≪飛天大王ガルベリオン≫命を弄ぶものを倒せ



<オープニング>


 赤く巨大な二匹の狼を引き連れたドラグナーガールが歩みを進める。
「まったく、余計な事をしてくれるわ」
 人の御蔭でこれから待っている楽しいワイルドファイア生活に水を差されてしまった。面白おかしく、人を殺せれば良いだけだったのに。ただそれだけが彼女たちの望みだったのに。
 何でそっとして置いてくれないのかしらね? と大きく息を吐いて、彼女は隣を歩いている赤い狼に眼を向ける。
「でも、こいつらを拾えたのは良かったわ」
 ブラムガンドに命じられて移動している途中で見つけた、その狼怪獣を見てドラグナーガールは満足そうな笑みを浮かべる。
 それは、これを使えば、もっと多くの命を奪う事が出来るだろうと……そんな確信めいたものを感じさせる笑みだった。

「こっちの班には、ドラグナーガールの対応を行ってもらう」
 紫猫の霊査士・アムネリア(a90272)はそう言って早速説明を始める。
「ドラグナーガールは三体、二体は以前戦った柿木怪獣を三匹づつ連れているようだ……数が少なくなってるのは前の戦闘で傷ついたのを捨てたからだな」
 先の戦闘でそれなりの被害を与えていたらしいが……怪獣を使い捨てにするドラグナーガールにアムネリアはちょっと不機嫌そうだ。
「それと最後の一体は、赤い狼怪獣を二体連れている」
 柿木怪獣の説明はしなくていいな? と前置きしてから、アムネリアは赤い狼怪獣について話し始める。
「この怪獣は翔剣士と似たような能力を持っていて、この二体だけでも十分脅威となるほどに強い。もし、まともにやりあうのならば、全ての戦力を傾ける必要があるだろう」
 数が減ったとは言え柿木怪獣もやっかいだ、それを押して全ての戦力を回すのは難しい。考え込んで首をかしげる護衛士たちの様子を見ながらアムネリアは先を続ける。
「勿論ドラグナーガールを倒せば、誘惑催眠から解き放つ事ができるが……もし、その時片方でも倒していれば、もう片方は引き続き襲ってくる事になる……だが、ドラグナーガールを倒した時に、二体とも倒れていなければ。狼怪獣たちはドラグナーガールへの報復を始めるだろう」
 つまり、狼怪獣を倒さずにそれを操っているドラグナーガールを倒せれば何とかなりそうだということか。
「ただ、ヒューブリルの時のように確実な先手は打てないし、ドラグナーガールが前線に出てくる事も無い。よく作戦を練る必要があるだろうな」
 アムネリアはそう言って護衛士たちを見回すと、
「これが最後のドラグナーガールたちだ、くれぐれも油断しないようにな」
 そう言って、それじゃ頑張って! と護衛士たちを見送った。


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参加者
気ままな銀の風の術士・ユーリア(a00185)
蒼氷の忍匠・パーク(a04979)
そよ風が草原をなでるように・カヅチ(a10536)
彷徨猟兵・ザルフィン(a12274)
空気は読まない・レジィ(a18041)
桜舞彩凛・イスズ(a27789)
輪廻の翼・フィード(a35267)
弓使い・ユリア(a41874)
空白の大空・マイシャ(a46800)
ノソ・リン(a50852)


<リプレイ>

 空が高い……ここガルベリオンの上から見上げる空も、まだまだ青く高い。
 ただ、澄んだ空気の中に何処か懐かしい匂い混じる気がして、ワイルドファイアの地が近い事を予感させていた。

「面白おかしく、人を殺せれば良いだけだったのに、って」
 蒼氷の忍匠・パーク(a04979)は一人うんうんと頷いて……そんな、危険がデンジャラスな望み、放置できるかー! と一人で突っ込む。ドラゴンやドラグナーガールとは基本的に分かり合えない事くらい先刻承知だが、アムネリアから聞いた内容は最早根本的に何かが違うといってもいい領域だった。
「目の上の瘤が気に入らない……それは奴らも私も同じこと」
 銀花小花・リン(a50852)は放置できないと言うパークに同意を示しつつ、呟く。ドラグナーガールたちにとって自分たちが邪魔であるように、自分たちにとってもドラグナーガールは邪魔な……生かしては置けない存在なのだ。お互いにお互いの存在を拒否するのならばやる事は単純、殺しあうだけだ。
「戦うしか無いですね。それに、これでドラグナーガールも最後……今度は前回のようには行かないです!」
 実際リンたちは今までドラグナーガールと戦ってきた。そしてその中には屈辱的なものもあったのだ、気ままな銀の風の術士・ユーリア(a00185)は以前に戦ったときのことを思い出し小さく拳を握るとやる気を示す。
「いよいよ大詰めか、ワイルドファイアに着く前にきっちりケリをつけてやりたいもんだ」
 そんなやる気を見せるユーリアに、彷徨猟兵・ザルフィン(a12274)は目を細め、
「ええ、正念場ですね」
 と、そよ風が草原をなでるように・カヅチ(a10536)は頷く。
 大らかで平和なワイルドファイアにドラグナーガールのような邪悪な存在は似合わないのだ。さっさと退場して貰わねばならないだろう。ついでに、誘惑催眠が解けた後のガルベリオンの動向も気になるのだが……敵に回るような事はないと言われている以上、今はまだ考える時ではないだろう。
「一番の目的を果たす為にも、ここで負けるわけには参りませんね」
 一番の目的、ワイルドファイアの平和のために、此処だけは絶対に負けられないのだ。今回も気を引き締めて頑張りましょうと言う、紅染狂桜・イスズ(a27789)の言葉に頷くと、一向はドラグナーガールを迎え撃つべく森の奥へと歩みを進めて行くのだった。

 森の中を暫く進むと、奥から巨大な二体の狼怪獣と柿木怪獣たちが姿を現す……そしてその後ろにはドラグナーガールたちの姿が見えた。
「あら、人だわ」
 意外なものを見つけたといわんばかりの口ぶりで、口元に微笑みさえ浮かべるドラグナーガールだが、その目には拭い切れぬ人へ憎悪が、殺意が溢れていた。
『グルルル……』
 その姿を見つけた護衛士たちは素早く予め決めていた陣形へ展開し、ほぼ同時に狼怪獣たちが唸り声を上げて構えを作る。そして柿木怪獣が動き出すより前に、パークは粘着性の高い蜘蛛糸を投げつける。ペインヴァイパーの青いガスと融合したそれは、柿木怪獣の体に纏わりつき動きを封じる。
 その間にザルフィンはドラグナーガールたちとの距離を詰めようとするが、狼怪獣が邪魔で上手く近づけない……狼怪獣に指示を出しているのは一番右に居るドラグナーガールのようだが……ザルフィンが目標を定めたのを確認しつつ、まだ近づけないと解るとユーリアとイスズは黒い炎をその身に纏う。
 パークが捉えきれなかった柿木怪獣に向かい、同じように粘着性の高い蜘蛛糸を放ちつつ、二振りの剣・マイシャ(a46800)は赤い狼怪獣へ視線を向ける……何とか狼怪獣は無事に開放してやりたいとマイシャは思っているようだ。自分たちの戦いに巻き込んでしまった気がして、何だか後味が悪いのだろう。
 しかし、いくら動きを封じたといっても完全に封じられるものではない。何体かの柿木怪獣が糸を振り払うと、柿の実を投げつけて……ぐちゃっとしたその実を受けたマイシャの目から正気の色が失われてゆき……、
「これ以上怪獣たちに好き勝手させないからね!」
 そこへすかさず、空に響く幻奏・レジィ(a18041)は仲間たちを励ます力強い歌を歌い、正気を取り戻させた。今回は孤立しないようにしているためフォローも早いようだ。その上、回復の要になるレジィにリンが守りの誓いをかけると言う磐石っぷりである。
 レジィたちの様子を確認しつつ狼怪獣の前に立ったカヅチはその動きを封じるために裂帛の気合と共に雄叫びを上げる……しかし、狼怪獣たちは軽く身を震わせると何事も無かったかのように、唸り声を上げ続けている。
「狼の誇りを踏みにじった罪がどんなに重いか、娘さん方にしっかり教えてやらないとな」
 駄目ですかと、さして気にした様子も無いカヅチの横に立ち、真夏の蒼穹・フィード(a35267)は狼怪獣へと向き合う。
 自分たちも怪獣たちと戦うがそれは己の命を守る戦いである。獣にも自分たちにも誇りがあるのだ、ワイルドファイアに生きるものの誇りが……それを踏みにじったドラグナーガールは許して置けないと、フィードは思うのだ。
 仲間たちの動きと敵の動きを後方から観察していた、弓使い・ユリア(a41874)は、まだ動ける柿木怪獣が居るのを確認すると桃色の矢を放ち柿木怪獣たちに魅了を与えた。

 赤い狼怪獣が動き始めたかと思った瞬間、それは残像を残してカヅチの目の前に現われる。
 目の前の狼怪獣を見上げるカヅチの頭へと狼怪獣は問答無用で牙を剥き――カヅチはラージシールドで咄嗟にそれを防ぎ……巨大な鉄の塊で打ち付けられたような衝撃が走り、その威力の前に盾ごと左腕を弾かれてしまう。そしてがら空きになった体に向けて、もう一体の狼怪獣が目にも留まらぬ速さで爪を振るうと……真空の刃がカヅチの体を貫いた。
「きゃはは、良いぞ良いぞ、お前たち。もっとやっちゃえ」
 地面に鮮血を撒き散らしならがも踏みとどまったカヅチを見て、ドラグナーガールは嬉しそうに笑う。ザルフィンが目をつけたドラグナーガールだ……その仕草からこいつが狼怪獣を操っていると確信して良いだろう。
「これは……想像以上にきついですね」
 手を抜いて勝てる相手ではない所か、一撃で落とされかねない。もし、パークやマイシャが柿木怪獣を押さえていなければ、追撃を受けて確実に意識を失っていただろう。
 傷口を押さえる手から溢れ出る命の雫を苦々しく見つめながらカヅチは気合の篭った力強い歌を歌い、只管回復に回ると決めていたレジィも仲間たちを励ます歌を歌って援護する。
「癒しの光を」
 さらに、ドラグナーガールを狙ってはいるもののそこまでの経路を確保できていないイスズが癒しの光を放つと、カヅチの傷は完全に癒された。

 柿木怪獣に向かい、浅縹と漆黒の二振りの剣を構えるとマイシャは全身の力を振り絞り螺旋の如く回転しながら飛翔突撃を行う。螺旋回転によって柿木怪獣の表面を削るが、致命傷には程遠い……柿木怪獣は鬱陶しそうに固い柿をマイシャへぶつけて叩き落した。
「俺を二度も苦戦に追いやる柿木怪獣……さぞや強いドラグナーガールが背後にいるのだろうな……」
 柿をぶつけられた頭を押さえながら、マイシャはそんな事を言が……ドラグナーガールは意味がわからない様子だ。ドラグナーガールには個体差が全く無い、故に強いとか弱いとかも無いのだ。
 外したか……と渋面になるマイシャを横目で見ながら、パークは再び粘着性の高い蜘蛛糸を放ち柿木怪獣たちの動きを止めた。
 ユリアは柿木の攻撃を受けないように正面で戦うパークたちを盾にしながら、ドラグナーガールたちとの距離を詰められないか考える……しかし、柿木はまだしも狼怪獣を突破するのは難しいだろう。今しばらく機をうかがう必要がありそうだ。
「ここは、我慢です」
 同じように機会をうかがうユーリアと頷き合うと、ユリアは柿木怪獣へ向けて魅了の矢を放つのだった。

 二体の狼怪獣の爪が同時に振るわれる……真空の刃は身構えたフィードたちの横をすり抜け、回復に専念していたレジィのからだを貫いた。
「わっ!?」
 思わず両手で顔を庇ったレジィの腕が切り裂かれ、背中の白い羽が飛び散る……本来であれば腕の一本くらい切り落とされかねない威力のそれだが、リンの守護の誓いのおかげで辛うじてレジィの体は繋ぎ止められる。
 レジィは苦痛に顔を歪めながらも力強い歌で傷を癒し、イスズやユーリアの癒しの光が、レジィとリンの傷を癒していった。

「お前たち、もっとしっかりおし!」
 倒せそうで倒せないフィードたちを前に、ドラグナーガールは苛立ちを露にし始める。
 一体の狼怪獣の牙をForgotten Wing−Graveと名付けたアームブレードで受け止めながら、フィードは不甲斐無い、役立たずと口汚く狼怪獣を罵るドラグナーガールに冷たい視線を向け……。
「今です!」
 苛立ったドラグナーガールが指示を誤ったのか、踏み込みすぎた狼怪獣と柿木怪獣の間に隙間が出来たのだ。そこを見逃さずイスズが声を上げると、機会を待ち続けていたザルフィンたちはドラグナーガールへ向かい距離を詰める。
 当然もう一体の狼怪獣がザルフィンたちの進路をふさごうとするが……その瞬間、フィードが頭部から眩い光を放ち狼怪獣の気を惹きつける。狼怪獣はそんなフィードを一瞬だけ見て、そのままドラグナーガールを守りに動こうとする。
「行かせませんよ」
 明確な目的があるものを惹きつけるには効果が薄いが、一瞬注意を引けば十分だ。カヅチが間に割り込み狼怪獣を押さえ。フィードに食らい付いていた狼怪獣をリンがドラグナーガールとは逆の方向へ吹き飛ばす。
「な!? お前たち早く私を守りなさ――」
 慌てたドラグナーガールは狼怪獣たちへ自分を守るように指示を出すが、桜の花を模った水晶が嵌め込まれた両手杖から三つの頭を持つ黒い炎をイスズが放ち、その言葉を遮る。
「捨てられた柿木怪獣さんの分も、操られてる狼怪獣さんの分も! 痛み、判らせてあげるです!」
 爆発によろめいたドラグナーガールへ向けて、ユーリアは甲の側にルーンの刺繍が施された術手袋を差し出し、炎に包まれた木の葉の突風を放つとドラグナーガールの体は炎に包まれた。
「た、助け……」
「やはりこう、華が無い相手では食指も動かんな」
 体を燃やされ助けを請うドラグナーガールにまるで汚い虫でも見るかのような視線を向け、ザルフィンは神の裁きを思わせる電撃を放つと、ドラグナーガールは甲高い悲鳴を上げて――
「僕……怒ると結構、怖いですよ?」
 ふらふらとよろめくドラグナーガールへユリアが短い矢を連続で打ち放つと、ドラグナーガールは完全に動かなくなった。

 ドラグナーガールが倒れると、狼怪獣はフィードたちを警戒するように大きく飛びのく……そして、柿木怪獣を操るドラグナーガールへ怒りに満ちた眼を向けると、猛烈な勢いで襲い掛かる。
「傷つけられた誇りを取り戻せ!」
 その狼怪獣の動きに併せてフィードはアームブレードを高速に振り抜いて不可視の衝撃波でドラグナーガールを切り裂き、リンが自分の両腕に収束させた気を野獣のような叫びと共に放つ。
 横からの強襲を受けてドラグナーガールたちは、柿木怪獣を盾にしようとするが、その柿木怪獣もパークやマイシャによって完全に封じられていた。
「強力な武器より、協力し合える絆の方が強い。それに気付かなかった事がお前達の敗因だ」
 マイシャが冷たく言い放つと、ドラグナーガールたちは背中を向けて逃げ出そうとして――

 ドラグナーガールだったものを口から吐き捨て、狼怪獣はリンたちを睨み付ける。
 敵ではない事を示すように、イスズは癒しの光を放って狼怪獣たちの傷を癒そうとするが、それすらも避けられる……それが野生と言うものだろう。
「逃げるしかないですね」
 ドラグナーガールを追って倒した首尾を見る限り、無事に逃げるのも難しそうですがとカヅチが肩をすくめる。
 だが、まともに戦ったとしても、先の戦いで力を消耗したカヅチたちで勝てるかどうかすら危うい。心情以前の問題として、逃げるしかないのだ。
「そうと決まったらさっさと逃げ――」
 ようと続けるはずだったパークの言葉はそこで途切れる……不意に周囲に虹色の霧が立ち込め始めたからだ。
 そして、その霧に包まれた途端、唸り声を上げ続けていた狼怪獣は大人しくなり、柿木怪獣たちと共に大人しく森の奥へと帰っていった。
「これは何でしょう?」
 ユーリアはその様子に首を傾げ虹色の霧をつかむように手を動かす……ガルベリオンが纏っていた虹色の雲と似ているが……。
「兎に角、これで終わりね!」
 帰ってゆっくりしましょうと提案するレジィに一向は同意すると、帰路へと付いた。
 いつの間にか霧は晴れ、木々の合間から差し込む陽光が、護衛士たちの勝利を祝福しているようだった。

 【END】


マスター:八幡 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2009/02/07
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