≪飛天大王ガルベリオン≫ドラグナーガールを倒せ



<オープニング>


 ――息を殺す。
 己の存在を否定するかのように、心臓の鼓動すら消えろと望むようにと。

 ガルベリオンの体の大部分は島として存在していたときの名残で密林に覆われている……それは進行を阻むものであると同時に身を潜めるには好都合なものだ。
 そんなガルベリオンの尾から左後足と思われる部分を、蒼の貴剣・セレネ(a35779)たちは探索していた。
 道中に見かけた動物に、真夏の蒼穹・フィード(a35267)は魅了の歌で聞き込みをし、蒼氷の忍匠・パーク(a04979)は罠が無いかと注意深く足元を探るが……動物たちは何も知らないようだし特に罠が仕掛けられている様子も無い。
 本当にドラゴンやドラグナーガールが居るのだろうか? ……そんな疑問を抱いてしまうほどに島の内側は平穏そのもので……。
 情報を確認していた、綾なす火炎の小獅子・スゥベル(a64211)の少し前を木々の陰に隠れるように移動していたセレネが手で何かを合図している。
 そしてセレネが示す前方を注意深く見やると……そこには数体のドラグナーガールが、空に現れた黒い太陽を見上げて何かを話し込んでいた。
 会話の内容までは聞き取れない……が、これ以上近づくと相手に見つかる恐れがあり、戦うには今の戦力では心許無い。
 パークとフィードは頷き合うと、まずはドラグナーガールの所在を確認しただけでも上出来だろうと用心深くその場を離れた。

●ドラグナーガールを倒せ
「さて、この班にはスゥベルたちが見つけたドラグナーガールたちを倒してもらう」
 紫猫の霊査士・アムネリア(a90272)はドラグナーガールに興味のありそうな護衛士たちに振り返ると説明を始める。
「ドラグナーガールの数は全部で十体と言ったところか……ドラグナーガールの戦闘能力自体は知っての通り大したことは無い」
 誘惑催眠と言う特殊能力を持つ代わりに、普通のドラグナーよりも圧倒的に戦闘能力が低いのがドラグナーガールだ。
「しかも、今はドラグナーガールたちの周りには何も操っている動物が居ないようなので、単純にドラグナーガールとの戦いだけになるだろう」
 その上相手は此方を認識していない……完全な不意打ちが可能となるわけだ、戦況は圧倒的に有利といえるだろう。
「貴様等は先ず、ドラグナーガールを誘い出し、これを全て倒してくれ」
 ドラグナーガールは自分達の状況が不利と悟れば迷うことなく逃げるだろう、それ故に誘い出しには細心の注意が必要だ。
「……万が一逃げられると後々面倒になりそうだから、気をつけてな?」
 アムネリアは護衛士たちに念を押すと、
「それじゃ、頑張って殲滅してきてくれ」
 絶対に倒して来いともう一度念を押して護衛士たちを見送るのだった。


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参加者
蒼氷の忍匠・パーク(a04979)
そよ風が草原をなでるように・カヅチ(a10536)
白銀の山嶺・フォーネ(a11250)
空気は読まない・レジィ(a18041)
愛と正義と黒バニーの使者・アリス(a20132)
弓使い・ユリア(a41874)
空白の大空・マイシャ(a46800)
ノソ・リン(a50852)


<リプレイ>

 水平の彼方まで白い雲が広がっている……飛天大王ガルベリオンは雲の中を泳ぐかのように、何処かへと飛行を続ける。
 それは当て所もなく彷徨う亡霊船のようにか、それとも何か明確な目的を持った旅人のようにか……。

「さーて、とりあえずドラゴンドラグナー殲滅の第一歩ね」
 島の端から見える雲の海を暫しの間眺めていた、空に響く幻奏・レジィ(a18041)は視線を自分たちの目的であるドラグナーガールが居るであろう方へ向けると、気張っていきましょーとあんまり気合の乗らない声を上げる。
「いよいよパラダルクの置き土産と決戦だね!」
 レジィの言葉に同意を示しながら、蒼氷の忍匠・パーク(a04979)は考える。いくら戦闘能力低めとは言え、相手はドラグナー……頭の回る相手でもあるし舐めてかかるわけにはいかないと……それに、
「ドラグナー達がいるのはここだけでしょうか?」
 そよ風が草原をなでるように・カヅチ(a10536)が持つ疑問のとおり、この場所意外にドラグナーガールが居た場合、逆に追われる立場になりかねないのだ。戦闘により存在を認知されるまでは致し方ないとしても、此方の戦力や手口まで洩れるのは好ましくない事態と言えるだろう。
「ガルベリオンの上には逃げ場がないですから、見える敵は確実に仕留めましょう」
「対ドラゴン班の皆の為にも、バッチリ成功させましょう!」
 確実に倒さないといけませんねと言うカヅチの言葉に、二振りの剣・マイシャ(a46800)は頷き、弓使い・ユリア(a41874)は小さな拳をぐっと握り締めた。

 愛と正義と黒バニーの使者・アリス(a20132)たちは、以前にドラグナーガールを見つけた場所を目指して森の中を進む。低く、深く息を殺して……そこにある木々と同化するように。
 アリスたちの目的は少人数によるドラグナーガールの誘き出しだ。
 少人数ならドラグナーガールたちが行き成り逃げ出すこともなく、自分たちが有利なように誘導できるだろうと考えたのだ。
 それに、ドラグナーガールたちが何を話しているのかも興味深いと……敵に認知されていない今だからこそ手に入れられる情報があるかも知れないのだしと、アリスと共に行動するユリアとマイシャは思っているようだ。故に、彼女らは囮としてではなく本当の偵察として行動している。
 新緑に覆われた森の中、聞こえるのは木々が風に揺れる音と動物たちの鳴き声……そんな中を暫く歩を進めると――木々の合間に白いものが垣間見えた。
 アリスたちは頷きあうと、より注意深く白いものへと近づいてゆく……そしてある程度の距離を詰めたところで完全にそれらがドラグナーガールたちであることを確認できた。
 数はおよそ十といったところだろう……木漏れ日の中それぞれが倒れた木などに腰掛け、完全にくつろいだ様子で談笑などをしていた。
「…………リオン………………もたない……」
 何の話をしているのだろう? とマイシャは気配を消してドラグナーガールたちが居る方へさらに近づく……どうやら黒い太陽の話はしていないようだが……。
「早く…………ファイア…………」
 そしてある程度近づいたところで――パキッ! と何かを折るような音が響いた。
 一斉にこちらを振り向く全く同じ顔が一斉に此方を向く……それに釣られるようにマイシャも音がした方……つまりは真横に視線をやればユリアが木の枝を踏んでいた。
「……人?」
 ユリアに気付いたドラグナーガールは始め一様に目を丸くし、
「!! 見つかっちゃいましたよ」
「助けて〜 見逃してー!!」
「ま、まずい! 殺される前に逃げましょう!」
 ……こんな所に現われるものが何の策も持っていない訳が無い……だが……完全な油断が、長き歳月を積み上げた人への憎悪が、判断を鈍らせたのだろう。口々に芝居じみた台詞をはくアリスたちを見てドラグナーガールたちは狂喜に口元を歪めると、一斉に襲い掛かってくる。
 作戦はひとまず成功だろう、身震いするほどの殺意を背にマイシャたちは撤退を開始した。

「上手くいったようだね」
 ドラグナーガールたちが走り去っていった後、パークは木の陰から姿を現すと一緒に姿を隠していた、銀花小花・リン(a50852)へ話しかける。どうやら作戦通りに全てのドラグナーガールがアリスたちを追ったようだ。
「……私たちも行こう」
 リンはパークの言葉に頷くと、ドラグナーガールたちが走っていった方へ視線を向ける。
 深い森の向こうから聞こえるのは木々を掻き分けて進んでいるであろう、仲間たちの足音とドラグナーガールたちの狂気じみた笑い声。
 パークとリンはお互いに視線を交わすと、アリスたちを補助するべく彼女たちの後を追って走り出す。付かず離れず、決して気付かれないように……。

 騒音が駆け抜けてゆく……そして全ての騒音が抜けたところで、それらは立ち止まった。
「ふぅ……ここまでくれば……」
 そう言ってアリスが振り返ると、観念したと思ったのかドラグナーガールたちがじわじわと距離を詰め始め、
「待ちくたびれましたよ」
「?!」
 その声に驚いたドラグナーガールが振り返ると、カヅチが不意に現われ、掲げた右手に大振りの刀を呼び出した。
 明らかな挟撃、疑うまでもなく罠であろう……ドラグナーガールたちは冒険者たちが居ない隙間を突いて逃げようと試みるが……そこに隠れていた、白銀の山嶺・フォーネ(a11250)が透き通る雪の様な突撃槍を振るう……と、その白銀の刀身を中心に吹雪が巻き起こる。
 フォーネの氷結領域に巻き込まれた何体かのドラグナーガールが凍りつき、
「ちゃっちゃと片付けちゃおー」
「希望と共に在る、正義の名の下に!!!」
 レジィが頭上に紋章を描き、太陽のごとく光り輝く正義の矢を蒼雫弓と名付けた強弓からユリアが自身の頭上へと高々と打ち上げると、虹色の光線と輝く矢が雨あられとドラグナーガールたちの体を貫いてゆく。
 光線を避けるようにあたふたと逃げ惑うドラグナーガールたちだが、さらにマイシャの粘着性の高い糸が降りかかり……、
「人ごときが!」
 ドラグナーガールは自分たちを囲むように展開する冒険者たちに怒りに満ちた篭めた瞳を向ける。自分たちよりも劣っていたはずの人に、罠にかけられ追い詰められる屈辱を、許せぬ。許せるはずがないと、その眼が雄弁に語っているようだった。

 既に戦闘が始まっているのを確認すると、パークは手近なドラグナーガールに粘着性の高い糸を放ちその動きを拘束する。そして、逃げ出さないようにするためにリンが迅速な動きで戦場の要となる場所に陣取り敵の目的を阻害する。
 包囲されたドラグナーガールたちは、どこか一点を突破するべく目標を探していたようだが……挑発されるまでもなく、丁度そこへ現われたリンを重点に狙うことにしたようだ。
 槍のように尖らせた爪を代わる代わる突きつけては、リンの体に細かい裂傷を刻んでゆく……。
「……つぅ」
 盾を片手に何とかやり過ごすリンだが、流石に数が多くダメージが蓄積してゆくが……冒険者たちも黙ってみている訳ではない、カヅチが流れるような動きで舞大通連を横なぎに払い、
「倒させて頂きます」
 真横からの斬撃に悲鳴を上げたドラグナーガールたちへ踏み込んだフォーネが手に持った菊理媛神を振り下ろすと、何体かのドラグナーガールが苦痛の表情のまま凍りつき……硝子が割れるような音を響かせ砕け散る。
 同族が倒れたことに悲鳴をあげるドラグナーガール……だが、それは仲間の死を悲しむでもなく、自分の順番が近づいたことに対する悲鳴でしかない。
 真紅色の鋼糸を振るい、残像が発生する程の素早い足さばきで近くの一体に超高速の一撃を放ってしとめたアリスは、鋼糸についた液体を不愉快そうに振り払うと周囲を確認する。
 既に半数以上のドラグナーガールが倒れ、残りのドラグナーガールも満身創痍。パークやマイシャの蜘蛛糸に捕らわれ、勝ち目も逃げ道も無いと悟ったドラグナーガールたちは口々に助けて……助けて……と繰り返しているが、ユリアとレジィから放たれる光は容赦無く降り注いでいる。
 さらに、そこへリンの体内で極限まで高めた闘気を一気に解放させる危険極まりない空気の渦に巻き込まれて殆どのドラグナーガールが微動だにしなくなる……そして、
「お願い……助け――」
 跪き自分へすがるように手を伸ばしたドラグナーガールの胸元へ眉一つ動かす事無くカヅチが大振りの刀を突きたてると……全てのドラグナーガールが倒れたのだった。

「上手く行ったね」
 想像以上にあっさり片付いたドラグナーガールたちの残骸を前に、パークは緊張の糸を解くように息を吐く。
「死んだ振りをしているのも居ませんね」
 死んだ振りをしているのが居ないか確認していたカヅチとレジィも、確認し終わると顔を見合わせる。
 ドラグナーだと判っていても人型……それも美女の造型を持つものの息を確認して回るのも嫌なものだ……万が一を考えれば嫌でもやらなければならないのだろうが。
「主人を失い、この世界に拠り所も無い」
 亡国の民のような状況には悲しさすら覚えると恨めしそうな顔のまま絶命しているドラグナーガールたちを見下ろし、フォーネは思う。だが……お互い相容れない存在である以上は討たねばならぬのだとも思うのだ。
「あっちも無事に終わったようですね」
 そんなドラグナーガールたちを人形とかと重ねあわせ嫌だ嫌だと肩を抱いているレジィと瞳を閉じて何かを考え込んでいるフォーネを見守っていたマイシャは、ドラゴンの相手をしていた仲間たちが歩いてくるのを確認するとそう言った。

 森の木々がざわめく。
 風に撫ぜられて乱れた髪を軽く払って整えるとフォーネは森のほうへ目を凝らすが、そこには木々があるばかりで何も変わったところは無かった。
 気のせいでしょうか? とフォーネは小首を傾げると仲間たちの下へと駆け出した。

 【END】


マスター:八幡 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2009/01/05
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