豆ブラスター奥義



<オープニング>


 どぉん!
 轟音が響き、みしみしと木が倒される。バサバサと小鳥達が飛び立ち、ウサギや狐がその場から走り去っていった。
 がさがさと草を掻き分けながら、巨大な木が二本現れ、その場を通過してゆく。周囲には倒された木の残骸と、ボールのような球体が転がっていた。

「危険な突然変異の植物が発見されました」
 冒険者の酒場にて、依頼に参加して欲しいと呼びかける真実求む霊査士・ゼロ(a90250)の言葉に何人かが応え、席に着く。それを確認するようにざっと見回して、ゼロは説明を始めた。
「突然変異の木は二本、かなり大きく立派な木いった感じに見えます。そして特徴的なのはちょうど人の腕のように、それぞれに二本の太い枝が生えていることです」
 その枝が危険なのですとゼロは言う。
「枝は筒状になっていて、そこから硬い球体を物凄い勢いで発射してくることが可能です。その威力はかなりの物で、変異植物は森の木々を薙ぎ倒しながら進んでいます」
 進んでいるということは移動可能かと問う冒険者にゼロは頷く。
「はい、変異植物は根を使って移動しており、その先には村があります。このままでは村の建物が破壊されたり、人に被害が出る恐れがあります」
 その前に何とか退治して欲しいとゼロは言って、更に説明を続けていった。
「変異植物二本は一緒に移動しており、そのスピードはそれ程速くないので、皆さんが到着する頃にはまだ村に到着していないでしょう。霊査で視えた進行方向によれば、いずれは村に到着すると思われますので……入れ違いを防ぐということから、村で待ち構えて迎え撃つようにしてはいかがかと思います」
 詳しい作戦は皆さんにお任せしますが、とゼロは付け加える。
「球体は変異植物の中で生成されているようで、弾切れは……ないかもしれません。また、移動せずに根を地面に突き刺せば傷を回復することも可能なようです。二体いいることですし、手間取っていては戦闘が長引くかもしれませんね」
 皆さんで力を合わせ、変異植物を打ち倒してくださいとゼロは冒険者たちに一礼を送るのだった。


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参加者
陽光の看護士・エルミーシャ(a01451)
幾星霜の輝ける薔薇・ローザ(a48566)
リザードマンの武人・ユウテ(a49610)
砂鹿・ニーナ(a59109)
樹霊・シフィル(a64372)
水琴の波紋・アルーン(a66163)
常夜をひらく鈴の音・クルシェ(a71887)
重鎧・トビー(a72634)
形式番号・ゼロワン(a77446)



<リプレイ>

「そういう訳で、危ないから家から出ないようにしてほしいの」
 幾星霜の輝ける薔薇・ローザ(a48566)の話を聞いて村人達はざわざわと騒ぎ始め、慌てて家へと駆け出す者も居た。その話によれば危険な突然変異の植物が近づいているというのだから、それも無理のないことだろう。
「大丈夫ですよぅ、安心してくださいねぇ〜」
 そこに陽光の看護士・エルミーシャ(a01451)がのんびりとした口調で呼びかける。
「でも終わるまでは絶対に出ないようにしてください〜」
 被害を受けないように備えることは必要だが、平静を欠く必要は無いだろう。エルミーシャの言葉は幾らか村人を落ち着かせたようだ。
「あまり混乱せずに済んだようですね」
 聖痕断罪中級医術士・クルシェ(a71887)は村人達の様子を見て一つ息を吐き、それから高い場所を探していた。変異植物の接近をそこから探すつもりなのである。
「ともあれ、そんな危険な変異植物は遠慮願いたい所だな」
 やれやれと言いながらヒトの重騎士・トビー(a72634)も村の外が見えそうな高い場所を探すのであった。

「……ともかく、今回は二本の木がわさわさ近づいてくるから、それを退治!」
 一方、森と村との境目辺りには砂鹿・ニーナ(a59109)を始めとした冒険者たちが陣取っていた。
「変異したとは言え、森や人を傷付けるような事は捨て置けません」
 危険な変異植物が村に侵入しないように待ち伏せしているのである。樹霊・シフィル(a64372)は意気込み、術手袋をきゅっと嵌めた。
 どぉん!
 轟音が響き、木が倒れる。そしてガサガサと草が揺れ、二本の巨木が現れた。
「樹木でありながら森林破壊かえ……」
 小さく呟き、水琴の波紋・アルーン(a66163)は笛を吹いて合図を出す。ちょうどその時にローザとエルミーシャが現場に到着した。
「急がないとな」
 トビーは敵の発見で笛を吹く。クルシェと共に木に登り、こちらも変異植物を発見したのだが、村の中に高所は生えていた木くらいのもので、そこからでは村の外で待ち構えている冒険者たちと発見はほぼ同時であった。
「それでも人的被害が出る前に対処できるのは良い事、でしょうね」
 言ってクルシェは木を降り始める。急いで現場に向かわねばならないのだ。
 ぶわりとシフィルが黒炎覚醒を発動させて黒炎を纏い、ニーナが血の覚醒を発動させる。
「突撃!」
 破壊の力を高めながら変異植物に突っ込んでゆくニーナだが、そこに太い枝が向けられた。
 どん!
 射出された球体がニーナの胸にめり込み、みしみしっと嫌な音が響き渡る。衝撃で口からごぽっと血が溢れ出した。
 この変異植物は枝から硬い球体を凄まじい勢いで発射してくるのである。そして更に、二体居るのだ。
「無為な破壊を広げるのは、困るでござるな」
 ニーナとは逆、左側に位置した巨木へと向かうリザードマンの武人・ユウテ(a49610)だが、そこにも弾が命中する! 腹部に走る痛みと衝撃、だがユウテはダメージに耐えて踏み込み、電刃衝を繰り出した!
 がきん!
 硬い手応え、当たり所が悪かったかガードされたような形になり、左の巨木はマヒしなかったようだ。
「村人を護るために頑張らないとね」
 ローザの奏でる高らかな凱歌が傷を癒し、エルミーシャが護りの天使達を召喚してゆく。そんな中で形式番号・ゼロワン(a77446)は敵の出現位置と村の位置とを確認し、ひとまずすぐに接近されることは無いか注意していた。場合によっては自分が最終防衛ラインとなることも考慮に入れながら。

「ふふふ、草木の扱いには慣れてございますので」
 術手袋を突き出し、シフィルが緑の縛撃を放つ。解き放たれた木の葉が左の巨木に纏わり付き、その自由を奪っていった。
「そちらも拘束じゃな」
 左が止まったことを確認し、アルーンは右の巨木に狙いをつけて影縫いの矢を射出する。しかし巨木の枝を掠めて軌道が逸れ、影を射止めることはできなかった。
 お返しとばかりに右の巨木が枝をアルーンに向け、弾を撃ち出す!
「ぐ……ぅ」
 左の肩口に一撃を受けてアルーンは表情を歪める。だがすぐさま強弓を握り直し、まだ弓が引けることを確かめていた。
「まだよ、任せて」
 ローザの奏でる高らかな凱歌が痛みを和らげ傷を癒してゆく。その旋律に後押しされながら、ニーナは地を蹴った!
「一気に潰す! いっけぇ!」
 両手斧を力いっぱい振り下ろした! 右の巨木に刃がめり込み、びぃぃんと硬い手応えが返ってくる。
「村が破壊される前に、退治させてもらうでござる」
 じゃき、と蛮刀を突き出してユウテはサンダークラッシュを解き放つ。狙いは右の巨木だ。左の巨木の前に立つユウテだが、その動きが止められていることで右に狙いを変えたのである。迸る雷撃は右の巨木の枝に突き刺さった。
「ん〜、オイタはいけませんね〜」
 エルミーシャがヒーリングウェーブの癒しの光を放つ中、ゼロワンも右の巨木へと慎重に間合いを詰めてゆくのだった。

「もう……ひとつ」
 シフィルが紋章を描き出し、気高き銀狼を発動させる。解き放たれた銀狼がペインヴァイパーのガスを浴びながら左の巨木に喰らい付き、その動きを押し止めていった。
「今度こそ、嫌がらせさせてもらうわえ」
 じゃっ!
 アルーンの放った矢が右の巨木の影を射止める! 影縫いの矢によって動きが止まったそこへ、ニーナがパワーブレードを叩き付けた! 力強い一撃は右の巨木の根元近くに傷を刻み付ける。
 その直後、深く息を吐き出してクルシェが黒炎覚醒を発動させていた。すぐ後ろにはトビーも続いている。二人も何とか現場に到着したのだった。トビーは早速とばかりに鎧聖降臨の力をユウテへと放った。
 ばぢっ。
 ユウテの突き出す蛮刀『聖獣刀』から雷撃が走る! サンダークラッシュは右の巨木の幹に突き刺さり、ばぢっと更に一つ弾けた。
「今のうちに……砕かせてもらうわ」
 ローザが儀礼用長剣を振り下ろすと、黒い腕が巨木を薙いだ。相手を引き裂く虚無の腕、ヴォイドスクラッチである。びしびしとアーマーブレイクの効果が現れ、右の巨木の幹に幾つもの亀裂が広がっていった。
 今が好機、ゼロワンは巨大剣で一撃し、エルミーシャは護りの天使達を召喚してゆく。
 更に鋭い逆トゲの付いた矢が巨木に突き刺さり、パラパラと破片が散った。アルーンの鮫牙の矢に続き、クルシェも術手袋を構える。ちりん、と小さく鈴の音が鳴った。
 ごっ!
 その鈴の音を呑み込んで緑の業火が燃え上がる! 動くことも出来ず右の巨木は魔炎に蝕まれ、パチパチと音を上げていた。
 ローザのヴォイドスクラッチが幹を引き裂き、びしびしと大きなヒビが入る。
「一刀両断、いくよっ!」
 そこにニーナが踏み込み、両手斧『クリップスクリンガー』を握り締めて振りかぶった!
 ばきばきぃっ!
 巨木は幹のやや下辺りから豪快に折れて砕け、ずしんと地面に横たわるのであった。

 これで残る巨木は左の一本のみ。トビーは気を引き締めながら自身に鎧聖降臨を発動させてゆく。
 シフィルも気高き銀狼を放つが、その時巨木が動き出し、振り払うようにして防御した! それから地面に根っこを突き刺して動かなくなる。
「そう易々とやらせないでござる」
 ユウテが電刃衝を繰り出すが、がきんと枝が動いて受け止められる。ぎりぎりと刃を押すユウテの前で、巨木の傷が塞がっていった。
「仕切り直しじゃな」
 アルーンが影縫いの矢を射出するが、ちょうど巨木が動き出しておりギリギリの所で影から外れてしまった。だがその前にはニーナが踏み込んでいる!
 力強くパワーブレードで一撃し、びしっと巨木に傷を打ち込む。僅かに巨体を揺らしながらも、巨木は枝を突き出した。狙いはシフィル!
 どんっ!
「……かはっ」
 硬い球体が腹部に命中し、息が搾り出される。一瞬遅れて血の味が口に広がった。
「その体も闘志も、この歌が続く限り崩れはしないわ」
 ローザが高らかな凱歌を奏で、その勇ましき音色がシフィルの体を支え、士気を維持させる。歌に続いてクルシェは紋章を描き出し、緑の突風を解き放った。
 ごっ!
 木の葉を吹き散らしながら風が巻き起こされ、巨木を吹き飛ばす。その幹のど真ん中にユウテがサンダークラッシュを叩き込んだ。
「もう遠慮なしでござる」
 雷撃が幹を駆け抜ける中、エルミーシャはヒーリングウェーブの癒しの光でシフィルの傷を癒し、体力を回復させていった。
 がきん!
 踏み込んで繰り出したゼロワンの攻撃を巨木は枝で受け止め、地面に根を刺そうとする。
「させるかっ」
 そこにトビーが砂礫衝を放ち、巨木を後方へと吹き飛ばす! しかしそれに相手の動きを制限する効果は無いので、巨木は吹き飛んだ先で地面に根を刺し、傷を回復し始めた。
「この辺で打ち止めと参りましょう」
 シフィルが束縛の木の葉を撃ち出す。緑の縛撃によって巨木の動きが覆われ、止まった。
 アルーンは強弓『氷月瑟』を引き絞り、鮫牙の矢を解き放つ! 巨木の幹に深々とトゲが打ち込まれ、ぴしっと僅かに亀裂が走った。
「私の力が少しでも役立つなら、全力を尽くすわ」
 ローザのヴォイドスクラッチが命中し、アーマーブレイクで巨木がひび割れる。そこにニーナも両手斧を叩き込んだ。
「あと少し、全力でいきます」
 クルシェが生み出した木の葉に炎が灯り、業火となって巨木に襲い掛かる! 動けぬ巨木はそれを受けて燃え上がり、更に魔炎が蝕み始める。
「はっ!」
 気合と共にトビーが斬り掛かる。振り下ろす兜割りがガヅッと幹を傷つけるが……巨木は何とか拘束を解いて枝を向けようとしており、弾の打ち出される穴が至近距離でトビーに向けられた。
 ぞんっ!
 だが次の瞬間、ユウテの斬撃がその枝を斬り落とした! どさりと地面に落ちる枝の切れ端、そしてがら空きになった幹へ、アルーンが狙いを絞る。
「悪しき種、落とさせて貰うわえ」
 楽器の弦を弾くように、がががっと連続でガトリングアローが射出される! 三本の矢が巨木に突き刺さり……ぴしぴしと亀裂が広がってゆく。
 ずしん、とそのまま巨木は地面に倒れ、二度と動き出すことは無かった。

「変異植物は……村から離れたところに埋めておきましょうか」
 森の様子を調べながらクルシェが呟く。それなら穴を掘って焼却処分すべきだとトビーも声を上げた。
「壊された森が早く元通りになると良いですね」
 森の木々を見ながらクルシェはそう願うのだった。
「あら、こちらにも。ふふふ……」
 よいしょ、とシフィルは変異植物の射出した球体の回収を行っていた。どうも硬いだけで、種子のようなものでは無いので放置していても大丈夫だろう。折角だからと回収を行っていた。
「それじゃあ、村の人たちに退治した事を報告しないといけませんねぇ〜」
 村に被害が無くて良かったと笑顔を見せてエルミーシャは歩き出す。
「もう安心して良いわね」
 ローザも心に安堵を抱きながらエルミーシャに続いて歩き始めた。そしてその胸中では新たなメロディーを考え始める。
(「この歌で私達の……いいえ、人々の新たな道が安全であることを祈れるように」)
 希望に満ちた歌を考えながら、ローザは小さく笑みを浮かべるのだった。

 (おわり)


マスター:零風堂 紹介ページ
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