<リプレイ>
●作戦会議とパートナー探し 「あのお猿さん、また女の子を追いかけているんですか……ハァ」 仕方ありませんねぇ、と溜め息をつきながら聞いていたのは、想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)。先の大猿捕獲にも携わっていた彼女は…今度ばかりはきっちりお灸をすえてあげなくては…と、強く誓い、まずは新たな引き取り手を探しに向かう事にした。 (「『彼』の仲間の猿が居れば良いんですけどぉ……さて……!?」)
そんな中、護天使の保護者・リッカ(a00174)が、その場に残った皆の意向を確認する。 「ゼフィから聞いたんだけど、何とも厄介な大猿だよねぇ。脱走となると放っては置けないし……エリシアも『殺すのは可哀想』って言ってるしねぇ。捕まえるって事でいいのかな?」 そんな問いかけに、休命の狛・トリコリス(a09482)と、愛という陽炎を追う医術士・クーナン(a08813)が応える。 「……やっぱり、僕としても殺してしまうなんてのは嫌なので、生け捕りをして、遠くの森へ連れていくのが良いんじゃないかと思うんです。勿論、同族が居て、人の居ない所ってのが条件ですけど」 「そうですわね…まぁ、後でどうするかは別にして、まずは捕獲する所からですわ……」 (「それにしても、この前のおサルさんがこんな事になるとは…愛の路は本当に険しいですわ……」) 応えながらもクーナンは、先の捕獲時の猿のコトを思い浮かべながら、独自の世界へと浸っていた。 「じゃ、決まりだね!」 元気よくハリセンを持った手を挙げるリッカ。レッツゴーとでも言ったところだろうか……。
●リリムとお友達 「こんちは♪」 先に立ってリリムの家を訪ねたのは、やはりリッカ。 けっこう年下のリリムにも、同じような目線で話しかける。 「見世物小屋の大猿の事…覚えてる?」 突然の訪問者に、はじめは驚いていたリリムも、そんなリッカの気さくな態度に、自然と笑顔がこぼれた。 「うん♪ すごく大っきかったけど、可愛いよね♪ でも……お友達はみんな恐いって言うんだよ」 唇をとがらせ、訴えるように言うリリム。 (「なるほどね……これが例の大猿が惚れた原因かな。恋の病か……医術で何とか治す事は出来ないものか……」) どっきりエロチックな天使・カナタ(a08780)は、1人、そんな事を考えており、エルフの翔剣士・フィリア(a00936)に至っては……、 (「好きな人を護ろうなんて、素敵ですね。いつか私にも……」) どうやら、エル(エルフの吟遊詩人・エリシア(a90005))並の妄想癖を発揮して、リリムの笑いを誘った。
こうして、リリムの好感度もアップし、すぐに仲良くなった冒険者たちは、最近の様子から始まって、いくつか質問を重ねた。が、ここ数日は外で遊んでいなかった為、リリム自身はよく分かっていないらしい。やむなく冒険者たちは、正直に依頼の全容を語って聞かせたのだった。 「リリムさん、どうやら、そのお猿さんがあなたに懸想しているようなんです」 「あ〜、懸想っつーのは好きになっちまった、ってことだ」 クーナンの台詞を嘲笑う悪魔・ブラッド(a09591)が無愛想に補足した。エルなどは、笑いを堪えながら反応を窺っている。 「えええぇぇ〜っ!!」 エルらの期待の眼差しに、とりあえず驚いて見るリリム。12歳なら好きだ嫌いだという話はするかも知れないが、まあホントの所は分かっていない年頃だし無理もない。 「しかし、本当に懲りんやつじゃな。悪いが今回もお引取り願うしかないのう」 とは言え、自らの力不足を承知のドリアッドの紋章術士・ウィズレイ(a09818)。彼は今回、仲間のサポートに徹する覚悟だった。
「それで……僕、ちょっと考えがあるんです」 トリコリスが、ずっと考えていた案を語り始めた。
●イジメて出現! ナイトな『彼』 「『彼』をおびき出すために、リリムちゃんを外に連れ出してていじめるふりをしたり、攫うふりをする案が出ていましたけれど、それだと、いじめる役の人が危険な気がします。僕の『土塊の下僕』を使って襲う振りをするのはどうでしょう? 『彼』から見たら、不気味な化け物にリリムちゃんが襲われると思ってくれると思うんですけど……」 「なるほどな。そうすれば、馬鹿ザルがナイト気取りで出てくる可能性はあるわな……、んで、とっ捕まえる、と。殺っちまった方が後腐れなくて良いんだが、そうも行かねぇとなると、骨がおれそうだな。って言うか、マジに折られるぞ、ヘタ打つと」 「アハハハハッ……上手い、上手い!」 エルには大受けのブラッドだったが、どうも嬉しくないのは気のせいだったろうか……。 「いやいや、冗談でなく…まだまだ未熟とは言え…私の愛弟子が重傷を負わされていますから。まったく持って情けない限りです…」 ため息混じりで面目なさそうに語ったのは、サイレントシャドウ・ガス(a07813)。ストライダーの医術士・アプレ(a09747)に、弟子の仇? と尋ねられると… 「ま、多少は思いますが、だからと言って…あまり傷つけても可愛そうですしね…」 と微笑で返しただけだった。
「さて、そろそろ……いってみようか〜」 リリムの両親に心配を掛けぬよう、ハイキングと称して遠くの丘にでも連れ出す計画だったが、いくら冒険者とは言え、見ず知らずの者たちに子供を預ける親はいない。却って逆効果となり、ある意味、強行手段を取らざるを得なくなった。が、それにクサる事なく機を窺っていたリッカが、リリムの周囲に人が居なくなったのを見、元気よく合図を出した。 リリムの周囲を小柄な土塊どもが囲む。幸いだったのは、リリムと仲良くなっていたお陰で、村外れにあっても余計な悲鳴などを上げなかった事だった。 数体の土塊と揉み合うリリム……
バサァッ!!
その時! 少し距離を置いた樹上で、巨大なモノが樹上を飛ぶように舞った。 「来たぁっ!」
●お仕置き大作戦♪ 「来ましたか……」 ガスが、黒髪をなびかせ刀を鞘に収めたままで、死角へと廻り込むようにして構える。勢い余って……という事を封じるが故だった。 同時に、離れた場所にいたフィリアが走る。前回も『彼』に逢っているため、警戒されないようにとの対策だったが、それが僅かに仇になった。 「ダメーッ! ここはあなたのいる所ぢゃない! 相応しい所に帰ってー!」 懸命に叫ぶも、フィリアの叫びは届かず、『彼』の巨体が、小さな土塊たちを文字どおり蹴散らした。 そんな大猿の後ろに、ガスが素早く廻り込んで手にした鞘で大猿の延髄の辺りを殴る。 「ガオァーッ!」 野太い腕による裏拳がガスを襲う。 「危ない!」 ガスの胸先を薙いだ『彼』の腕を、ウィズレイとトリコリスが放った銀狼がかすめるように交差する。 その衝撃に、大猿はキーッという甲高い雄叫びを上げると、ガスを尻目にウィズレイの元へ一直線に向かった。どうやら、トリコリスよりも与し易いと判断したようだった。 「させるか!」 その行く手にブラッドが立ち塞がる。トリコリスのお守りにと思っていたが、だからと言って仲間を見過ごせやしない。 「へっ…こうゆう時にに命懸けてなんぼだからな男ってのは」 ブラッドが電刃衝を放つ。が、『彼』は、その刃をジャンプして躱すと、上からブラッドを踏み付けた! グシャッ!! と思った瞬間、大した手応えもなく着地することになる。 「良かったぜ! 『護りの天使』を使っといてよ。しっかし、こいつぁ戦い方を学習しやがったのかぁ?」 「大丈夫!? やっぱり……リリムちゃんを連れて逃げた方が良いのかなぁ…?」 ブラッドや他の皆の足手まといになるのでは、と感じた故の台詞。 「やはり力ずくで確保するしか無さそうですね……」 追いついたフィリアが身構える。すると、大猿は、ブラッドを突き飛ばすと、すぐに身を翻し、前回の事を急に思い出したように、打って変わった様子でフィリアににじり寄る。 ジリ…ジリジリ……フィリアにとっての嫌な思いでが甦る……。 ガバァッ!! 熱烈な抱擁。 それをライクアフェザーで躱したフィリアを見、怒り心頭の『彼』。 パッコ〜ン!! 「いい加減に…しろ〜っ!!」 その『彼』の頭を、駆けつけたリッカのハリセンが直撃した。 「今よ!」 〜♪♪ リッカの合図でエルが眠りの歌を奏で始めた。 ハリセンの衝撃から覚めた『彼』が、今度はリッカに向かう。ちょっと目がハートっぽい……まさか別の何かに目覚めたのでは!?
そこへ、クーナンとアプレに癒しの水滴を施されたガスとブラッドも駆けつける。 ドンドンドン!! 大猿の派手なドラミング。どうやら眠りの歌への抵抗を試みているらしい。 「遅くなりました。あとは私が……」 そこへ現れたのは……もちろんラジスラヴァ。メロディに乗せ、コミカルなダンスを踊り始めた。 すると……彼女の『くねり』に合わせ、大猿も身悶え(一応、これもダンスか?)し始めたのだった。
●惚れっぽいアイツ くねくねとした妖しい動きを見せる美女と大猿。エルの奏でるメロディも、調子に乗ってか、眠りの歌から妖しげなものに変わっていた。 いつしか村の人々も集まりだし、すかさず旅芸人一座の出張公演(にしては激しいが…)にすり替えた一件は終結したのだった。
「それにしても、なんて酷い怪我! すぐにオペが必要ですね」 わずかに傷が残ったガスとブラッドを前に、ニヤリと薄笑いを浮かべたカナタの目が光った。 「な、何を言うんです? こんなもの、傷のうちにも……」 「そうだぜ!」 「仕方がありませんね、じゃ、応急処置にしておきますね」 と、癒しの水滴にするカナタ。本気で残念そうだ。
「それにしても、コイツはどうする?」 「出来れば、同じ種族が多くいるような森にでも連れて行ってあげたいんですけど……。そこで同じ種族の方でも探して幸せになってもらいたい……」 ブラッドの問いに、フィリアが応える。 「そうですわね。どこか……遠くの人里離れた森で穏やかに暮らして頂ければお互いの為だと思うのですけれど……」 「それはそれで困る気もしますが、やむを得ませんね……」 クーナンも同意し、同様にラジスラヴァも承諾する。引き取り手を探しに行ったものの、結局、ラジスラヴァには『彼』のような厄介者を引き受けてくれる所は見つけられなかったから……。
こうして、『彼』はなるべく遠くの森へと離すことにし、踊り疲れた『彼』を、リッカがロープで縛り上げた。そして、強力な檻へと閉じ込め、搬送を委ねることにした。 「最後は、思ったより素直に捕まってくれたね♪」 ……しかし、いくら疲れたとは言え、これだけ冒険者たちの手を焼かせた『彼』が、何故に素直に縛られたのだろうか? その最中の『彼』の目つきが、妙に妖しかったのは誰に向けられたモノだったのだろうか?
【第3話『君を追いかけて……』に続く】
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参加者:10人
作成日:2004/06/27
得票数:冒険活劇7
ほのぼの5
コメディ1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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