【フラウウインド見聞録】我竜転生



<オープニング>


 フラウウインド大陸における様々な依頼を司る場所、人呼んで『フライドの酒場』。
 今年7月にこの大陸が浮上してからというもの、新たな冒険の場を求めて多くの冒険者が集まり、今なおその流れが途切れる事のない、フラウウインドでただ一つの場所。今日も何組かの冒険者が姿を見せ、未知の生物の調査や住居遺跡を占拠しているモンスターの討伐に出かけていく。
 そんな広々とした酒場の一角で、だらしない寝姿を晒している冒険者が約一名。赤茶色の髪の毛からにょきりと飛び出る伝声管に、腰のバッグからはヨーヨーが顔を覗かせている。誰がどう見ても、プーカの忍び・ポルック(a90353)であった。
「おいお前、何こんな所で寝っ転がって……」
 見かねたフラウウインドの霊査士・フライド(a90396)がその華奢な体を揺り動かすと、しばらくしてゆっくりと体を起こしたポルックは、いかにも眠たげな目を向けて一言。
「……おはよ」
「おはようじゃないだろう。もう昼近いぞ」
 呆れ顔のフライドに、ポルックはここで先日の依頼の反省会をやっていのだと告げた。合点した様子のフライドは、何度も頷いてポルックの肩をぽんと手で叩く。
「まぁ、あまり気を落とすな。どんな歴戦の勇者も百戦百勝とはいかんさ。失敗したのなら、その経験を次に活かせば良い」
 フライド(26歳)。大人の対応である。
「うん……、またチキンダッシュを獲りに行く事があったら、その時はきっとおじさんの分も持って帰ってくるからねっ!」
「いや、それはいい」
 何というか、チキンレッグ的にあまり面白くなさそうな話をぴしゃりと差し止め、フライドは無難な話題への転換を試みる。
「そういえばお前、年末年始はどうするんだ?」
「んー、一度ランドアースに帰るよ。ひさしぶりにカントーグにも顔を出すつもりだし」
「そうかそうか」
 ようやく安息の日々が訪れる。フライドがホッと胸を撫で下ろした時、
「でもその前にさ、あと一回何かやりたいんだよね。最後だし、すっごい依頼紹介してよ!」
 ポルックがそう言ってグッと身を乗り出してきた。
 フラウウインドでまだポルックが体験していない『すっごい依頼』。といえば……、
「……やれやれ、分かったよ。ちょうど良い依頼がある。紹介するから、皆を呼んでこい」
 聞くや否やすっ飛んでいくポルックの後ろ姿を、フライドは溜息混じりの笑顔で見送った。

●我、竜ニ転ジテ生キル
「さて、大方予想はついていると思うが、今回お前たちには強い力を持ったドラグナー……いわゆる『強化型』と呼ばれる奴を倒しに行って貰う」
 フライドの言葉を受け、冒険者達の体に微かな身震いが沸き起こる。
 強化型ドラグナー。一度は奪われたドラゴンの力を、一部とはいえ再びその身に取り戻した執念の怪物。ドラゴンウォリアーとしての力を振るう事が可能な程の強敵と聞く。
「その姿は、翼をもがれたドラゴン、といったところか。100m級の巨大な身体を持ち、対象を深い眠りへといざなうブレスを主力として襲いかかってくる。かつての知性は欠片も残っていないようだが、倒す分にはその方が都合が良いと考えるべきかな」
 フライドの霊視では、強化型ドラグナーは住居遺跡の地下に広がる空間の何処かに潜んでおり、例によってそこにはフォビアと呼ばれる怪物が多数棲息しているらしい。
「フォビアか……。巨大な肉塊も幾つもの目とクチバシを持ち、無数の触手を生やしている正真正銘の化け物だ。怪光線を発したり、再生能力を持っていたりするが、まぁ今となってはさほどの強敵でもない。ただ、数だけはかなり居るようだから、無駄の無い戦いを心がけてくれ」
 話によれば、強化型ドラグナーの戦闘能力は、概ね『ドラゴンウォリアー6人分よりも少し下』だとされている。ここに集まっている面々でそのまま戦えるのなら、まず負けは無い。しかし、そこに辿り着くまでに力を使い果たしてしまったりすれば、当然話は変わってくる。
 つまり、フォビア戦をいかに上手く切り抜け、強化型ドラグナーとの戦いまでにどれだけ力を温存出来るか。この依頼は、とにかくその一点に尽きるわけだ。
「最悪、フォビアは倒しきれなくても構わん。しかし、強化型ドラグナーだけは絶対に倒してきてくれ。それを以て、この依頼の成功としよう」
 説明を終えたフライドは、ポルックの正面に立ち、問うた。
「たしかドラゴンと戦った事があると言っていたな。その時はどうだった?」
 いきなりの質問に、少し言葉に詰まったように間を開け、
「一発KO……された」
 フライドは「うむ」と一つ頷き、ポルックの赤茶の瞳を見据える。
「では今回はそうならないよう、頑張ることだ。頼んだぞ」
 視線を切り、うやうやしく頭を垂れるフライド。頭を上げたその顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。


マスターからのコメントを見る

参加者
求道者・ギー(a00041)
星舞い落ちる夜・マイヤ(a28554)
刻の白露・セッカ(a45448)
ペトルーシュカと三つの断章・ラグゼルヴ(a51704)
必殺格闘ウサギ美少女・ユリア(a67628)
着せ替え武人・タリム(a68968)
獣哭の弦音・シバ(a74900)
スペース海賊・マリス(a76063)
NPC:トリックオア・ポルック(a90353)



<リプレイ>


「ここだな……」
 静寂の中に、獣哭の弦音・シバ(a74900)の声が響き渡る。
 主不在の住居遺跡――その地下へと続く入り口の前に、冒険者達は来ていた。
「強化型ドラグナーにフォビア……初めての相手だけど頑張るよっ」
 掌と拳を勢いよく叩き合わせ、気合いを入れる必殺格闘ウサギ美少女・ユリア(a67628)。その背後から悪女願望・マリス(a76063)がひょいと顔を覗かせる。
「ボクも初めてなんだよね〜。冒険者になったの最近だし。ドラゴンウォリアーだっけ? 合法的なキマイラみたいなもの?」
「ちょっ」
 プーカの忍び・ポルック(a90353)もビックリの発言に、場の空気が幾らか緩んだ気がした。
 一同、どこから説明したものかと思い悩む中、戸惑いからいち早く復帰した星舞い落ちる夜・マイヤ(a28554)の説明に、マリスも得心がいったようだ。
「ごめ〜ん、話に聞いただけで実感無くてね」
 舌をぺろりと出して笑う彼女に、ポルックは、なるほど最近冒険者になったばかりならそういう事もあるかもしれないと、一人で頷いていた。
(「それにしても、ここは久しぶりですね」)
 マイヤは、頬を撫でる風の感触に、壱の剣探索隊で過ごした日々を思い出す。そして、それ以上に昔を思い出しているのが求道者・ギー(a00041)であった。
「フォビアか……かつて戦ったのが4年以上も前となるか」
 カダスフィアを始めとする3体の強化型ドラグナーによって多数のフォビアが地上に送り込まれ、昼夜を問わず殲滅に明け暮れたあの事件。当時は300人近い冒険者が集まってようやく数十体のフォビアを撃退したと記憶している。
 おそらくその時と同等かそれ以上のフォビアが犇めき、更にはカダスフィア級の力を持つ敵までが潜む地下施設に、今、自分達はたった9人で挑もうとしている。
「時の移ろうのは早いものかね」
 ギーの口元に微笑が浮かんでいた。
 逆に、少々げんなりとした雰囲気を漂わせているのが着せ替え武人・タリム(a68968)。フォビアとは渇望の祭壇で幾度となく遭遇しており、そのグロテスクな外見には正直言って辟易しているのだが、強化型ドラグナー討伐への道すがら避けられないとなれば仕方がない。
「はぁ……」
 小さくついた溜息は冬の寒さに白く染められ、消えていった。
 きぃ、と頼りない音を立てて開いた扉をくぐり、一人、また一人、冒険者達は階段を下りていく。
 道中、どうにも複雑な表情を浮かべているのはタリムだけでなく、ペトルーシュカと三つの断章・ラグゼルヴ(a51704)も同様であった。
(「地下の住居遺跡なんて折角惹かれる響きなんだけど、ドラゴンって嫌いなんだよね……。擬きも、勿論」)
 彼の関心を惹くものがあるとすればそれはこの施設にこそ有り、強化型ドラグナーなどは勝手についてきたおまけのようなもの。そしてそのようなものは、早々に排除するに限る。
「また反省会するのは、嫌。頑張ろう……、僕も、頑張るから」
 刻の白露・セッカ(a45448)の抑揚の無い声に、いつもより少しだけ気持ちが前に出ているように感じるのは、これまでの付き合いから得られた経験の賜物だろうか。
 無論、彼女自身は最初から感情を隠したりはしていない。そこに現れる、表情、声色、その小さな変化に気付く事が出来るかどうか。それが出来れば、一見無表情に見える彼女の驚くほど豊かな内面を感じ取る事が可能になるだろう。
 セッカの手に握られたカンテラの灯が、漆黒の闇の中にぼんやりと浮かび上がる。
 今年の締め括りとなる、大掃除の始まりであった。


 裂帛の気合と共に振り抜かれたギーの斧が、3体のフォビアを纏めて薙ぎ倒す。うち2体がそのまま動かなくなり、起きあがった1体にはユリアとポルックの攻撃が重ねられ、巨体は再び床を舐めた。
「今のうちに早くっ!」
 若干の焦りを含んだユリアの声が向けられたのは、後方から続々と押し寄せるフォビアを押し止めているタリム達へであった。転身した冒険者達は、前方に横たわるフォビアの亡骸を跳び越えて、通路を走り去っていく。
 まるで迷宮のように入り組んだ施設の中、通算4度目となるフォビアの群れとの戦闘――それも、逃げ場の無い前後からの挟み撃ちを切り抜けたところであった。
 極力戦闘回避に努める冒険者達だったが、視界の悪さや通路の狭さなどから、気付いた時には間合いに入られている事もしばしば。しかし、下手に殲滅を狙わず、アビリティを節約し、先に進むことに重きを置いた彼らの顔には未だ余裕の色が浮かんでおり、この先どこまで続くか分からない通路を前にしても、気疲れした様子は見られない。
 その要因の一つになっているのが、セッカによる地図の作製だ。簡単なものではあるが、いつでも好きな時に最短ルートで帰還出来るという安心感は、この閉鎖的な空間を当てもなく進む冒険者達に、精神衛生上、とても有益な効果をもたらしていた。
「あれ、ここってさっき通った十字路だよね」
 マリスがセッカの手元に広げられた地図を覗き込む。
「ん……、そうだね。それじゃ、次はこっち……」
 白魚のような指が示した方向へ進む一同を、無骨な手が制した。無言で手鏡をかざし、曲がり角の向こうに危険が無いかを確かめるギー。暗いので先は見えないが、曲がった途端そこにフォビアがという最悪の展開はこれで避けられるはずだ。
 冒険者達は、前方にギー、ユリア、ポルック、後方にタリム、シバを配置し、その5人に挟まれるように、マイヤ、セッカ、ラグゼルヴ、マリスを置いた布陣で探索を進めている。それぞれが前方、左右、頭上、後方へ目を光らせ、フォビアの奇襲から自分達を守っていた。
『後方からフォビアだ』
 心の声が行き渡り、冒険者達は即座に戦闘態勢を整える。
 シバは仲間への意思疎通手段としてタスクリーダーによる心の声とハンドサインを使用している。
 周囲の音の影響を受けない事や、声を発する事自体を避けたい場合を考えれば、確かに有用なアビリティ効果だ。しかし、彼だけが見張りを務めているのでも、全員が心の声を使うのでもないとなれば、一人だけ心の声を使用する事にさほど意味は無いとも言える。
 更に言えば、普通に声を出せば直後に攻撃が可能だが、心の声を使用した場合はそれ以上の行動が出来なくなり、結果として一手遅れる事もある。
 ちなみに、全員がそれぞれ担当する方向を向いて見張りを努めている場合、ハンドサインを出しても誰も見ていない可能性が高く、心の声で用件を伝えてしまえばそれで事足りてしまう。
 何が必要で、何が必要でないのか。冒険者には常にその場に応じた取捨選択が望まれている。
「しつこいね……」
 フォビア達の追撃を振り払うように、ニードルスピアの掃射を見舞うラグゼルヴ。怪光線によるダメージは彼らにとって然したる脅威では無いが、数が集まり、連戦に次ぐ連戦となれば、話は別だ。
 全体の回復アビリティの3分の2を占めるマイヤのヒーリングウェーブは非常に貴重であり、強化型ドラグナー戦までを視野に入れた場合、それをどこまで温存出来るかは、攻撃用アビリティの温存より遙かに重要度の高い問題であった。
「あんた達に構ってる暇は無いのよ!」
 凛とした声と共に放たれるタリムの流水撃を受け、何体かが倒れた隙に、冒険者達は素早くその場を後にする。彼らを相手に存分に戦うのは、メインターゲットである強化型ドラグナーを仕留めた後の帰り道で十分だ。
 そうして冒険者達は、その先幾度となく続いた戦いを最小限の消耗で乗り切った末、目的地である、施設の最深部に至る事となる。


 その巨体は、冒険者が持っていたカンテラの明かりでは到底照らしきれぬ程の圧倒的なサイズを以てそこに在った。文字通り地の底から発せられ、地鳴りかと思う程に冒険者達の体を打つ唸り声。どこまで続いているかも分からない広大な空間の一角に、疑似ドラゴン界が展開された。
 一気に開ける視界。ドラゴンウォリアーの持つ優れた五感は、たとえ一切の光を通さぬ暗闇の中であってもたちどころに敵影を捉え、戦闘を可能にする。そしてそれは、敵も同様であった。狂気を孕んだ瞳が、上空へと舞い上がるドラゴンウォリアー達を正確に追いかけていく。
 ユリア、タリム、ポルックを前衛として、その後方にマイヤ、セッカ、マリスが並ぶ。
 一瞬、マイヤはシバからの指示を待ったが、彼が指示するのは施設内移動中の隊列であり、戦闘中の隊列は基本的に個々の判断に任されていた。
 マイヤは、状態異常からの回復手段を持つ3人がブレスで同時に眠らされる事態を回避する為、すぐさま左右に大きく距離を取るよう、セッカとマリスに指示を飛ばす。
 更に上空へと昇っていくラグゼルヴは、マイヤとセッカからあまり離れないように、かつ自身のアビリティの射程いっぱいまで距離を取り、ドラグナーの肉体による幾つかの攻撃の届かない好位置に陣取る事に成功した。
 少し考えた後、ギーは前衛のやや側面よりの位置で上昇を止める。ドラグナーのブレス、体当たり、尻尾による薙ぎ払いを避けるという狙いからは外れ、どの攻撃の対象にも容易になり得る位置だったが、自分の攻撃が当たり、咄嗟に後衛を庇う事が可能であり、守るべき共通事項として定められた『強化型ドラグナー相手の際は一団に固まって行動』という項目に反しない位置はそこしか無い。
「来るよ」
 紅い瞳を閃かせるラグゼルヴの警告。直後、隊列を整えたドラゴンウォリアー達をドラグナーのブレスが直撃。大きく開かれた口から放射されるエネルギーの奔流は6人ものドラゴンウォリアーをその範囲に収め、ユリア、マリス、ポルックの3人がその場で深い眠りについていた。
 落下するのではという心配が杞憂であったのは僥倖だが、ともあれ回復させねばとマイヤの祈りが捧げられ、その後をセッカのヒーリングウェーブが引き継いだ。
 ラグゼルヴが蒼から紅への変化だったのに対し、セッカの変化は紅から蒼。紅玉の様だった瞳が蒼穹に染まり、髪に巻かれたリボンもいつの間にか空の如き蒼へと変じている。
「やってくれたわねぇ」
 流れる様な光沢を放つ美しい黒髪。額の宝石、瞳、そして衣服に至るまで黒に染め上げたタリム。手にした大鎌に雷が纏われ、その刃先は一寸の迷いも無くドラグナーへと振り下ろされた。
「くらえぇぇぇ!!!」
 迸る雷が辺り一面を照らし、轟音が耳を劈く。
 その中で、シバは黄金に輝く瞳をしっかりとドラグナーへ向けていた。茶褐色の肌、燃えるように揺らぐ鬣、しかしその動作は揺らぎとはかけ離れ、まるで自分の体が弓そのものであるかの様な緊張感を放っている。戦いという動の中、美さえ感じさせる静がそこに在った。
 射た。闇色に透き通る矢が、ドラグナーの体を覆う鱗を、筋肉を、易々と貫いていった。
 体を襲う激しい痛み。ドラグナーが怒りを露わに尻尾を振るう。間近まで迫ったそれは、壁としか思えぬ程の馬鹿げた巨大さを存分に活かし、前衛の4人をまとめて弾き飛ばす。
「痛ったー!!」
 全身を強かに打たれたポルックは、空中で急停止すると同時に闘気の刃での反撃に移る。特に変化が見られないと思われたその姿だが、よくよく見れば髪の毛がめんつゆのように波打っていた。
「ぶっ!」
 思わず噴き出してしまったユリアだが、頭からにょきりと生えたウサ耳に、若干増量されたバスト、ただでさえ露出面積の大きなコスチュームが更に進化を遂げた姿は、ポルックとは別の方向性でつっこみ所満載だ。長く伸びた髪を靡かせ、一気に間合いを詰めた彼女は、親指に全ての力を込めてドラグナーに叩き込む。
 お次は正真正銘、変化無しのギー。長きに渡る研鑽の果て、磨き抜かれた魂の輝きには変化の余地一切無し――といったところか。
「朽ち堕ちし汝が魂に、幾千万の試練あれ」
 抜き打たれた斧の一振りは、相手の心すら打ち砕く必殺の一打。しかし、萎えかけた心を自力で奮い立たせたドラグナーは尚も抵抗を試みる。
 その時、極太の首の一部が先程と同じ動きを見せていた。
「ブレスが来ます!」
 マイヤが声を上げる。続けて紡がれる筈だった言葉は、その前に到来したドラグナーのブレスによってかき消され、今度はマイヤを含めた4人が眠りの世界へと叩き落とされた。
「頑張ろう……」
 セッカが、地下に降り立った時口にした言葉を繰り返す。捧げられる真摯な祈りが、眠りの世界の奥底からドラゴンウォリアー達を引っ張り上げた。
 ラグゼルヴの反撃。悪魔の様に黒く燃え盛る炎。
「翼をもがれたなら、あとは堕ちるだけ……でしょ」
 鼻孔に届く、肉が焼け焦げる独特の匂い。ドラゴンウォリアー達は終始戦いを優勢に進めている。ドラグナーに起死回生の一打は無く、最早勝負は時間の問題と言えた。
 ドラグナーも強化型の名に恥じぬ凄まじい力を持っていたのは間違いない。しかし、その力は結局、『ドラゴンウォリアー6人分よりも少し下』程度のものでしかない。9人のドラゴンウォリアーが戦闘可能な状態でここに来た時点で、彼らの勝利にはリーチがかかっていた。
 言わば、戦術以前の戦略的勝利。
 解れた髪をそのままに、タリムが鎌を振り上げる。闇を裂き、空気を裂いて、幾筋もの雷がドラグナーを打った。部屋に再び闇の支配が戻る。ドラグナーはもう動かなくなっていた。


「終わったわね……しばらくフォビアは見たくないわ……」
 帰り道、力の続く限りフォビアの相手をしたタリムの言。フォビアが全く姿を現さなくなるまで戦い続けた疲労感――これだけやったのだからおそらく殲滅完了したはず、と自分に言い聞かせる。
「ホント、もう一生分は見たよね……」
 マリスは適当な寝具にぐったりと身を横たえていた。
「さて、プーカの勇者殿ご一行の凱旋と致すかな」
 数時間ぶりの太陽光に目を細めるギー。流石に遺跡調査に回せる余力は残っていない様子。
 白虎帝城に辿り着いた冒険者達は、しばしの歓談の後、それぞれの帰途につく。
「お疲れ様……楽しかったよ」
 ラグゼルヴはいつもの微笑を浮かべて去っていった。
「それじゃ、ね」
 小さく手を振ったセッカがその後をとてとてと追う。
「またねー♪」
 ぶんぶんと音が出そうなほど手を振っているのはユリア、それにポルックだ。
 これにて『勇者ポルックと一緒にフラウウインドに出かけよう会』は一旦解散となる。
 しかしフラウウインドでの冒険はまだ始まったばかりだ。
 マイヤは壱の剣探索隊章を握り締め、そびえ立つ剣の群れに視線を送る。今年、同盟が攻略したのは僅か一本。六本は手つかずで残っている。未だ多くの謎を残すこの大陸に、シバは冒険者としての昂ぶりを感じていた。そう、まだ始まったばかりだ。ここで各々の道が分かれたとしても……、
「冒険者で在り続ければ、また道が交わる日も来るだろう。それまで壮健で!」


マスター:東川岳人 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:8人
作成日:2008/12/27
得票数:冒険活劇9  戦闘2 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。