タロスの聖域攻略戦:A HUGE BATTLESHIP IS APPROACHING FAST!



<オープニング>


●コルドフリード大陸のグリモア
 北の大陸コルドフリード。
 ドラゴンロード・ブックドミネーターとの決戦が行われた北の大陸には、多くの古代の遺跡が存在していました。
 その遺跡の中でも最大と思われる北辺の遺跡の調査に向かった『コルドフリード北辺調査隊』は、苦難の冒険行の末、遂に、コルドフリード大陸のグリモアの場所を見つけ出したのです。

 しかし、このグリモアは『絶対不可侵領域』という無敵の防衛網を持っており、調査隊の冒険者の力だけでは、この絶対不可侵領域を撃ち破る事は叶いませんでした。
 これを撃ち破るには、同盟諸国の冒険者の力を結集する事が不可欠です。
 今こそ、力を合わせて、コルドフリード大陸の核心に迫る時なのかもしれません。

●A HUGE BATTLESHIP IS APPROACHING FAST!
 よくきてくれた、と葵桂の霊査士・アイ(a90289)が挨拶する。
「コルドフリード大陸で、グリモアが発見されたようだ」
 詳しいことはわからないが、これでタロスを同盟諸国に迎え入れることが可能になるかもしれない。
 だが、ことはそう簡単ではないようだ。
「このグリモア周辺には『絶対不可侵領域』というものがあり、通常の方法では侵入できないといわれている」
 しかもこの領域内から、侵入者を排除する目的で戦闘艇が出現するらしい。
「これは、地表スレスレに浮遊する透明な多面体だ。全長にして成人男性の五倍から六倍、『ギア』が操縦しており、その攻撃・防御の総合力は、並のモンスターを軽く上回っているだろう」
 だが考えてみてほしい、とアイはつづけた。
「逆に考えればこれこそ最大の好機だ。どういうことかわかるか、ユウキ?」
 セイレーンの重騎士・ユウキ(a90384)は列席して話を聞いていたのだが、突然話を振られたので戸惑いつつ、
「ええと、つまり……戦闘艇を奪って乗り込めば、『絶対不可侵領域』に突入できるんじゃないか……ということですか?」
「その通り。冴えているな」
「ど、どうもです」
 アイは告げる。急接近する戦闘艇を迎撃、中に乗り込んでギアを倒し戦闘艇を奪い取るのだ、と。
「この戦闘艇を操る事ができれば、絶対不可侵領域を突破する事だ」
 困難であることはいうまでもないが、挑戦しがいのあるミッションであろう!
 この戦闘艇は、どこかしら魚類を思わせる形状をしている。
 中央に一つ、左右にそれぞれ二つ砲塔を備えており、ここから強力な熱線を放つことが可能だ。ただしこの熱線は射程が短く、冒険者に被害を与えられる距離は弓矢より短いくらいだという。
「接近戦に長けた形状のようだな。砲撃に加え、口に似た中央の穴より、伸縮自在の鋭い槍のようなアームを伸ばし攻撃をしかけてくる」
 この槍攻撃が最大の破壊力を持つらしい。
 しかし本作戦の目的はこの戦闘艇を破壊することではない。これを奪取することにある。従って戦闘艇からの攻撃を防ぎ、あるいは避けつつ、外装を破壊して内部への突入口を作らねばならない。
「戦闘艇には自動修復の機能がある。たとえ突入口を作ったところで、三十秒もたてば塞がってしまうだろう。穴を空けたら速やかに内部へ進入するのだ」
 一難去ってまた一難、内部ではギアとの戦いになるだろう。
「操縦者は長身の人型ギアだ。頭部に大きな一つ目を持ち、黄金の甲冑と剣、やはり黄金の盾で武装している。動きは緩慢だが一撃が非常に強力で、手強い相手になるに違いない。この敵を撃破できれば、戦闘艇の占領は完了だ」
「まず戦闘艇の外側に穴を空け突入、そしてギアを倒す……ですか。一筋縄ではいきそうもないですね」
 ユウキはうなった。だがこの挑戦に、血が沸き立つような興奮をも覚えていた。
「そうだな。しかし覚えておいてほしい、この戦いの勝利が、コルドフリード大陸を制することにつながる、ということを。タロスの同盟入りが成功すれば、飛行船などの技術を習得することが可能になるかもしれない。そして、フラウウインドに現れたドラゴンロードとの戦いが好転するきっかけになることも考えられる」
 すなわちこの戦いは、新たなる希望へと辿り着く道だといっていい。戦闘艇の持つ意義は莫大なのだ。
 ここまで聞いて尻込みする冒険者はあるまい! 健闘を祈る!

 !注意!
 このシナリオは同盟諸国の命運を掛けた重要なシナリオ(全体シナリオ)となっています。全体シナリオは、通常の依頼よりも危険度が高く、その結果は全体の状況に大きな影響を与えます。
 全体シナリオでは『グリモアエフェクト』と言う特別なグリモアの加護を得る事ができます。このグリモアエフェクトを得たキャラクターは、シナリオ中に1回だけ非常に強力な力(攻撃或いは行動)を発揮する事ができます。

 グリモアエフェクトは参加者全員が『グリモアエフェクトに相応しい行為』を行う事で発揮しやすくなります。
 この『グリモアエフェクトに相応しい行為』はシナリオ毎に変化します。
 葵桂の霊査士・アイの『グリモアエフェクトに相応しい行為』は『誇り(pride)』となります。
 グリモアエフェクトの詳しい内容は『図書館』をご確認ください。


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参加者
闇夜の鴉・タカテル(a03876)
林の・ルーツ(a10241)
幻槍・ラティクス(a14873)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
朱刃・アコナイト(a56329)
ピースメーカー・ナサローク(a58851)
爆走する玉砕シンガー・グリューヴルム(a59784)
合金紳士・アロイ(a68853)
NPC:セイレーンの重騎士・ユウキ(a90384)



<リプレイ>

●囮
 刃物の如き北風、容赦なく吹きつけてくる。触れる頬より血の滲む気がする。
 されど、魂に灯る炎は揺るぎもしない。
 歴史の導べ・ルーツ(a10241)にとってこの日は、約二年半ぶりの戦となる。
(「久し振りの冒険が古代との邂逅だなんて……冥利に尽きますわ。逸る胸は抑えて、今は血肉を躍らせると致しましょう」)
 ルーツは思う。七つの歴史その一つ……輝く色へ導く為に、と。
 ピースメーカー・ナサローク(a58851)は剣の柄を握り直した。
 耳に届くは、唸るような駆動音。
 地平線の彼方に目をやる。
 はじめ、ただの点に過ぎなかったものが徐々に大きくなり、やがて魚類に似たシルエットを顕した。鈍い陽光を反射する二つの目、鋸のような歯、砲門――ギアの戦闘艇だ。
(「特務の方々に感謝だ。彼らは立派に任務を果たした。今度は我々が結果を引き継ぐ番」)
 ナサロークは瞼を閉じ、ややあって見開いた。
「タロスとグリモアを同盟に迎え入れてみせる! ラティクス殿、ルーツ殿、よろしいか!」
「ええ」
 ルーツが応じ、
「問題ない」
 幻槍・ラティクス(a14873)も閑かに返答した。
 ナサロークは仲間たちと自身に鎧聖降臨を付与する。
 豹のような目でラティクスが告げた。
「派手にやるとするか!」
 同時にスーパースポットライトが発動した。その身より眩い光、奔流となりて溢れ出す。
 これより囮部隊三人、真正面より敵に挑むのだ。
 戦闘艇と接触した!

●突破戦
 たとえるなら火山の噴火、熱く烈しく迸り、冷たい空気を炎の熱風に変える。
 ラティクスは髪が焦げるのを感じた。艇の熱線放射を浴びたのである。
「っ!」
 彼は大きく吹き飛ばされた。されど見せかけ、直撃を装ったにすぎない。
「もっとだ。もっと攻めてくるがいい!」
 戦闘艇は急旋回した。その内部から、長身のギアがこちらを注視しているのがわかる。
 追撃態勢に入る戦闘艇に、ナサロークが剣を叩きつける。だが火花をあげて刃は弾かれてしまう。その一方でルーツはヒーリングウェーブを発動し、仲間の傷口を塞ぐのである。
 囮の三人は少しずつ戦場を移動させていく。目指すは岩場、残りの仲間が身を隠す地点だ。
 粘り強い誘導によりついに船体がその地点に到達した。
 そのとき、
「待つこと久し! 総攻撃開始じゃ!」
 光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)が号令し、勇士たちは一斉に立ち上がった。
「船体右脇の外装を狙います!」
 隼のように斬りこんだのは闇夜の鴉・タカテル(a03876)、黒月魔槍で一の太刀!
 緋の影、それは朱刃・アコナイト(a56329)、沸き立つ血の声に応えるべく、パワーブレードでタカテルに続く!
 疾風、それは爆走する玉砕シンガー・グリューヴルム(a59784)の愛騎、蒼い閃光の尾を曳いて、アコナイトが空けた位置にたどり着く。
「十分にタイミングをあわせないとな!」
 グリューヴルムは鐙に踏ん張り、両手を空けた状態で銀狼を放つ。狼は爪を艇の外装に立てた。
「アロイさん、よろしくたのむぜっ!」
「了解!」
 グリューヴルムの声に応ずは、銀の甲冑重装甲、要塞の如き体躯の重騎士。兜の隙間より覗く眼光は、まるで磨かれたダイアモンドのよう。轟金紳士・アロイ(a68853)だ!
「砕くっ!」
 重厚長大ハルバード、叩きつけて大岩斬と成す!
 追走する騎影あり。フルアーマーにフルヘルム、小兵ながら懸命に付いてきている。セイレーンの重騎士・ユウキ(a90384)だ。アコナイトらがつけた傷痕に一刀を加える。
 プラチナのタイラントピラーが、岩の上より戦闘を見下ろしている。
 だがピラーの瞳に映る戦闘艇は、傷つきつつも綻びはない。
「まだ抜けぬか!」
 大岩斬を叩きつけ、プラチナは奥歯を噛みしめた。
 囮部隊の誘導、突入部隊の伏兵と一斉攻撃――ここまでは作戦通り。
 予測の外にあったのは戦闘艇の強度である。刃は通らぬばかりか、銀狼なども弾いている。一発突破とはいかなかったようだ。
 奇襲の効果もここまでとなった。一行の狙いを悟ったギアは、操縦桿を強く押し、包囲突破を目指したのである。
「させない!」
 タカテルは即反応、猛追しさらなる一撃を見舞う。
 しかしタカテルの奮闘も戦闘艇の勢いは止められない。戦闘艇は包囲網を破ると剃刀のような弧を描き、反転して攻め込んできた。
 矢面に立つのはやはり、囮部隊の三人。
 ラティクスは腕から激しく出血している。艇の突進で受けた傷だ。
 これを見るやナサロークは彼を守る位置に立ち、戦闘艇に向かって声を上げた。
「ギアよ、動きが鈍くなったぞ、憶したか! さもなくば私を狙ってみるがいい!」
 不敵にも笑顔すら見せた。彼は盾になる覚悟である。
 敵の突進、そして目を開けていられないほどの光! 熱! 音!
「……!」
 砂塵が巻き上がり、アコナイトの髪は吹き上げられ逆立つ。
 戦闘艇は、持てる砲台総てから熱線を同時放射したのだ。
 躱しきれずラティクスは熱に巻きこまれる。
 被害はルーツにも及んだ。
「さすがは……」
 皮膚が溶ける錯覚するほどの熱波がルーツを包んでいる。
 だが戦闘艇の狙いは熱線ではない。むしろこれはカムフラージュだ!
 ナサロークの巨躯が、紙人形のように宙に舞った。
「熱線を目眩ましに……っ!」
 鎧聖降臨がなければ胸に風穴が開いていたかもしれない。銛のごときアームが戦闘艇から飛びだし、ナサロークを烈しく突いたのである。
 肋骨が数本、棒きれのように折れるのを感じた。
 どれだけ飛ばされたのか認識する前に彼の体は大地に叩きつけられ、跳ね上がり、硬い土にめり込んでようやく止まった。
「無念……」
 ナサロークの意識は消えてゆく。しかし仲間を護ることができたのだ。恥じることは何もない。

●突入
 ナサロークが吹き飛ばされるのは突入部隊からも見えた。
「やりやがったなっ!」
 グリューヴルムの声に怒気が灯る。飄々とした姿勢を好む彼としては異例である。しかし冷静さは失わない。逆に、怒りが観察眼を研ぎ澄ます。
「戦闘艇は徐々に回復しているがまだ完全じゃないっ、右側面につづけて攻撃だっ」
「了解だ、グリューヴルム殿!」
 アロイの突進は大山の鳴動、野太きハルバードを叩き込む! 戦闘艇が傾いだ。
「僕もやります!」
 ユウキが追撃すると甲板が窪んでいた。
 これを目がけてアコナイト、大鎌『殺戮聖典』を振りかざし、跳ぶ。
(「回避は不得手と見える……」)
 空中より大上段、体重を乗せた一撃! まさしくパワーブレードというわけだ!
 白と赤の火花が激しく散り、再度戦闘艇は大きく傾ぐ。
 タカテルが声を上げた。
「やりました! アコナイトさん、装甲に孔が!」
 両膝を曲げて着地し、アコナイトは艇を見上げた。
 人間の頭部大に過ぎないが、戦闘艇装甲に綻びができている。
「待ってたぜっ、これを!」
 グリューヴルムが銀狼を放つ。狼は甲板にとりつき牙を立て、孔を拡げようと躍起になる。
「この機、逃さぬ!」
 強い風が吹く。プラチナの髪は、それ自身命を持つかのように乱れた。背の翼もはためいている。
 プラチナは重斧鎌を手に、荒々しく大岩斬を落とす。耳をつんざくような音を上げ、硬質の船体がカッと火を噴く。
 煙が収まったとき、装甲に大きな裂け目が生まれていた。

 戦闘艇正面では、ルーツとラティクスが敵に接している。
「行けますか?」
 ナサロークのことは気にかかるが、遠く飛ばされた彼を助けている余裕は残念ながら無い。ルーツはラティクスの傷を癒すことを優先していた。
「保ちそうだ。どうやら突入口ができたらしいな」
 彼は再度スーパースポットライトを発現し敵を誘うのだ。
 ナサロークに救われたこの身、突入が完了するまで決して倒れまいと誓う。

 低空飛行している戦闘艇だが、地面から跳び入るには高い。
 ユウキのスティード上から粘り蜘蛛糸を放ち、タカテルはいち早く艇内に入った。彼は振り返って手を伸ばす。
「ユウキさん! 早く!」
「はい!」
 ユウキはタカテルの手を取った。ぐっ、と引かれて中に入る。
 この二人で入り口を確保する作戦である。閉じ始めた亀裂を確保すべく、彼らは攻撃を繰り返した。
「あっ!」
 このとき艇が左に傾ぎ、ユウキは振り落とされそうになる。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます」
 タカテルが支えてくれなければ危ういところだった。ギアが乱暴に運転し、彼らの侵入を妨害しているのは明らかだ。
 戦闘艇と併走する姿があった。それはグリューヴルムのスティード。アロイも再度この背にあった。一瞬で鞍に登るや一息、アロイは艇内へと飛び込む!
「よし!」
 無事着地、ギアが襲ってくる可能性を配慮し、アロイは内部へ向けて得物を構えた。グリューヴルム本人も続いて侵入する。
「空間を空けてくれぬか!」
 プラチナの声に、入り口付近のメンバーはさっと左右に分かれる。
「よし、アコナイト殿、頼んだのじゃ!」
 赤と黒に塗り分けられた影が、稲妻のように飛び込んできた。グランスティードだ。手綱を取るのはアコナイト、同じ鞍にプラチナの姿もある。
「来ます!」
 振り返らずにアロイは叫んだ。同時に、一撃を肩口に浴びる。骨身に堪えるような重い打撃だ。
 そこに立っていたのは単眼のギアであった。黄金の甲冑を纏い、同じ色の剣、盾を手にしている。表情はないものの、巨大な目は冷ややかに冒険者たちを凝視していた。戦闘艇の操縦を諦め、サイクロプスは彼らの排除に乗り出したのだ。
 船の動きが止まっていた。すぐに残るメンバーも乗り込んでくるはずだ。それでも船体に空いた穴は、放置すればすぐに閉じるだろう。
「残りの仲間が来るまで、ここは開けっ放しにしないとね」
 とユウキに呼びかけ、タカテルはさらに侵入口を大きくしておく。
 重い金属同士が擦れ合うかのような、ギリギリという音が谺している。これがギアの声だろうか。黄金武者は剣・盾を構え、品定めするかのようにこちらを見ている。
「見事な鎧姿、差し詰め黄金の騎士といったところかの?」
 プラチナの口元には、図らずも笑みが浮かんでいた。
「グリモア確保の為にも、称号に白金を名乗る重騎士としても、負ける訳にはいかぬのぅ」

●奪取なるか!?
「……この艇(ふね)、無駄にはしない」
 なぁん、という語尾、つぶやきのように吐き出し、アコナイトは敵の隙をつき一撃した。
 ここで生じた虚に、
「私らは争いに来たんじゃない。ただ、この先に進みたいだごけなんだああ」 
 私の歌をきけぇえ、とグリューヴルムが眠りの歌を用いるが、敵に変化は生じない。
 さらにプラチナとユウキが立て続けに攻むも盾で防がれてしまう。
「うぬっ!」
 アロイは再度一刀を受けた。骨が砕けるような激痛に呼吸が詰まる。敵の動きは決して機敏ではないのだが、その剣の腕は達人の域である。
 しかしアロイはこれを好機と捉えている! 間合いを更に詰め、
「私も戦いを生業とする身、そうそう屈しはしない!」
 と振りかぶり、敵の間接に刃を突き立てたのである!
「人型である以上、装甲とは即ちは鎧。つまり、私と同じく間接部は弱いはず!」
 彼の読みは正しかったようだ。単眼のギアはよろめくと、数歩下がってようやく止まった。冒険者はこれを追う。
 アロイを守るべくタカテルが前衛に飛びだし、飛燕連撃で敵を牽制した。
 その攻撃とタイミングを合わせ、真空の刃がギアに下る!
「大層な鎧と盾じゃないか。もっとも、そんな物に意味は無いがな!」
 頼もしい声、その主は、到達したばかりのラティクスである。
「皆さんご無事ですか!?」
 ルーツも来ている。すぐさま彼女はヒーリングウェーブで味方を癒しはじめた。
 これで士気は高まった。されど、ギアの強さはそれでも尚、桁外れであった。
 確かに動きは緩慢である。しかし剣筋に卓越したセンスがあり、躱すはおろか、ダメージを減らすのも難しい。それに装甲の厚さも目立つ。以後味方の攻撃は、ラティクスのソニックウェーブ以外、確実な効果を挙げられなかった。グリューヴルムの歌も効果がない。
 強烈な一撃を受けアロイの体は吹き飛ばされ、船体に孔を開けて落下した。肉を切らせて骨を断つ戦法に限界が来たのだ。
「ぐっ……!」
 アロイは縁に掴まろうとするも、その孔をさらに拡げただけだった。艇外に落ちる。
 次にギアの標的となったのはプラチナだ。
「妾の防御、そう簡単に抜けると思うでないぞ……」
 と粘るが、彼女は首筋に受けた一刀で大きく失血している。
 アコナイトも何度かガッツソングに回りチームを支えている。しかしそうなれば攻撃が弱くなるのも確か。徐々に彼らは追い詰められていくのだった。
 ついにプラチナが敵の眼前に膝をついた。
 そのとき、
「僕が守ります!」
 ユウキが飛びだし両腕を拡げ、彼女を庇おうとした。
 このときユウキは、強烈な打撃が頭に落ちるのを覚悟した。
 それからの数秒、短い時間の出来事だが連続して語ろう。
 まず、ユウキの目に希望の光が浮かんだ。
 ユウキの視線はギア背後の亀裂に注がれている。アロイが落とされた部分だ。
 見覚えのある銀の兜が覗いていた。
 そして直後、艇内、ギアの背後に、アロイが再び登場したのだ!
 見よ、彼の姿は金色の光に包まれている! グリモアエフェクトだ!
 ギアに表情はない。ないはずだが、その単眼が驚愕と恐怖に歪んだように見えた。
「私の正義は……熱く、紅く! 燃えている!!」
 アロイは残る力すべてで斬りつけた!
 刃は、ギアの肩口から腹の辺りまでを裂いて止まった。
 ここで時間の動きを元の速度に戻す。
 すかさずアコナイトが飛びかかりギアの腕を落とす。剣が音を立てて転がった。
 よろめき後退したギアの死角に、既にタカテルが回り込んでいる。
「この一撃で必ず断ち切る!!」
 渾身のブラッディエッジだ! ギアは耐えきれず、甲高い金属音と共に崩壊した。
「黄金の騎士……好き敵であったのぅ」
 砕けた金属片を拾いあげ、プラチナは呟くのだった。

 戦闘艇の奪取作戦は成功に終わった。
 ルーツとラティクスは即座に船の穴を拡げ、飛び降りてナサロークのもとに駈け寄った。
「怪我をされていますが、命には別状なさそうです」
 やがて聞こえたルーツの声は、どれほど彼らを安心させたろう。
「……すまない……世話をかけた」
 ナサロークはラティクスに肩を借りて立ち、艇内の仲間に手を挙げて見せた。されど仲間たちは知っている。彼もまた、本日最大の功労者の一人であることを。
 グリューヴルムは操縦桿を調べていた。船を着陸させようたいところだが、
「これ、どうすれば動くんだろうな?」
 手を触れるのには躊躇しているようだ。アコナイトも思案がないらしく肩をすくめている。
 戦闘艇の着陸までには暫くかかるだろう。
 これを自在に操縦できるようになるには、さらにもう暫く、かかることであろう。


マスター:桂木京介 紹介ページ
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作成日:2008/12/12
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