【Fortune Stories】おしまいは、角笛城



<オープニング>


「ルッラルだよ〜♪」
 ぬいぐるみ(うーちゃん)を連れて、狐尻尾のストライダー霊査士がやってきた。
 彼女はルラル、きょろきょろと一同を眺めて、
「みんな揃ってるねー」
 と笑顔を見せた。
「三十棺桶島の冒険、色々大変だったみたいだね〜。でも、こうしてまたみんなに会えてうれしいな。ちょっと早いけど、今日もOTAKARA話を紹介するね☆」
 うーちゃんをもみもみしながらルラルは話し出す。
「あ、でも……」
 ふっと、ルラルは何か思い出したような顔をしたが、
「んーと、まずは依頼のおはなしから〜♪」
 それはさておき、といった様子で告げるのだった。
 耳寄せて聞いてみようじゃないか。

 剣を並べて立てたよう、それほどに険しい山があった。山といっても木らしい木もなく、剥き出しの花崗岩で形成された凄絶な岩山だ。
 山は「角笛山」と呼ばれている。名の由来は、今となっては誰も知らない。ただ、この山では、隊商が無事を確認しあうためによく角笛を吹いたという。おそらくここから取られたのではないか。
 その昔、この山は二つの大都市の中間にあったそうで、最短距離を歩もうとゴツゴツした岩肌に挑み、命を落とす商人も多々あったという。やがて商業ルートが拡充するにともない、商人たちは山の中継所として山砦を建てた。剣の如き角笛山にそびえるその影があまりに立派なので、人々はこれを砦ではなく城だと称し、「角笛城」という名前を冠した。

「その『お城』……、えと、『とりで』といったほうがいいかな。そのとりでもね、もういまでは誰も住んでいないの」
 時代の流れか、山の両側の都市は縮小し、寂れ、うち一つに至っては滅んでしまった。
 当然の帰結として、角笛城もその役目を終え遺跡と化したのである。
「だけど、とりでに最近、まっくろな怪物が住みついたんだって」
 怪物は四頭。人間よりも小柄で、足音や気配を殺して歩く。その姿を形容する言葉は、ルラルのいう「まっくろ」がぴったりだろう。墨で塗りつぶしたように黒い。そして角笛城は、ぴったりと密閉されて、針先ほども光が射さないという。
「きっちりと光源はとっておいてね! まっくらは怖いよ〜」
 内部は岩や板、どこかから調達した布などで完全密閉されており、非常に視界が悪い。その上、怪物の体温は室温とほぼ同じであり、エルフの夜目をもってしてもその姿の確認は困難だ。無論、たいまつやランタン、ホーリーライトで照らせば一目瞭然ではあるが、その範囲から外れればたちまち目視はほぼ不可能となるだろう。
「まっくろモンスターは、みんなのことをずっと確認しながら、そーっとついてくるよ。もしくは、みんなの行く方向を予想して前もってそっちに動くとか……とにかく、すぐには手をだしてこないみたい。感じ悪いなぁ」
 そうして、自分たちが有利に戦えそうな場所に誘い込む、あるいは偶然そちらに踏み込んだところで奇襲をかけてくる、といったいささか陰湿な方法で攻撃してくるらしい。
「攻撃方法もちょっといやらしくて、四体が四体とも、一斉にこちらを混乱させるような甲高い音をだしてくるんだって。狭い場所で聞いたら、それこそめまいがしちゃいそうだよ〜」
 混乱を招く声のほかにも、基本的には中距離・遠距離系の攻撃が多い。いずれも声をつかった攻撃で、超高音を発し真空波で切りつけてくるかと思えば、狂気に満ちた歌声で、複数の対象を恍惚状態にし出血させることもあるという。接近されどうしようもなくなれば腕から爪を伸ばし、切りつけてくるようだが、できる限り声を使おうとするらしい。
「なんだかいやな敵だね〜。小さくなったとはいえ近くには都市もあるみたいだし、いつ夜にまぎれてこのモンスターが出てくるかわからないよ。ぜったいにやっつけちゃってね!」
 さあ、それはそうとしてOTAKARAだ。
「やっぱりどこかに財宝があるみたいなんだよね。キラキラっ☆ でもそのOTAKARAは、角笛山のどこかにかくされているんだよ。山といっても、でたらめに探すにしては広すぎて途方に暮れちゃう。でも、隠し場所を示すものが角笛城にあるみたいなんだよね〜♪」
 角笛城は非常に入り組んだ構造になっている。三階建て、屋上は見張り台を兼ねており、明かり取りの窓が複数あるため、そこから上への昇り階段は怪物が破壊してしまったようだ。
 各部屋の石床には数字が振られているという。
「一階には『1』から『9』までの九個、二階には『0』から『9』までの十個、三階には『0』から『6』までの七個の部屋があるんだよ」
 それぞれの床石には、詩のような文章が彫られているらしい。
「しっかり彫られているから、長い年月でも消えていないと思うよ。でも、全部の部屋の詩をくみあわせても意味不明な文章になるだけなんだよね……」
 ある一定の順序で、正しい部屋の詩を並べると、隠し場所を示す詩が完成するようなのだ。
「うーん、そんなこといっても困るぅ〜。ただ、『角笛』という言葉が鍵らしいんだよね。あと、正しい詩は四つ、っていうことだけは知られているみたいなんだけど……」
 ルラルはお手上げのようだ。ただし、怪物には一切関係なさそうだし、OTAKARAの中身(ちなみにダイヤモンドらしい)とも関係がない気がすると彼女は言った。
「えーと、一階が九部屋、二階が十部屋、三階が七部屋……全部で、えーと、二十六? ある部屋のうちから四つを選んで、詩を並べかえるんだよね……あうー」
 そういえば、とルラルはふと思い出したように言う。
「この前、三階建ての建物で霊査士のアイちゃんと待ち合わせをしたことがあったよ。でもぜんぜん会えなかったの。待ち合わせ場所は『二階』っていってたのに、アイちゃんずっと三階で待ってたみたい。三階に上がってやっと会えたんだけど、話を聞いたら、アイちゃんは『ここが二階だろう』って言い張ってたの……変なの」
 完全に脱線しまったようだが、霊査士の発言である。決して無意味なものではないはずだ。この記憶が何かを暗示している可能性が高い。

「あと……」
 ルラルは最後に、少し寂しげに告げた。最初に言いそびれたことらしい。
「これまでずっと、みんなにOTAKARA話を紹介してきたんだけど、今回をさいごに、しばらく同じような話はなさそうなんだよ……だから、残念だけどOTAKARA話は、いったんこれでおしまい」
 でも、と彼女は笑った。
「だからこそ、ラストもきっちり終わらせたいよね♪」
 見つからなくてもご愛敬、バトルとトレジャーハントの物語はこれにて終了だ。
 最後もきっちり、がっぽりと決めよう!


マスターからのコメントを見る

参加者
笑顔のヒーロー・リュウ(a36407)
現実に眠る姫君・レーニエ(a39827)
神風・キャロット(a59243)
斜陽支えし鋼盾・ジェフリー(a60090)
朱華・オーム(a74565)
海の魔術師・アクアリス(a74908)
鈴音の唄猫・ユリウス(a76515)
永久に祈り捧げ歌う者・サフィーア(a76810)
蒼氷を渡る風・フォーゲル(a77438)
お気楽リザードマン・プーク(a77593)


<リプレイ>

●一階。部屋
 天鵞絨を敷き詰めたような闇の世界に、うっすらと灯がともる。
 それは冒険者たち、怪物を退治し、OTAKARAを手にせんと挑む者たち。
「今回でお宝探しも最後か。名残惜しいもんだ」
 ぽつりと、斜陽支えし鋼盾・ジェフリー(a60090)が言った。用心しながら部屋の前で待機する。
「うん、今回で終わりかァ……」
 鈴音の唄猫・ユリウス(a76515)は薄く笑みを浮かべていたが、部屋に入って壁の手近な板を引きはがし、
「まァ、『終わり良ければ全てヨシ』って言うし。有終の美でシメたいねェ」
 と振り向いた。土塊の下僕で先行調査したゆえ、安心して行動できる。
 まばゆい光が飛び込んできた。
 外は日が昇ったところだ。日の出とともに一行はここにやってきたのだ。部屋に踏み込むたびに板や布、その他覆いになりそうなものを取り除き、外光を入れるようにしている。
「そうだな。しんみりするより前に、敵を始末し麓の村の脅威を払いたいね」
 ふっとジェフリーは口元を歪めた。
 このチームで冒険をするようになって二ヶ月、短い間であったが、様々な経験ができたと思う。結束力も強まったようにジェフリーは感じている。
 その影響は、初参加となる蒼氷を渡る風・フォーゲル(a77438)にもあるようだ。フォーゲルもまた迅速に行動を進めている。
「これで四部屋目、ですね」
 つぎつぎと窓が開放され、淡くも温かい冬の日差しが入り込んでくる。
 床石には『6』という数字と、情感のある詩が彫られていた。数字の順番はランダムらしい。
「楽しいやんか」
 お気楽リザードマン・プーク(a77593)はニヤリと笑った。
「一部屋明るくするたびに、OTAKARAに近づいてる、って気がするでぇ」
 プークも初参加だが早々になじんだ様子で、陽気に壁をはがしてまわっている。
 笑顔のヒーロー・リュウ(a36407)も朗らかに言う。
「この部屋、邪魔な物がなくて最初の拠点よりずっといいんじゃないかな?」
 海の魔術師・アクアリス(a74908)も同意を示した。
「わお、リュウさん、それ、あたしが言おうとしてたこととまったく同じ〜♪」
「それは光栄だね♪」
「あたしも☆」
 一行は、「拠点」を定めつつ移動するという作戦を採用していた。「拠点」とは戦闘予定地である。敵に優位な状況でわざわざ戦ってやる必要はない。途上の部屋すべてに光を入れてゆき、しかもその中で戦闘に有利な場所を「拠点」に設定する。戦闘時はここに引き込むという算段なのだ。
 反対がないのを確認して、アクアリスは言う。
「ではここを新拠点にけって〜い☆ ユリウスさん、オッケー?」
 ユリウスは片手を挙げて返事する。彼がマッピングを行うのはブナ屋敷以来だ。
「おー、けっこう達筆じゃないノ?」
 その地図を見つつ、神風・キャロット(a59243)がふふフと笑っている。
「そうかなァ? テキトーだよ」
 照れ隠しのように彼は言うのだが、まんざらでもなさそうだ。
 思った以上に楽しい探検だとキャロットは感じている。なにせ闇夜のごとき砦内部が、進むたびにどんどん明るくなっていくのである。この調子で最後までリフォームしてしまおうか。
 彷徨いし鳥を導く者・サフィーア(a76810)の髪に、陽光が鮮やかな色彩を与えていた。
「それでは拠点も定まったことだし、先を急ごうか」
 縞瑪瑙の指輪をした手で、サフィーアは行く手を指す。

●二階。行軍
 一階の調査が終わり、階段を昇って二階に進んだ
「行く手に何か見えなかったかい?」
 ソルレオンの女形・オーム(a74565)が声を上げたので、現実に眠る姫君・レーニエ(a39827)は息を呑んだ。
「えっ……あの……、すいません、わかりませんでした」
「すまないね、レーニエさん、驚かせて」
 オームは言う。通路の途上、何か動くものがあったような気がする、と。
 道中は闇に次ぐ闇、完全に照らしきれるものでもないので、オームはあえて、光があまり当たらぬ方向に注視するようにしていたという。
「気のせいかも知れないが、ずっと見られているような気がするんでね」
「私も見ました」
 フォーゲルが言う。
「ほんの一瞬ですが、何かが横切ったような」
 すでにこのとき、何があってもいいようにアクアリスとリュウは身構えている。
「土塊の下僕に先行させようカ。この先、狭くなってるみたいだシ」
 キャロットが提案すると、
「それなら私が……」
 レーニエがしゃがみこみ、下僕を召喚して囮とする。
 しばし待つが、反応はなかった。

●二階。階段〜拠点(1)
 落ち着かないね、とふわふわ綿毛のヒヨコ・ネック(a48213)が言うのもわかる。
 途上、敵らしき姿を見てからは、ぐっと緊張感が増している。
 敵はどこからか自分たちを見ている。それはわかるのだが……まったく仕掛けてこない。
 こちらを苛立たせるのが目的、とでもいうかのように、行く手に影を見せたり、かすかな物音を立てるばかりだ。
「階段……だな……」
 やがて見えてきたものについてサフィーアは述べた。
「土塊の下僕を、階段に先行させますか……」
 レーニエが問うたが、まだ二階には部屋が残っている。後回しにすることに決めた。
 一同が階段脇を通過し、進行方向を定めたとき。
 かすかな、しかし耳障りな高音がジェフリーの耳を打った。
「上……?」
 振り仰ごうとして、どろりとしたものが首に垂れるのを彼は感じる。
 血だ。側頭部。大きくはないが、深く抉られている。
 遅れてきた強烈な痛みに、ジェフリーは歯を食いしばって堪えた。頭が割れそうだ!
 戻ろうとする仲間に、ジェフリーは口早に告げる。
「作戦続行だ。二階で一番最後に決めた『拠点』に向かおう!」
 溢れる傷口を手で押さえ頭上を見る。一瞬、黒い物が動くのが見えた。
「右に曲がって! あとはどんどん明るいほうへ」
 ユリウスが指示を飛ばす。
「追ってきた!」
 二度目の真空波を背に浴び、ジェフリーは再度うめき声を漏らした。
「大丈夫だ。走ってくれ!」
「もちこたえるんだ。気を強くもって」
 オームは彼に肩を貸す。
 階段から拠点へは距離があった。その間に三回目の追撃が来る。
 ぶっ、とジェフリーの口から血の泡が吹き出される。真空波が肺を傷つけたに違いない。
「こらえてや! 拠点にさえつけば百倍にして返してやるさかいな!」
 オームと共に彼を支え、プークは背後に向かって怒りの目を向けた。
 見える。
 黒い塊が追ってくる。
「着いたよ!」
 転がり込むようにして拠点に到達し、リュウが振り返って叫んだ。
「だめっ!」
 しかしそのリュウに、アクアリスが激しく体当たりする。
「えっ!」
 床に押しつけられたリュウの頭上を、真空波が駆け抜けていくのが見えた。
 だが彼をかばったアクアリスは無事ではない。自慢のシルクハットを吹き飛ばされ、首筋を削られていたのだ。
「窓……そうカ!」
 うかつだったネ、とキャロットは唇を噛むが、すぐさまソニックウェーブを放っている。攻撃は命中、窓の外から室内に入り込んだ黒い怪物が、どさりと石床に落ちた。
「組織的な行動ができる敵のようネ! 板を剥がしたから三階から窓めがけ下りてきたんだヨ」
 キャロットの言う通りだろう。別の窓からも黒い怪物が進入し、甲高い鳴き声を上げたのだ。
「すいません……私……意識が……」
 フォーゲルは膝を付いた。声を聞いて混乱してしまったようだ。だが、
「気を確かに、僕がついてるよ!」
 真剣な口調でネックが請け負ってくれる。彼は混乱を鎮める祈りを始めた。
 サフィーアは意識を集中し、高らかな凱歌を歌い始めた。
(「声を使った攻撃、か……まるで吟遊に似たそれだな……」)
 自分もそれが本職だ。負けるわけにはいかない。全員が範囲に入るように歌う。
「私も凱歌を歌おう。ユリウスさんは……」
 と言うオームに、ユリウスは「任せて」と即答する。築き上げた信頼関係は力、それ以上の言葉は要らない。
「漆黒の闇に浮かぶ蝶の幻……さァ、迷い惑ってごらん」
 少年ながら大人の女の如く笑むと、ユリウスは敵に呼びかける。
 追いかけてきた怪物の一体が様子を変じた。爪で味方に襲いかかったのだ。
「よっしゃ、ええ感じや!」
 プークは手を叩いてこれを祝すと、追いかけてきた二体にニードルスピアを浴びせる。
「オーム、プーク、迷惑をかけた。なんとかなりそうだ」
 ジェフリーの傷は塞がっている。すぐに彼は味方への鎧聖を行うのである。
 期せずして挟撃されている。ゆえに予定の先陣は不可能だが、それでも次善策はある!

●二階。拠点(2)
 作戦にブレがない、それが力となる。急襲を受けた最初こそ不利を被ったが、あくまで光さす場所での決戦を望んだことが効果を発揮しはじめた。
 混乱が収まると、冒険者は逆襲に移る。
「ははっ、黒いのがよく見えるよ!」
 リュウは立ち直り、サンダークラッシュで敵を撃つ。明るいため敵が、どこに動こうと丸見えだ!
「逃がしません……」
 レーニエは気高き銀狼をけしかけている。一度は外れたが、今度は見事に命中! そして、
「さっきはよくもやってくれたね〜! でも、あたしたちを倒すには奇襲だけじゃ無理だよ☆」
 アクアリスだ。レーニエが拘束した相手に兜割りを放つ!
「ほらっ♪」
 ずん、と強烈な手応え。アクアリスの一撃が、敵を竹の如く両断した!
 怪物は素早いため、その攻撃をかわすのが困難だ。ために、ダメージを受けても良いのでこれを全力で回復するという方針を彼らは取っていた。
「壮大ないくさ……とまでは参りませんが、今日は、この『角笛城』が建造されてから最大の戦いでしょうね」
 フォーゲルはガッツソングを歌い、仲間を回復させつづける。同行のネックもこれは同じ、敵の混乱攻撃は強力なので、彼の出番にも事欠かない。
 ユリウスは臨機応変。味方の状態を見て、今度はブラックフレイムの攻撃に入る。
「ふぁいあーッ!」
 攻撃は外れたが、回避行動をとった怪物に隙が生じた。
「サフィーア、行けるッ!?」
「やってみる」
 青い髪のユリウスから、赤い髪のサフィーアへ。行動は瞬時にして伝わった。
 サフィーアはブラックフレイムでの援護攻撃を行う。
(「吟遊に似ていても、怪物の声には邪悪な色彩しか感じぬ。全くの別物か……だがそれも一興」)
 両手を交差させ、サフィーアは自分の正面の敵を撃った。怪物の頭部に確実に命中する。手傷を受けた怪物は、黒炎にくるまれもがいたが、すぐに事切れ動かなくなった。
 キャロットも攻撃に転じている。
「爪も牙もつや消しの黒なのネ。ちょっとびっくりだワ」
 ライクアフェザーを発動し、接近してスピードラッシュを叩き込む! 高速の敵との高速戦闘だ。際どい攻防となるが、キャロットはなんとか競り勝った。
「くらうといいのネ!」
 怪物は窓を目指した。逃げるか――それを予期しアクアリスは既に手を打っていた。
「そら、土塊の下僕だよ〜♪」
 足元にまとわりつかれ、怪物は手間取る。
 その背に急迫する一振りの剣、飛燕の如く飛ぶその刀身が、黒い尾を曳き輝いた。
「逃がさないぞ!」
 尾のように見えるは鎖、すなわちチェインシュートである。
 剣を投じたのは、リュウだった。
 刃は深々と怪物の背に突き刺さり、壁に串刺しにして動きを止めた。
 一方でプークらも、最後の怪物を追い詰めている。
「混乱攻撃ばっかかけるんやないッ! わいはもう怒ったからな!」
 何度目かの混乱から立ち直り、プークはブラックフレイムを放った。
「なら、目には目を、といこうかなァ」
 ユリウスは青い瞳を細める。
「混乱には混乱を、ってねェ!」
 再度放つそれは幻惑の胡蝶、見事怪物を惑わせた。混迷の怪物は、背を石床につけ這い回る。
「角笛城の怪物も、これで終わりというわけか……許せよ!」
 存分に距離を取りジェフリーは助走した。
 そして! 跳ぶ!
「短くも忘れ得ぬ戦いと探索の日々……ひとまずこれにて、さらばと言おう!」
 真っ正面から、兜割り。
 その剣、石床を毫も傷つけず、怪物の頭部だけを二つに割った。
 
●角笛山中
「意味を成さぬにせよ、鍵となる詩以外も気にはなる……すまぬな。協力してもらって。お陰で全部書き写すことができた」
 というサフィーアに、遠慮は無用さ、とオームは一礼した。
「ここまで旅を共にした仲間じゃないか。それに、吟遊詩人として私も詩には興味があるからね。文語調でいい詩だと思うよ」
 ええ、とフォーゲルは頷いて、
「それに、ご提案の順序だときちんと韻を踏んでいます。正解の可能性は高いと思います」
「うーン……」
 と、キャロットは肩をすくめた。
「部屋数が26ってのはアルファベットよネ? それに角笛という名=Hornだから、1階の『8』、2階の『5』、3階の『3』、2階の『4』だと思んたんだケド……」
 これに対してプークが言った。
「それやとアレや、押韻……やっけ? それに適合せんのやろ? 1階の『8』、2階の『4』、それに2階の『5』と2階の『8』やと思うで。『1階』の『8』やったら『18』になるかもしれへんけど、1階は『グランドフロアー』っちゅうやつで『0階』やと考えたらつじつまがあうし」
 いずれにせよ、いくつか試行錯誤してみる準備は整っているわけだ。
 一行は、詩に示された部分を掘り始める。その場所とは角笛山の山頂、平らな岩の下であった。
「正解のようだね!」
 発掘、というほどの時間は必要がなかった。すぐにリュウは、埋まった宝箱を見つけたからだ。
「……すごい、ですね」
 レーニエも目を細めている。
「さて、ダイヤを拝ませてもらうとするか」
 錆びた南京錠を砕き、ジェフリーが箱を開けた。
 これをのぞき込み、思わずプークは座り込んでしまった。
「……あちゃー」
 たしかにダイヤモンドは見つかった。
 だが、人ひとり入れそうな大きな箱の底には、指輪がひとつ、残されているだけだったのだ。
「そういえば、ルラルさんは『ダイヤモンドがある』とは言いましたが、たくさんあるとは言いませんでしたね」
 うなだれるプークの肩を叩き、フォーゲルは笑った。
「まァ、最後くらいこういうのもいいんじゃないかなー。さんざ稼がせてもらったし」
 それになんというか、とユリウスは笑うのである。
「今日、誰ひとり大怪我せず勝てたこと、それにこれまでのこと……その全部がOTAKARAってやつだよ、ウン♪」
「あたしも、それでいいと思うよ☆」
 アクアリスは告げた。
「ダイヤモンドの宝石言葉は『永遠の絆』っていうじゃない♪ この中にはあたしたちの、永遠の友情があった……な〜んて☆ キザ?」
 彼らは顔を見合わせて笑った。
「ではこの指輪は……今まで世話になったルラルに進呈するというのはどうだろう?」
 指輪を持ちあげ、サフィーアは皆に問うたのである。
 午後の日差しに照らされて、ダイヤモンドが一瞬、きらりと光った。

 ――『Fortune Stories』 完


マスター:桂木京介 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2009/02/17
得票数:冒険活劇12  ミステリ6 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
 
朱華・オーム(a74565)  2011年06月30日 23時  通報
なぞなぞ依頼第5回。
私の誕生石でもあるダイヤということで、個人的に気合が入っていたと思う。
ちなみに解答にはhornじゃなくて、
TSUNOBUEから子音だけを取り出してTSNBにするという答えもあったよ。
これでなぞなぞ依頼も一段落。
シリーズ依頼自体初めてだったんだけど新鮮でとても楽しかった。