ドキッ☆雪崩れだらけの登山大会〜遭難もあるよ♪〜



<オープニング>


 バンッ!
「このままじゃ……いけないと思うんです」
 いつものぽけぽけとした表情を消し、口を真一文字に引き決意に満ちた表情を浮かべるランティ。テーブルぶっ叩いてヒリヒリと痛む両手もそのままに、ゆっくりと、そうゆっくりと言葉を吐き出していく。
「ボクはみんなの役に立ちたくて冒険者になりました。……でも、いつもみんなの足を引っ張って、自分の力不足を感じるばっかりで――このままの自分が、許せないんです!」
 もっと自分に力があれば。そうすればもっと良い結果を導き出すことが出来たかもしれない。それは冒険者に限らず、誰しもが抱く悔恨の情である。
 あの時自分に力があれば。
 意思に見合うだけの力があれば。
 最良の1手を掴み取ることが出来たのではないだろうか?
 誰かが絶望の涙を流すことなどなかったかもしれない。
 絆が永遠に引き裂かれることもなかったかもしれない。
 有名ケーキ屋さんの限定30個ケーキも買えたかもしれない。
「だから、ボクは山で修行をしようと思うんです。ちょうどいい感じの雪山があると聞いたので――どうでしょうか、良ければ一緒に行きませんか?」
 修行=山というのが少々安直な気もするが、ランティの決心は硬いようだ。
 早速荷物を纏めて酒場を出て行くランティ。その姿は何時になく力強く、そして頼もしい。それだけに、彼女がこの修行にどれだけの意気込みがあるかがわかるというものである。

 ――ポケットから覗く、らくらく登山ダイエット☆ と書かれたチラシさえなければ。


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参加者
NPC:今日も一日・ランティ(a90391)



<リプレイ>

●洗礼
 すべてを塗りつくしてしまいそうなほどに一面真っ白な大地に、穏やかな風に煽られた風花がちらちらと舞い散っている。他の全てを排し出来上がったその銀世界は、ある者には純粋な感動を与え、またある者には荘厳さや死を連想させるほどの畏怖すら与えるだろう。音一つ存在することの許されない程のある種の異世界ともいえるこの場所に、キュッキュッと靴が雪を磨耗していく響きが伝わる。
「そ、そういえば、ボク、さ、寒いの苦手なの、忘れて……か、帰りたいで、す……」
 そんな風景を台無しにしながら早くも弱音を吐きまくっているランティ。既に決心とやらは寒さの前にほとんど膝を屈しており、半泣きになっては浮かんだ涙が凍るのを見て更に絶望感を募らせていく。ついて来た者たちも、あまりに頼りない先導役に雪よりも冷たい視線を送るばかりである。
「も、もうやだぁ……へっくしゅ――あああああぁ!」
 一際大きなランティのくしゃみが木霊したとき、『それ』は起こった。

 ドドド、ドドド。

 まるで狙ったかのようなタイミングと、あまりにも出来すぎたほどに人一人分の幅を持った雪崩がランティだけを綺麗に後方へと流し去っていく。
 ――先導役、脱落。ここから先は先導役なしの手探りで進まなければならない。
「あははっ、すごいすごいっ! ほんとに雪崩起きやすいんだね〜♪」
 そんな光景をケラケラと笑いながら見届けたアイルは、先ほどの少しでも大きな音を出した人間の末路を見ていなかったかのように、雪玉をぎゅ〜っと固めて放り投げる。放物線すら描かず直線に投げつけられた雪玉は、ゴスッ、と鈍器で殴りつけたかのような嫌な音を発しながら、スカビオサの後頭部へと直撃する。
「ふぐおぅっ!?」
 思わず踏みつけられた蛙の断末魔のような声をあげ、しゃがみこむスカビオサ。苦悶の表情から察するに、冗談抜きで痛かったらしい。
「ふ、ふふ、アイル君はやんちゃですね。ご一緒に雪遊びでもしましょ――ってうわああぁ!?」
 何とか大人の余裕を取り繕い、雪球を握り始めたスカビオサだったのだが、ご一緒するのは雪合戦ではなく雪崩のほうであったようで、2人仲良く後方へと姿を消す。
「や、やった! イヤッフォオオギャアアアー!」
 雪崩の上を滑ることを夢見たフーラは、2人を攫っていった雪崩へと果敢に挑戦するものの、一瞬の油断によって無残にも姿を消してしまった。乗り込んだ瞬間の喜びの顔が、残された冒険者達の涙を誘った。彼の消えた後に残された板に、しんしんと粉雪が降り注いでいた。
「さ、寒いですぅ。こ、こんなときこそ、心が温かくなるエンジェルの名言を」
 大きく息を吸い込むリュミナ。
「遭難したって? そおなんだ〜〜!」
 ひゅぅ〜!
「雪原の木を節減しよう〜〜!」
 びゅぅ〜!
「なだれに巻き込まれてうなだれる〜〜!!」
 ドドドドド。
「ふぅ……あ、あれ? どぉしてみんな切なそうな顔を……それよりもどぉしてわたしから離れ――きゃーーーあああーーーーっ!」
 何も見ていない、何も聞いていない。そう、今金髪の天使さんが姿を消したような気がしたけど、きっとそれは気のせいなんだ♪

 ――そう思わなければ全員の心が凍えてしまいそうだった。

●前、見え、な
「皆! 気合だ! 何事も気合があればもがもがもが!?」
(「バカっ、大声を出すと雪崩が……!」)
(「す、すまん……」)
 先ほどまでの惨状を丸無視で大声を出そうとするシーナの口を、慌てて背後から押さえ込むエフェメラ。流石にこんなベタな流され方はしたくないのであろう。
(「流石に気合だけじゃ乗り切れないだろ」)
 飽きれたようなゼロの視線に、居心地悪そうにシーナ身動ぎする。
(「ところで確認なのだけれど」)
 何時までも続きそうな漫才のようなやり取りに苦笑しつつ、芝居がかったような仕草で頬を押さえたフィルメイアの、ため息とともに吐き出される一言。
(「ここ、どこかしら?」)
 ………………。
 …………。
 ……。
 沈黙が場を支配する。4人の周りには視界が悪いのも相まってか、誰の姿も確認することは叶わない。
 全員の視線が一人に集中する。自信満々に先へ先へと進んでいた白髪の男、シーナへと。
(「ま、待て、こんな時こそ冷静に暖を取ることを考えるんだ。今は争いあっているときじゃない! 丁度ここにあるふかふかの布団に包まってだな……ぐぅ」)
 もぞもぞと雪の中へと沈んでいくシーナ。あたかも、ふかふか、ぽかぽかな羽毛布団に包まれているかのような幸せそうな表情を見ると、このままゆっくりと寝かせてやるのが一番幸せな――。
(「って、そんなわけあるかっ! 布団なぞあるわけがないだろう、幻覚だ幻覚!」)
 ゲシゲシとシーナの頭を踏みつけるゼロであるが、にゅふふ、くふふ、と真っ青な顔にだらしない笑みを浮かべ、今にも眠りに落ちようとしているシーナを起こすには至らない。
(「まったく……休むなら向こうの洞穴の方がいいだろう」)
 横たわるシーナをズルズルと引きずりながら、明後日の方向へと歩き始めるゼロ。勿論その方向に洞穴などあるはずもない。
(「アイツは……意外とお茶目なのか?」)
 理解不能だ、というようにそんな2人の背中を呆然と見送るエフェメラ。ちなみに引き止めるつもりはこれっぽっっっちもない。
(「傾斜は、どのくらいかしら」)
 雪玉――というより、雪だるまの胴体ほどの雪の塊を、フィルメイアが勢いをつけて押し出す。
 ゴロン、ゴロン、グシャ!
(「ぐおっ!?」)
(「げふっ!」)
(「あらあら……ちゃんと前を見ないから」)
 大量の雪を巻き込み巨大化していった雪玉に潰されたシーナとゼロを、これぞ世の悲劇! とばかりに大げさな身振り手振りで表現するフィルメイア。
 4人が無事に帰ることが出来るのは、まだまだ先になりそうだ。

「う〜、前が全然見えないのです。このままじゃ迷子になっちゃうのです」
 やたらと寒そうな格好――ミニスカートに白ニーソックス――で、よたよたと吹雪の中を進むティセであるが、このままでは遭難してしまうのも時間の問題だろう。
「いいこと考えたのです。前の人にくっついてれば迷子にならないのです。名案なのです!」
 丁度ティセの目の前には、なにやらぶつぶつと呟いている様子のラティがいるではないか!
「はろはろ〜?」
 ドスンッ! ぎゅ〜〜っ!
「キャ……! ほんとに、私でいいんですかー!」
 力の限りくっついた――見事なタックルであった――ティセを、何やら焦点の定まらない瞳で抱きかかえゴロンゴロンと傾斜を滑り落ちていくラティ。どうやら寒さによる幻覚によって、ティセを誰かと見間違えているようで、これ以上なく幸せそうな笑みを浮かべ滑り落ちていく。そして駄目押しとでもいうかのように、2人が転がっていった道を雪崩が通過していくのだった。

「寒いなぁ〜ん……前見えないなぁ〜ん……、っていうかお腹すいてもう動けないなぁ〜ん。このままじゃ、雪ノソだるまになっちゃうなぁ〜ん」
 べしゃり、と吹雪の真っ只中ぶっ倒れるニノン。風の音に負けないほどに、ぐぅ〜! とお腹を鳴らし、力なくぺちぺちと尻尾で雪を叩いている。
「……そういえば、昔話で雪玉に唐辛子をかけて空腹をしのいだ、とか聞いたことあるなぁ〜ん!」
 がばっ! と起き上がり、急いで雪玉を作り始めるニノン。何故か懐に入っていた唐辛子をふんだんに降りかけ、準備万端抜かりはなしである。真っ赤に生まれ変わった雪玉を満足げに見つめ、大きく口を開けて一齧り!
「そいえば、わたし、とっても辛いの苦手だったのなぁ〜ん!」
 あまりの刺激に白目をむいて倒れるニノン。雪ノソだるまへの道ももうすぐだね!

●傾斜じゃないってこれ!
「……まるで喧嘩を売っているかのような絶壁ぶりですねぇ」
 どこか忌々しげに急斜面を見つめるペルレ。思わず胸元に手をやって、悔しさに歯を食いしばるのもご愛嬌だろう。
「色々吹き込めなかったのが残念ですが、リタイアしてしまったランティさんの分まで、がんばるですぅ……!」
「ここに居ますよ」
「わわっ!?」
 真っ先にリタイアしたはずのランティが、いつの間にか隣に居たことに驚きの声をあげるペルレ。……ん? 驚きの声?

「あ」

 ドシャッドシャアア!
 容赦なくペルレの頭上に降り注ぐ雪の洪水。急斜面でそんなものに耐えれるはずもなく、あっけなく落下していく。
「な、なんでここにいるんですぅ〜!」
「最初に流された分、急いで追いかけてきたんですよ」
 だんだんと姿が小さくなっていくペルレを見ていられずに、両手で目を覆い顔を背けるランティ。……両手で?

「あ」

 ひゅるるるるる〜。
 情けない落下音とともに、ランティもまたペルレと共に奈落へと落ちていったのであった。
「山登りっていうより、ロッククライミングみたいな感じやね……」
 落ちていった2人を見届けたキュアルが、恐る恐るといった様子で絶壁を一歩、また一歩と登っていく。少しでも足を踏み外せば、まっ逆さまなのは確実だ。しかし雪山の絶壁はキュアルの予想よりも手強く。

 ツルッ。

「ほ、ほおおおおおお!」
 左手をついていた箇所がすべり、結果右手1本で絶壁に張り付く状態になるキュアル、絶体絶命のピンチである! 落ちてたまるものかと右手に全神経を集中させ、渾身の力で踏ん張る!
「ファイトォォォ! いっぱぁぁぎゃああああ!」
 気持ちはわかるけど叫んじゃダメだよキュアルさん! 折角の努力をあざ笑うかのように雪崩れ込んだ雪に、ほぼ垂直に攫われていくキュアルであった。
「流石に寒い……おぬし暖かそうじゃな?」
「ああっ、拙者のマフラー返すでござるよ! 大体そんな寒そうな格好で来るのが悪いでござる。服はちゃんと着るべきでござるよ!」
 一つのマフラーを奪い合い騒ぐ2人、幸いにもまだ雪崩は起きていないが、今までの経験から言えばいつ起きてもおかしくない状態である。
「ええいっ、わしは先に行くぞ」
 そう言うホノカが何をするかといえば、斜面にクリスタルインセクトを出現させることだったりする。要するに自分で登らず、インセクトにしがみ付いて上に行こうという魂胆なのだが。
「よしよし、頼みにしておる――」
 ガコッ!
「――ぞ?」
 そう上手くいくわけもなく。
 見事に踏み出した先の壁を勢い余って崩壊させてしまったりして。
「んな、アホなぁぁあああ!」
「さ、叫んじゃダメでござる! かくなる上は……!」
 焦ったメイヨウが背中から抜き放ちますは、10尺の棒。
「これが、拙者が考え付いた雪崩対策でござる!」
 思いっきり斜面に棒をつき立て、棒高跳びのような要領で迫り来る雪崩の先兵を回避するメイヨウ。なるほど、これならば雪崩を飛び越えることが出来――るわけないよね。
 ぼすっ、ズシャアアアアア!
 雪崩の中央辺りに綺麗に着地し、全身を揉みくちゃにされながら落ちていくメイヨウ。彼の登山は終了してしまった! 山肌につきたてられた棒が、まるでメイヨウの墓標であるかのようであった。
 しかし今回の雪崩、今までよりも少々規模が大きかったようで、呷りをくらってしまっている者も居た。
「い、今まで頑張ってきてたのに!」
 剣を斜面につき立て、ほぼ真横を薙ぐようにして通過していく雪崩を凌ごうとするゼルガ。だがそこでとある違和感に気づく、なんだか足が重いような……?
「わりーが、死なば諸共ってな! 一人寂しく落ちてたまるかよ!」
 ゼルガの右足に必死にしがみ付くアキラ。どうやら雪崩の進行順路に居たらしく、このまま登頂は無理だと判断し、道連れを増やそうという考えのようだ。
「離してくれ! いや、もうなんていうか、離せ!」
「やなこった!」
 ギャアギャア。
 ギャアギャア。
 この言葉の応酬すら危険であることを忘れ、アキラを振り落とそうとゼルガは足を振り回そうとするが、そこはアキラも執念のようなものがあるのか、結局この争いはゼルガが雪崩によって山肌から振り落とされるまで続いたのだった。
「もう少しだったのにー!」
「うーっし、一丁あがりっ!」

●最後の戦い
「この世は弱肉強食なんじゃーい!」
 他のライバル達を押しのけるようにして、何故か道中で服を脱ぎ下着状態になったルーシアが頂上へと足を乗せようとする。だが、そう簡単にたった1つしかない場所を譲るほど、冒険者達は謙虚ではない。
「すまん……! お前の犠牲は忘れないっ……!」
 声は悲痛に、顔は満面の笑みを。ルーシアを蜘蛛糸で絡めとり、引きずり落としたユートは、自分こそ頂上に相応しいとばかりに、堂々と最後の一歩を――。
「させるかよっ! 雪山を最後まで舐めるなああ!! ヒャッハッハッハハー!」
 ユートに思いっきりドロップキックを加え、蹴り落とすリコ。哀れ後一歩というところで、ユートは頂上の景色を拝むことが出来なかったのだ。
「ただでは……ただでは落ちん! 道連れだああー!」
「え、ええっ! 私ですか!?」
 丁度傍にいたから、ただそれだけの理由でユートに掴まれ、ろくに抗うことも出来ず落ちていく羽目になるライナ。しかし、急なことに動転して振り回されたライナの腕が、不安定な体勢でいたリコの足を直撃する。
「……お?」
 最後の最後、全てのライバルをくだしたと思った瞬間の出来事である。万全な体勢ならまだ良かったのであろうが、残念ながらまだリコは片足を振りぬいた状態であった。何かを掴もうと動かした手も虚しく空を切り、ユートとライナとリコの3人は、仲良く落下していったのであった。
「また機械があればもう一度……登らせて頂きます」
 そして全員が脱落したと思われていた登山メンバーに、実はまだ1人生き残りがいた。頂上にゆったりと腰を据え、普段なら見ることも出来ないであろう景観を堪能しているメルティナである。ライバルたちの潰しあいに寄る自滅によって、争うことなく頂上の座を手にすることが出来たのだ。
「貴重な経験を、ありがとうございました」
 満足気な笑みを浮かべるメルティナ。苦労して登ってきたことが報われたのであるから、余計にであろう。
 ――だが彼女はまだ気づいていない、まだ貴重な経験は終わっていないということに。
 ピシリ、ピシリ。
 バゴッ!
「……へ?」
 突如メルティナを襲う浮遊感。腰を据えていたはずの大地が、ない。
 頂上争奪戦による一暴れによって、さほど丈夫ともいえなかった頂上部分が崩壊寸前にまで追い込まれていたのである。人一人支えることも困難な程に。
「そ、そんなぁ〜!」
 最後の冒険者が、宙を舞った。


マスター:原人 紹介ページ
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 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
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ウェイトレスの大魔術師・ルーシア(a01033)  2009年08月31日 07時  通報
原人MSかー。
コスプレをしたくなるMSだな。
パンドラのコスプレとか。
ヒャッハ-とかね。