【Fortune Stories】つづいては、雪の魔女の洞窟



<オープニング>


「毎日寒いね−♪ ルラルだよ〜」
 背中にぬいぐるみ(うーちゃん)を乗せた、狐尻尾のストライダー霊査士がやってくる。
「みんな、また会えたね!」
 太陽のようにさんさん、ふりそそぐ笑顔でルラルは片手を上げた。このメンバーと再会できたのがとても嬉しいようだった。
「お宝探索の依頼、ブナ屋敷での冒険はうまくいったみたいだね。それでね、今回もね、とっておきの話があるんだよ〜」
 今日も今日とてOTAKARA話。もちろん皆、興味津々だ。
 耳寄せて聞いてみようじゃないか。

 舞台は、人里離れた地の洞窟。そこは「雪の魔女の洞窟」と呼ばれている。
 もちろん、実際に魔女が住んでいるというわけではない。ちょうど今くらいの寒い時期、この洞窟の口から奇妙な泣き声のようなものが聞こえるため、こんな呼称がついたのだ。この地域は冬季、強烈な山おろしが吹くそうだ。入り口以外のどこからか入り込んだ風が、洞窟の内部で反響を繰り返し、鳴き声のように甲高い音を発しているのだろう。

 この洞窟は夏でも肌寒く、冬になるとそれこそ極寒の場所となる。しかしこんな場所だけに、ものを隠すに便利と考える者がいても不思議ではない。
 昔、ある盗賊がいた。それも女盗賊の姉妹だ。盗むのものは宝石専門、徒党を組まず二人だけで、数多くの「仕事」を成し遂げてきたらしい。
 やがて月日は流れその妹は、どこかの大貴族に嫁ぐことになった。その際もちろん身分は偽っている。姉も廃業を決意し、財宝を小箱にしまって雪の魔女の洞窟に隠したという。その後妹は幸せに暮らしたといわれているが、姉のほうはそれきり姿を消し、ゆくえは知られていない。
 さて、それはもう、直接見知っている人はいないほど過去の話だ。貴族の名は忘れられたし、姉妹だってとうにこの世にいない。雪の魔女の洞窟は現存しているが、その伝承を確かめに挑んだ人々はほとんどなかった。
 なぜなら洞窟は僻地にあって、薄気味悪く、しかも危険な場所だからだ。

「正体は鍾乳洞なんだって。とっても天井が高くて、しかも何層かに分離してるんだよ。ナイフみたいにとがった鍾乳石がたくさん下がっているらしいけど、あまり暴れたら折れて落ちて来ちゃうかも。入り口がひとつきりなのも怖いね。埋められちゃったら……と考えたら怖くなるよ」
 さらに現在、なお悪いことに、この鍾乳洞にはモンスターが生息している。
「怖いモンスターだよー。白くて長い毛がふさふさに生えてて、二本足でのしのし歩くの。しかもそんなのが三匹もいるんだって! 顔も毛で覆われてるんだけど、このモンスターは暗闇でも目が見えるみたいだよ。手に石斧を持ってて、これで攻撃したり、投げつけてきたりするよ。大きな声で叫んで、麻痺させちゃうこともできるんだって。それに、鍾乳石をバリバリとかみ砕いて、つぶてをはきかけてくるのも得意らしいから、いろいろ気をつけないといけないね」
 モンスターはいずれも人間大らしい。特に毛が長く汚れているのが一体、それに、小型で雪みたいに白いのが一体、残り一体は色大きさともにその中間だ。大、中、小、の順に強いとみていい。
 うーちゃんをもみもみと揉みながらルラルは言う。
「宝石の入った箱は……どこにあるかはっきり説明できないけど、なんか、高いところにあるみたい。赤銅色で、なんだか光のイメージもあるよ。赤い銅って光るんだっけ?」
 あまり関係ないかも知れないが、盗賊姉妹は『虎』という通り名で呼ばれていたという。
「お宝……かっこよくいって『OTAKARA』を、見つけられるかどうかはわからないけど、怖い怖いモンスターをやっつけられれば依頼は成功だよ。宝探しは楽しみとしてとっておいて、まずはモンスターをがんばって退治してね〜」

 氷雪の洞窟に、三体のモンスターが待ち受ける。秘められたOTAKARAの予感も……!
 モンスター退治が優先事項、宝は「あわよくば」という程度に考えてもらえれば幸い。
 見つからなくてもご愛敬、バトルとトレジャーハントの物語に今回も挑め!


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参加者
驚戦士・ウニクリ(a14146)
再び歩みだした・アルカディウス(a33399)
笑顔のヒーロー・リュウ(a36407)
宵闇の踊り子・フォリア(a53942)
縁の下の力持ち・マッシュ(a59763)
斜陽支えし鋼盾・ジェフリー(a60090)
朱華・オーム(a74565)
海の魔術師・アクアリス(a74908)
鈴音の唄猫・ユリウス(a76515)
永久に祈り捧げ歌う者・サフィーア(a76810)


<リプレイ>

●幾度目かの分岐
 どこから聞こえるのだろう。
 甲高い音は、ヒステリックに泣く女の声さながら。止むことなく谺する。不気味だが、不思議な感傷を呼び起こすのも事実。
「確かにこれは……詩のひとつでも作りたくなる場所だねェ」
 鈴音の唄猫・ユリウス(a76515)はカンテラを手に、壮麗な光景に感じ入った。
 垂れ下がるのは鍾乳石、今でも成長を続けている証拠に、ぽとり、ぽとりと雫を落としている。その雫が固まり柱状になったものが、地上から突き出る石筍だ。上下いずれも牙のように尖り、さながら猛獣の口中にいるよう。
 それにしても、とユリウスは身を抱くようにして震える。
「さっ……寒っ! 寒すぎるよココ……!」
 日の差さぬ鍾乳洞内部は、まさしく骨身にしみる寒さだ。
「ああ」
 彷徨いし鳥を導く者・サフィーア(a76810)がユリウスに応じた。
「寒いな」
 とはいうもののサフィーアは悠揚として、まったく寒そうではない。姿勢が綺麗だ。背をしゃんと伸ばして目線は正面、きびきびした所作も見ていて気持ちがいい。
「泰然自若っていうんだよね。格好いいな〜、サフィーアさんて」
 後列から、海の魔術師・アクアリス(a74908)が声を上げた。
「そ、そんなことは……ない」
 すると彼女が照れたような声を出したので、その様子が可愛らしくてアクアリスはくすくすと笑ってしまう。彼女は元気一杯、ハートが燃えているから寒くなんかない。遮光ランタン『宵風』で各所を照らす。
 隊列先頭は、斜陽支えし鋼盾・ジェフリー(a60090)だ。時折振り返ってメンバーの状態を確認し、分岐点になるたび停止して判断を問う。しかも未知の闇に注意を払わねばならぬのだから、非常に緊張感の高い役割である。しかしそこはジェフリー、この重圧を受け止め、こなしている。
「雪男か……雪女なら歓迎したいところだけどね。さて、また分岐だ。アルカディウス、次はどっちに進んだらいいかな?」
「少し待って下さい」
 再び歩みだした・アルカディウス(a33399)はマッピング役だ。ブナ屋敷で入手した黄金のペンを忙しく走らせ、地図を作り上げている。
「分岐点の壁に『D』と刻んで下さい。今度も右に行ってみましょう」
 ブナ屋敷の冒険で、アルカディウスはマッピングの楽しさに目覚めたようだ。彼が描く地図は、ただ洞窟の構造を書き写しただけのものではない。途上で見つけたもの、気になった地点など細かに記していた。そのまま売り出して観光マップにしたいほどだ。
「了解なぁ〜ん」
 ひとのそサイズ・ウニクリ(a14146)が、分岐点近くの石筍に、刀の先で印を刻む。
「なにか聞こえないかなぁ〜ん?」
 ウニクリは作業を止め、耳を澄ませた。かたちのよい瞳を細めて何度かまばたきする。
 メンバーは息を殺した。宵闇の踊り子・フォリア(a53942)もその一人だ。
 フォリアにとっては、雪の魔女の洞窟探索が初の冒険である。いくらか緊張はあるが、むしろその緊張を楽しんでもいた。
(「騒音を立てないよう気をつけないとね……」)
 そのとひんやりとした雫が首筋に落ち、フォリアは悲鳴を上げそうになる。でも我慢! この感じ……まさしく冒険者だと思う。

●洞窟奥部へ
 奥から聞こえる音はしばらくして止み、魔女の泣き声のような音の他は消えてしまう。
「先に進むしかなさそうだね。音の聞こえたほうに行ったほうがいいかな?」
 笑顔のヒーロー・リュウ(a36407)が言う。あまりの冷えで少し、指先の感覚が鈍ってきた。剣の柄をぐっと握り直し、血の巡りを高めておく。
「リュウさんに賛成だよ。虎穴に入らずんば虎児を得ず、『虎』姉妹のOTAKARA探しだもの」
 と応えるは流麗な男。水も滴る、というのだろうか、艶のある容姿である。彼はソルレオンの女形・オーム(a74565)、獅子の髪をかきあげた。
 危険を愛し、危険を追うのが冒険者、誰からも反対はない。縁の下の力持ち・マッシュ(a59763)は歯を見せる。
「何処から来るか判らんなぁん。皆、注意していこうぜなぁ〜ん」
「うん。見通しの悪い場所での不意打ちは避けたいな」
 優雅に応じると、オームも従うのだった。

●広間(1)
 さらに小半時の後、幾度かの行き止まりと回り道を経て、突然視界がひらけた。
「これほどの場所があるとはね」
 畏敬の感をこめジェフリーは見回す。
 そこはまるで、雪の魔女の宮殿だった。柱は少なく、果てが見えぬほど広大で、ゆるやかな階段状の段差があり、壁際に一段高くなっている地点が玉座のように見えた。天井はこれまでで一番高いだろう。空気は澄みわたり、冷たい。
「なんだか明るいなぁ〜ん?」
 ウニクリは周囲を見回す。確かに、天井から薄い光が差している。穴が開いているのだろう。
 とどめなく降る水滴が、各所に小さな泉を作り出している。ユリウスは微笑する。
「さしずめ雪の魔女の涙……ってトコかな。落ちる水音が、ちょっとした音楽会みたいだねェ」
 暗い場所が長く続いただけに、マッシュも感慨深げだ。
「なぁ〜んっつーか、絶景だなぁん?」
 と見回していたが、突然厳しい顔つきになる。
「散らばれ! 上なぁ〜ん!」
 マッシュの声が終わるか終わらぬかのうちに、頭上から大きな物が三つ、立て続けに落ちてくる!
 だがマッシュの機転により、一同は散開し難を逃れていた。
「油断大敵、警戒を解かずにいて良かったよ」
 オームは味方を頼もしく思った。一瞬分断されたチームであるが、すぐに隊列を戻したからだ。
 まるで毛玉、長い毛を生やした怪物三体は、毛の奥から荒い息を吐いている。
「三体とも出現、か。その正直さが嬉しいね。さあ、魂を砕く闇となれ! ダークソウル!」
 リュウは前に駆け出す。手にした剣は漆黒の、闇をまとう長剣と化す!
 口火を切ったのはアクアリスだ。重騎士の一人として防衛の要を務める。
「ジェフリーさん、まずは鎧聖降臨を回すよ!」
「了解だ。こんな寒いところで重傷はごめんだろうしな」
 奇襲を外した敵に、これを邪魔する手立てはない。この隙にジェフリーは仲間に力を付与する。
 術士を護るポジションで、ウニクリが血の覚醒を解放する。腕に、足に力が溢れ出す。
「きれいな場所だから、あまり壊したくないけどなぁ〜ん!」
 蛮刀振りかざしウニクリは、見栄を張るよに構えて見せる。よき敵にこそ御座んなれ!
 手早く準備を整える冒険者たちに、小型の怪物が飛びかかった。しかし攻撃はストレートすぎる。難なくユリウス、これをかわして、
「切り結んで戦闘か……ガラじゃないんだけど、たまにはいいかもねェ」
 ほら、と両刀払って流せば、迸る光、偉大なる衝撃となる!
 これに倣うはサフィーアだ。乱れる緋の髪、それはまるで真冬の桜、二刀で舞うように、
「崩落は避けたい……早めに仕留めるべきだな」
 同じく偉大なる衝撃を発した。二人の攻撃を浴びた怪物はそのまま麻痺する。
 中型怪物も石斧で切りつけてくる。これを防ぐべく、アルカディウスは銀狼を解き放つ。
「そうはさせません!」
 狼は飛びかかるが、怪物はこれを腕にまとわりつかせたままアクアリスを撃った。
「あいたた! やるね!」
 さらに大型の雪男、大きく息を吸う仕草をするなり、開けた口から勢いよく、無数の石礫を吐き出した。尖った破片は前衛陣の鎧や武器、肌に当たり、重い衝撃と細かな傷を与える。
 フォリアの頭上も破片が掠めた。首をすくめこれをかわした彼女は、すぐに自身の役割を果たす。
「大丈夫、すぐ治すから心配は無用よ!」
 彼女は歌った。透明な水晶が震えるような清らかな声で。歌は癒しの波動を帯び、仲間達の傷を塞いでゆく。これぞ高らかな凱歌、仲間を支え、励ます歌だ。
 そして、勇ましい声がさらに後押しする。
「三匹出てきたから後ろは気にしなくていいなぁん! 支援は俺たちに任せろなぁん。思う存分やっちまえなぁ〜ん!」
 それはマッシュ。巌のような腕をめぐらせ、ヒーリングウェーブを発動するのだ。
 頼もしい仲間はさらにいる。オームはアコーディオンを奏で、意志の力を炎に転じた。
「鍾乳石を崩さないようにしたいところだね。景観を損なうし、何より危険だ」
 投げつける火は黒色、塊と成し投げつける。
「美しい景観にブラックフレイムは無粋かな?」
 オームの投弾を口中に投げ込まれ、怪物は悲鳴を上げて後じさった。

●広間(2)
 戦いは冒険者有利、されど敵も的確に反撃してくるため圧倒とまではいかない。
 やがて敵は三体一斉に雄叫びを放ち、冒険者は一時的に機能不全となった。リュウとアクアリス以外の前衛メンバーが麻痺を受けてしまったのだ。
 だが逆境になればなるほど、リュウの魂は燃え上がる。彼は黒い怪鳥のように敵を襲う。
「おっと、僕の仲間に手は出させないよ!」
 笑み絶やさず、剣を逆手に取りて横薙ぐ。流れる光は刀の軌跡、三体ともに斬り払う!
「寒いんだよ〜ぅ!!」
 これにつづくはアクアリスの紅蓮の雄叫びだ! 逆に中型怪物を縛ってしまう。
 たちどころにマッシュも、危機を打開すべく奮戦した。
「そんな痺れ、俺が消し去ってやるなぁ〜ん」
 吹く風、それは毒消しの風、たちまちウニクリは復帰して、
「リスクはあるけど、ここが使いどころなぁ〜ん!」
 炎を刃に宿らせて、フレイムブレードを振りかざす。中型怪物の腹に深々と突き刺した。剣は引き抜かれど真っ赤な炎は、未だ怪物の身を焼き焦がす!
「敵の攻撃をうまく防げずすみません……その分、ここで決めます!」
 アルカディウスの翠の瞳、エメラルドの光を帯び、輝く。
「これで……どうです!」
 洞窟をぱっと光が照らした。アルカディウスの喚びし紋章の力が、火球に結実し輝いたのだ。灼熱の球は、中型怪物の延髄に落下する。麻痺が解けたか、怪物は炎をはたき消そうと必死だ。その手だって炎上しているというのに!
 斃れ死した中型怪物を飛び越え、一筋の光が小型怪物を撃った。命中した光は派手なファンファーレ上げて消える。
「偉大なる一撃、ささやかな音楽会には大仰すぎるよねェ」
 ユリウスである。見事に小型怪物を無力化していた。
 泰然自若、やはりサフィーアは沈着の美を見せる。刃両手にし乱れ咲く、剣の舞のその勢いよ。両刀は同時に小型怪物を斬り、速やかにして鮮やかな死を与えた。
 フォリアが高らかな凱歌を再び歌う。清らかな声で励まし、癒す。
「さあ、もうじき任務完遂です。あと一頑張り」
 身をくねらせ、心のみならず体も歌にゆだねる。どこか官能的なフォリアの歌である。
 オームの長い睫毛が揺れた。彼は敵が、逃げようとする気配を察したのだ。
「おや怖くなったのかい? 良くないと思うよ、それ」
 と言って黒炎をぶつけた。
 オームの言う通りだ。怪物は石斧をジェフリーに投げつけ、わめきながら踵を返したのである。しかもそれは、冒険者たちが入ってきた方角だった。
「外に出て出入り口を塞ぐつもりか……? やりそうなことだな」
 石斧を盾で跳ね返し、ジェフリーは愛刀タービュランスを振り下ろした。剣尖、裂帛の気とともに兜割り奥義を生じ、怪物の背中を切り裂く。これで敵がよろめくのを見て、
「仕上げは頼むよ!」
 と呼ばわるジェフリーの声に、がってん、とアクアリス、飛ぶようにこれを追う。
「ゲット、O・TA・KA・RA〜☆」
 叫んで一刀、大岩斬! 怪物に叩き落とし、そこに
「打ち砕け! ダークソウル!」
 うなる雷光が激突! リュウのサンダークラッシュが、見事怪物の息の根を止めたのである。
 怪物は体勢を崩して広間を転がり落ち、泉に落ちて動かなくなった。

●虎の宝
 剣を拭い、サフィーアは意見を述べた。
「この辺りが宝の隠し場所だという気がしないか……?」
「そうですね。この広間が洞窟の最奥部のようですし」
 アルカディウスも同意した。黄金のペンで記した地図を眺めても、隠せそうな場所は他にない。
 そこで各人、広間を自由に探しはじめたのである。
「姉妹は『虎』という通り名だったわね……虎、虎……」
 フォリアは頭を悩ませた。虎といえば縦縞模様、しかしそれを連想させる地形は見あたらない。
「わたしぃは上が気になるのなぁ〜ん」
 ウニクリはしきりに頭上をみあげていた。耳を澄ませばわかるのだが、鳴き声のような音はこの広間、それも上部を発信源としているようだ。
「うーん、どれなのかなぁ〜ん」
 ウニクリは首をひねった。光が漏れる孔は複数あるのだ。試みにマッシュがフワリンを喚び、アクアリスがこれに乗って近づき調査してみたが、隠し場所のようには思えなかった。
 このとき唐突に、ジェフリーの眼前に紅い光が差してきた。
「夕陽……か。もうそんな時間のようだね」
 ジェフリーは振り向き、高台の壁上部に光源を見つける。
 眩しそうな目をして、オームもこれを見上げた。
「なるほど、西壁か。あの位置からなら、夕の光もよく入るんだね」
 そのとき、光源ではなく地面を指して、フォリアが声を上げた。
「ほら虎っ、これ、虎に見えない?」
「……なるほど……」
 サフィーアもうなずく。
 孔に格子がはめられているのかもしれない。光は床に、縦縞模様の円を描いていた。
 オームが近づいて床を叩く。
「正解のようだよ」
 長い年月で鍾乳洞を形成する物質が流入し固まっているが、その付近に空洞があるのがわかった。
「そうと決まれば話は早いっ☆」
 アクアリスはさっそくその場所に剣を突き入れる。
 ユリウスは改めて広間を見回し、満足そうに微笑んだ。
「魔女の洞窟の奥には、自然の織りなす荘厳な眺めか……それにしても神秘的な光景だよ」
「この景色がある意味一番の宝だなぁん?」
 マッシュも快活な笑みを見せるのだった。

 取り出した小箱に、夕陽が当たり赤く光っている。
 開けた箱からは手紙と、虎目石をはじめとする宝石、指輪、首飾りなど様々な装飾品が出てきた。なかには宝石をはめこんだコンパスなど、面白い意匠のものもある。
 だが、アルカディウスが最初に手を伸ばしたのは手紙だった。
「ええと、かいつまんで読みますよ」
 コホン、と咳をしてアルカディウスは読み上げてゆく。
「『愛する妹へ。あなたの素性が露呈しては、せっかくの幸せも失われてしまうでしょう……』、やはりこれは、お姉さんからのものだったのですね。『……ですから私は姿を消します。大丈夫、あなたに噂が届かないような遠い土地で、楽しくやっていくから』、『……もし、彼に捨てられるようなことがあれば、ここにある宝石を使いなさい。女一人くらい遊んで暮らしていけるだけの財になるはずよ。そして、彼の左胸には、一番奥にあるものを差し上げて』。一番底にあるもの?」
「これじゃないかな」
 リュウが箱を探って、取り出したものを掲げて見せた。
 ユリウスはニヤリと笑う。
「さすが虎姫。こういうセンス、好きだねェ」
 それは、宝石で飾られた鋭い短剣であった。


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朱華・オーム(a74565)  2011年06月30日 23時  通報
なぞなぞシリーズ。
私は2回目からの参加でしたが、オムニバス形式なのでお話に入りやすかったです。
ちなみに続編シリーズと合わせて全9回。
どの依頼の謎解き要素も本当に面白かったです。