【お姉さま天獄】冬の番外編! お兄さま天獄



<オープニング>


 本格的な冬の日々、しんしんしん、と冷えゆく夕刻。ここは冒険者の酒場である。
「うおっほん、お嬢ちゃん、お小遣いをあげるから、おじさんとご飯でも一緒に食べにいかんかね?」
「……なにやってんだ」 
「援助交際ごっこ」
「あほう!」
 葵桂の霊査士・アイ(a90289)がぴしゃりと言い放った相手は、付け髭に燕尾服、シルクハットの変な人……もとい、はじまりは・プルミエール(a90091)である。ちなみにこの扮装は先日、セイレーンの重騎士・ユウキ(a90384)の誕生会で新調したものらしい。プルミーは気に入ったらしく、また着ているのだ。
「怒っちゃやーです。寒い冬にほのぼのギャグで暖めてあげようとしただけなんですよぅ」
「それのどこがほのぼのギャグか……」
 まったく、と嘆息し、手をひらひらと振って、
「いまから私は依頼の説明をせねばならん。いわゆる『お姉さま』テーマのモンスターが出現したのだが、いささか様相が異なってゆゆしき事態なのだ。あほうな真似をして邪魔せんでくれ」
「あほうじゃないです、紳士プルミーさんです!」
「じゃあ紳士でいいから。ほら、そこの紳士さんどいたどいた。今から依頼の説明だ」
 しっ、しっ、と追い払う。
 しかし「紳士」と呼ばれたので、プルミーは得意顔で離れるのだった。
 プルミー……単純な子!

●すぺしゃる:よにんのおにいさま、あらわる!
「今日集まったメンバーは、これまで一度ならず、フルーツをテーマにした『お姉さま』怪物と戦ってくれた者たちが中心のようだな」
 アイは一同を見回して告げる。ゆえに是非、この依頼を受けてほしいのだ、と彼女は言った。
「この真冬に、楽園のような場所があるらしい。その地は、高温の温泉が川となりとうとうと流れているおかげで、冬になっても気温が高く、暖かな果樹園が形成されているのだ。そこでは、四季折々の果実が実をつけているという……。サクランボ、スイカ、柿にミカンまでなるというのだから結構なものだ」
 季節感もなにもあったものではないが、いずれも小規模ながらしっかり食べられる程度に自生しているらしい。ところが、そんな楽園は天国のようでじつは地獄、すなわち「天獄」とでも呼ぶべき所だった。なぜならその地には四体のモンスターが生息し、訪れるものを殺して食らわんと待ちかねているからだ!
「この正方形が、果樹園だと思ってほしい」
 アイは白い紙にペンを走らせ四角形を描いた。
 そしてその対角線を交わらせ、これを均等に四つに区切る。
「この図でいうところの北側は蜜柑畑、東はサクランボ園、南はスイカ畑で、西側には柿の木が群生している」
 話しながらアイは、それぞれの場所に果物の絵を描いてくれた。なかなか上手だ。
 それぞれの場所にモンスターがおり、侵入者を発見すると正方形の園の中央に追い込もうとするという。中央で他の三体と合流し、一気に片をつけるという作戦を好むらしい。
「四体のモンスターは、いずれも目を奪われるような見目麗しき男たちだ。幼年から青年程度の年齢らしい。見た目は華奢だが、甘くみてはならんぞ。いずれも、これまでの『お姉さま』モンスターに劣らぬ強さだと思われる」
「ほほう、いわば『お兄さま』モンスターというわけですな」
 プルミーは変わらず男装で、ダンディな私に勝つことができますかな? などと世迷い言をいっていた。……気にしないであげてほしい。
 アイは四体それぞれの能力と特徴を告げた。
 蜜柑の「お兄さま」はゴシックな衣装に身を固めた青年。黒で統一された衣装にブーツ履き、すらりと背が高く、色白にして端正な顔立ちだ。手にギターを抱いているらしい。橙色の長髪振り乱し、ギターの旋律を冒険者に向けた場合、それは混乱を引き起こす。しかし「お兄さま」に向けた場合、仲間を回復させるという。
 チェリーの「お兄さま」は、なごみ系のやさしい表情をした五、六歳に見える幼児だ。行者のような桜色の薄衣着て、前がはだけるのもかまわず微笑み続けているらしい。あどけなく、女の子のような顔立ちだが、はだけた部分からのぞく胸はあきらかに男子。実は凶暴かつ敏捷で、催眠作用のある甘い吐息を吹きかけ、弱ったところを有毒の舌で舐めてダメージを与えようとする。
 西瓜の「お兄さま」は、快活な少年らしい。着ているのは海パン一枚のみ、鮮やかな緑の髪らしい。よく日焼けした健康的な外見だが、はっと息を呑むほどに美しいという。上げた水中眼鏡を頭に乗せて、海パンも緑と黒のツートンカラー、手にした武器は木刀で、居合い斬りを巧みに使って攻撃してくるだろう。その剣の腕は流麗にして破壊力絶大、流水撃のような攻撃で一斉攻撃もしかけてくるという。
 柿の「お兄さま」は、柿色に染めた狩衣を着ている。頭には衣冠をいただき、眼鏡をかけているようだ。四体のなかではもっとも年かさらしく、細身で落ち着いた物腰、理知的な瞳が印象的だ。手にした払い棒を振れば、赤黒い腕のような姿した気の塊が放射される。この腕は、長い距離の攻撃が可能な上、こちらの装甲を貫通し破壊することができるという。巨大な竜巻を発生させて数人を巻き込み、吹き飛ばして麻痺の被害を与えることも可能だ。
「いずれも、過去戦った『お姉さま』に勝るとも劣らぬ強さを誇る。正直……これまでで一番難しい戦いになるかもしれんな」
 アイはプルミーにも出動を要請した。
「行ってくれるな」
「もちろんですとも!」
 プルミーは、例の付け髭をなでつけながら返事する。
「それぞれの『お兄さま』は、他の人のテリトリーに入らない、という性質はありますか?」
「いや……比較的自分のゾーンにいたがるだけで、どこに移動することも可能だ。ただ、自分の場所にいるほうが強度が増すらしいな」
 ただし、果樹園から遠く離れれば追ってこないので、万一のときには全力で撤退すれば逃げ延びることはできるだろう。無論、そんな事態にならないのが一番だが。

 まるでこれまでのおさらいのようなこの戦い! 四つの果樹園と四体の「お兄さま」が諸君を迎えるだろう! 果たして、無事撃破して四季の果物を味わうことができるだろうか!?
 例によって例の如く、勝利したら衣服を奪えるようだが……今回は敗北の目も存分ありえることに注意してほしい。
 ところで、紳士プルミーは、
「お稚児ちゃん……いや、坊や、お小遣いをあげるから、おじさんとご飯でも一緒に食べにいかんかね? うふふ」
 と離れたテーブルでユウキ(意味がわからずキョトンとしている)をナンパしていた。


マスター:桂木京介 紹介ページ
 桂木京介です。よろしくお願いします。
 フルーツ&美女の謎シリーズ、今回は冬の特別編ということで、ちょっと趣旨を変えて四季折々の美男子モンスターと激闘します。
 個性バラバラながら、敵もかなりのチームプレイをとってきますので、こちらもそれ以上の団結力で打ち破りたいものですね。

 ご注意を! 今回の難易度は「やや難」です。多少なりとも本格的に戦陣を組まないとちょっと難しい戦いになるかもしれません。撤退条件も必ず用意しておいてください。
 今回はプルミーも参戦しますので、どなたか一名、代表で指示を与えてあげてください。

 それでは、次はリプレイでお会いしましょう。桂木京介でした。

参加者
碧風の翼・レン(a25007)
嵐を呼ぶ蒼き雨・レイニー(a35909)
月の姫を抱く者・ミレイラル(a43722)
黒百合の魔女・リリム(a50830)
星喰らう蒼き闇・ラス(a52420)
手のひらの鼓動・アールコート(a57343)
火炎六花・ルーシェン(a61735)
槍を持って進む者・ベディヴィア(a63439)
銀之刀匠・クオン(a65674)
全力狂想曲・ティム(a71002)
NPC:はじまりは・プルミエール(a90091)



<リプレイ>

●逆ハーレムというわけじゃな
 嵐を呼ぶ蒼き雨・レイニー(a35909)から始めたい。
「逆ハーレムというわけじゃな……良いのう」
 上機嫌、かっぽかっぽとグランスティードの蹄音も軽やか。
「楽しみだぞー。おー!」
 はじまりは・プルミエール(a90091)も、その声に応じ右手をつき上げた。
「逆ハー……なんだって? まあいいか、今日の敵は四人の美女というしな」
 星喰らう蒼き闇・ラス(a52420)は、どうやらまだ趣旨をわかっていない様子だ。
 鮮やかに着こなすゴスロリ扮装、それは銀之刀匠・クオン(a65674)の艶姿。
 クオンはラスを横目に躊躇していた。
(「真実を教えてさしあげるべきでしょうか……」)
 だが、迷っている間に、一行は四季の園にたどり着いたのである。ここはその北側、蜜柑畑だ。手早く準備に入る。
 心の声は「イヤッハィ!」、久々のお姉さま依頼にワクワク顔のラスだったが、ここで急転直下。
 すらり、ゴシックな立ち姿があった。蜜柑色と黒のコラボレイト、シャープな形のギター抱き、オレンジの髪を振り向かす。
 だがそれは、美しけれど男子の姿!
「……だ、騙された」
 がく。ラスは燃え尽きて灰となる。
 全力狂想曲・ティム(a71002)も落涙を禁じ得ない。
「おねーさま 愛しのあなたは いまどこに」
 涙の句を読み上げていた。
 灰になったり涙にくれている時間はなさそうだ。相手の反応より早く、一同は弾丸のように奇襲をかける!
「銀狼さん、ぉ、お願い!」
 いち早く動いたのは黒百合の魔女・リリム(a50830)、銀狼をけしかけ手傷を与える。
 そこに第二の攻撃! 疾風怒濤、スティードが猛追をかけたのである。
「確かに男前、しかし惜しいかな、妾のエスコートをするには礼儀がなっておらぬ!」
 手綱をとるはレイニー、同じ鞍には、
「高貴な方は供を連れて行くものですよ?」
 と同乗する二代目ドジ巫女・ミレイラル(a43722)の姿がある。はためくミレイラルの衣装は、ヘビイチゴお姉さまの羽衣だ。にこ、と眼福楽しんだ後、紫の風のように飛び降り蜜柑の背後を取る。
「美味しくキャッチさせていただきます」
 ミレイラルが投ずは蜘蛛糸、素早くゴス青年を縛りつける。
「お供が先に手を出すでないわーっ!」
 レイニーは狙ったわけではないのだが、「たまたま」ミレイラルに連携して一刀を与えた。
「はわわ、僕もお供っぽいのです」
 槍を持って進む者・ベディヴィア(a63439)、同じくスティードで急迫し青龍戟で突く。鎧聖降臨のその服装、メロンお姉さまのオーバーオールではないか!
 碧風の翼・レン(a25007)も先攻に加わる。ダークネスクローク伴い疾走し、旋空脚を放った。
「幸先はいいけど、油断はできないよね!」
 閃く光は弧を描き、蜜柑兄を転ばせる。
 手のひらの鼓動・アールコート(a57343)も迅い。
「私は私のできることをやるだけなのです☆」
 と慈悲の聖槍を投ず。
 蜜柑兄は拘束から逃れた。立ち上がり、キッ、とにらみつけてくる眼の凛々しいこと。視線があってしまいアールコートは胸を熱くする。
(「野性的だけど、王子様、って感じなのです☆……あ、いけない、いけない」)
 アールコートは首を振る。迷いの多い戦いになりそうだ。
 蜜柑兄の視線は右へずれた。彼と同配色、同コンセプトの姿があったからだ。
 ゴスとゴスロリの違いはあれど、
 男と女、性別の違いはあれど、
 それでもなお通じ合う。根底に流れるものが同じだから。
 蜜柑のお兄さまに向き合うは、蜜柑のお姉さまだった。彼女はクオン、銀皇久遠の太刀を佩く。
「いわばあなたは義理の兄弟……葬り去るは私の宿命です」
 剣尖閃き火華が散った。デュエルアタック裂帛剣、お兄さまを掠れど深傷に至らず。
 火炎六花・ルーシェン(a61735)は手回しが早い。すでに北以外の三か所に、土塊の下僕を送り込んでいた。
「他の三大お兄さまが足止めされていればいいのですが……さて」
 黒炎覚醒も発動済みだ。ルーシェンは蜜柑兄に炎を浴びせる。
 一方、
「はいやー!」
 と攻めかかるプルミーは、鎧聖降臨を受け葡萄姉ブレザーに変身していた。

●今回のお楽しみタイムってな!
 ルーシェンの心配は、早い内に実現してしまった。
 見えた敵影に対してレンは、タスクリーダーで伝達する。
「二時方向から柿兄が来るよ! 気をつけて!」
「果樹のせいでお兄さまの配置、見えなかったんだよね。結構近かったか」
 ティムは唸り、蜜柑兄に偉大なる衝撃を見舞う。当たっているがファンファーレは聞こえない。
 蜜柑兄の体力を見誤っていたかもしれない。さすがここは蜜柑の本拠地、敵は混乱攻撃で強固に抵抗し、一時冒険者は崩れかかったのだ。アールコートが手早く回復させ持ちこたえたものの、この状況での敵増援は、泣き面に蜂である。
 衣冠の神官、柿のお兄さまが到着した。そよ風のように音立てず迫り来る。眼鏡の向こうの眼が妖しく光った。
「二度目の拘束もままならないのに、さっそく援軍ですか」
 ミレイラルは舌打ちした。蜜柑兄の回復力は莫迦にならない。短期決戦、成らなかったか。
 しかしその前を横切って、柿に立ち向かう小さな増援あり!
「今回のお楽しみタイムってな! いつもの仕返しだコンチクショィ! 行けっ、トワイライト!」
 ラスが力強く命じている。小さな戦士は、改めて彼が喚んだ土塊の下僕だ! モデルとなったあの人と、微妙に似た扮装である。
 首尾良く「トワ」は柿のお兄さまを足止めし、これでチームは体勢をもち直した。
「ふむ、妾のため犠牲になるとは天晴れな下僕よ」
 本物のトワイライトはどうしておるかの、とふと思いつつレイニー、
「美男子が二人、目移りするところじゃが、まずはそちをいただいてくれよう!」
 と言い残し蜜柑への突撃を敢行した。
 これに合わせてリリムが仕掛ける。
「わ、わたしだって……」
 リリムはレインコートを着ている。どうやら鎧聖降臨でこの服装を選ばれたようだ。コートは厚くていいのだが、その下がほぼ全裸というのがトゥー・デンジャラス!
 今度こそ、リリムの銀狼が蜜柑兄を組み伏せた。
 ここで、
「葡萄のプーミンあたーっく!」
 プルミーの電光が蜜柑を撃ち、
「間近で見たって男は男! 実につまらん!」
 ヤケクソのようなラスのスピードラッシュ、そして、
「これで追い詰めるのですっ!」
 ベディヴィアが斬りつける。
 一瞬遅れたがルーシェンはデモニックフレイムを投じる。
「これでクローンができれば……」
 ちなみにルーシェンの鎧聖姿は枇杷のお姉さまだ。スカート姿なのに違和感なさ過ぎ!
 だが攻撃は、すんでのところで命中しない。
「西瓜兄が来たよ。西瓜〜!」
 ティムが急を告げる。これ以上、クローン化を狙い続けるのは危険だ。
 奔る太刀筋、銀皇久遠、
「致し方ありません……ならばせめて、同じ蜜柑の手で」
 クオンが蜜柑を斬り斃した。

●親分さん、耐えましたです!
 蜜柑兄を討ったものの、冒険者は優位になったわけではない。
「うわぁっ、西瓜に……、チェリー……」
 ティムは唾を飲み込んだ。西瓜兄につづき、桜桃兄も蜜柑畑に現れたのである。
「これだけは言っておきたい!」
 レンは味方を対柿に結集させつつ叫ぶ、
「五、六歳に見える幼児が『お兄さま』ってどういう事だよ!」
 もちろんその幼児とは桜桃兄のこと。いやまったく!
 西瓜は手にした木刀を薙ぎ払う。
 だがその攻撃の大部分を、盾になるべく突出したベディヴィアが受けきる!
「させないのですっ……!」
 彼の献身により、レイニー、クオンらも敵の攻撃範囲にあったが軽傷で済んでいた。
 蜜柑畑に突き転がされつつも、ベディヴィアはしかと立ち上がり、拳で唇の血を拭った。
「親分さん、耐えましたです! ここは僕が支えるので、柿さんを倒してくださいですよ!」
「これベディヴィアよ『親分』ではないぞ、妾は『お嬢様』じゃ!」
 と言葉を怒らせつつも「頑張りだけは褒めてやろう」と言い残すレイニーだ。
「助かりました−!」
 プルミーは声上げて、今度は雷撃を柿に向ける。
 冒険者は扇形の陣、乱れず一斉に進む。
 これを見届け、ベディヴィアは西瓜兄に宣言した。
「というわけです西瓜のお兄さま。どうしても進みたいなら、僕を倒してからにするのです!」
 西瓜兄は少年、それも、艶めかしき女顔の少年、むき身の裸身を包むは海パンのみ、薄いながら微妙に胸もあり、その姿が背徳的な感情を惹起する。
 西瓜とベディヴィア、その両者を交互に見て、アールコートは刺激を受けつつ、
「ちゃんと勝って目の保養をするのですよ♪」
 ヒーリングウェーブを発動して味方を支える。やはりアールコートにとって誘惑の多い戦いだ。

 ぴんぴん、ティムのアホ毛センサーが商売敵を察知中!
(「おねーさま出ないってだけでぷんすかぽいなのに……チェリーのおにーさまめ!」)
 桜桃(チェリー)兄に怒るティムなのだ。だって、
(「甘い吐息で柔肌に舌を這わせるだなんてとっても羨ま……げほげほ!」)
 うん、まあそういうこと。
「けしからん! どうしても舐めたいならベディヴィアだけにしろーっ!」
 問題発言(!)しティムは、偉大なる衝撃で桜桃を撃つ。
 ファンファーレが鳴る。チェリーは前のめりに転倒し行動を拘束された。

「はうー!」
 プルミーが拘束されてしまう。
 柿兄が竜巻を起こし、周囲のものを吹き上げたからだ。
「トワも粉々に……くっ!」
 ラスは嘆く。けれど彼も、哀しみに沈んでいる場合ではない。
「だが土塊『トワ』よ、仇はきっと取るからな!」
 と一声、薔薇の剣戟で逆襲をかけた。
 クオンもタイミングを合わせ、デュエルアタックで窮地の打破を図る。
「方針を貫きます……」
 燕の如く舞うクオンの剣、柿のお兄さまの衣冠を吹き飛ばし、見事怒り状態に落とす。
 柿兄は制御を失い、見境なく突っ込んできた。防御はがら空きだ。前衛陣が次々と攻撃を見舞う。
「ならば!」
 連携してミレイラルはブラッディエッジで、深く柿の首筋を突き刺した。
 爆発的な打撃!
 続けて、
「こ、これで……!」
 リリムが悪魔の焔を浴びせかけた。
「やりましたねリリムさん、勝機が見えてきました」
 ルーシェンは歓声を上げる。
 倒れた柿の背後から、クローン版柿のお兄さまが誕生したのだ。 

●安心したような残念なような……はぅ☆
 戦いは蜜柑畑で続いている。ゆえに異常な強さを見せたのは蜜柑兄だけ、クローンの援軍もあり、冒険者は形勢を逆転していた。
「はわわ……う、歌うの恥ずかしいのです」
 西瓜を一人で相手していたベディヴィアはガッツソングを口にする。
 しかしもう心配はいらない。
「えっちぃ西瓜さん退治です♪」
 とプルミーが戦列に加わり、
「勢いはこちらにあるよね、一気に片付けよう!」
 とレンも旋空脚を見せる。
「分断布陣を崩すでないぞ! 連携させるわけにはいかんのじゃ!」
 指示を飛ばしながら、レイニーも力強い一撃を繰り出した。
 柿兄クローンの効果も大きい。いきなり向かってきた「味方」に西瓜兄は混乱気味の様子、これを存分に利用して冒険者は集中攻撃し、ついにルーシェンが、
「二体目のクローンと参りましょうか?」
 どのお兄さまにも負けぬ色っぽい笑み見せ、デモニックフレイムで西瓜を焼きつくした。
 かくて柿&西瓜の美クローン、わっと桜桃兄に向かっていく!
 やがてリリムが気づいた。
「な、なぜでしょう、チェ、チェリーのお兄さま、他のお兄さまより一段と弱い気がします……」
「あっ、それリリムも思った?」
 ティムが応えた。
「ほとんどずっと拘束に成功していたから僕も気づいたんだ。僕の義憤(?)が通じたわけじゃないとしたら……」
 ミレイラルも頷く。
「彼らには、直前の季節フィールド内では弱い、っていう法則があったのかもしれませんね」
 アールコートは思う。
(「チェリーのお兄さまの舐め攻撃、見られなくて安心したような残念なような……はぅ☆」)
 惑う気持ちを振り払い、彼女は味方を回復させた。
「最後まで気は抜けません……」
 安定した強さを見せるクオン。
 レンの攻めも容赦ない。ルーシェンも援護射撃を投じ続けた。
 そして戦いに、終止符を打ったのはラスだ!
「確かに手強かった……。しかし! 俺の方が上だったようだな!」
 斬! 薔薇の剣戟その奥義、幼児お兄さま(矛盾表現)を断ち切ったのである。
「連中より俺のほうが勝ってるよね? プルミー?」
 振り向いて同意を求めるラスに、
「はい、声の大きさとか♪」
 いまいちピントのずれた回答をくれるプルミエールだった。そういう返事を、期待していたわけじゃないのだが。
 お兄さまは衣装だけ残し、気体と化して消滅していた。

●フルーツポンチのお父さま
 一行は四季の園を巡り、桜の園で休息を取る。
「四種類の果物が味わえるというのも贅沢ですね」
 と言いながらミレイラルは、柿を剥いてレイニーに食べさせている。
「うむ苦しゅうないぞ♪ 西瓜の種も取るがよい」
 レイニーは大満足だ。
「はい、あーんして下さい♪」
 ミレイラルも笑顔である。この作業、案外楽しい。

「こ、今回はべ、ベディヴィアさんは何を着るんですか? チェ、チェリー?」
 興味津々、問うリリムに、
「僕……このお約束な状況から抜けれないですか〜?」
 涙目のベディヴィアである。
「私は西瓜をお願いしたいので、勇者ベディヴィアさんには両方試してもらうことにしましょう♪」
 アールコートはにこにこと、そんな究極の提案を繰り出す。

「こう見えて、趣味は調理と採取、それに植物知識なんだよね〜」
 鼻歌交じりにレンは、そのすべての技術を活用してくれる。
「これだけ材料があれば作りがいがあるよ……はいっお待ち遠さま!」
 さっと出してくれたのは果物いっぱい、フルーツポンチなのだった。
「これはご丁寧に……」
 一礼してクオン、正座した状態で受け取る。
 プルミーも目をキラキラさせてこれを受けた。
「美味しそうです。きっといいパパになれるですよー。レンさんは、『フルーツポンチのお父さま』です♪」
「そうかい?」
 でもその称号はちょっとなー、と照れ笑いしつつ、柿兄の眼鏡で紅潮を隠すレンだった。

 ルーシェンとティムは、蜜柑の兄服を賭けてじゃんけんした。
「残念……」
 負けたルーシェンにティムは笑いかけ、
「ごめんね。その代わり、良いもの見せてあげるよ!」
 アホ毛センサーぴんぴん、さっと桜の木の陰に隠れティムはつぶやく。
「『依頼は成功させる』『お約束も守る』……両方やらなくっちゃいけないのがプーカの辛いところだよね?」
 通りかかったひらひら衣装に、風のいたずら攻撃だ!
「はわわ−!」
 それはベディヴィアの涙声。オーノー! めくれたのはチェリーの薄衣だった!
 なものでルーシェンもティムも、偶然居合わせたラスも、声を合わせて、
「はわわー!」

 今回は、これまで。


マスター:桂木京介 紹介ページ
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冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2009/02/18
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