マンモスファイヤー〜どっちにしても屈辱的!〜



<オープニング>


「この辺りに居るって聞いたんだけど……」
 キョロキョロと忙しなく辺りを見渡す草を撫でる風・スージィ(a63178)。常夏のワイルドファイアの気候にもへばることなく、今回のお目当てのものを探すのに必死である。
「マンモー……とは違うんですよね、確か」
「うんっ! 見た目はマンモー達に似てるんだけど、なんだかちょっと違うんだって」
 詳細はよく知らされていないのか、首をかしげている白き衣の癒し手・ルシルク(a50996)に、元気よく頷くスージィ。どうやらマンモーのようなものを探しているようだが……?
「どこがどう違うとかは聞いてねぇのか?」
「うーん、とー……」
 かなり蒸れるのか、暑そうにバザバサと襟元から風を入れている人生塞翁がスティード・オウオウ(a73949)。そんなオウオウの言葉に、必死にその特徴を思い出そうと眉を寄せるスージィ。
「鼻からぶわ〜〜〜〜ってネバネバした水を飛ばしてきて――」
「わわわ、なんだかネバネバする水溜り踏んじゃいました〜!」
 べしゃっ、と水溜りに突っ込んだ足が抜けない紋章の申し子・メロディ(a55297)。
「尻尾のほうからはぷ〜〜〜〜っと臭い匂いを飛ばしてきて――」
「ふぎゅう! な、なんだかこの辺とっても臭いのですよぅ!」
 突如辺りに充満した異臭に、思わず鼻を押さえながらくぐもった悲鳴を漏らすおねむな吟遊武人・ノノワール(a67723)。
「えっと……こんな感じのですか〜?」
「そうそう、そんな感じ――ってうわぁっ!?」
 遠慮がちに真横を指差す、思いを届ける弓使い・ラクト(a67219)。そこにはでで〜ん、といつの間にか2匹の巨大な怪獣が鎮座しており……。
「い、いきなりですかー!?」
 あわてて武器を構える蒼い剣士・ブレッド(a76847)。少し気を抜いた間に真横に居るとは誰も思ってなかったようで、全員が『何時の間に!?』という驚きを隠すことが出来ない。今日も一日・ランティ(a90391)もまた、あまりの急展開にぐるぐると目を回しながら、2匹の怪獣と対峙するのであった。


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参加者
白き衣の癒し手・ルシルク(a50996)
疾風の翔剣士・ポポル(a51163)
紋章の申し子・メロディ(a55297)
草を撫でる風・スージィ(a63178)
思いを届ける弓使い・ラクト(a67219)
おねむな吟遊武人・ノノワール(a67723)
数撃ちゃ当たるぜ・オウオウ(a73949)
蒼髪・ブレッド(a76847)
NPC:今日も一日・ランティ(a90391)



<リプレイ>

●A君? B君?
「と、とにかくこいつがA君!」
 ビシッ! と近くにいたほうの怪獣を、草を撫でる風・スージィ(a63178)が即興で命名する。名づけられた側であるA君は、そのネーミングが気に入らなかったとでもいうように、長い鼻を振り上げて怒りを顕にしている。そんな様子を見ているのか見ていないのか、スージィは実にマイペースに「こっちはB君ね♪」と、もう一方の名前も決めてしまう。勿論B君の反応も実にいやそ〜な感じである。
「私達はB君ですね」
 地面が光を放ちだしたのを確認した白き衣の癒し手・ルシルク(a50996)が、疾風の翔剣士・ポポル(a51163)の手を引いてB君の尻尾側へと周っていく。内心ではまた変な怪獣〜、と泣き言を漏らしていたルシルクであったりするのだが、現状それを表に出している余裕はないらしい。――早く倒さないと余計に悲惨な目にあっちゃうもんね。
「まずは匂いを確かめないとね! ……や、やっぱりやだなぁ」
 嫌そうにしながらも、B君のお尻をぶっすりと剣で刺すポポル。その攻撃によって、辺りに薔薇の花弁が飛び散り、視覚的にはとてもさわやかな気分にさせてくれる。このまま綺麗に終わってくればいいのになー、と思わず考えてしまうポポルであるが、今回の作戦上それは絶対にありえないことを思い出し、暗澹たるため息を漏らす。
「だ、誰か引っ張って欲しいです……」
 水溜りっぽいネバネバから足が抜けない紋章の申し子・メロディ(a55297)を、顔色が悪く若干ふらふらしているおねむな吟遊武人・ノノワール(a67723)と今日も一日・ランティ(a90391)が何とか引っ張りあげる。
「ふぎゅ〜……不意打ちなんてヒキョーなんですよぅ! ノノワールがゴツンとおしおきなんですよぅ〜!」
「えっと……ボク達はA君の匂いを確かめる、でしたっけ」
 ぷんぷんと怒りながらA君の尻尾側へと周っていくノノワールを、非常に逃げ腰で更にマフラーで鼻まで覆ったランティ、そして歩くたびに伝わるネチャネチャという感触に既に涙目になっているメロディが続く。
「わたし達はB君の水攻撃でしたね〜……っと!」
 早速B君の鼻っ柱に数本の矢を打ち込む思いを届ける弓使い・ラクト(a67219)。どうやらなかなかに痛かったようで、前足を大きく振り上げ、ズシン、ズシン、と地響きを鳴らす姿を見るに、相当興奮しているようだ。
「早く攻撃してこねーかな〜」
 弓を構えた人生塞翁がスティード・オウオウ(a73949)が、今か今かとB君を凝視している……のだが、ラクトに比べやや後方に下がりすぎているような気もしなくもない。具体的に言えば、水が届くか届かないかぐらいの間が。
「これが目印だよ〜!」
 元気一杯にA君へとカードを投げつけるスージィ。スージィにとっては不吉の象徴ともいえるスカンクの絵柄のソレは、A君の額に突き刺さるとその体に溶け込むようにして消え、その皮膚を黒く黒く侵食していく。
「守りに関しては僕が援護します。ですから安心してくださいね」
 スージィとペアを組んでいる蒼い剣士・ブレッド(a76847)が、A君からスージィを庇うように前へと進み出る。――それが悲劇の始まりとも知らずに。

●ずるずるずる。ぷぴー!
 ずびずびずび〜! ずるずるずる!
「う、うわああああぁぁぁ!」
 ブレッドが前に出た瞬間、何やらねっとりした生暖かい液体が頭上から降り注ぐ。全身なんだかすっごく見ていられない状態になったブレッドは、地面にぐっちょりとへばり付いてしまい、立ち上がることすらままならない。
 ぶぴぃぃぃぃ!
「きゃあ! ……め、目があぁ」
 それと同時にB君の方からも異音と悲鳴が上がり、何やらB君の尻尾を掴んでいたポポルが、地面に倒れ伏して痙攣を起こしていた。
「大丈夫ですかポポルちゃ……こ、この匂いは」
 助けようとして近づこうとしたルシルクの足が、ピタリと止まってUターン。
 くさいという次元を通り越して、なんだかもう辛い。ちょっと近づいただけで目の奥と鼻があまりの刺激臭にピリピリと痙攣しているのがわかる。……直で喰らったらしいポポルは大丈夫なのだろうか?
「尻尾……押さえ……ら、出せなくな……と、思ったんだよ……」
 うわごとの様にぶつぶつと呟くポポル。尻尾から噴出されていると予想したポポルだったのだが、残念ながらそれは外れであり直風を浴びることになったのだ。わかり易く言えば――オナラを。
「ブレッドさん、ポポルさん……! 御2人の仇は必ず打ちますから!」
「あ、あのー、ランティちゃん。まだ2人とも死んでないと思うんです」
 何やらとんでもない早とちりをしているランティと、それに乾いた笑いを乗せながら突っ込むメロディが見た目的にはペチペチと音でも鳴ってそうな――実際にはゴスッ、ゴスッと生々しい打撃音が――動作でA君のお尻を叩いているのであった。そしてそれに続いてノノワールもお尻を攻撃しようとしたとき、いい加減A君も煩わしく思ったのか、お尻の奥のほうから空気の漏れるような音が響く。
 ぷぅ。ぷうぅぅ。
「は、鼻が! 鼻が曲がるんですよぅ〜〜!?」
 ポポル同様直風を浴びるノノワール。初っ端からも匂いを嗅ぐ羽目にあっていたのに、可哀想にこれで2回目である。
「う〜〜ん、もしかして……A君は水が強くて、B君は匂いが強い、でしょうか?」
「そうかもしれねぇな。ポポルに比べてノノワールの方がピンピンしてるし」
 冷静に分析しているラクトとオウオウの牙狩人コンビ。おそらく2頭から少々距離を置いている分、他の面々よりは余裕があるのだろう、気持ちの。
『A君はネバネバ、B君は匂いが強いぜ! さあ行くぜ皆! 合言葉は、ぺったんこ。ぺったんこだ! ――え、あ、ちょ、ラクト、ストップ、ストぎゃああぁぁぁ!?』
「んふふ〜! イタズラのチャ〜〜ンス♪ ……あと、オウオウさんはあとで覚悟しててね」
 オウオウのタスクリーダーでの報告を聞き、何かを思いついたのかスージィがニヤリと笑う。なお最後の一言に関しては、その瞬間女性陣全員からまともに直面すれば3日ぐらいは魘されそうなほどの殺気が発せられたとかどうとか。
「皆〜、2匹を私の所までおびき寄せてー!」
「わかっ、たよ〜……」
「ポポルちゃん、まだ動かないほうが」
「だ、大丈夫。へーきへーき!」
 ルシルクの祈りによって何とか起き上がったポポルであるが、まだダメージが残っているのかフラフラである。心配して駆け寄るルシルクを手で制したポポルは、A君とB君の間へと駆けて行き、囮として2匹を挑発する。
 そんなポポルの様子にカチンと来たのだろう、2匹はドスドスドス! と砂煙を巻き起こしながらポポルへと殺到していく。
「スージィ、パスっ!」
「任せてっ!」
 無事になんとかスージィの後ろへと駆け込んだポポル。ぜぇぜぇと荒い息をつきながらも、これから起こるであろうことに期待の眼差しを向ける。
 あと一歩でスージィへと2匹がたどり着く、という時であった。「いまだ!」と言う掛け声とともに、何やら糸のようなものが2匹に絡み付き、拘束してしまう。それもB君のお尻にA君の鼻があって……。
 ぶぴぃぃぃぃ! ぶぴっ! ぶぴっ!
「う、うわぁ……直撃、です?」
「あれは、敵ながら可哀想になってくる光景ですね」
 直視するのに耐え切れず、そっと目をそらすメロディ。自分が同じ立場に置かれたら、とでも考えたのか、ぶるぶると恐怖に体を震わせている。その隣では、大量の水から何とか脱出してきたブレッドが、べたべたの体をしきりに払っていた。
「これで1匹は倒せたんですよぅ〜♪」
 嬉しそうにはしゃぎながら、ノノワールが力の湧いてくる歌を歌い始める。冒険者達の間に、勝利の確信を思わせる雰囲気が漂い始める――が。
「あ、あの〜、1ついいですか?」
「どうしたんですか? ランティちゃん」
「えっと……ですね」
 話す間も、ランティの視線は目の前の2匹に注がれている。それどころか、そろそろと後退していっているのはいったいどうしたことだろう?
「上手く同士討ちさせたのはいいんですけど、その――A君って鼻水で鼻が詰まってるっぽいから、B君の匂いとか効かないんじゃないかなー、とか。あ、あはははは」
 笑いながら踵を返し、駆け出すランティ。これは逃亡ではない、戦略的撤退である。同時にブチブチっと糸を断ち切るような音。長い鼻を目の前に向けるA君。お尻を向けるB君。――そして目の前に居たスージィとポポル。
「い」
「やあぁ〜〜〜!」
 ずびいぃぃぃぃぃ! ぶぴぴぃぃぃぃ!

「2人の……2人の仇は絶対とります!」
「わわっ、すっごく高いです。大きな動物って……いいです」
 なんだか直視できない状況の2人から目を逸らし、鼻を軽くつまんだメロディが涙を浮かべながら銀狼で攻撃を始める。2人の尊い犠牲を、わたし達は忘れません。メロディの背中がそう語っていた。そして何故かB君の背中の上に登っているラクト。その乗り心地に感激しているのか、陶酔の表情を浮かべ、ひょこひょこと尻尾を動かしている。
「やられた分はやり返さなければいけませんね」
 初っ端に粘液塗れになったことが実は頭にきていたのか、引きつった笑顔を浮かべたブレッドが、これでもか! というようにザクザクと野太い足を突き刺していく。
「魅力は……需要は……それはそれで、あ……げふっ」
 何故か血まみれで倒れ伏しているオウオウ。地面に血文字で『ひんにゅ』とだけ書くだけの余力はあるようなので、まだまだ大丈夫そうである。あ、今ランティにわざとらしく踏まれた!

●後始末が大変
「いやー、大変だったよな!」
 もう復活したオウオウが、ガハハと笑いながら色んなことをなかったことにしようとしていた。
 結局あの後、ポポルとスージィが復活したのは2匹を倒したあとであり、やりきれない怒りと大量の心の傷を抱えた2人はとりあえずさめざめと泣くこととなった。
「また……またこんな役目……」
「両方なんて……両方なんてぇ……」
 へたり込んで地面をバンバンと叩く2人。そんな2人を同情の眼差しで眺める仲間達。眺めるだけで誰一人慰めに行ってあげてなかったりするのは――ばっちぃから。
「ふぅー……皆さんベトベトとか匂わないですか? と、僕もかなり汚されてしまいましたが」
 自らの現状を振り返り苦笑するブレッド。彼もまたメンバーの中ではかなり汚れているほうだからである。いったいどれだけ洗えば落ちるのだろうか……。
「べとべとは大丈夫でしたけど……匂いが落ちなそうかもです」
 くんくん、と自らの袖元に鼻を近づけるルシルクであるが、予想以上に衣服に匂いがしみこんでしまっているようで、けほけほ、と目をバッテンにして咳き込んでいる。
「ノノワールは、まだ鼻が上手く利かないんですよぅ〜」
 鼻を押さえてうずくまっているノノワール。すん、すん、と鼻を鳴らしては首をかしげている。強い匂いを嗅ぎすぎたため、鼻が一時的に麻痺してしまっているのだろう。
「うー、うーっ、早く靴を洗いたいです」
 ネチャッ、ネチャッ、と鳴らしながら歩き回るメロディ。雑草にゴシゴシとこすり付けたりしているのだが、一向に取れる気配はない。よっぽど粘着力が強いようで、洗っても綺麗に落とすには相当の手間がかかりそうだ。
「でも……乗り心地はすごくよかったです」
 いまだにうっとりしているラクト。グランスティードに乗っている人は、いつもあんな感じなのだろうか、と考えると少々羨ましくも感じる、1人幸せそうなラクトであった。
「ささっ、皆早く帰って風呂に入ろう……ぜ……って、え、えーっと、皆さんなんでしょうかその虫けらを見下すような冷たい目は」
 突如低下した周囲の空気に、恐ろしく低姿勢になるオウオウ。彼を見つめる女性陣は只管に冷たく――そして彼を包囲していた。
「オウオウさん。ボク、思うんです――身体特徴をついてくる鳥さんは、羽をむしられちゃえばいいって」
「そ、それは鳥さんが可哀想じゃねえかなーとか――え、あ、あれ? みんなほら、笑って笑っ……ギャアアアアァァァ」
 赤いマフラーがそっと動き、ブチブチと生々しい音を立てながら宙に舞っていく黒い羽。絹を裂くような悲鳴はいつまでも、いつまでも響いていた。

 とりあえず――風呂に入りたい。


マスター:原人 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2009/01/27
得票数:コメディ21  えっち1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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