<リプレイ>
●巨大イノシシを落とせ!! 数多くの山菜取りが楽しめる山。 村人でも麓から頂上まで6時間もあれば往復できる高さの山で、麓の村人達には親しみ深い山であった。 今、その山がある危機に瀕している。 「どうやら、この付近をよく歩くようですね……いえ、走るとでも言った方がいいのでしょうか?」 絶望の闇に飲み込まれし者・トリュウ(a02546)は、一足先に山の下見をしていた。 トリュウの足元には獣が勢いに任せて走ったため、なぎ倒された細い木が倒されていた。 そう、この跡は巨大イノシシの跡。 この山には気の荒い巨大イノシシが出るため、山菜取りは自粛され、これから行われる山登り大会も中止になりかけている。 「いい場所は見つかったか?」 下見をしているトリュウに声をかけるのは、侍魂・トト(a09356)。 「ええ。このあたりでお願いします。護衛は私に任せてください」 「ああ、頼むぜ!」 トリュウを信頼して、トトは持って来た道具で穴掘りを始める。トリュウの提案で、イノシシを落とし穴におびき出して倒す事になったのだ。トトが穴を掘っている間はトリュウがトトを護衛する。 その数時間後、立派な落とし穴が完成したのだった。
その頃、麓の村では。 「いいのかい? ありがとう!」 見事な網を持ち、椿一輪・エリシウム(a04114)は網を快く貸してくれた村人の手を握り、ぶんぶんと何度も振った。 エリシウムは、麓の村で今回の戦いに必要な道具をそろえるため、村人達を訪ね歩いていたのだ。 そこで、交渉の末、網と長い棒をゲットしていた。ちなみに長い棒は村人が要らなくなった物干し竿だったりもする。 「うう、この網……頑丈そうだけど、かなり重いね……」 むうっと唸るエリシウムの手から。 「じゃあ、オラが持つだよ〜」 にっこりとエリシウムの持っていた網を持っていくのは、ストライダーの武道家・ヴィオ(a10037)。武道家にしては、やけにゆったりと動くのには訳があるのだろうか? ヴィオの周りは実にゆっくりと時を刻んでいるように思える。 「ありがとう。助かるよ」 そんなヴィオを気にしていないのか、ほっとした表情を浮かべ、エリシウムはふうっと肩の力を抜いた。
そして、準備が整った日。 作戦が実行されるときが来た。 「土塊の下僕!」 さっそく土塊の下僕を呼び出すのは、青灰の紋章術士・ユエルダ(a04920)だ。 「下僕さん達、皆と一緒にイノシシを穴のところまで誘導してね」 ユエルダが、トリュウとトトに土塊の下僕達を預けた。 トリュウ達がイノシシをおびき寄せ、穴に落とす作戦なのだ。 「皆、皆頑張って。後ろで応援していますから」 そう言ってエールを送るのは楽風の・ニューラ(a00126)。そのニューラの微笑が何かを訴えかけている。 「それじゃあ、私は穴の付近で構えておこう」 動きやすい服装で、片手にエリシウムの借りてきた網を持っているのは、読書家・メイム(a09124)。そう言ったのもつかの間、メイムはそそくさと自分の持ち場へと行ってしまった。 「あたしも準備しましょうかね?」 猫背な火眼の仔・ヒィゴ(a09366)もまた、自分の持ち場へと向かう。
「よし、引っかかりました!!」 「すっげースピードだなっ!!」 トトとトリュウは後ろに突進してくるイノシシに追われながら、作戦の成功を感じ始めていた。 イノシシの後ろには、長い棒を振り上げ、追い回すエリシウムの姿も見える。 そして、トリュウとトトが大きくジャンプ! 「ブフモッ!!」 イノシシは、勢いよくずぼっと穴に引っかかった。 イノシシの体が3分の2ほど沈み込み、穴の中でばたばたと必死にもがいている。 「それっ!!」 もがいているイノシシの上に、メイムはさらに網をかけた。 「この分だとそんなにかからずに済みそうですね」 独り言のようにイノシシから離れた場所で様子を伺うニューラ。 「あら? これ何かしら?」 落ちていた赤い布を拾い上げる。 「ねえ、誰かこれ、落としました?」 イノシシの側に集まる仲間たちに見えるよう、ひらひらと揺らしながら掲げるニューラ。と、そのとき。 「ぬおおおおおお!!」 ヴィオが凄まじい勢いで駆け抜けて行く! 「な、なに?」 赤い布を揺らすニューラを。 「はっ!!」 飛び越えた! そして、そのまま穴と網でもがくイノシシに向かって……。 「旋空脚っ!!」 ばちこーんっ!! ヴィオの一撃がイノシシを貫く! 「「おおおおっ!!」」 思わずその場にいた者が歓声をあげる。 が、それもすぐに消えた。 「マジ?」 ゆらりと姿を現したのは、網から逃れたイノシシと。 どしんっ!! イノシシアタックを食らったヴィオ。ヴィオはアタックをまともに受け、目を回している。 「こりゃ、一気にやらないとやばそうだ」 トトがにやりと笑みを浮かべた。 「どうやら、イノシシは気が立っているようですね」 そう言ってユエルダは持っていたブックを持ち直した。 冒険者達は一気に勝負にかかる! 「チェインシュートっ!!」「気高き銀狼っ!!」 トリュウが放った剣がイノシシのわき腹に突き刺さり、ユエルダの放った銀狼がイノシシの動きを止める。 「ニードルスピアっ!!」 メイムの放ったニードルスピアがイノシシの体を貫き。 「電刃衝っ!!」 トトの稲妻を帯びた剣がイノシシを斬り裂く。 「これで終わりにしよか? イノシシさんよっ!!」 ヒィゴの居合い斬りが炸裂するっ!! そして、イノシシはヒィゴの言葉通りに倒れたのであった。
「どうです? エリシウムさん」 ニューラが倒れたヴィオを心配して、声をかけた。 「大丈夫大丈夫。傷も癒したから、もうすぐ目が覚めると思うよ」 エリシウムは片手に長い棒を振って、ニューラに微笑むのだった。
こうして、彼らはイノシシ退治を無事終えたのである。
●お山のお祝い 「誕生日おめでとう!」 山の頂上でアルペジオを含む冒険者達は、鍋を囲みながら、祝杯を挙げる。 その後に響くのは誕生日を祝う歌。 アルペジオは幸せそうに、その歌に耳を傾けていた。 「はい、これは私からのプレゼント」 演奏を終えたニューラがアルペジオに渡した物。 「わあ! 登山用の杖だねっ!!」 さっそく封を開け、アルペジオはプレゼントを見た。 軽く、握りやすいT字のグリップ、そしてアルペジオの瞳と同じ青い色。いや、詳しく言えば、ターコイズブルーというらしいその色の杖は、アルペジオにとって、嬉しいプレゼントであった。 「ありがとう、ニューラさんっ!!」 大切そうに抱きしめて、アルペジオはニューラに頭を下げた。 「いいんですよ。喜んでもらえるだけで私も嬉しいですもの」 ニューラの隣から今度はメイムが立ち上がる。 「私からのプレゼントはこれだ」 そう言って渡したのは。 「わあ、背負い袋っ!! しかもクマさんなんだね! ありがとう、メイムさんっ!」 嬉しそうにはしゃぎながら、アルペジオはさっそく背負って見せる。 「数カ所を紐で体に固定出来るから、登山には便利だと……店員が言っていた」 照れたようにそう説明するメイム。 「それにしても、誕生日に山登りたぁ、あんた粋なお人じゃあないですかぃ」 にかっと笑みを浮かべながら、ヒィゴがアルペジオに話し始めた。 「わざわざぁ、誕生日に汗かきたがる人なんて稀有ですぜ?」 「そうかな? 僕はただ、山登りが好きなだけだし……それにこういう機会じゃないと山登り出来ないからね」 そんな言葉にヒィゴはふむふむと頷いていた。 「そんなもんですかねぇ?」 「そんなものだよ」 そんな2人の言葉を遮るように。 「それにしても、山登り大会、皆さんとてもよい成績でしたね」 トリュウが裁いたイノシシとユエルダが取って来たキノコ鍋。 ユエルダはそう言いながら、美味しい鍋をカップに掬い、皆に配る。 「うん、一時はどうなるかと思ったけどね。とっても楽しかったよ」
それでは、そのときの山登り大会をプレイバック!! 始まりはアルペジオの落し物から始まる。 「おい、アル。何か落とした……ぞ……?」 トトが拾ったのは、『果たし状』と書かれた手紙。 「あ、ありがとう。でもこれ……家に置いて来たのに……って、あれ? トト君?」 きゅぴーん! トトの瞳の中に燃え上がる炎が見えた。 「フッフッフッ……そうか、オレと勝負したいんだなっ!!」 「え? あ、あの……トト……君?」 「よし! その勝負受けて立つっ!! 山登りなんざ、修行中に死ぬほどやったからな。よっしゃあ! 行くぜっ!!」 どきゅーんとトトはあっという間に山登り大会のエントリーに向かって走り去ってしまった。 「これ……ずっと前に他の人から貰ったもの……なんだけど?」 まさかこんな事になるとは露知らず。アルペジオは首を何度も傾げながらも、自分もエントリーに向かったのであった。
ここからは参加した者達の声を聞いてもらおう。 「とっても楽しかったですよ。途中に丁度いい切り株があったんです。そこで持ってきた黒砂糖とお茶で休憩しながら、参加しました。山も綺麗でとっても良かったですよ。のんびりしすぎて、入賞までは行きませんでしたけど」 そういうのはまだお茶を飲んでるニューラ。 「僕ですか? 何か恥ずかしいですね。それが、途中で迷子になってしまって……。一度ルートに戻ったんですけど、また変なところへ行っちゃいまして。お陰でたくさんのキノコを見つける事が出来たんですよ。迷子になっちゃいましたが、とっても楽しかったです」 にこにこと話すのはユエルダ。服が汚れているのは、どこかで転んだのだろうか? 「風景を見ながら、ゆっくり歩いていたからな。だが、こういう山登りも悪くはないな」 はにかみながら、メイムはそう告げた。 「たかが山登り大会、されど山登り大会ですな。奥が深いってのは、こういう事をいうんですなぁ。山登り大会っていうのは、チェックポイントが5つあって、そのポイントを探しながら歩くんですよ。チェックポイントに来ると、芋を掘ったハンコが用意されていて、それを集めるんですぜ。いやあ、それがまた見事で。ですがね、そのチェックポイントを探すっていうのがこれまた難儀しましてね。いやあ、大変でしたわ」 ぱたぱたとスタンプカードを団扇替わりにして話すのは、ヒィゴ。 「ちょっと驚いてしまいました。冷やかし半分で参加したんですけど……その、最初に早くチェックポイントを見つける事が出来たのが良かったのか、銅メダル貰ってしまいました。正直言って、何だか申し訳ないというか……」 恐縮しながら、首にかけた銅メダルを見せてくれたのはトリュウ。 「おめでとう、アルペジオ君っ!! って、あれ? 違った? あららー。まあ、それはそれ、これはこれだね? え? 酔っ払ってる? 酔ってなんかいないよ? それにこれから楽しい誕生会があるんだ。まだまだこれからだよ。あ。君も来るかい?」 何も大会の事に触れていないが、何故か銀メダルを首から下げているのはエリシウム。 「そのぉ〜こっただもん、貰うの初めてだよ。そういや、今回ははずめで銀メダル貰う人が3人出たって皆がびっくらしていただなぁ。オ、オラぁ〜本当に貰っていいだか?」 おずおずと恐縮しているのはヴィオ。 「とっても嬉しいです! 毎日、近所をジョギングした甲斐がありましたよ。後半ちょっとバテちゃって、駄目かなっと思った時もあったんです。でも諦めずに歩いたから……家に帰ったら、家族に報告したいです」 上機嫌でそう話すのはアルペジオ。彼の手にしているのは銀メダル。 そして、今年一番を取ったのは。 「やったぜっ! アル!! 金メダルはオレのもんだぜっ!! 今度やるときも負けないからな!」 まだまだ余裕(?)のトトであった。 こうして、山登り大会は終了したのである。
さて、お山の頂上に場面を戻そう。 ふと、メイムは思い出したように口を開いた。 「私の生まれ故郷では、14歳はもう大人扱いだ。そろそろ思い人の1人や2人、出来たのではないかな?」 「そ、そんな人、ま、まだいませんよっ!!」 突然の質問に困惑しながら、慌てて否定するアルペジオ。 そんなアルペジオに皆は笑っていた。 こうして、楽しい誕生日の宴は、夜更けまで続いたのである。
●宴が終わり夜も更けて かぽーん。 そんな音が聞こえそうな温泉で、男湯の皆はゆったりと湯船に浸かっていた。 「やあ、絶景絶景」 頭に手ぬぐいをのせながら、ヒィゴはまったりと温泉から見る風景を楽しんでいた。 夜も更けた温泉。そこは静かで落ち着いた安らぎの空間を皆に与えていた。 「ふぅ〜、極楽……極楽……」 ヒィゴの隣でトリュウも、温泉で心も体もリフレッシュしているようだ。 そこから離れた場所でトトが勢いよく泳いで、他の客に怒られていたが。 「アル、どうだった?」 まったりお湯に浸かるアルペジオに声をかけたのは、ユエルダ。 「うん、とっても気持ち良いね!」 「……あの、温泉じゃなくって、今日の事だよ」 「今日の事?」 そう、きょとんとするアルペジオに、ユエルダは思わず苦笑を浮かべる。 (「アルのいい思い出になったらいいな♪」) そんなユエルダの気持ちは伝わっただろうか。 「いいや、何でもないよ。……そろそろ上がった方がいいんじゃないかな? のぼせちゃうよ?」 「そうだね。じゃあ僕、あがるね」 そしてアルペジオは湯船から上がり、温泉を後にした。
一方その頃。 「ああ、気になるだよ……あの、トリュウさんっていっただか? あの人の声……とっても素敵だよ……」 男湯の着替え小屋。その側でヴィオはうろうろしていた。 端から見れば、ちょっと怪しいかもしれない。 「何をしているんですか?」 「おわっ!!」 後ろから突然声をかけられ、驚くヴィオ。ヴィオが振り向いた先にいたのは、不思議そうにヴィオを見詰めるニューラとメイムであった。 「女湯はあっちだぞ?」 「ははは、そ、そうだったべか? いやあ、ま、間違えただよ」 照れたようにヴィオはその場を後にする。
こうして、アルペジオの誕生日も終わりを告げたのであった。 幸せそうなアルペジオの寝顔と共に……。

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参加者:8人
作成日:2004/07/09
得票数:ほのぼの15
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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