっていた。
「雑巾がけしたーいっ。端から端までどれだけ早く拭けるか競争するの!」
 そう言って雑巾を絞る紅炎炎舞・エル(a69304)に絶対拒絶・トーラス(a51761)は静かに笑ってほほ笑む。
「まずは火を入れないと。雪遊びも楽しそうですが、お戻りになった方々を迎える準備も必要でしょうし、ね」
 戦場の白き大鴉・セシル(a72318)が暖炉に火を入れると、薪の燃える音と共に山小屋の中が明るくなる。
「さっさと寛ぎたいんでな。多少面倒でも掃除は真面目にやるさ」
 紅虎・アキラ(a08684)も言いながら小屋の窓を開け始め、ミユリがパタパタと走りながら布団を干し始める。
「ミッドナーとアルカナは初めまして。よろしくお願いします」
「こんにちは、ミッドナー。今回は楽しませてもらう」
「う? ああ、ええ。宜しくお願いしますね」
 近くにあった安楽椅子で寝ていたミッドナーが、朱に秘めた悲しき覇者・アシュレイ(a76719)と彷徨いし鳥を導く者・サフィーア(a76810)にそう返す。
 どうやら小屋の中が暖かくなって眠たくなってきたらしい。
「食事に鍋でも作るかの、豆腐をたっぷり入れたチゲ鍋を」
 その横を光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)が鍋を持って通り過ぎていく。
 掃除が終われば、まずは昼食だ。寒い中歩いてきた者にとっては、暖かい食事は何より嬉しい。
 一方、漢・アナボリック(a00210)は2階で掃除をしていたトレジャーハンター・アルカナ(a90042)にそっと後ろから近付き、耳元でねぎらいの言葉をかけようとして。
「おつかれさごふっ」
「殺気……なんだよっ!」
 渾身の後ろ回し蹴りを受けて窓から下に落ちるアナボリックを、アキラが雪かきで屋根から落とした雪が埋めていく。
「あ、あれ? アナボリック? ごめーん!」
 そんなアルカナの言葉は届いたかどうか。
「よし、今日はお前達に正しい雪遊びの仕方をだな……おい! 誰だ雪玉ぶつけた奴はっ!?」
 掃除と昼食が終わり、皆が雪遊びや夕食の支度に動き出す。
「おにーちゃん、雪だるま作ろっ♪ ボク頭の方を作るからおにーちゃんは胴体ね!」
 言いながら出来ていくエルの雪玉の中には、何やら色々混ざっているような気もする。
「……エル。お前、何も考えずに作ってるだろ。いや、うん。いいよ、これだけ大きいの、よく頑張って作ったな」
 エルとトーラスの作っている雪だるまは、中々立派なものに仕上がりそうだ。
 胴体を担当しているトーラスの雪玉のほうが小さい事を除けば……だが。
「おにーちゃんの雪玉じゃちっちゃくってボクの方が乗らないんだよ? こっちを胴体にする?」
 言われてトーラスがマジへこみをしている中、白狼の傭兵騎士・シーナ(a02280)率いる誓約の剣のメンバーも、他の面々と雪遊びを楽しんでいた。
「……あ……あの……思いっきりはしゃいじゃっていいのかな?」
 言いながらも、愛と情熱の獅子妃・メルティナ(a08360)は握った雪玉をシーナへと投げつける。
 その動きには一切の無駄は無く、威力も最大だ。
「……いやぁ、若いなあ」
 そんなメルティナ達の様子を見て早々に小屋の中に入ろうとするアキラを、フィルメイアがバンダナを引っ張って雪の上に引きずり倒す。
「あら、ごめんなさい。悪気はまったく、これっぽっちもなかったのよ?」
「嘘つけっ!? はしゃいで遊ぶ程の歳でも無ェし、つか寒ィんだよっ」
 抗議するアキラの頭上を雪玉が飛んでいく。
 どうやら、雪合戦に参加した人達の雪合戦の真っ最中のようだ。
「氷を混ぜるのは反則だぞ……!?」
「純粋な雪製だ、安心しろ」
 言いながら紫天黒狗・ゼロ(a50949)がシーナに投げるのは、雪を丹念に押し固めて氷にした特製の雪玉だ。
 その硬度は、氷玉と何の代わりも無い。
 つまるところ、氷玉である。
 更に抗議しようとしたシーナのこめかみに、高速の雪玉が命中する。
 脳を揺らす衝撃によろめくシーナの目に映ったのは、ミヤコの姿。
「ささやかな乙女の夢の為に雪にまみれて下さいませ」
 集中攻撃を受けるシーナを余所に、紅蓮の月・エフェメラ(a63888)はぼんやりと雪景色に視線を送る。
 銀世界に昔の光景をふと思い出すが、そういった気分には中々ひたらせてくれないらしい。
 誰かの投げた雪玉の感触に、ふと我に返り。
「景色に見惚れていただけだ」
 そう言うとエフェメラも、足元の雪を掬って雪玉を作る。
 一方のミヤコはせっせと雪うさぎ作りに励んでいる。
 まさかそれを投げるわけではないだろうから、純粋に雪遊びに移行したようだ。
 よく見ると、離れた場所で紋章打の使い手・エリス(a00091)も雪うさぎ作りに励んでいる。
「アルカナさんは、なんでシロクマが嫌いなんでしょうかねぇ。可愛いのに……」
「シロクマはね……言うのも恐ろしいんだよ……」
 実は某六角眼鏡の似合う人物のせいなのだが、此処では詳細は省く事になる。
 ミヤコとエリスの作る雪うさぎは山小屋を守るかのように並び、可愛くも頼もしい姿を見せている。
「……平気か?」
 首だけ残してゼロやメルフィナ達に雪に埋められたシーナに、エフェメラがそう声をかける。
 鼻を摘まんでふがふが言うシーナと、後ろから雪玉の流れ弾を受けてシーナの頭の上に倒れこむエフェメラ。
 思わず響く笑い声は、誰から発したものだったか。
 そんな声を聞きながら、山小屋の中では食事の支度に追われていた。
「皆、元気ですね……風邪なんか引かないで下さいよー? あ、パンは焼けてますか?」
「美味しいですよ」
「食べたらダメなのじゃっ!」
 華凛・ソウェル(a73093)が焼いたパンを、ミッドナーがモクモクと美味しそうに食べて、プラチナが慌ててパンを遠ざける。
「スープのほうもいい感じに煮えてますね」
「あ、ほんとですね」
「ダメなのじゃ」
 早速つまみ食いをしようとするミッドナーを押しとどめるプラチナ。
「こっちの野菜はサラダ用なの?」
「あ、それは適当に刻んじゃってください」
 ミユリに答えながらも、ソウェルはパタパタと忙しそうに動く。
 今宵の料理は、ソウェルの案で野菜のシチューにサラダ、パンである。
「む、お芋が生煮えですよ?」
「い、いつの間につまみ食いをっ」
 そんな厨房の様子を眺めながら、男性陣はぼーっとその様子を見つめる。
「……食卓をかたすか」
「……そうだね」
 言いながら厨房からコソコソと離れていくアキラにユーセシル。
 男子厨房に入るべからず、とは。
 料理が男らしくないから、とか。
 そんなくだらない理由では決してない。
 居るだけ邪魔だから厨房という戦場に近づくな馬鹿野郎、という意味なのだ。
 料理の出来ない男性諸氏は逃げずに新兵として料理に挑むべし、である。
「この寒い季節に裸エプロンで作るとは……アキラ……恐ろしい子……」
「熱でもあんのか?」
「凍ってたもんねえ」
 食卓で何やら想像するのが恐ろしい事を言うアナボリックに返すアキラとメルティナ。
 暖かい食事は大好評のうちに終わり、部屋分けはミッドナーの「めんどいです」の一言で、特に希望の無かった者以外は男子と女子の二分である。
 しかし、お泊り会ともなれば当然互いの部屋に遊びに行くものが出る。
 大人な面々はそうして、部屋の隅でお酒を飲んでいる。
「フラウウインドでは、のんびりお酒も飲めませんでしたねぇ。でも、すごく楽しかったですよぅ」
「食生活が荒んでましたからね……」
「全くだ……この酒、うめえな」
 エリスとミッドナー、アキラがフラウウインドでの生活を思い返す。
 確かに、酔う暇もなければ食生活も酷かった。
「若いってのは良いなぁ……この寒いのに裸にエプ」
「酔ってんのか?」
 アナボリックが寝言のような事を言っていると、プラチナがやってくる。
「飲むのなら軽く摘まむ物でも作る故いってくりゃれ」
「えい」
 ぷにりとプラチナの頬をつまむミッドナー。酔っているのだろうか。
「改めてお帰り、でお疲れ様」
 頬をさすりながらつまみを作りに行ったプラチナと入れ替わりで、今度はユーセシルがやってくる。
「えい」
「ふじふぃふぁへっふぇふぃへふぉふぁっふぁ」
 無事に帰って来て良かった、と言おうとしたようだが。
 ミッドナーが頬をつまんだせいで変な言葉となって出てくる。
「未知の大陸、心配半分嫉妬半分かな。私も行きたかった」
「じゃあ、一緒に行きましょう」
 そう言うと、アナボリックの手から熱燗を奪うミッドナー。
「……今は無理ですけどね? そのうち、でよければですが」
 明らかに酔っているが、何だか口調が柔らかい気もする。
 心なしかほんわかした雰囲気を、飛んで来た枕が破る。
 スクリューしながら飛来する枕はユーセシルを右横に三回転させながらふっ飛ばす。
「枕投げっ♪ 枕投げっ♪」
 エルとフィルメイアの始めた枕投げが伝染したらしい。凄い暴れ具合である。
「若いっていいなあ」
「そうですねえ」
「いやいや、そういう年じゃねーだろ」
 思わず入った突っ込みも、実に空しきかな。
「フォーナ祭ってどんな感じなのかな〜?」
「フォーナ祭っていうのはね……」
 大体の者が寝静まった後、ロイナとミユリは並んで寝ながら話をしていた。
「プレゼント選びはいつも悩んじゃうんだよね……」
「プレゼントかあ……」
 そんな会話が交わされている部屋とは別の二人部屋でも、恋人二人の静かな会話が交わされている。
「寒いかと思ったので、飲み物を用意した……」
 サフィーアの用意した暖かい飲み物を口に運んで、アシュレイは呟く。
「サフィーアと居られることが、とても幸せです……」
 窓の外の銀世界すら、アシュレイはサフィーアの引き立て役だと思った。
「この時間がとても愛おしい……」
「共に居られる事、幸せに思う……誘ってくれて、有難う」
 そんな恋人達も、大部屋の人達も。全てが眠りについた頃。
 静かにセシルは部屋を抜け出した。
「……」
 無言のまま、白い息を静かに吐き出す。
 自分の気持ちの整理をしたくて出てきた外は、本当に綺麗で。
 あれだけ踏み荒らした地面も綺麗に雪でコーティングされていて。
 大きな雪だるまと、整然と並ぶ雪うさぎだけが、昼間を思い起こさせる。
 外は一面の銀世界。静かに降る雪は、騒ぎ疲れた人達と。飲みつぶれた一部の馬鹿者達を、静かに包んで降り積もる。
 静かに……ただ、静かに。


マスター:じぇい 紹介ページ
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作成日:2008/11/30
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