特大料理を喰らえ! 〜過ぎ去りし秋の味覚を求めて



<オープニング>


●さて探せ!
 常夏の大陸、ワイルドファイア。場所はランドアースのはるか南に位置し、暖かな気候は変化に富んだ大自然を育んでいるこの地には様々な巨大植物や動物が存在する。鳥やらなんやら、挙句の果てには山菜やらキノコやらと言った口に出来る食材も多く、現地に住むヒトノソリンを始めとしたエルフなどの人々の生活をも担っていたりする。
 そんな常夏の地に紅焔揺白盾・ヨイク(a30866)を始めとした旅団、Moon Side #Bの面々は立っていた。時期は少しばかり遅れてしまったけれども秋の遠足ツアーと提案されたイベントを行う為だ。
 現地の住民に尋ねた所、秋を連想させる食べ物であるキノコ――勿論、この土地ならではの大きさを誇る、傘にもなるのではと思われるサイズだが――が群生している森を聞いた一行は、迷う事無く足を向けた。
「この辺ですかね、話に聞いていた森は」
 ヨイクは辺りを見渡しながら呟きを漏らす。既に荒涼とした平野を渡り、彼らは緑豊かな森へとたどり着いていた。耳を澄ませば鳥の声や動物達の鳴き声が遠くに聞こえ、他の食材も期待が出来そうな雰囲気だ。
「そう言えば、現地の方が言ってましたね……」
 鳥の鳴き声からふとヨイクは思い出した。この森には最近、巨大鳥の群れが姿を見せることがあると。その鳥はまるまると脂が乗っており、ふっくらとした肉も相まって、焼いて食べても煮てもその味は素晴らしいのだとも。ただ問題はちょっとサイズが大きいのと聊か凶暴であると言う点だ。
 しかし、ここまで来たからには両方とも満喫してみたい。そう考えるのは人の性と言うものではなかろうか。
「出来れば両方、狙ってみますか」
 ずしん、ずしんと遠くに響く巨大鳥と思しき足音を耳にしながら、ヨイクは仲間達にそう声をかけるのであった。


マスターからのコメントを見る

参加者
風切羽・シリル(a06463)
白鴉・シルヴァ(a13552)
紅焔揺白盾・ヨイク(a30866)
ひまわり翔剣士・ルルゥ(a52484)
踊る子馬亭の看板娘・ニケ(a55406)
陽だまりの花・グリュエル(a63551)
底無しの食欲・ジーク(a66595)
セイレーンの医術士・セルマ(a67012)
NPC:宿望の黒騎士・トール(a90101)



<リプレイ>

●巨大鳥を確保せよ
「……ちょっと暑いですね」
 じんわりと汗が滲んできそうなくらいの暖かさに満ちた、ワイルドファイアのとある森の中で紅焔揺白盾・ヨイク(a30866)はぼそりと呟いた。彼を始めとしてきのこや巨大鳥を堪能するべくこの地を訪れたセイレーンの医術士・セルマ(a67012)達は鳥達を待ち伏せる組と発見した鳥を誘導する為の組と、二手に分かれていた。
「でもさむ〜いランドアースから帰って来るとほっとするなぁ〜ん」
「ジークさんはこちらが故郷でしたね、そう言えば」
 ヒトノソリンである底無しの食欲・ジーク(a66595)はワイルドファイアの出身で、久しぶりの狩りという事で、うずうずと妙に張り切っている様子を見せている。
「巨大鳥とキノコを狩って、みんなで食べるのだー☆」
 ジークと同様に上機嫌なのはひまわり翔剣士・ルルゥ(a52484)だ。彼は先程から遠眼鏡を片手にあちこち観察をしながら、巨大鳥を誘導する任についた白鴉・シルヴァ(a13552)や風切羽・シリル(a06463)らを心待ちにしている。初めての依頼という事もあってか、ルルゥはちょっと浮かれているらしい。
「美味しそうな鳥さん連れて来てくれるかな〜?」
 同じく、身を潜めるのに手頃な岩陰に腰を下ろして様子を伺うのは月下の雫・グリュエル(a63551)だ。セルマ達と共に、天使の忘れ物・ニケ(a55406)達が受け持つ巨大鳥の誘導を今か今かと待ち構えている。
 さて。一方、誘導班はと言うと。
 ルルゥ達が身を潜めた岩場からやや離れた森の中を、宿望の黒騎士・トール(a90101)を先頭にしてシリルやニケ達は巨大鳥の姿を捉えるべく進んでいた。
「結構足跡がはっきり残ってるから、すぐ見つけられるなきっと」
「そうですね、でも相手に気取られると面倒ですから気をつけないと」
 シルヴァが森の中に残された足跡を探りながら進む最中、シリルが注意を促す。召喚獣には待機を命じ、仲間達と共に連携して一匹だけを待ち伏せするヨイク達の下へ連れて行くというのが今回の作戦であった。
「鳥の鳴き声が近づいてきているな」
「足音もしますね、ずしん、ずしんって……」
 ぎゃあぎゃあと鳴く鳥の声と共に、重々しい足音がトールやニケの耳に届く。無論、シリルらの耳にもその音は届いており、一向は警戒を厳にする。そうして彼らが息を潜めつつ鳴き声の元へと近づくと、森が開かれ、大きな池のある場所へと辿りついた。その水場では、巨大鳥が5匹ほど水を飲んだり、地面にしゃがみこんでいるのが見て取れる。
「ほぇ〜……おっきな鳥さんですね〜」
 ニケが感心したような声で感想を漏らす。ランドアースで見かける鶏のスケールアップしたような、そんなサイズの巨大鳥は時折、地面に生えた草木を啄ばんでいた。
「あれだな。しかし、一度に五匹を相手は面倒だな」
「手筈通りに、一匹だけ誘導しましょう。少ししたら群が動くかも知れませんし、その時がチャンスかも」
 難しい表情を見せたトールにシリルが言葉を続ける。そうして暫く様子を伺っていると、五匹の巨大鳥の内、その多くがのしのしと音を立てて歩み去っていく。最後に残った巨大鳥は水場で水を飲んでいるらしく、シルヴァ達はそれを好機と判断した。
「うまそうな鳥肉、こっちおいでー」
 シリルが身躱しのステップを踏み始めたのに合わせ、シルヴァが巨大鳥が気付くような身振りで挑発をする。シルヴァの挙動に気付いた巨大鳥は怒気も露にして彼目掛けて走りよって来た。
 くけーっと叫びを上げて迫る巨大鳥の正面に立ったのはシリルとトールだ。鶏が啄ばむように嘴を突き入れてくるのを、シリルは手にした得物と巧みな体捌きで凌ぎ切る。
「どうやら上手くいったみたいです!」
「後はこいつを誘導するだけだな!」
 シルヴァは此方に向かってくるのを察し、巨大鳥を誘導するべく背を向けて駆け出した。既にグランスティードに騎乗しており、彼の後ろにシリルが跳躍して飛び乗る。既にトールの召喚獣にはニケが乗っており、このまま待ち伏せする仲間達の下へと向かう準備は整っていた。
 鳥が足音を高く立てながら追って来るのをシルヴァ達は付かず離れずの速度を維持しながら森の中を駆けた。時折シリルやニケが後ろを追う巨大鳥の姿を確かめながら、着実にグリュエル達が待ち受けるポイントへと向かいつつあった。
 そうしてヨイクやセルマ達が待ち受けたポイントへと辿りついた途端、木々の陰に隠れていたグリュエルが雷光の矢を放ち、鳥の胸に深々と矢が突き立つと共にジークやルルゥ達が姿を現す。彼らの手には得物が握られており、ルルゥは敵の姿を認めるとその両の手から白い蜘蛛糸を解き放った。
「これで束縛なのだーっ」
「最初っから全力だぜー!」
 そう言ってシリルを降ろしたシルヴァは携えた漆黒の巨大剣を両手に持って振り被り、闘気を篭めた必殺の一撃を繰り出した。ルルゥの粘り蜘蛛糸に束縛された巨大鳥は躱す事も出来ずに真正面から受けてしまう。
「よっし!」
「気を抜かずに行きましょう!」
 次いでヨイクが大岩斬を放ち、着実に巨大鳥の体力を削っていく最中でジークがクレイモアを構え、その刀身に電光を纏わせながら踏み込んでくる。
「動きが封じられてる今がチャンスなんだなぁ〜ん!」
 横薙ぎに払われた両手剣が更なる斬撃を加え、巨大鳥の足にダメージを与えていく。更にルルゥがソニックウェーブを放つ事で、巨大鳥は徐々に追い込まれていった。
 セルマの癒術を始めとしたバックアップが整った状況での戦闘は、着実に巨大鳥を疲弊させていく。時折嘴による突きの連打が繰り出されるも、前衛に立つトールが受け止める事によって、他の仲間が負傷する確率は確実に軽減されていた。
 そうして暫くした後に巨大鳥を仕留めた一行は、料理の準備ときのこ探しをする者らと別れて次なる行動を開始するのだった。
「るぅは毛をむしるのだー」
 さばく前の巨大鳥の羽をぎゅっと掴んで、むしむしと麻袋にルルゥが詰める。どうやら持ち帰って羽毛布団にしたいらしい。そんなルルゥが満足するだけ羽を集めた頃、そろそろ次に取り掛かろうとヨイクやシルヴァ達が手に刃物を持って巨大鳥の傍へと取り付いた。
「それじゃあ、こっちはキノコを採りに行って来るね」
「キノコ楽しみなの〜、グリュエルさんがんばってきてくださいなの〜♪」
 グリュエルはセルマやシリルと共にキノコを採集しに森の中へと分け入っていく。
「トール、るぅを肩車してなのだー!」
「……俺は保父代わりか」
 ルルゥの言葉に深い溜息をつきながら、トールは聊か疲れた表情を浮かべたまま、ルルゥのお願いを受け入れ、肩車をしたままグリュエル達の後を追う。
 キノコを採りに彼らが出かけると、ヨイク達は捕らえた巨大鳥を捌いて血抜きを開始した。シルヴァが手際よく捌く傍で、ニケが不要な骨や臓物を処分する為に掘った穴へとぽいぽいと投げ捨てていく。
「こんな感じでいいでしょうか〜」
「問題ないんじゃないか? 後もう暫く木に吊るしておけば血も抜けるだろうから、そしたら料理の準備だな」
 他にも薪運びや火熾しをしないとな、と呟くシルヴァを尻目に、ニケは持ち寄っていた粉末ハーブと塩、胡椒を袋から出して準備し始める。
「じゃあ私はちょっと薪拾いに行ってきますね。直ぐ戻りますから。
 ヨイクは作業が一区切りついたのを確認すると、片手に鉈を持って森の中へと入っていく。これから火を熾すのに必要な薪を手に入れる為だ。

「原住民さんから聞いた場所ってこの辺りだよね?」
「はい、傘になりそうなキノコ……と言うとあれでしょうか?」
 キノコ探索に出たグリュエル達は、セルマが言葉を紡ぎながら指差す方向へと視線を向ける。すると、そこには大きなシメジがにょきにょきと枯木の傍で生えているのが目に映った。
「うわー、大きいのだ!」
 肩車したままのトールは頭の上で叫ぶルルゥにやれやれと言った表情で彼の言葉に耳を傾けている。既に途中で見つけた林檎の実などの果物や木の実を見つけ、ルルゥの手にはスイカくらいの大きさの林檎があった。
「早く採って帰ろう、材料が揃わないと料理出来ないもんね」
 グリュエルの言葉に従い、セルマやシリルは傘のように大きなシメジなどのキノコを次々と摘み取り始めた。両の手に抱えて余る位の量を採ると、一向はヨイク達の下へと足を向けるのであった。

「トールさん、薪や火の管理をお願い出来ますか」
「ああ、その程度なら別に構わんが」
 帰ってきて早々にヨイクに声をかけられたトールは何気ない様子で答えを返す。そんな彼にヨイクが実は料理が得意だったりして、などと冗談めいたように続ける。すると彼は一瞬だけ眉根を潜め、
「……料理はあいつだな」
 そう呟くトールの脳裏に浮かぶのは、料理が趣味な白銀の霊査士の顔だ。そう言えばそうですね、とヨイクは納得した様に頷くと、シルヴァ達と共に獲物の血抜きをする準備に手をつけはじめた。
「それじゃあトールはちょっと手伝ってよ、鍋の準備するから」
「ああ、それくらいなら構わん」
 大きな鍋を片手に持ったグリュエルに声をかけられたトールは、そのまま彼女に腕を引っ張っていかれてしまう。どうやら竈を作る人手が欲しいらしい。適当な大きさの石を幾つか拾い集め、丁寧に組み上げて行く事を幾度か繰り返すと、そこそこ大きな竈が出来上がった。これで調理の方に専念すれば、後はお楽しみのひと時が待っている――。

●さてさて、お味の方は
 そうして陽も傾いて夜を迎えた頃に、シリルやヨイク達が作っていた料理が出来上がった。鳥ときのこの炊き込みご飯や、ハツときのこと菜の炒め物。他にも鳥団子スープやワイルドファイアで良く見かけられる大きな木の葉で包んだ鳥ときのこの蒸し焼きなどと、鳥ときのこの料理が所狭しと敷物の上に並べられた。
「デザートにマンゴーを取ったきたなぁ〜ん♪」
 狩りが終わってから何かデザートになるものはないかと探しに出ていたジークが、ご機嫌な様子で言う。ランドアースで見かけるものと比べて、比較にならないくらい大きいマンゴーの実は皮を剥いてセルマが見つけてきた手頃な葉の上に切って並べられており、ほんのりと甘く漂う香りと共に、瑞々しい果肉が見て取れる。
「これは美味しそうですね、こちらは果実水ですか?」
「うん、未成年には果実水を用意しておいたんだ」
 ほんのりと果物の香りが漂う水が注がれた杯を手にしたセルマが問うと、ぼんじりの串焼きを片手にグリュエルが笑みを浮かべて答える。他にもレバーの刺身などが炙り焼き鳥の傍に置かれており、ジーク達の前には正に鳥とキノコづくしといった趣だ。
「久しぶりにたっぷり食べるんだなぁ〜ん」
「いっただきま〜すなの〜♪」
 カシラの串焼きに齧り付きながらジークがにこやかな笑みを浮かべ、ニケもまた炒め物を食べ始める。他にも焼いたキノコを既に取り分けて自分の前にキープしており、速いペースでもりもりと食べていく。
「すごく美味しい! きっと皆で食べるからだよな」
「そうですね、皆さんと一緒だから喜びもひとしおと言うやつなのかも知れません」
「では、成人組は晩酌といきますか」
 温かな湯気を上げる鳥団子スープに舌鼓を打つグリュエルに、ヨイクが同意とばかりに頷く。その傍らでシリルが用意してきた酒瓶を取り出す。一方ではグリュエルが水辺で冷やしてきたワインを持ち寄って来ており、敷物の上にそっと置く。シリルはヨイクやトールらの杯にとくとくと酒を注ぎいれ、乾杯の音頭をとる。
「仕事後のこの一杯がまた格別なんですよねぇ♪」
「やっぱキノコもいいけど肉だよな、これなんかハーブが効いてて歯応えあって最高だぜ!」
 ほんのりと頬を赤らめるシリルの傍に座したシルヴァが、鳥の香草焼きに満足気にかじりつく。
「シルヴァさん、羊乳酒はどうですか?」
「酒かあ、そっちもいいよな!」
 ヨイクに薦められて、シルヴァは空いた杯を彼に手渡した。夜空の元、焚かれた炎を明かりにして、のんびりとした夜のひと時を一向は過ごしていく。
「蒸し焼きもうまく出来てるのだ〜」
「お料理は殆どお任せにしてましたけど、美味しく出来上がって何よりです……」
 ルルゥと共にセルマは、キノコと鳥の蒸し焼きをもぐもぐと食べている。狩りも無事に済み、料理の方も二重丸の出来とあれば喜びもひとしおだ。
「ともあれ、無事に済んで何よりだな……」
 香味を効かせたレバ刺しを突付きながら、トールはのんびりと酒を楽しんでいた。既に酒を飲み始めたヨイク達は出来上がってきており、グリュエルにいたってはうとうとと船をこぎ始めている。時にはこんなひと時があってもいいだろう。常夏の夜空の下、冒険者達はゆったりとやや遅れた秋の味覚を満喫したのであった。


マスター:石動幸 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:8人
作成日:2009/01/06
得票数:ほのぼの7 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。